ジョブ理論


ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム (ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶブックランキング第3位! ハーパーコリンズ・ノンフィクション)

著者:クレイトン M クリステンセン,タディ ホール,カレン ディロン,デイビッド S ダンカン…

クリステンセン教授の久しぶりの著作。そして、サブタイトルに、「 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム 」とあれば、読まないわけにはいきません。そして、ハーバード・ビジネス・レビューが選ぶビジネス書でも2017年3位を獲得。(Inobe.Shion)

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内容紹介
★破壊的イノベーション論のクリステンセン教授が
「人はなぜそれを買うのか?」を解き明かす最新作!★ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶブックランキング2017年第3位!★世界で最も影響力のある経営学者クレイトン・クリステンセンが、
人がモノを買う行為そのもののメカニズムを解き明かす、
予測可能で優れたイノベーションの創り方。なぜあの商品は売れなかったのか?
世界の経営思想家トップ50(Thinkers50)連続1位。
「破壊的イノベーション論」の提唱者、クリステンセン教授による、待望の最新刊!顧客が「商品Aを選択して購入する」ということは、
「片づけるべき仕事(ジョブ)のためにAを雇用(ハイア)する」ことである。

『イノベーションのジレンマ』の著者による、21世紀のベスト・オブ・ビジネス書!

イノベーションの成否を分けるのは、
顧客データ(この層はあの層と類似性が高い。顧客の68%が商品Bより商品Aを好むetc)や、
市場分析、スプレッドシートに表れる数字ではない。
鍵は「顧客の片づけたいジョブ(用事・仕事)」にある。

世界で最も影響力のある経営学者クレイトン・クリステンセンが、
人がモノを買う行為そのもののメカニズムを解き明かす、
予測可能で優れたイノベーションの創り方。

・顧客が商品を買うこととは、片づいていない「ジョブ(用事・仕事)」を解決するために何かを「雇用」することである。
・ビッグデータは顧客が「誰か」を教えてくれても、「なぜ」買うのかは教えてくれない。
・数値化できない「因果関係」にこそ、成功するイノベーションの鍵がある。
・自社製品も他社製品も買っていない「無消費者」を取り込め。

[本書で取り上げる事例]
イケア、ゼネラルモーターズ(GM)、サザンニューハンプシャー大学、
プロクター&ギャンブル(P&G)、エアビーアンドビー、アマゾン他

【目次より】
序章 この本を「雇用」する理由
まちがったことに上達する /どんなジョブのためにそのプロダクトを「雇用」したのか

[第1部 ジョブ理論の概要]
第1章 ミルクシェイクのジレンマ
朝のミルクシェイク/マーガリンのレジュメ/ジョブ理論とイノベーション

第2章 プロダクトではなく、プログレス
「何を」ではなく、「どう」考えるか/ジョブの定義/機能面、社会面、感情面の複雑さ/ジョブとは何か/ジョブでないもの/ジョブを見きわめるには/競争の勢力図の変化/ジョブ理論の限界/コペルニクス的転回

第3章 埋もれているジョブ
無と競争する/ジョブの適用範囲は深くて広い/B2Bにおけるジョブ/価格2倍で機能半分/顧客の人生に寄り添う

[第2部 ジョブ理論の奥行きと可能性]
第4章 ジョブ・ハンティング
ジョブはどこにある?/1生活に身近なジョブを探す/2無消費と競争する/3間に合わせの対処策/4できれば避けたいこと/5意外な使われ方/感情面の配慮/魔法は必要ない

第5章 顧客が言わないことを聞き取る
顧客のストーリーをつくる/マットレス購入までの道程/衝動買いの裏に/アドビルかレッドブルか、新しいマットレスか/ジョブとインサイト

第6章 レジュメを書く
ジョブを解読する/体験とプレミアム価格/障害物を取り除く/ウーバーの体験/ジョブに適していることをどう伝えるか/パーパスブランド

[第3部「片づけるべきジョブ」の組織]
第7章 ジョブ中心の統合
秘伝のソース/ジョブ中心に組織をつくる/測れることは実行できる/オンスターのジョブ

第8章 ジョブから目を離さない
イノベーションのデータの3つの誤謬/1能動的データと受動的データの誤謬/2見かけ上の成長の誤謬/3確証データの誤謬/データの出所が問題をつくり出す/受動的なデータを能動的に捕まえる

