ビジネス・ペップトーク-“意識改革”の前に“言葉がけ改革”-

ビジネス・ペップトーク-“意識改革"の前に“言葉がけ改革"-

著者:占部 正尚

ちょっとしたブームになっている「ペップトーク」の書。事例も交えながら分かりやすく書かれています。(Inobe.Shion)

「PEPTALK」の画像検索結果

 

内容紹介
プロスポーツの世界で生まれた究極のショートスピーチ術=ペップトークを用い、組織やビジネスを活性化させる手法を伝授。売上向上や新製品開発などに直結する言葉がけや指示出しなどの手法、シナリオの組み立て方を提示し、即実践できるようにした。

内容(「BOOK」データベースより)
プロスポーツの世界で育まれた「ペップトーク」。究極のショートスピーチでビジネスに活力を与える一冊!

さて、そもそもペップトークとは何なんでしょうか?

 

ペップトークとは、相手のポジティブな力を引き出すショートスピーチで、現在はスポーツ界、教育界、医療界、ビジネス界など、様々な分野から人々が集まり、一般財団法人ペップトーク普及協会が立ち上げられ、日本中を元気にするための普及活動が励んでいます。(p.1)

一般財団法人ペップトーク普及協会のホームページはこちらになります。

著者の占部さんは、こちらの協会の理事をされている方です。

 

こちらのホームページ上に、当書籍に書かれているようなペップトークのポイントも多く掲載されていますので、ご覧いただけるとよくわかると思います。

そちらとの重複もありますが、気になったところ、ピックアップしていきます。

ペップトークは3つのステージに分類されるようです。(p.2)

  1. セルフペップトーク
    自分自身を勇気づけ、大切な場面にポジティブな気持ちで臨めるように
  2. ゴール・ペップトーク
    上司が部下のやる気を引き出し、成果(ゴール)に結びつけるために
  3. ビジョン・ペップトーク
    大勢の社員やお客様を前に、説得力のあるビジョンを示すために

そしてこのペップトークは、新時代のマネジメントを築く起爆剤として、「経営資源」であると言います。

 

新しいものを受け入れたり自ら考えだすための「柔軟な発想」と、社員たちを新しい時代に向けて行動させるための「心に響く言葉がけ」は、単なる経営手法を超え、新たな「経営資源」としても過言ではないでしょう。ペップトークは「柔軟な発想」と「心に響く言葉がけ」の両方を兼ね備えたポジティブなトーク手法であり、まさに新しい時代を勝ち進んでいく企業経営の起爆剤なのです。(p.8)

確かにこれが会社に根付けば、社員の離職率は低減するでしょうし、モチベーションも上がるでしょうし、人的リソースはリッチになること間違いないでしょう。

そして「柔軟な発想」と「心に響く言葉がけ」は、自己肯定感を高める2段階の方向性とされています。(p.13)

第1段階:ポジティブな発想(豊かな発想)
今ある状態を受け入れながら、ポジティブに考えること

第2段階:ポジティブな言葉がけ(心に響く言葉がけ)
自分自身や相手にポジティブな言葉がけをして、意識を高めていくこと

 

これができてくると、部下は「さらに成果を上げていくための具体策を考えよう」「自分の足りない部分いついてアドバイスを受けよう」と前向きに考え、組織全体が活気づき、結果として生産性の高い組織づくりができてくるとのことです。(p.15)

そして、組織でのペップワークは生産性向上の3Sの要素と共通点があると言います。(p.38)

  • 単純化(Simplification)
    長々と説教するのではなく、ショートスピーチとしてまとめる。
  • 専門化(Specialization)
    営業担当者には、短時間で成果が出るような勇気づけの言葉を、総務や人事の担当者には、正確さを期すような穏やかな言葉を、職種や階層別に合わせたトークを考える。
  • 標準化(Standardization)
    職種別や階層別に考えたペップトークをシナリオにまとめることで、社員の誰もが自分に合った発想変換の仕方や言葉がけの内容を勉強し、使えるようにする。

またペップトークのコツとして、「無いものねだり」から「ありたいもの」への取り組みとして次のように書かれています。

 

ペップトークの具体的な言い回しを考える前に、まずは自社や自分について「無いものはない。有ればありがたい」と捉え、次の段階で「有るためには、どうしたらいいのか」を考えていく、こうしたスタンスを導入されることをお勧めします。(p.47)

変換するための3つのステージとして、改めてまとめられています。(p.61)

  1. セルフ・ペップトーク
    自分の最高の応援団は自分自身!自分へ語りかける短い励ましの言葉
  2. ゴール・ペップトーク
    本番を目前にした部下や後輩に対し、最高の力を引き出すために語る背中の一押し
  3. ビジョン・ペップトーク
    聴衆を魅了し、共感と感動を呼び、成果に向けて行動を起こさせるショートスピーチ

色々な捉え方の変換の練習が書かれていますが、これは非常に参考になります。

 

