本当に賢い人の 丸くおさめる交渉術
著者:三谷 淳
内容紹介 頭がいい人はケンカしない──「日本一裁判しない弁護士」と呼ばれる円満解決のプロが、超一流の人と1万件の交渉から学んだ、仕事も人間関係も円滑に行く「丸くおさめる交渉術」を初公開! ビジネスでもプライベートでも一生使える交渉スキル、教えます! 誰もが気づかないうちに、毎日たくさんの交渉をしています。交渉上手になれば、お金も仲間も手に入り、人生が好転します!出版社からのコメント 「日本一裁判しない弁護士」と呼ばれる円満解決のプロが、 超一流の人と1万件の交渉から学んだ、 仕事も人間関係も円滑に行く「丸くおさめる交渉術」を初公開!ビジネスでもプライベートでも一生使える交渉スキル、教えます! |
★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] 図書館で発見。
[目的・質問] 「丸くおさめる交渉術を身につける!
[分類] 336.4:人事管理.労務管理.人間関係.ビジネスマナー.提案制度
「丸くおさめる交渉術」とは、相手が喜び、自分が得する交渉と言い換えることができると著者は言っています。著者の弁護士経験での「裁判で勝っても相手の恨みを買うと、全面解決とならず、いがみ合いが続いてしまい、報復合戦の危険すらあったのです」というような経験から導かれたようです。
超一流の経営者たちとの交流から、あることに気付いたのです。それは、「超一流の人ほどケンカしない」ということです。そう、超一流の人、本当に賢い人は、目の前の争いに勝つためだけに、“ケンカ”をすることはありません。目の前の相手に勝っても、相手の恨みを買うだけですし、長い目で見ると、一つもいいことなどないからです。そうでなく、相手のことを思いやり、相手にとっての利益を考えたうえで、長期的な目線で交渉を進め、仕事を進めることで、超一流の人たちは、周りの人たちに押し上げられ、その地位まで上り詰めたのです。(pp.5-6) |
本文にもありましたが、アメリカ的な狩猟民族系の交渉本は交渉はケンカであり勝たなければならないというような軸足で書かれていますが、特にそれは日本の風土には合わないと著者は言ってます。私もそう思いますし、アメリカ流の交渉術には違和感を覚えます。それは社外だけでなく社内でもそんな感じになってきていて、ギスギスした嫌な感じになったりすることもあるのではないでしょうか。
そこで、著者はすべきことはたった3つのことだと言います。(p.8)
それは、
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・・・この3つだと言います。
この3つについて、要点をまとめると、下記のようになります。
スピード決着を図る | |
メリット | ・交渉のストレスから早く解放される ・浮いた時間を使って次の利益を生み出せる |
コツ | ①事前準備を怠らない ②ファーストコンタクトが勝負を分ける ③返事はすぐにする ④かけひきをしない ⑤回答に期限を切る |
相手の期待値を飛び超える | |
ステップ | ・相手から見える景色を想像する ・交渉の着地点として考えられる合意条件を書き出す |
コツ | 交渉の条件ではなく、相手の話をよく聞いて理解すること、相手の立場を十分に尊重すること、礼を尽くしスピード感を持って返事を返すこと、礼儀正しく交渉を進めることなど交渉に対する熱意や誠意で相手を喜ばせることができると、自分が得することとの両立が図りやすくなります。 |
長期的利益を最優先にする |
近江商人の心得である「三方良し」は「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の3つの「良し」を意味しています。相手を打ち負かすのではなく、相手も喜び自分も喜ぶ近江商人の精神で臨むことが、結果的に長く成功することに繋がります。丸くおさめる交渉は三方良しの交渉です。 |
長期的利益は英語で「Long-term benefit(LTB)」と言い、短期的利益は「Short-term gain(STG)」と言います。長くつながるご縁はbenefit(恩恵=徳)ですし、その場限りの勝ち負けgain(得=儲け)に過ぎないということなのです。 |