第9章 ジョブを中心とした組織
直観的な作戦ノート/両面コンパス/だいじなことを測定する/ジョブがすべてを変えた/文脈を見失わない

第10章 ジョブ理論のこれから
本当に理論と呼べるのか/理論が〝誤って〟いるとき/理論の限界/ジョブ理論の適用範囲の深さと広さ/個人的なジョブ/公教育/医療/人生のジョブ/ジョブ理論とともに

内容(「BOOK」データベースより)
イノベーションの成否を分けるのは、顧客データや(この層はあの層と類似性が高い。顧客の68%が商品Bより商品Aを好むetc.)、市場分析、スプレッドシートに表れる数字ではない。鍵は“顧客の片づけたいジョブ(用事・仕事)”にある。世界で最も影響力のある経営学者が、人がモノを買う行為そのもののメカニズムを解き明かす、予測可能で優れたイノベーションの創り方。

何が顧客にその行動をとらせたのかを真に理解していない限り、賭けに勝つ確率は低い。だが、イノベーションとは本来、もっと予測可能で、もっと確実に利益をあげられていいはずだ。必要なのは、ものの見方を変えること。だいじなのはプログレス(進歩)であって、プロダクト(商品)ではない。(p.10)
企業は果てしなくデータを蓄積しているものの、どういうアイデアが成功するかを高い精度で予測できるようには体系化されていない。むしろデータは、「この顧客はあの顧客と類似性が高い」「このプロダクトはあのプロダクトとパフォーマンス属性が似ている」「この人たちは過去に同じ行動をとった」「顧客の68%が商品Bより商品Aを好む」といった形式で表現される。だがこうしたデータは、顧客が「なぜ」ある選択をするかについては何も教えてくれない。(p.13)

これは分析者が陥る罠ですね。出てくる数字は過去の数字から導かれた推測、ただそれだけでしかない。そこから「なぜ」というのは分析とは異なる世界。しかし真のデータ・サイエンティストであれば、そこが一番の問題だと分かっておりさらに「なぜ」を繰り返す。そこが本物か、偽物かの違いです。

製造業の姿を一変させた品質改善運動のW.エドワーズ・デミングは言った。「正しい質問の仕方を知らなければ、何も発見することはできない」。一世を風靡した企業が次々に倒れるのを目撃してきた私は、問うべき質問がなんであるかについに気づいた。「どんな”ジョブ(用事、仕事)”を片付けたくて、あなたはそのプロダクトを“雇用”するのか?」私にとってこの問いはすっきりと腑に落ちる。私たちが商品を買うということは基本的に、なんらかのジョブを片付けるために何かを「雇用」するということである。その商品がジョブを上手く片付けてくれたら、後日、同じジョブが発生したときに同じ商品を雇用するだろう。ジョブの片づけ方に不満があれば、その商品を「解雇」し、次回には別の何かを雇用するはずだ。(p.15)
こうしたイノベーション(AirBnBやカーン・アカデミー)は、最新のトレンドにとびついたものでも、顧客の財布のひもをゆるめるために既存のプロダクトにあれこれ飾りを加えたものでもない。イノベーターたちが、消費者の求めている進歩をどうすれば達成に導けるかを明確に理解したうえで、考え、練り上げ、プロダクトを市場に投入したのだ。あなたに片づけたいジョブがあって、いい解決策が見当たらない場合には、“安っぽくて雑”な策でもないよりましである。見過ごしていた何かがものすごい可能性を秘めているかもしれない。(p.17)
我々の考察の基本は、「片づけるべきジョブ」理論にある。この理論が目指すのは、顧客が進歩を求めて苦労している点は何かを理解し、彼らの抱えるジョブ(求める進歩)を片付ける解決策とそれに付随する体験を構築することにある。名称に「理論」とあるので、象牙の塔で学習が難解なことを考えているイメージが浮かぶかもしれないが、この理論は極めて実践的で効果のあるビジネスツールだ。よい理論は、われわれが、“どんなふうに”と”なぜ”を考えるのを助けてくれる。世界がどんなふうに動いているのかを理解し、いま現在の決断と行動がどんな結果を生むのかを予測するに役立つ。ジョブ理論は、相関関係がわかればイノベーションを成功させられると期待する世界から、因果関係のメカニズムを踏まえてイノベーションを成功させる世界へと案内してくれる。(pp.17-18)
「顧客が片づけようとしているジョブ」というレンズを通してイノベーションをとらえ直すことは、私にとって壁が打ち破られた瞬間だった。このレンズがあれば、破壊理論ではなしえなかった、顧客が彼らの生活になんらかのプロダクト/サービスを取り込もうとする原因は何なのかを理解することができる。(p.37)
もしジョブ理論がそれほど強力なら、なぜもっと多くの企業がすでに活用し始めていないのか、と。その理由の第一は、「ジョブ」の意図するものの定義がかなり具体的で精緻だということだ。ジョブは、顧客がほしがる、あるいは必要とするものを表す、万能のキャッチフレーズではない。顧客がたんに望む商品だけでなく、プレミアム価格を払ってでもほしがる商品を生み出すために、ジョブ理論には構築すべき複数のレイヤーがある。何が片づけるべきジョブなのかを特定し理解することは重要な鍵だが、それは始まりにすぎない。(pp.45-46)
ジョブを明らかにして把握できたあとは、そこで得た知見を、優れたプロダクト/サービスの開発に落とし込む青写真に翻訳しなければならない。この過程に含まれるのが、ジョブを解決するうえでの、プロダクト/サービスに付随した体験の正しい構築法だ。さらに、ジョブを一貫して捕捉できるように、最終的には社内の能力とプロセスを統合する必要がある。ジョブの解決という行為と体験と結びつけることは、競争優位を獲得するうえで極めて重要である。なぜなら、競合相手にとってプロダクトの模倣だけなら簡単にできてしまうが、自社のプロセスに強く結びついた体験を模倣することは難しいからだ。(p.46)

