著者:西村 淳一 (著), 山内 勇 (著)
| 産業組織論は,市場構造や市場行動を分析し,そこから創出される市場成果が効率的であるかを検証して,より社会的に望ましい企業の戦略や政策制度を導くという現実的かつ政策志向の強い学問である.本書は初めて学ぶ読者に向けて産業組織論における幅広いトピックを紹介・解説して,その知識を生かして諸問題を理解し,自ら考察できるようになることを目指した.2色刷.
【主要目次】産業組織論とは/第I部 ミクロ基礎理論と市場構造/産業分析のための基本概念/市場構造の基礎:完全競争と独占/寡占市場における競争/新規参入/市場の構造,行動,そして成果/第II部 企業戦略/価格差別/イノベーション戦略/製品戦略/広告・流通戦略/企業の境界・組織のガバナンス/企業成長/競争優位のための戦略的行動/第III部 政策制度/規制とその改革/産業政策,競争政策/イノベーション政策 |
これまで大学の授業や中小企業診断士の「経済学」の科目の勉強をしてきましたが、分かりにくい原因が分かった気がしました。それは、通常の授業の分かりにくいというか混乱を招いているのが、視点が企業目線であったり消費者目線であったりするところなのではとこの本を読んで思いました。というのも、産業組織論は常に企業目線であるということが最初に書かれており、その一言がある意味、重要な補助線であることに気づきました。
その前提を置きつつ。需要は消費者、供給は企業という視点をしっかり持って読み進めることで理解が深まりました。
おそらく先生方も分かりやすいと思って、みかんとかりんごの例を出されるのですが、それが消費者目線的な誤解を与えるなどして、考える際の邪魔になっているのではと思ったところでした。
そういう意味では、この本は中小企業診断士の「経済学」の副読本的にも非常に有効で、産業組織論とは言わず、大学の「ミクロ経済学」の教科書としても使えるのではと思いました。
そういう意味でも、今年読んだ中のなかでも気づきの大きかった1冊です。
| 産業組織論では、企業や組織という供給側の経済主体を主に対象として、ある市場構造のもと、限られた経営資源を効率的に配分し、いかにして高い成果を創出していくかを考える学問である。そのうえでもし効率的でなければどのような政策・制度あるいは資源の再配分が必要かを考えていく。(p.3) |
| 産業組織論は市場構造、市場行動、そして市場成果の因果関係を論じる学問である。このような因果関係を明確にしていくため、伝統的なSCPパラダイムという分析枠組みが提案されてきた。ここでSはStructure(市場構造)、CはConduct(市場行動)、PはPerformance(市場成果)を表し、S⇒C⇒Pという単方向の因果関係を想定している。(p.3) |
- 市場構造:企業数、企業集中度、参入障壁、垂直統合度など
- 市場行動:価格・製品差別、設備投資、研究開発、広告、合併・買収、提携、カルテルなど
- 市場成果:売上、利潤率、生産性、品質サービス、製品メニューなど
| <産業組織論の4つの問い> カブラルは産業組織論における4つの問いを簡潔にまとめている。 (1) Is there market power? 市場支配力があるのか? (2) How firms acquire and maintain market power? 企業がどのように市場支配力を獲得し維持するのか? (3) What are the implications of market power? 市場支配力がもたらす含意とは何か? (4) Is there a role for public policy regarding market power? 市場支配力に関して公共政策の役割はあるのだろうか?いずれの問いにおいても市場支配力(マーケットパワー)という用語が含まれており、これが産業組織論における最重要といえるキーワードになっている。市場支配力とは、超過利潤を得る(限界費用を上回る価格設定をする)ことができる能力と解釈できる。(pp.5-6) |
「市場支配力(マーケットパワー)」を元にしたうえの4つの観点を意識して臨むことが重要そうです。
| 需要曲線について、個人の需要曲線と市場全体の需要曲線を区別して考える。(p.16) |
| 供給曲線についても、個別企業の供給曲線と市場全体の供給曲線を区別して考えると分かりやすい。(p.21) |
ここも今まではあまり意識してなかったですが、先生たちが分かりやすくなるという思いで「りんご」や「みかん」といった身近な例で説明しくれるのですが、逆に混乱してしまっている気がしました。全体の中での部分ですが、部分を具体化しすぎて、全体の中での部分の位置づけが曖昧になるという感じでしょうか。
