世界天才紀行――ソクラテスからスティーブ・ジョブズまで
著者:エリック・ワイナー,Eric Weiner
内容紹介 ヤマザキマリ氏(漫画家)推薦! 「天才が育まれてきた環境には、彼らの特異性を受け入れる土壌と、それを認める寛大な社会があった! 」古今東西の天才たちを輩出した土地をたずね歩く、愉快で深い旅行記。 〇ソクラテスもプラトンもアテナイを歩き回って思索を深めた。 きら星のごとき天才たちが、特定の時代の特定の場所に集団で現れるのはなぜか?
|
★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] 「天才」という言葉・・・・ついつい惹かれます。
[目的・質問] きら星のごとき天才たちが、特定の時代の特定の場所に集団で現れるのはなぜか?
[分類] 141:普通心理学
まずは、人を惑わすこの「天才」という単語の本来の意味を確認しておこう。語源はラテン語の「genius(ゲニウス)」だが、古代ローマ時代にその意味が大きく変わった。もともとは、まるでヘリコプター・ペアレント(子供に付きまとう過保護な親)のように人にどこまでもついてゆく、超自然的力を備えた守護神を意味していた。ちなみに英語の「genie(ジーニ、妖精・魔人)」という単語も同じ語源を持つ。かつては誰にでも守護神がいた。また、どんな場所にも守護神がいた。都市、待ち、市場にもそれぞれ守り神がいて、それぞれの場を活性化していた。現在の辞書の掲載されている天才の定義-「とくに創造的活動において発揮される、すぐれた知的才能」―は、じつは、18世紀のロマン派詩人によって考案された。この悩める詩人たちは、自分たちが生み出す芸術作品の魅力のなさ、別の言い方をすれば各自の創造力の乏しさに苦しんでいた。ちなみにクリエイティビティという言葉が初めて使われたのは、1870年であり、この言葉は1950年代まではあまり普及していなかった。(pp.10-11) |
「天才」という問題意識をもとに、著者は、アテネ~杭州~フィレンツェ
~エディンバラ~カルカッタ~ウィーン~シリコンバレーと巡っていく。
著名な都市計画家が、創造的な都市を表す「三つのT」-技術(technology)、才能(talent)、寛容(tolerance)-を定めた。だが、技術と才能は、天才の地となる原因というよりは「産物」だ。また、技術は天才の知にあらかじめそなわっているべきものではない。アテナイやルネサンス期のフィレンツェがその証拠だ。どちらの街も、天才の主脈とも呼べる人々を輩出したが、新たな技術はほとんど気遣われなかった。寛容は、創造的な地に欠かせない特性ではあるが、それで万事が解決するわけではない。(p.431) |
三つのTよりも適切な特性を、私も頭文字をそろえて提案することにしようそれは、「三つのD]―無秩序(disorder)、多様性(diversity)、選別力(discernment)-である。無秩序は、これまで見てきたように、現状を打破して流れを変えるきっかけを生むのに欠かせない。多様性は、民族と思考の両面において、より多くの様々な種類の点を生み出すのに必要だ。選別力は、もしかしたら最も重要で、かつ最も見過ごされがちな要素かもしれない。(p.431) |
この「3つのT」と「3つのD」は考えさせられるワードでした。
結局、「紀行」というだけあって、天才を生んだ町を巡る紀行という感じでした。