以上、第1章でしたが、章のまとめが端的にまとめられていますので、抜粋します。

  • 破壊理論は、イノベーションに対する競争反応の理論であり、脅威にうまく対処したいマネジャーにとって貴重な知見を与えてくれる。しかし、企業が成長を続けていくためにどんなふうにイノベーションを起こせばいいのかという重要な問いには答えてくれない。具体的にどこに目をやれば新しい機会が見つかるか、あるいは顧客が買いたくなるようなプロダクト/サービスは具体的に何かを教えてくれるロードマップでもない。
  • 本書では、これらの問いに答えられる「片づけるべきジョブ」理論を展開していく。ジョブの中核は、顧客がなぜ特定のプロダクト/サービスを生活のなかに引き入れるのか、その理由を説明することである。顧客がプロダクト/サービスを引き入れるのは、彼らにとって重要なジョブが発生し、まだ満たされていないときに、それを解決するためだ。このなぜを理解するかどうかが、あるイノベーションは成功し、別のイノベーションはそうでないかの分岐点となる。
  • ジョブ理論は、イノベーションの強力なガイドだけにとどまらず、真の差別化と長期的な競争優位を可能にし、顧客の行動を組織が理解するための共通言語となり得る。さらに、自社の目的をリーダーがより高い精度で説明できるようにする。(p.48)

ここから第二章に入ります。イノベーションを一か八かの賭けから予測可能なものに引き上げるには、根本的な因果関係のメカニズム―消費者が特定の状況で成し遂げようとするプログレス(進歩)―を理解しなければならず、そのために片づけるべきジョブ理論として展開されます。

イノベーションを一か八かの賭けから予測可能なものに引き上げるには、根本的な因果関係のメカニズム―消費者が特定の状況で成し遂げようとするプログレス(進歩)―を理解しなければならない。そのために片づけるべきジョブ理論がある。(p.50)
イノベーションは品質革命そのものではなく、それを起こす前の段階にある。だが、多くのマネジャーは不備や失敗をイノベーションの過程で避けられないことと受け入れ、一時しのぎの解決策を施すことに慣れすぎたせいで、そもそもの原因をじっくり考えられなくなってしまった。(p.56)
何年も考えてきて、私は結論に至った。どうすればイノベーションを成功させられるかを導く、優れた理論に欠けていたということに。これまで、多くの有能なマネージャがイノベーションの種々の課題と悩ましい疑問に取り組むのを見てきたが、最も根本的な問いに注目した者はめったにいなかった。顧客に特定のプロダクト/サービスを購入して使用するという行為を起こさせるものは何か。ジョブ理論がその答えを出せる。(p.58)

