著者:カルビーお客様相談室…
VOC(Voice Of Customer)がメインとして登場しそうです。それをどう生かすか、どうやって各部門にフィードバックしていくか、そういったノウハウを垣間見たいと思います。そういう積み重ねがイノベーションにつながる第一歩になるのだと考えます。(Inobe.Shion) |
内容紹介 クレーム客の95%がファンに変わる、カルビーのすごい「お客様対応」を初公開!マニュアルやFAQを越える、本当の「お客様対応」とは?2年連続の大規模自主回収など、過去の反省に立って、本当の「お客様本位」「顧客満足」の実現に向けて大きく変わったカルビー。 その象徴が、「お客様相談室」の存在です。 「お客様相談室」といえば、クレームや苦情の処理をする部署だと思われがち。 ・ご指摘への対応は可能な限りスピーディに など……、 お客様の声に耳を傾け続け、企業活動に活かすことで、愚直に、ひとりずつファンを増やしてきたカルビー。 内容(「BOOK」データベースより) |
カルビーに寄せられるお客様の声というのは、年間で3万件以上にのぼります。そのなかには、購入された商品の不具合から、「こういう商品をつくってください」といったご要望まで、実にさまざまなものがあります。そのような声に対して、カルビーはどんなお客様に対しても誠心誠意、丁寧な対応を心がけています。そうすることが、お客様の立場に立つことの実践につながると考えるからです。それは、「カルビーグループ行動規範」のなかのひとつに掲げられている「お客様本位の徹底」という、次の3つのスローガンによって示されています。
この3つのスローガンのもと、お客様一人ひとりの声に耳を傾け、お客様に満足いただく対応だけではなく、お客様の声を分析、検証し、それを社内の関連部署に伝達することで新たな企業活動に活かしていく―これがカルビーお客様相談室の仕事です。(はじめに) |
お客様のなかには商品へのクレーム以外にも、カルビーに対して「何かを伝えたい」というきもちがあるのではないだろうか―。商品の不具合に対するお客様の声だけでなく、もっとたくさんのお客様の声を聞くことで、これからの企業活動に活かすことができるのではないか―。このように考えたことがきっかけで、2006年に商品のパッケージの表現を変更しました。すると、すぐにお客様から反応がありました。・・・パッケージの表現をひと言加えただけで、お客様からのご意見やご要望の件須賀以前の2倍ほどに増えたのです。(pp.20-21) |
どう変えたかということですが、以前は「カルビー株式会社 お客様相談室」と書かれていたフリーダイヤルの表示を、「お客様の声をおきかせください」と変えた・・・ただそれだけのようなんです。
こうした取り組みを通じて実感したのは、「お客様はカルビーに聞いてみたいことや伝えたいことをたくさんお持ちだったんだな」ということでした。(pp.21-22) |
カルビーでは、お客様からの「クレーム」を、「ご指摘」と呼ぶようにしています。また、そのご指摘に対して行う仕事を、「処理」ではなく「対応」と呼んでいます。(p.23) |
これは素晴らしい、ちょっとした呼び方で印象も何もかも変わってきます。こういったまなざし(視点)の変化が大きな効果を生んでいくのだと思います。
これは単に言葉遣いだけの問題ではありません。「クレーム処理」と「ご指摘対応」とでは、その根底にある考え方や意識に、天と地ほどの違いがあります。
苦情処理の部署という位置づけのお客様相談室では、「損失金額を防ぐ」という考え方が中心になります。その場合、カルビーの商品を買い、そして何らかの不具合を見つけ、気分を害してお電話を下さるお客様に対して、何とかカルビーの商品を買っていただくための活動に終始することになるでしょう。・・・現在は、お客様への対応一つで、お電話をくださった方だけではなく、その家族や友人など周囲の人にまで会社の評判が伝わり、それが結果として売上にも影響するという傾向が無視できない時代になったということです。そんな時代を勝ち抜くために、カルビー離れにつながるマイナス要因を防ぐだけでなく、プラスになる要素を増やすことも、お客様相談室は考えなければなりません。その一環としてカルビーが最初に取り組んだこと、それが「お客様の声をおきかせください」という、お客様とのコミュニケーションを深める試みだったのです。(pp.24-26) |
カルビーでは、2年続けて大規模な商品の回収となる事件が起こりました。それを踏まえて、「自主回収における基本方針」を策定したとのこと。(p.29)
カルビーグループ自主回収にあたっての基本方針
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また、カルビーはカルビーグループの企業理念(グループビジョン)において、ステークホルダーの順序付けをしているとのこと。以前は並列だったようですが、たしかにこうすることで対応の優先順位も明確になります。(p.33)
顧客・取引先から、次に従業員とその家族から、そしてコミュニティから、最後に株主から尊敬され、称賛され、そして愛される会社になる」 |
ビジネスモデルのなかでもBtoBtoCなので、最終消費者にもカルビーというものが見えているからこそできる設定でしょう。先日、話を聞いた日本レーザーBtoBなので、最終消費者が日本レーザーのツールや部品が最終製品に使われていることが分からないということもあるのでしょう、従業員を何よりも大切にするとおっしゃっています。このあたりはビジネス形態でも変わってくるでしょうし、正解というのは難しいかもしれません。
カルビーのお客様相談室のサイトが下記になります。https://www.calbee.co.jp/soudanshitsu/torikumi/
このあとの本文でも書かれているような各種指針、体制などが書かれています。やはり伸びている会社はこういったプライスレスな価値を生み出す部門にお金をしっかりと掛けているということがよくわかります。コストセンターではないんですよね。それについて経営者が分かっているか、分かっていないか、それは非常に大きなポイントだと思います。言うだけではなくて、きちんと体制も敷かなければ、砂上の楼閣でしかありません。
改めて、いろいろと気づかされ、勉強になりました。