著者:ポール・R・ドーアティ,H・ジェームズ・ウィルソン …
AIが人間の仕事を奪うのではなく、新しいパワーを与えてくれるという発想は痺れました。(Inobe.Shion) |
内容紹介
製造、サプライチェーン、会計、R&D、営業、マーケティング GE、マイクロソフト、BMW、グーグル、アマゾン・・・・・・ AI革命とは「人間の能力を拡張する」ために業務プロセスを根本的に変えることである。 【主要目次】 パート1 「人間+マシン」の未来を現在から考える パート2 ミッシング・ミドル―AIで業務プロセスを再考する 内容(「BOOK」データベースより) 製造、サプライチェーン、会計、R&D、営業、マーケティング―ヒトと人工知能との「協働」が始まる。GE、マイクロソフト、BMW、グーグル、アマゾン…先進企業に学ぶ「これまでと違う仕事」と「これまでと違う仕事のやり方」。 |
第3の波は新たな世界への扉を開いてくれる。そこでは人間とマシンが協力して、ビジネスにおけるパフォーマンスを桁違いに改善する。私たちはこの世界を、「ミッシング・ミドル(失われた中間領域)」と呼んでいる。「失われた」という言葉を使っているのは、誰もそれについて語ってこなかったからだ。そしてこの重要な隙間を埋めようとしている企業は、ごくわずかしか存在しない。(p.10) |
ミッシング・ミドルでは、人間とマシンが協力して作業し、お互いが得意とする領域を担当する。例えば、人間は、さまざまなAIアプリケーションの開発、トレーニング、管理を担当する。そうすることで、AIシステムは真のパートナーをして機能することができる。そしてマシンは人々に、無数のソースから大量のデータを取得しリアルタイムで処理・分析するなど、人間の能力を超えたスーパーパワーを与える。マシンが人間の能力を拡張するのだ。(p.10) |
一般的に、AIは人間の仕事を奪うなどと言われることが多いですが、この考え方は魅力的です。確かにアルファ碁などのああいった人工知能についてもこれまで人間が見出せなった一手を見つけ出したりしてくれるわけで、これは新しい囲碁の世界へと導いていってくれるものでしょうし、ほかにもそういったことはいろいろとあるでしょう。
そういう意味では、下記の図にあるように元々機械にしてもらえばいいことを人間がやっていて、またさらにテクノロジーの進化によって機械ができることが増えてきたことも大きなことなのでしょう。
▼ミッシング・ミドルの図
主導 | 共感 | 創造 | 判断 | 訓練 | 説明 | 維持 | 増幅 | 相互作用 | 具現化 | トランザクション | 反復 | 予測 | 適応 |
人間だけの活動 | 人間によるマシンの補完 | AIによる人間へのスーパーパワー付与 | マシンだけの活動 | ||||||||||
人間とマシンのハイブリッド活動 |
ミッシング・ミドルでは、人間とマシンは仕事をめぐって争う敵同士ではない。彼らは共生するパートナーであり、より高いレベルのパフォーマンスを達成するために助け合う。さらにミッシング・ミドルでは、企業は業務プロセスを見直し、人間とマシンが共に働くチームを活用することができる。(p.11) |
さまざまな業界におけるリーディングカンパニーが、すでにこの第3の波に乗っていて、彼らは自動化を最大限まで進め、今では人間とマシンのコラボレーションから価値を生み出すための、次世代プロセスとスキルの開発に取り組んでいるという。
こうしたリーディングカンパニーは、どのようにしてそれを達成したのだろうか?研究の結果、5つの重要な原則の採用が、彼らの成功をもたらしたことがわかった。その原則とは、組織のマインドセット、実験(エクスぺリメンテーション)、リーダーシップ、データ、スキルの5つ(MELDS)である。(p.17) |
マインドセット | ミッシング・ミドル(人間がAIを改良し、スマートなマシンが人間にスーパーパワーを与える領域)における仕事を再検討することで、ビジネスに対して従来とは根本的に異なるアプローチを考える。 |
実験(エクスペリメンテーション) | AIをテストし、ミッシング・ミドルの観点から再検討されたプロセスを検討し、その規模を拡大していくために、業務プロセス内のさまざまな部分を積極的に観察する。 |
リーダーシップ | 最初の段階から、AIの責任ある使用にコミットする。 |
データ | インテリジェント・システムを動かすための「データ・サプライチェーン」を構築する |
スキル | ミッシング・ミドルにおいてプロセスを再構築するために必要な、8つの「融合スキル」を積極的に開発する。 |
▼ミッシング・ミドルにおける融合スキル
人間とマシンによるハイブリッド型活動 | |||||
人間によるマシンの補完 | AIによるスーパーパワーの付与 | ||||
訓練 | 説明 | 維持 | 増幅 | 相互作用 | 具現化 |
人間性回復 | 合理的質問 | ||||
定着化遂行 | ボットを利用した能力拡張 | ||||
判断プロセス統合 | 身体的かつ精神的融合 | ||||
相互学習 | |||||
継続的再設計 |
ミッシング・ミドルの概念は、仕事の未来に関する、現在の二極化された議論(そこでは人間とマシンが対立するものとして位置付けられている)の多くで見過ごされてしまっている。そして最先端の企業が業務プロセスを再設計し、パフォーマンスの大幅な改善を実現している場所こそ、この「ミッシング・ミドル」の領域なのである。しかしこうした結果を手にするためには、経営者は必要な投資(ミッシング・ミドルにおける役割を担えるように従業員を再投資するなど)を行って変革を推し進め、組織を導かなければならない。(p.292) |
現在の問題は、ロボットが人間の仕事を奪っているということではない。AIのような新しいテクノロジーによって急速に進化している仕事に対して、求められる適切なスキルを備えた労働者が不足しているということなのだ。たとえば従業員数でのトップ100社は、2020年までに、従業員に求められるスキルセットのうち3分の1以上が、現在は重要だと考えられていないものになるだろうと回答している。(p.295) |