さて、次にジョブの定義が書かれています。ここは非常に重要なところなので、しっかりと書いておきます。

ジョブ理論の中核には、単純だが強力な知見が込められている。顧客はある特定の商品を購入するのではなく、進歩するためには、それらを引き入れるというものだ。この「進歩」のことを、顧客が片づけるべき「ジョブ」と呼び、ジョブを解決するために顧客は商品を「雇用」するという比喩的な言い方をしている。この概念を理解すれば、顧客のジョブを発見するという考え方が直観的にわかるようになる。ここで、ジョブ理論を構成する要素について解説しておこう。(p.58)
■進歩
われわれはジョブを、“ある特定の状況で人が遂げようとする進歩”と定義する。重要なのは、顧客がなぜその選択をしたのかを理解することにある。ゴールに向かう動きを表すため、あえて「進歩」という言葉を選択した。ジョブとは進歩を引き起こすプロセスであり、独立したイベントではない。進歩は、特定の問題を苦労して解決するという形をとることが多いが、それは一つの形態にすぎない。苦労や問題を伴わないジョブもある。(p.59)
■状況
ジョブの定義には「状況」が含まれる。ジョブはそれが生じた特定の文脈に関連してのみ定義することができ、同じように、有効な解決策も特定の文脈に関連してのみもたらすことができる。ジョブの状況を定義するにあたり、重要な質問はたくさんある。「いまどこにいるか」「それはいつか」「誰と一緒か」「何をしているときか」「30分前に何をしていたか」「次は何をするつもりか」「どのような社会的、文化的、政治的プレッシャーが影響を及ぼすか」などだ。ここでいう「状況」とは、その他の文脈上の要素、たとえば、ライフステージ(学校を卒業したばかりか、中年期の危機に陥っているか、もうすぐ定年か)や、家族構成などに拡大することができる。ジョブを定義するのに(その解決策を見つけるためにも)状況が不可欠なのは、成し遂げたい進歩の性質が状況に強く影響されるからだ。「状況」は片づけるべきジョブ理論の根幹である。われわれの経験に照らすと、マネージャたちはたいてい状況を考慮しない。むしろ彼らは、イノベーションを探索する旅のなかで、次の4つの原則にとらわれる。・プロダクトの属性
・顧客の特性
・トレンド
・競争反応

これらのカテゴリは、最もありがちなものを抜き出しただけであって、どれが悪いかと間違っているというものではない。だが、こうした原則を追求するだけでは不充分であり、顧客の行動を予測することはできない。(pp.59-61)

さらに、ジョブには複雑さが内在する。機能面だけではなく、社会的及び感情的な側面もある。多くのイノベーションにおいて、その焦点が機能性や実用的なニーズのみに向けられていることは珍しくない。だが現実には、消費者の社会的および感情的なニーズが、機能的な欲求よりもはるかに大きいことがある。(p.61)

あらためて、ジョブとは何かがまとめられています。

ジョブの基本定義は以下のとおりだ。(pp.61-62)

  • ジョブとは、特定の状況で人あるいは人の集まりが追求する進歩である。
  • 成功するイノベーションは、顧客の成し遂げたい進歩を可能にし、困難を解消し、満たされていない念願を成就する。また、それまでは物足りない解決策しかなかったジョブ、あるいは解決策が存在しなかったジョブを片づける。
  • ジョブは機能面だけでとらえることはできない。社会的および感情的側面も重要であり、こちらのほうが機能面より強く作用する場合もある。
  • ジョブは日々の生活の中で発生するので、その文脈を説明する「状況」が定義の中心に来る。イノベーションを生むのに不可欠な構成要素は、顧客の特性でもプロダクトの属性でも新しいテクノロジーでもトレンドでもなく、「状況」である。
  • 片づけるべきジョブは、継続し反復するものである。独立したイベントであることはめったにない。
適切に定義されたジョブはイノベーションの青写真になる。これは従来のマーケティングでよく言及される「ニーズ」とは大きく異なる。ジョブはそれよりはるかに細かい明細化を伴うからだ。ニーズはつねに存在し、漠然としている。・・・ニーズはトレンドに似ている―方向性を把握するには有益だが、顧客がほかでもないそのプロダクト/サービスを選ぶ理由を正確に定義するには足りない。(p.63)
ジョブは本来複雑なため、顧客を観察して得た知見を分析しやすいようなデータに落とし込むことは容易ではない。ジョブを見極め、本質を明らかにするのは、現実にはかなりむずかしい。ジョブから得る知見は壊れやすい。なぜなら、数字ではなく、ストーリーだからだ。顧客に付随する特性を分解し、「男性/女性」「大企業/中小企業」「新規顧客/既存顧客」などのバイナリーデータに分解する段階で、その意味は破壊される。・・・ジョブ理論が重点を置くのは、“誰が”でも”何を”でもなく“なぜ”である。ジョブを理解するということは、知見を集めて、さまざまなことが密接につながり合った絵をつくり上げていくことであり、細かい断片に区切ることではない。(pp.65-66)