①「捉え方変換」の練習

状況(事実) ネガティブな言葉 ポジティブな言葉
経理部がなかなか経費を認めてくれない ケチだ しっかり管理できている
繁忙期に新しい注文が入ってきている 忙しい 注文が増えてありがたい
部下・後輩が何度も同じことを聞いている。 要領が悪いな 慎重に考えるタイプだな
なかなか決断しようとしない 判断力に欠けるな じっくり考えるタイプだな
業界初となる注文が舞い込んできた 無理だ、無理だ 成功したらトップに立てる
監査員が予想よりも多くの点を指摘してくる 重箱の隅を突いてくるな 細かい点に気を配っている
企画担当者が壮大なプロジェクトを提案した 机上の空論だよ 実現したらすごいな
売上の1%にも満たない少額契約を取った それっぽっちか まずはここからだ
会場の場で、新人が反対意見を述べている 生意気だ 自己主張ができている
いつも上司の前で反省の弁を語っている 弱々しいな 現状分析ができている

②「して欲しい変換」の練習

状況(事実) ネガティブな言葉 ポジティブな言葉
車で訪問先に出かけようとしている 事故るなよ 安全運転で行ってね
難しいプロジェクトに取り組もうとしている 失敗したら、どうする気だ どうしたら成功するのか、一緒に考えよう
部下・後輩が何度も同じことを聞いてくる 何度同じことを言ったらわかるんだ ポイントをしっかり聞いて、メモしてね
お客様に提出する商品の仕上げをしている 傷をつけるなよ 最後は丁寧に仕上げよう
提案書の数値計画の部分を計算している 計算ミスするなよ 慎重に計算しよう
内部監査員として監査業務を実施する 不適合を見逃すなよ 適合させたい個所をしっかり見つけよう
大役を任されて尻込みしている 逃げるな しっかり取り組んで成長しよう
いろいろな意見を聞かされて迷っている 惑わされるな 1つの意見を掘り下げて考えてみよう
待遇や組織の反応に反感を抱いている 不満を言うな どうしたらよい組織になるのか、意見を出そう
同僚が新人に高圧的な態度を取っている 意見を押し付けるな 相手の意見をまず聞こう、一緒に考えてあげよう

③「捉え方変換」と「してほしい変換」の合わせ技

上司に言われたら自分にこう言い変えよう 言い(言われ)がちなフレーズ 自分が言いそうになったら部下にはこう言い変えよう
組織まで丁寧にやろう 手を抜くな →もう少し精度を高めて欲しい
どこまでわかっているか伝えよう そんなこともできないのか →何かわからないことがあったら相談してほしい
間に合うようにやろう まだやってないのか →期限は分かっているのか?〇〇までに完了させよう
自分の力を出し切ろう やる気がないのか →やり遂げたら、成長するぞ
何が勉強になったのか考えよう 同じことを言わせるな →前の失敗から何を学んだ?〇〇に注力しよう
何をしようとしたか考えてみよう なぜそんなことをした →何がしたかったの?〇〇に注意しながら頑張ろう
大丈夫、必ずできる! 心配するな →安心しろ!自信を持とう
目的が何か、再確認しよう 何も分かってないくせに →目的は何か、理解してるのか?〇〇を意識して取り組もう

日本語の特性として、たとえばミスするな、というように「〇〇をするな」という語順になってしまいます。これがよろしくなくて、してはいけないことが先に来るので、結末が分からないままそれをイメージしてしまう。これは「〇〇」を想起させることになり、「ミスしろ」と言っているようなものであると言っています。これはシナリオ作りでは「Yes、But法」にも通じるところで、できるだけポジティブなことで全体を覆うようにしていく必要があるという共通点だと考えてよいでしょう。

そして、第3部ではシナリオのつくり方が書かれており、そのフォーマットとしてのPEPTALKが書かれています。

P Prologue 序章 現在の状況、話のきっかけ
E Example 事例 業界の事例、経験、捉え方変換のきっかけ
P Positive 捉え方変換 状況をポジティブに捉えた考え方
T Teach 教訓 伝えたい思い、してほしい変換のきっかけ
A Action してほしい変換 行動方針、何をして欲しいのかのポイント
L Lead 先導 勇気を与え、決意を促すきっかけ
K KickOff 背中の一押し 相手が一歩を踏み出すための送り出し

ポジティブな思考についてはいろいろな書物でも読みましたが、このペップトークはよく体系化されていて、使いやすくなっているように思います。

スク―でも一般財団法人ペップトーク普及協会の代表理事の岩﨑由純さんの授業があり、ここに書かれていることを中心に話してくれており参考になりました。

そこではセルフトークの例として三三七拍子として、たとえば、
「できる、できる、かならずできる」
「なれる、なれる、かならずなれる」とかは、短く、分かりやすく、肯定的であるセルフトークの典型例だそうで、参考になりました。

(気に入ったら投票をお願いします!)

にほんブログ村 経営ブログへ
にほんブログ村

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください