著者:池田 義博 …
著者の池田さんは、40歳半ばからこの記憶術を開始し、自分なりの手法を確立されたそうです。参考になる点が多々あります。いろいろと気づかされました。(Inobe.Shion) |
内容紹介
40代半ばからたった1年で記憶力日本チャンピオンになった、 「メモを書いても思い出せない」 メモは上手く使うことで脳のあらゆる力を上げることができるのです。 第1章 忘れないメモ術 内容(「BOOK」データベースより) メモで創造力、実行力UP。脳の力を圧倒的に上げる秘訣。 |
何より驚くのは、筆者自身が記憶術を始めたのが40代半ばからということです。そして、筆者曰く、「記憶術」という脳の記憶の仕組みを利用した方法を用いて覚えているだけとのこと。さてどんな方法かというと、タイトルにもあるメモのフル活用ということになってきます。
しかも大事なのは、「手書き」ということです。これは大学での実験でも実証されているとのことです。(こちらにもその記事がありました。)
手書き用メモのノートも2種用意されていて、方眼は「論理思考」のときに、無地は「水平思考」のときと使い分けられているようです。「水平思考」とは発想を広げていくときの試行とのこと。覚えるときはマス目のあるメモが良いようです。
さらにメモの価値を十分に活かす方法が書かれています。
メモを価値のあるものにするためにはなるべく早く見直すことが重要です。(p.23) |
メモは遅くとも次の日には見直すようにするべきです。一度見直しておくと復讐の効果が得られます。(p.26) |
記憶には最終的な消費期限があるということです。その期間はおよそ1か月です。(p.27) |
私は基本の色に青、そしてポイントとなる部分に赤の2色のみを使っています。ノートのメインの色に黒色ではなく青色を使う理由は主に精神的な面から来ています。青という色は、心理学的に心を落ち着かせてくれて集中力を高めてくれる色なのです。(p.36) |
人に教えることが学習の高価として最適なのは、そのなかに記憶を強化する仕組みが自然に組み込まれているからです。まずは「情報の整理」です。人に分かりやすく教えるためには、自分のなかで系統立てて、整理しておく必要があります。そのレベルになっていないと理解力が違う相手に内容を伝えるのは難しいのです。(p.40) |
脳は文字で書かれた知識の情報の記憶「意味記憶」よりも、自分が体験、経験した記憶「エピソード記憶」の方が断然強く記憶に残るのです。(p.42) |
教えるということは、まさに「エピソード記憶」への焼き付けになりますもんね。
また次のようなことも書かれています。これは皆さんも経験があるかもしれませんが、教科書を眺めていて覚えたつもりになっていると。それは気づかないうちにテキストやノートの流れやそのページのなかの位置関係といったそこ限定の形式で覚えていた可能背があるというのです。それゆえ、テスト本番ではその順に出題されないため思い出すことができないのだと。この経験は思い当たるところがある人は結構多いかもしれません。私も当然その一人です。これを防ぎ確実に記憶を定着される方法があるんだというのです。
確実に記憶を定着される方法が存在します。記憶学習においては最強と呼んでいいかもしれません。その方法を学習心理学では「想起練習」と呼びます。(p.45) |
それはどんなものかといえば、非常にシンプルです。単語カードに覚えるべきことを書いて、順不同にしてそれを想起するというのです。結局、原点に返るというような感じでしょうか。この要素を組み入れてフラッシュカードのようにした「ANKI」というアプリがあって、これは手ではできない見直しのスケジューリングなどもできて、手書き以上の良さもあるをして筆者も利用を推薦しています。
さらに顔と名前を覚える方法が書かれています。面白い話が書かれていて、ベイカーさんについてです。名前のベイカーさんは忘れられても、パン屋という意味でのベイカーだとパン屋ということは忘れないということなのです。
これは単なる「文字」としての名前よりも相手の趣味や職業といった「背景」の方が被験者たちの想像力を刺激し、強く記憶に残ることを物語っています。(p.51) |
これを次のようにノウハウとして使っているとのことです。
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名刺に「眉毛が濃い」とか書いておくのは若干抵抗がありますが、何のための名刺かというときちんと覚えておくためのものですから、間違ってはないのでしょう。
以前読んだ名刺のほうは、これを逆手にとって、覚えてもらうための名刺でないと名刺の意味がないということで、そのようなエピソードをどんどん刷り込んで、営業ツールとして使うということを推奨していました。