 

 

ジョブを理解するうえで、ある思考実験が役立つことに気づいた。特定の状況で進歩を遂げようと苦心している人を、短編ドキュメンタリー映画風に頭のなかで撮影してみるのだ。

■この動画に記録されるべき要素
①その人が成し遂げようとしている進歩は何か。
②苦心している状況は何か・
③進歩を成し遂げるのを阻む障害物は何か。
④不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか。
⑤その人にとって、よりよい解決策をもたらす品質の定義は何か、また、その解決策のために引き換え(トレードオフ)にしてもいいと思うものは何か。

これらの要素はそれぞれに重要な文脈と意味がある。5つの問いに答えることで、ジョブをより具体化できるようになる。いわば、ジョブ理論は複数の切り口と機能を持った統合ツールといえる。顧客が進歩を成し遂げるために苦労している点を見つけ出したら、片づけるべきジョブの機能面だけでなく、重要だが気づきにくい社会的および感情的な側面についても考えてみよう。(pp.66-69)

本書では、分かりやすいように簡潔かつ単純にジョブを表現しているが、ジョブを適切に定義するということは多層的で複雑な作業であることを強調しておきたい。なぜか?ある人のジョブを完全に満たすには、ただプロダクトを生み出すだけでなく、ジョブのさまざまな面に対応する体験を創造し、さらにはそうした体験を一貫して構築できるように、企業のプロセスに統合する必要が出てくるからだ。これをうまく成し遂げれば、競合相手に真似される恐れはほぼなくなる。(p.70)
ジョブはつくり出すのではなく、見つけ出すものだ。ジョブそのものは長い間変化しなくても、解決方法のほうは時が経つにつれて大幅に変化することがある。(p.71)
イノベーターにとってジョブを理解するということは、消費者が進歩しようとするときに、何を最も気にかけるのかを理解することである。ジョブ理論を当てはめれば、どのメリットが不可欠でどれが余計かを、細かく評価することができる。状況に応じた「雇用」の基準を理解すると、それが引き金になって重要な知見が次々と得られる。そのなかでもとくに注目すべきはおそらく、競争の場が想定していたものとは全く違っていたケースだろう。(p.72)
何が原因で何が起こるかを予測通りに正確に説明できる、堅実で安定した理論は一夜のうちにはできあがらない。さまざまに練り、試験をおこない、精緻化しなければならず、また理論が当てはまる文脈を理解しなければならない。たとえ理解がある特定の用途に当てはまらなくても、それ自体に意味がある。ある理論が何かを説明するのに適していないことが分かれば、よりよい答えを求めてほかに目を向ける契機になるからだ。よい理論は、IF-THENの条件式で助言を与えてくれる。(p.77)

以上、またこの第2章も上での抜粋と重複するところがほとんどですが、しっかりとまとめられています。(p.83)

  • 実業界では多くの人が、理論と聞くと学問的あるいは抽象的な世界を連想するが、そうではない理論もたくさんある。因果関係を説明する理論は、ビジネスリーダーのもつツールのなかで最も重要かつ実用的なツールである。
  • イノベーションの分野は有用な理論を、とくに「顧客が特定のプロダクト/サービスを購入し、使用する原因は何か?」という基礎的な問いに答えられる理論を必要としている。
  • この基礎的な問いに対してジョブ理論は、顧客がプロダクト/サービスを購入して使用する(雇用する)のは、顧客の生活に生じたジョブを満たすためである、と答える。ジョブの定義は、「ある特定の状況で顧客が成し遂げたい進歩」である。
  • 顧客のジョブを完全に理解するには、ある特定の状況で顧客が成し遂げようとしている進歩を、機能的、社会的、感情的側面も含めて理解し、さらに顧客が引き換えにしてもいいと考えているものを理解しなければならない。
  • 顧客の片づけるべきジョブを理解すれば、顧客に雇用されるための本当の競争が浮かび上がる。これは、競争相手より魅力的な解決策を生み出すうえで極めて重要な情報となる。

