著者:板越 正彦…
シーンを設定して、上司と部下のやり取りをシミュレーションしながら、解説してくれています。それが、あまりにスムーズすぎて不自然なところも否めませんが、分かりやすい構成になっています。(Inobe.Shion) |
内容紹介 世界企業「インテル」で、クビ寸前から世界トップ0.5%に選抜された著者が、大逆転の原動力となった、部下を動かす『すごいひと言(キラーフレーズ)』を初公開!『すごいひと言』効果で、成果を上げる部下が続出し、著者の評価も劇的にアップ。最終的にはインテル株式会社(日本法人)の執行役員にまでのぼりつめた。本書はこの『すごいひと言』を入り口に、上司が部下との「質問&ヒアリング」を通じてやる気のスイッチを入れるまでのプロセスを、ていねいに解説していく。 やる気のスイッチを入れるために必要なのが、部下が充実感を得るツボともいうべき、「ワクワク(自己実現)ポイント」を知ること。その「ワクワクポイント」と、目の前の仕事でできる「貢献」を上手につなげれば、部下は自分で考えて動き出す。そのサイクルに入れば、上司は定期的に対話を重ね、部下の「ワクワク」が持続しているかを確認すればいいだけ。 そこで本書では、部下の成長度合いや悩みのタイプから33の「シーン(場面)」を設定。「シーン」に応じた「声のかけ方」と、部下に寄り添う「話の聞き方」、そして、ワクワクポイントを刺激するキラーフレーズとしての『すごいひと言』の使い方を解説する。 著者はインテル在職中にこの手法で高いチーム業績を上げ、全世界の同社社員のうちトップ0.5%だけが参加する「リーダーシップサミット」に2回連続で選抜。インテル日本法人の執行役員を退任しビジネスコーチとして独立した以降も、 こうした著者独自のメソッドは、インテル時代に学び、現在も応用を続けている「最新コーチング」。本書は、「最新コーチング」を下敷きにした、まったく新しい部下育成本となる。 著者について 1960年生まれ。東京大学文学部心理学科卒業。在学中に某テレビ局への就職を決めたが、健康診断当日に寝坊し内定取消の憂き目に。 インテルでは順調に業績を上げ本部長に昇格。 インテル在職中の2012年にビジネスコーチ社でコーチングの資格を取得。 |
上の説明にもあるのですが、「ワクワク(自己実現)ポイント」を知って、そこを刺激するようにということが肝だということになります。この言葉は著者の造語ですが、うまいこと言っているなぁと思いました。
本書の<はじめに>で、「あること」について書きました。
では、「あること」とは何でしょう?その「あること」とは、部下がやる気になる「ワクワクエンジン」を探し、会社の目標とすり合わせることです。(p.20) |
さて、そのワクワクエンジンとは??
ワクワクエンジンとは、何かワクワクしたときにかかわる心のエンジンです。やる気やモチベーションの源であり、このエンジンがかかったときに人は真の力を発揮します。私たちは、つい、会社のノルマや上司の期待を部下に押し付けてしまいがちです。それでは部下は自分で動き出さないし、常に管理・監視を続けなくてはなりません。モチベーションも上がらないし、優秀な人材を採用しても急に辞めてしまうでしょう。その原因は、ワクワクエンジンがまだかかっていないからです。(pp.20-21) |
このワクワクエンジンは、対部下だけでなく対自分にも使えるテクニックですね。自分のワクワクエンジンを把握して、何かすることをそのワクワクエンジンに結びつけることで、先延ばし行動もきちんとこなしていくようになると思いました。
部下のワクワクポイントがわかったら、それと仕事上の目標をムリのないようにつなげるように努力をしました。すりと、部下のワクワクしていることを確認する「ひと言」をかけるだけで、部下は信じられないくらい気持ちよく動いてくれるようになりました。・・・褒めたり怒ったり、おだてたりするのではなく、ワクワクポイントに沿って適宜「ひと言」をかけるだけで、部下自身が常に納得し、やりがいを持って自分の仕事にむきあえるようになったからでしょう。(p.25) |
ワクワクエンジンがかかってしまえば、部下は上司が何もしなくても勝手にうごいてくれるからです。・・・ちなみに、部下をワクワクさせるということは、甘えさせるという意味ではありません。部下が好きな仕事、興味を持てる分野だけをやらせるなどということではなく、嫌いな仕事や苦手な分野でもワクワクする気持ちをもって取り組めるようになるのです。(p.27) |
