なぜ、ユニフォームは、働く人を美しく魅せるのか?

なぜ、ユニフォームは、働く人を美しく魅せるのか?―――仕事服(ユニフォーム)の「なぜ」と「魅力」をこの一冊に

著者:長尾 孝彦…

著者は、住商モンブランの社長さん。ご自分の従事するユニフォーム業界、扱う「ユニフォーム」についてこれだけ語れるところは素晴らしい。「ユニフォーム」の必然性や知らなかった機能まで勉強になります。いかんせん、何かの記念やパートナー企業を称えるための贈り物的な要素も感じられはしますが・・・。

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内容紹介
ユニフォームで会社が伸びる?ユニフォームで一流スタッフが育つ? 国内の超大御所デザイナーや高級レストランのシェフ、そして今をときめく実業家によるインタビューも収録。国内最大級のユニフォームメーカー社長が職業ユニフォームを語った、経営者とマネジャー必読の教科書的一冊。著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
長尾/孝彦
大阪府出身。1980年に神戸大学経済学部卒業後、住友商事に入社。サミット・ウール・スピナーズ(NZ)社長、住友商事インテリア産業資材部長、スミテックス・インターナショナル社長を歴任し、2010年に住友商事大阪繊維事業部長兼住商モンブラン取締役を兼任。2015年1月住商モンブラン社長に就任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

海外と比べても、日本はユニフォーム大国といっていいほどの需要の多さであり、見方によっては、日本社会はユニフォームの上に成り立っているといっても言い過ぎではないくらいだ。これほど大きな影響力がある市場であるにも関わらず、一般の人にはあまり興味を持たれることがないのだから、全く不思議である。業界でユニフォームの販売に携わっている人ですら、ユニフォームの特性や魅力についてまだ気づいていない点があるのではないか。(p.2)

そのユニフォームの市場ですが、どんなもんなのでしょうか?
ユニフォームと言っても、いわゆる「制服」と呼ばれているほうですね。ちょうど矢野経済の調査のサマリーを見ることができました。

それによると、

市場概況・予測
2015 年度の国内ユニフォーム市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年度比 101.6%の 5,026 億円となった。ユニフォームは職種や業種に応じて細かくセグメントされており、分野別構成比を見ると、ワーキングユニフォームが 52.3%、スクールユニフォームが 21.9%、サービスユニフォームが 16.8%、オフィスユニフォームが 9.0%を占める。2011 年度以降、国内のユニフォーム市場全体では微増傾向を保っているが、2015 年度ではスクールユニフォームのみマイナスへ転じた。少子化に伴う生徒数減少、学校統廃合など、スクールユニフォーム市場を取り巻く環境は依然厳しい状況が続いており、ユニフォームメーカー各社はあらゆる策で生き残りをかけている。
▼注目すべき動向
各ユニフォーム分野別の動向 ワーキングユニフォームでは、2020 年の東京オリンピック・パラリンピック開催による建築・開発需要や、 訪日外国人客の増加から首都圏を中心にホテルなど宿泊施設の需要の増加が見られている。また、近 年の女性の社会進出に伴い、作業系の現場にも徐々に女性が増えている。しかし、まだその市場に与え る影響は限定的で、ワーキングユニフォーム市場を大きく底上げするほどには至っていない。 スクールユニフォームでは、一度受注すると数年間に亘り毎年数百着単位での販売が確実に見込める ため、メーカー各社は学校側の“生徒を集めやすい制服”の要求に応えるかたちでデザインの変更や価 格の見直しなどの経営努力を行い、受注確保に努めている。

というような市場のようです。どうやらスポーツ系の文字通り、ユニフォームと呼ばれるところのものはここには入っていないようです。スポーツ市場に勘定されるんでしょうね。

ですので、この著書でのメインであるユニフォーム(制服)の市場は5,000億円くらいとなるようです。日本の実質GDP(2016年)が520兆円くらいですから、0.1%くらいでしょうか。ちなみに商業販売額が460兆円で、卸320兆円、小売り140兆円のようです。

またこんな記事もありました。「ユニフォーム市場に流れる新しい風」と題された、伊藤忠が出している『繊維月報』というのが閲覧できました。

ユニフォームには幅広い用途と目的がある。そんため、一概にこれがベストユニフォームの条件であると限定するのは難しい。しかしどのユニフォームにも共通する一番わかりやすい条件がある。それは、「視認性」である。・・・「快適性」や「安全性」、「洗濯耐久性」も、ユニフォームには欠かせないものである。この3点については、一般のアパレル以上に強く求められるというのがユニフォームの特徴でもある。・・・ユニフォームに求められるもので、一般アパレルと最も違うのは「継続性」であろう。・・・この他にも、ユニフォームには、あらゆる機能が求められる。最も重視される機能性は「汚れ対策」だろう。「耐久性」も欠かせない機能である。・・・デザインにおいても特殊な面がある。清潔感、躍動感、安心感、親近感、威圧感、爽やかさ、涼しげな感じ・・・・、どんなイメージも思いのままなのである。そして、ユニフォームを着ていることで、着る人、すなわち働く人の意識が変わるという側面も大きい。プロ意識をや自尊心が強まり、それに伴って所作や行動が変わったという経験を持つ人もいるだろう。・・・同じ職業や同じ職場の仲間と同じユニフォームを着ていることで仲間意識が強まるということももちろんあるだろう。世代、性別、国籍などを超えて強い連帯感が生まれるのも、ユニフォームの大きな効果の一つだ。(pp.30-39)

深いですねぇ。まとめると下記のようになります。

一般アパレルでは価格や品質、ファッション性がまず求められるものだと思うが、ユニフォームに求められる重要なものは、視認性と継続性、安全性と耐久性、さらには機能性や快適性である。その優先順位は職場や現場によってさまざまで、それぞれの意図や用途に沿っていなければ、たとえ高品質、高機能、高いデザイン性、コストパフォーマンスの良さを兼ね備えていても、決して良いユニフォームとは言えないのである。(p.41)

 

ということが概論で、その後、飲食、メディカル、その他業界別のユニフォームの特性について書かれ、パートナー企業さんが登場という展開です。

いずれにしても、この業界、参入障壁が実は高いのではと思ったりします。この著書にもありましたが、50年間デザインの変わらない制服もあるとか。その生地を確実に確保し、同じクオリティで生産し続けるというのは非常に泥臭いところもあり、なかなか生産技術のいるところにはなってくるのでしょう。

ユニフォームの魅力を存分に語ってくれ、なかなか気持ち良い感じでした。

 

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