ここまでが第2章でした。

 

以下、まとめを見れば、全体像が分かるので、「章のまとめ」を抜粋していきます。

第3章「埋もれているジョブ」のまとめ(p.112)

  • 自社製品を雇用して顧客が片づけようとしている本当のジョブを理解していない企業は、「ひとつですべてを満足させる」万能の解決策に惹かれがちで、結局誰も満足させることができない。
  • ジョブを理解すれば、成長とイノベーションの新たな道筋が開ける。そのためには、ジョブに基づいて区切ったセグメントにフォーカスする必要がある。このセグメントには、現状では満足な解決策が存在しない「無消費者」も含まれ、彼らはジョブを不満足に片づけるよりは、何も雇用しないほうを選ぶ。無消費に眠る好機は企業にとって巨大だ。
  • ジョブのレンズを通して顧客を見ると、競うべき本当の相手が見えてくる。それまでは思いもしなかった他分野の商品がライバルとなることも多い。(p.112)

第4章「ジョブ・ハンティング」のまとめ(pp.147-148)

  • ジョブ理論は、イノベーションを成功に導く明快な手引書である。ジョブを完璧に解決するのに必要な情報はどれも、この理論に照らして理解を深めることができる。
  • ジョブの理解を深める方法はたくさんあり、そのなかには伝統的な市場調査の手法も含まれる。”ジョブ・ハンティング”の戦略を練ることも有益ではあるが、その際に最も重要なことは、どの技法を使うかではなく、どういう質問をするのか、そして答えとして得られた情報をどうつなぎ合わせるかにある。
  • ジョブの知見を得るのに貴重な情報源となるのは、あなた自身の生活である。人の生活は非常に雄弁であり、自身の体験は片づけるべきジョブを掘り起こせる豊かな大地となる。歴史上、とくに大きな成功を収めたイノベーションは、個人の経緯と内省から生まれた。
  • ほとんどの企業は、既存の顧客への理解を深めようと大がかりな市場調査を行うが、ジョブについての重要な知見は、あなたのプロダクトも他者のプロダクトも買っていない無消費者を調査することで得られることが多い。
  • 誰かが間に合わせの策や代替行動をとってジョブを片付けていたら、注意深く観察してみよう。高い可能性をもったイノベーションの手掛かりになることがある。そのジョブがとても重要なのに他に方法がないため、仕方なく解決策を工夫していることがあるからだ。
  • あなたのプロダクトを顧客がどのように利用しているかを詳しく調べると、往々にしてジョブについての重要な知見が得られる。とりわけ顧客が、意外な使い方をしているときにはこれが顕著である。
  • ほとんどの企業は、顧客のジョブの機能面ばかりに重点を置いているが、感情的および社会的側面の発見にも同等の注意を向けるべきだ。3つの側面全てに対処することが、ジョブを踏まえた解決策には不可欠だからである。

第5章のまとめ「顧客が言わないことを聞き取る」(pp.188-189)

 

  • 顧客の真の「片づけるべきジョブ」を理解することは、現実にはそうとうむずかしい。顧客は往々にして自分の望みを明確に言葉にできない。ことばにしたとしても、行動がまったく別のストーリーを語ることは珍しくない。
  • 顧客の行動について集めたデータは、客観的に見えてもじつは偏っていることが多い。データはとくに、ビック・ハイア(顧客がなんらかのプロダクトを買うとき)だけを重視し、リトル・ハイア(顧客がなんらかのプロダクトを実際に使うとき)を無視している。ビッグ・ハイアが、顧客のジョブをプロダクトが解決したことを意味する場合もあるが、本当に解決したかどうかは、リトル・ハイアが一貫して繰り返されることによってしか確認できない。
  • 顧客が新しいプロダクトを雇用する前に、それと引き換えに何を解雇する必要があるかを理解すること。企業はこの点を十分に考察していない。何かの雇用の裏ではつねに何かが解雇される。
  • 顧客が自分でうまく説明できないことを聞き取るには、顧客を注意深く観察し、丁寧なやり取りを重ねる必要がある。その際、聞き取る側は「初心者の心構え」で臨むことが肝要である。この精神を持ち続けられれば、誤った思い込みで重要な情報を弾いてしまう危険性を減らすことができる。
  • 顧客の状況や、悪戦苦闘の時間、不完全な体験、それらに伴うストレスを詳細に記述した、一種のストーリーボードを描くことによって、ジョブの理解を深めることができる。
  • ストーリーボードでは、新しい解決策を推進する力を把握しておくことが重要である。この力には、満足していないジョブを押す力と新しい解決策を引きつける力の二つがある。
  • 変化に対抗する力を知ることも同じく重要だ。この力には、現行の習慣および新しいものへの不安が引き起こす“惰性”も含まれる。
  • 変化に対抗する力が強くても、それを緩和するような体験を用意することができる。新しいものへの移行に不安があるのなら、それを最小化する体験を付随させればいい。