覚えるためのノート作りのアイデアが次に書かれていました。ノートを2:1:1に区切って、左に問い、真ん中にその時にタイムリーに浮かんだ疑問や気づき、アイデアなどを書き込む。そして右端に、行動の結果を書くようにするとのことです。
たとえば、次のような感じです。当然、ここは方眼ノートが使われているとイメージしてください。
豊臣秀吉 山崎の戦いで明智光秀を破る |
秀吉は豊臣と名乗る前はなんて名だっけ? | 羽柴 その前は木下 |
こんなふうに3つに区切って、「問い」、「プロセス」、「結果」という流れを書いておくと記憶が定着しやすいようです。
またアイデア創出のためのメモ術として、いくつか書かれています。
①質問メモ ・A4サイズの真ん中に質問を書く。 ・思いついたキーワードを書いていく。 ②相関図メモ ・キーワードから連想されるものを書いていく ↓ 見やすいところに貼っておき、見返す |
またお決まりですが、SCAMPERについても書かれていますので、復習しておきましょう。ジェームズ・W・ヤング著『アイデアのつくり方』の定番手法です。
S(substitute:代用) C(combine:結合) A(adapt:応用) M(modify:修正、magnify:拡大) P(put to the other uses:別の用途) E(eliminate:削除) R(reverse:逆、rearrange:再構成) |
次はこれは非常に参考になりました。私も社会人大学院生として研究をしつつ、仕事もしていますが、うまく波に乗れて進行するときもあればそうでないときもあります。このメカニズムを自分でも観察しながら考えていたのですが、その一つがその日一番やりたいこと(やらなければならないこと)をすぐにやりはじめられるようなところまで架け橋を作っておく。そうすれば進んでいくというようなことでした。例えば、ここでも出てくるのですが、プレゼンの表紙だけでも作っておく、というようなものです。私は私で自分なりに何かしら見つけていたのですがどうもそれでは足りないと思っていたところでしたので、これは非常に力強い考え方として役に立ちそうな気がしています。
脳のなかには「やる気」を生み出す側坐核という場所があります。個々の細胞が刺激を受けるとやる気が生まれるのです。ですがこの場所はあまり反応がよくないため、何らかの方法で刺激を与えてやる必要があるのです。その一番手っ取り早い方法が「とりあえず作業を始めてしまう」ということなのです。たぶん皆さんにも経験があると思うのですが、最初はあまり乗り気ではないことでも始めてしまったら、徐々に気分が乗ってきて、気がついたら夢中になっていたことはありませんか。これも、側坐核が刺激を受けた結果なのです。このように側坐核は「字を書く」「パソコンに入力する」「考える」というような実際に身体を動かしたり、頭を使ったりすることにより刺激を受けるのです。(pp.113-114) |
とはいえ、うまく乗り切れないのに乗せようとしてもそれは大きなストレスになってきて、それが溜まるとその「まず始めよう」自体を後回しにしてしまいかねない・・・・
そこでスタートしてどれくらいまでの時間をとりあえず頑張ればよいのかの目安を紹介しておきましょう。アメリカの心理学者レナード・ズーニンが提唱している時間はスタートしてから4分間です。何かを始めるときにはスタートしてから4分間で調子の波に乗ることができれば、その後、楽に作業を進めることができるという法則です。ですから書き始めてからの4分間はやる気というロケットを軌道に乗せるまでのブースターなのだと割り切って、組み立てや流れなどの細かいところにはこだわらず動き続けた方が結果的には効率よく質のよいコンテンツ完成に結び付くのです。(pp.114-116) |
ここでもうひとつ思ったことが、4分勝負なので、最初の1秒からすぐにスタートできるように整えておかなければならないということです。例えば、パソコンを立ち上げて、適切なところにログインしておくとか、必要になりそうな資料は手元に先に準備しておくなど。そういったものを整えて、その4分に勝負を賭けるのが良いと思います。その手前からだと、それだけで4分経ってしまいかねないので、先に準備フェーズ。ここは気楽に整えながら、そして、「4分勝負!」に入るのがよいのではと経験的に感じています。
そのほかの「書く」ということがいろいろな効能のあることを記されており、特に手書きの効果・効能について著者自身がこの本を書くことで気づいたというようなことが書かれていました。
レオナルド・ダ・ヴィンチにしろ、アインシュタインにしろ、メモ魔だったと言います。このメモをどう活かすか、こういった効果的に活用されている人の事例を参考にして自分自身の活用法を確立していきたいですね。