これらをベースに交渉を進めていき、Win-WInを実現していきたいものです。
さて、補足的なところをピックアップしておきます。
日本には古くから「和をもって尊しとなす」「損して得とれ」といった言葉があるように、相手のことを気遣い、思いやりながらコミュニケーションをとり、関係を築くという良き伝統があります。そこにいきなり欧米流の交渉術を持ち込むことはどうしても無理があるのです。(pp.34-35) |
交渉上手の人にテクニックだけに頼る人はいません。それよりむしろ交渉を進めるにあたっての考え方や基準を持っています。そして何より交渉そのものよりも事前準備を大切にしているのです。(p.37) |
丸くおさめる交渉で大切なのは相手が喜ぶだけではなく、自分が得する交渉であるということです。それは、いくら利他の心で相手に良いことをしたとしても、自分が得をしなければいつまでも長続きしないからです。会社が営業を継続していくためにはお客様から感謝されるだけでなく、毎年経済的な利益を自社にも積み重ねていかなければなりません。(p.43) |
図々しい条件から駆け引きをすることは、無限に段階のある価格の中から、どこまでであれば自社に有利な条件を受け入れてもらえるかという果てしない作業を繰り返すことになるのに対し、最初から掛け値なしの本音を提示すると、いきなりこの条件を受け入れるか否かの二者択一を迫ることができるのです。(p.75) |
「ピークエンドの法則」という言葉を聞いたことがありますか。これは「人は、過去に経験した出来事の良し悪しを判断するのに、ほとんどピーク(絶頂期)とエンド(最後)の印象でしか判断していない」という法則を言います。「終わりよければすべて良し」というように、特にエンド(最後)の印象は大切です。・・・たとえば、とてもハードな価格交渉で時間もすごくかかり、交渉相手にも無理なお願いをたくさんした結果、なんとか合意ができたとします。・・・しかし、そのようなときでも最後には「いろいろありましたけど、貴社とお取引をすることができて本当に嬉しいです。ありがとうございます。」と言って手を差し伸べ、握手をして深々と頭を下げて終わるようにするのです。相手には、交渉の最後の印象が一番強く残りますから、「大変な交渉だったけど、結果的にあの会社の担当者は礼儀正しくていいやつだった」と判断され、また次の取引を持ちかけてくれる可能性がぐっと高まるのです。(pp.197-200) |
上手な断り方5つのパターン(pp.203-207) ①とにかく相手を「ほめる」「気遣う」「感謝する」 ②一部なら受け入れられたが全部を受け入れることができなかった ③タイミングが悪かったせいにする ④社内ルールのせいにする ⑤上司のせいにする |
交渉相手も断るときには当たり障りのないことばかりを言い、断る本当の理由を明かそうとしないものです。そんなときにもできれば「今後の反省材料にしますので、本当の理由をお聞かせください」と尋ねてみましょう。断られただけでもつらいのに、さらにその理由を聞きだすというのはみじめ過ぎると感じるかもしれませんが、これがあなたの長期的な利益につながります。(p.209) |
契約が取り損ねたとしても・・・相手のためを思って他社製品の購入もサポートします。・・・一人のお客様の契約を取れなかったとしても、最後まで利他の心で親切にした結果、その後何人ものお客様を紹介してもらえ、営業成績がどんどん上がるという長期的な利益が転がり込んでくるのです。まさに「損して得取れ」、相手が喜び、自分が得する交渉は最強なのです。(p.214) |
「ハーバード流」とか「ユダヤ式」などの交渉術や、テクニックに関しての交渉本は数多とありますが、こういった本当に日本流の交渉術といった本はあまりなかったように思います。具体的に書かれていて、分かりやすかったです。これをどう実践していくか、そこは経験も必要でしょうが、「事前の準備」をしっかりとしながら、経験を積み重ねていきたいものです。