第6章「レジュメを書く」のまとめ(pp.227-228)

 

  • 顧客のジョブを充分に理解したら、次のステップはそれを完璧に片づける解決策を生み出すことである。ジョブは奥が深く複雑なため、解決策もそうならざるを得ない。ジョブのディティールと、それに対応する解決策のディティールは、イノベーションを成功させるうえできわめて重要である。
  • ジョブのディティールは、ジョブスペックとして把握する。これには、顧客が求める進歩を機能的、感情的、社会的側面から記述したものや、受け入れられるトレードオフ、打ち負かすべき競合相手や、克服すべき顧客の障害物などが含まれる。ジョブスペックは、ジョブの深い奥行きと複雑さを、実行可能なイノベーションの指針に変換する際の青写真となる。
  • ジョブの解決策は、中核のプロダクト/サービスだけで成り立つわけではない。顧客があなたの解決s買うを雇用し、他社の解決策を解雇する際に直面するであろう障害物を乗り越えられるように、購入および使用に伴う体験を慎重にデザインしておかなければならない。つまり、ジョブをうまく片づける解決策はどれも、たとえそれが物理的な製品であっても、”サービス”としてとらえられるということである。
  • ジョブを的確に捕捉できれば、あなたの会社のブランドをパーパスブランドに変換させることができる。パーパスブランドとは、顧客が重視するジョブと自動的に関連づけて考えるブランドのことである。パーパスブランドは、社外の人にとってはあなたの会社が何を体現しているのかを理解する指針となり、社内の人にとってはその意思決定と行動を導く指針となる。

第7章「ジョブ中心の統合」のまとめ(pp.265-266)

 

  • 第6章で述べたように、イノベーションの成功の秘訣は、顧客のジョブスペックに対応する体験を創造し、届けることである。これを一貫しておこなえるようにするには、それぞれの体験に結び付けて適切なプロセスを構築して統合する必要がある。これにより、他社から簡単に模倣されない競争優位の強力な源が手に入る。
  • 顧客のジョブを中心にプロセスを統合することには価値があるものの、多くの企業にとって自然にできることはない。どの企業にも当然プロセスはあるが、ほとんどの場合、効率をあげることや、特定の機能を使って狭い範囲の達成することを目的としている。ジョブを解決する体験を正しく提供するには、新しいプロセスを慎重に定義し、通常はサイロ化している機能群を調整する新しいメカニズムをととのえる必要がある。
  • ジョブを中心にしたプロセスの開発と統合を推進するうえで強力なてことなるのは、顧客のジョブを解決することに沿った新しい尺度に基づき、成功を測ることである。マネジャーは、顧客が求める体験のどの要素が最も重要かを問い、それのパフォーマンスを追跡する測定基準を定めておくべきである。
  • ほとんどの組織には、顧客のジョブに即したプロダクトを一貫して提供できるように気を配る。“世話人”的立場のスタッフはいない。伝統的な組織構造とサイロ化した部署は居心地のいい場所となり、そのまま維持されることを望むものである。したがって、ジョブ中心の組織に移行するための方法としては、正しいプロセスを慎重に設定して統合し、正しく測定し、時間をかけてジョブを企業文化の中心に埋め込んでいくことになるだろう。
  • 顧客のジョブの解決の仕方は、時間とともに変化する。プロセスの構築に際しては、状況に応じて体験を改良していけるように柔軟性を考慮しておく。

第8章「ジョブから目を離さない」のまとめ(pp.292-293)

 

