ウェルビーイングの設計論

ウェルビーイングの設計論-人がよりよく生きるための情報技術

著者:ラファエル A. カルヴォ & ドリアン・ピーターズ

原題が、「POSITIVE COMPUTING」、そしてサブタイトルが「Technology for Wellbeing and Human Potential.」となっています。

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内容紹介

人の「こころ」の領域にまでITが入り込んできた今、人間の潜在能力を高め、よりいきいきとした状態(=ウェルビーイング)を実現するテクノロジーの設計、すなわち<ポジティブ・コンピューティング>のアプローチが求められています。
近年注目されている「マインドフルネス」や「レジリエンス」、「フロー」などもウェルビーイングを育むための要因ですが、ではこういった心理的な要因とテクノロジーを、どう掛け合わせることが出来るでしょうか。
本書では、ウェルビーイングに関する様々な分野の最新の研究成果を基に、この問いを解き明かしていきます。
これからのテクノロジーの在り方や、向き合い方を考えるうえでの基盤となる一冊です。

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人間がよりよく生きるとはどういうことだろうか?
心という数値化できないものを、情報技術はどうやって扱えばよいのだろうか?
本書は、このような問いに答えようとする者に対して、示唆に富んだヒントを与えてくれるだろう。
(「監訳者のことば」より)
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本書に関する情報や正誤表については、以下の出版社サイトをご参照ください。
ウェルビーイングの設計論 人がよりよく生きるための情報技術

内容(「BOOK」データベースより)

人の「こころ」の領域にまでITが入り込んできた今、人間の潜在能力を高め、よりいきいきとした状態を実現するテクノロジーの設計、すなわち“ポジティブ・コンピューティング”のアプローチが求められている。マインドフルネスやレジリエンス、フローはテクノロジーとどう出会うのか―最新の研究成果で解き明かす。

仕事の目標を利益追求から社会的善(social good)へ再設定しようとするテクノロジーの専門家がますます増えてきており、実際に、事業で利益を出す事よりも社会的課題の解決を重視する社会的企業(social enterprise)が台頭してきたのはそうした心情の表れである。(p.12)
技術者の間では社会的善への関心が高まっているが、その背後では、さらに多くの一般の人々が、私たちの感情や生活の質、幸福にデジタル・テクノロジーがどのような影響を与えるのかということに興味を持ち始めている。コンピュータの黎明期には、生産性と効率性がひたすら追い求められたが、そのような価値観は徐々に過去のものとなりつつある。私たちは新たな時代へ突入しようとしており、テクノロジーが個人のウェルビーイングとともに、社会全体の利益にも貢献することを求めている。(p.12)
分野の垣根を越えて見られる、ウェルビーイングを支援する取り組みでは、テクノロジーがより高度な役割を担うようになることは明らかである。(p.13)

ポジティブ・コンピューティング(positive computing )
:心理的ウェルビーイングと人間の潜在力を高めるテクノロジーのデザインおよび開発。

富が国家のウェルビーイングの指標にならないように、テクノロジーの普及そのものが個人や社会全体のウェルビーイングの向上を意味するわけではないのである。(p.14)
もし仮にデジタル・テクノロジーがウェルビーイングの向上に貢献していないとしても、それは単にまだテクノロジーのデザイン・プロセスにおいてウェルビーイングが考慮されていないからにすぎない。このような見落としが起こってしまったのに様々な原因があるが、その一因は、エンジニアやコンピュータ科学者が、昔から「心理的影響」という定量化や価値づけが困難な対象を扱うことを回避してきたということがある。言い換えれば、なぜウェルビーイングが伝統的に見落とされ、意識的にも検討対象から外れてきたかといえば、産業界が人間の複雑な側面に対処しきれなかったためなのだ。(pp.14-15)
幸福やウェルビーイングという問題提起に眉をひそめるような研究者たちは、大別すると次の4つのいずれかの立場を取ることに気が付いた。

  • 第1グループ:ポジティブ論者
    テクノロジーさえ進歩すれば、世界はもっとよくなる
  • 第2グループ:ネガティブ論者、または現代版ラッダイト
    テクノロジーは失業や孤独感、ストレス、鬱などを増加させるため、本質的にネガティブなものである
  • 第3グループ:不可知論者
    テクノロジーがウェルビーイングにポジティブな影響を与えるか、ネガティブな影響を与えるかを判断するのは不可能だと考える。
  • 第4グループ:懐疑論者
    そもそも、ウェルビーイングや幸福、感情といった概念の存在そのものを疑っている

以後、いろいろな観点での論説が続きます。

ヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)領域をベースとしながら、特にテクノロジーと関わる面でのウェルビーイングに関して、様々な観点で論説されているというのが本書の特徴です。

まだまだこれからの分野だと思いますが、この意識を抜きにテクノロジー最優先で進めると、なんでも0/1の世界になってしまいそうでぞっとしてしまいます。

しっかりと読み込むべき価値があり、これを題材にしていろいろと議論するとより深まった理解や新たな問題意識を投げかけるような著作です。

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