シーン | ひと言 |
心を開いてリラックスさせる | 最近、一番楽しかったことは何? |
価値観やポリシーを知る | やりたくないことは何だろう? |
どんなことにワクワクするのかを探る | これまでで一番、一所懸命になったことはどんなこと? |
ワクワクポイントを深堀する | いちばん大事にしていることは何? |
ポジティブな未来をイメージしてもらう | 仕事を通じて実現したいのはどんなこと? |
「なりたい自分」になるために、今何をなすべきか考えさせる | 3年後の自分が今の自分を見て、どう感じると思う? |
隠している本音を引き出す | 不安に思うこととかあるかな? |
ワクワクできない「本当の原因」に気づかせる | もし、時間が無限にあったら、何をしたい? |
ワクワクポイントと仕事上の貢献を結び付ける | 君が貢献できるのは、どんなこと? |
ワクワク感と数値目標をつながる | 目標を達成するために、いいアイデアはないかな? |
具体的な行動につなげる | 何から始めようか |
ワクワクする気持ちを持続させる | いつまでにできる? |
トラブルの原因を自分で考えさせる | 自分で気づいたことはある? |
失敗の中でも「できたこと」に目を向けさせる | 上手くいったことは何? |
部下のチャレンジを後押しする | 悩んでいることが3秒以上あったら何でも相談してほしい |
現状に安住させず、もう一歩先を目指してもらう | 君にとっての成長って何だろう? |
言い訳で自分を守る部下の視野を広げる | もし君が上司だったら、今の自分を見てどう思う? |
部下が反発してくる「本当の原因」を探る | その仕事にワクワクしているかな? |
悪い習慣を断ち切る | 同じミスを繰り返さないためには、どうすればいいと思う? |
やる気を取り戻すためのきっかけをつくる | 今のやる気は何%くらいだろう? |
得意分野に時間をかけすぎている部下へ | この仕事のもともとの目的は何だろう? |
うまくいったことを確認してもっとワクワクさせる | 何がうまくいったの? |
気づいていない課題に向き合わせる | どうすればできるようになるんだろう? |
失敗した部下を叱る代わりにかける | もし、スタート地点に戻れるとしたらどうする? |
他責施行で伸び悩む部下に | 喜びをもっと味わうために、まず自分でできることはあるかな? |
部下の目標をもう一段上げる | 売上を今の2倍にするには、どんな方法があるかな? |
毎月の成績に一喜一憂する部下に | 常に数カ月先を見てみようよ |
現状維持を望む部下にスイッチを入れる | 本当に、変わらないままでいいのかな |
成果を上げても自己肯定感が上がらない部下へ | この経験から学べることは何? |
意見が通らず感情的になっている部下へ | 自分の意見を通すためには、何をすればいいと思う? |
同僚との競争で頭がいっぱいの部下の目線を上げさせる | もっと高い目標にするのはどうだろう |
新人の指導を嫌がる部下を諭す | 自分が新人の時に先輩にどうしてほしかったのかな |
他部署との軋轢が絶えない部下に自問自答を促す | 今やっていることは、本当に自分にとってプラスなのかな? |
このようにシーン別に、部下にかける「ひと言」が書かれています。部下の「ワクワクポイント」を知るための質問から、それを刺激していくための「ひと言」が書かれています。
違うシーンで、違う「ひと言」を使ってもいいと思います。こうやって眺めているだけでも、部下との対話の際の、話を展開させるためのTIPSとして使えそうで重宝します。
また上にも書きましたが、対部下用ではありますが、対自分用としても効果を発揮しそうです。
たとえば、私は先日転職しましたが、その際の自己分析をする際に自分に問いただしたような質問もこの中にたくさんあります。
さて、もうひとつ。部下のワクワクエンジンのチェックポイントとして次のことが挙げられていますので、この辺りも確認されるとよいかと思います。(pp.170-171)
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全体的に非常に読みやすく、上に書いた「シーン」→「ひと言」もそれぞれ詳しく描かれています。少し予定調和的なオチになっているところが連続しますので、つらいところもありますが、そこは致し方ないと割り切って、「事例→学ぶべきところ」という流れを踏んでいっていただきたいと思います。