  • 多くの企業の創業時の逸話には、満足な解決策が存在しない重要なジョブを見つけ出し、それを創造的に解決する方法を編み出した起業家がよく登場する。
  • ところが、企業が成長するにつれ、起業のきっかけとなったジョブに対するフォーカスをなくしてしまうことが多い。強い意思と、1世紀にわたるマーケテイングの知恵があるにもかかわらず、企業は、解決するジョブ(4分の1インチの穴)ではなく、売り出すプロダクト/サービス(4分の1インチのドリル)が自分たちの仕事を定義するかのように行動し始める。
  • 顧客のジョブへのフォーカスを逸らそうとする要因はいくつもあるが、なかでも最も影響が大きいのは、マネジャーがデータの3つの誤謬に陥りやすいことだ。
    能動的データと受動的データの誤謬―規模を拡大中の企業は、ジョブの奥深い複雑さを特色づけるデータ(受動的データ)を重要視し続ける代わりに、業務に関係したデータ(能動的データ)を生成し始め、その見かけ上の客観性と精密さに誘惑されやすい。これにより、企業は片づけるべきジョブより、プロダクトや顧客特性を中心にした組織に変貌してしまう。
    見かけ上の成長の誤謬ー企業が大きな投資をおこなうとき、顧客に売るプロダクトの数を増やしたり、解決するジョブの種類を広げたりして、成長を勢いづけようとしがちだ。これをわれわれは「見かけ上の成長」と呼んでいる。見かけ上の成長は、中核のジョブを丁寧に解決していく状態とは正反対に位置する。
    確証データの誤謬ー既存のビジネスモデルに合うようなデータをマネジャーが生成しようとする。
  • これらの誤謬を意識することが、イノベーションの方向を見失わないための最初のステップである。以降も、つねに警戒し、介入を続ける必要がある。

第9章「ジョブを中心とした組織」のまとめ(pp.328-329)

 

  • 顧客のために解決する最も重要なジョブを理解すれば、それは企業全体を動かすスローガンとなる。持続可能でぶれないイノベーションの”北極星”として、ひとりひとりを共通の目的に整合させることができる。
  • 多くの企業が掲げる広範で抽象的なミッションとは異なり、企業の存在理由であるジョブを十分に考察し表明することには、人を鼓舞する力があり、同時に実用的でもある。
  • ジョブを明確に定義し、そこにフォーカスできる組織には、おもに4つの恩恵がある。
    意思決定の分散化―すべての社員がジョブに沿った的確な意思決定を、自律的かつ発想力豊かに下せるようになる。
    資源の最適化―何がジョブにとって重要かに合わせて資源を配分でき、バランスをとることができる。
    意欲の向上―顧客のジョブを解決することには本質的に、社員を鼓舞する力がある。自分の仕事によって、実際に誰かの人生を進歩させられることがわかるからである。
    適切な測定能力―顧客のジョブを中心とした測定基準を求め、それによって評価しようとする気運が自然に生まれる。
  • 組織が解決しようとしているジョブを正確に表現する方法を見つけ、それを企業文化に深く組み入れることは、簡単にいかないことが多い。だが、実現までには時間がかかっても、それに値するメリットがある。

 

第10章「ジョブ理論のこれから」からポイントを抜粋します。

ジョブは、発見するのにも正しく理解するのにも努力を要する。・・・なかでも、気をつけるべき問題がふたつある。ひとつは、あなたや同僚が片づけるべきジョブを形容詞や副詞で説明しているとしたら、それは有効なジョブではないということ。ジョブを片付けるために顧客が必要としている「体験」を説明している可能性はあるが、このふたつは異なるものだ。・・・気をつけるべき問題のふたつ目は、ジョブには適切な抽象度が必要であるということだ。求めるプロダクトの構造が同種のプロダクト群のなかでしか満たされない場合には、そこに片づけるべきジョブのコンセプトは適用されない。つまり、同種のプロダクトでしか問題を解決できないのなら、それはジョブではないということだ。(p.338)

これまで、イノベーションを生むための考え方というのも種々雑多にありましたが、なかなか汎用的であったり個人的にピンとくるものもなかったのですが、さすがにクリステンセン教授です。分かりやすかったです。またリピートして読みたい部分も多々ありました。それゆえ、これまでの読書ブログのなかでもチャンピオン級の引用になりました。しっかり学んでモノにしたいと思います。

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