なぜあなたの研究は進まないのか?
著者:佐藤 雅昭
内容紹介 発行累計3万部を突破したロングセラーHow Toシリーズの著者が送る渾身の新シリーズ!東京大学大学院医学系研究科免疫細胞治療学講座特任教授 垣見和宏氏推薦! 「研究が進まない理由は,君のせいではない。こういう指導者に巡り合わなかったからです。研究で迷える大学院生や若手研究者諸君,まだ間に合うぞ! 本書を一読して研究を立て直せ! 」 ―なぜ自分の研究は進まないのか,どうすれば先の見えないトンネルを抜け出しゴールにたどり着けるのか 多くの若手医師・研究者の研究,学会発表,論文執筆を指導してきた著者が,その経験から見えてきた「研究が進まない理由」を40のQuestionにまとめ,珠玉のメッセージと方法論だけはない独自の視点で解決します。 目次の40のQuestionを是非ご覧ください! あなたの研究が進まない理由がきっと見つかります。 |
★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] 仕事のせいにして、進んでないんですよね。どうしたら進ませることができるのでしょうか。
[目的・質問] 立ち止まってしまう要因を認識する。
[分類] 490.7:研究法.指導法.医学教育, 医学教育
ここ数か月、確かに仕事のほうへ比重をかけなければならなかったのですが、研究のほうでの行き詰まり感が大きくなかなか進めていませんでした。
そんな私に問うべき40のQuestionがこの本には書かれています。研究が進まないのには、進まないなりの理由、pitfall(落し穴)があると筆者は言います。その落し穴に対する解決策を見出していくことで、暗闇から抜け出せるはずだと。
■なぜあなたの研究は進まないのか?
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特に私が答えに窮したところの筆者からのメッセージを書き抜いていきたいと思います。
1. 何のために研究しているか,明確な答えがあるか?
研究という大仕事には、モチベーションが必要だ。研究が、自分の今と将来にどんな意味があるのかを考えてみよう。 |
何のために研究しているのか・・・もともとは会社のデータを使って、新しい考え方を導入し、企業の発展に寄与するということで始めた研究でした。しかしいろいろ思うところもあったり、タイミングよく優遇条件のある制度が使えたりということもあって、まもなく転職します。
修士在学中にも自分の中で変化がありました。ちょうど社外での取引先さんとも幅広く(一部ではさらに深く)お付き合いする機会が増えたこと、また大学院で知りあった友人の影響が大きいです。
多くの人と関わる中で、今の自分の幅を広げ、奥行きも深くなりたいということと、さらには自分の知らない自分「未見の我」を発見したいという欲求がどんどん大きくなっていきました。
というようなことから転職という流れになっていくわけなのです。ある意味、大学院生活を通して、人生の目的、目指すところについては軌道修正はできたのですが、「何のために研究するのか?」というところについては、見直さなければならなくなりました。
研究テーマは引き続き、「データマイニング」で”データの中から有用な情報を導き出し、ビジネス現場で活かせるアルゴリズムを作り出す゛、というのはブレていないのですが、志は弱くなっているのは確かです。次の企業でも、データドリブンということはキーワードになってくるのですが、データマイニングを何かしら新しい形に昇華して活用していくことになりそうです。
テーマを少し新しい仕事寄りに変えていくとしても、現状の研究についてはやりつくし、次に結び付けていきたいと思います。
4.目の前の疑問やテーマにすぐに飛びついていないか? 5.遠くの景色を見ているか? 重箱の隅をつついていないか、よく考えて研究テーマを選ぼう。その疑問には、貴重な時間と労力を費やして答える価値が本当にあるのか? 「研究のための研究」に終わらないために、その研究の成果がどう次につながるのかという長期的な視点、夢、big picture を「本気で」意識しよう。 |
「長期的な視点、夢、big picture」についてはすっかり忘れていました。取り戻さなければ・・・。
7. 頭でっかちになっていないか?
論文を読みすぎて、つまらない評論家にならないように気を付けよう。大胆な発想でエッジの効いた研究を目指そう。 |
「長期的な視点、夢、big picture」を持っていさえすれば、そこには陥らないでしょう。何より、「長期的な視点、夢、big picture」を持っているかに尽きますね。
ちなみに論文・・・しっかりと管理しておきたいところ。それには、下記のサイトで紹介されているような文献管理ソフトを使うとよいであろう。
9. 「仮説」と「結果の予想」の違いが答えられるか?
「仮説」とは何かというと、こうした具体的な分析計画の大元になっている概念的なもので、そのように仮定すれば現象がうまく説明できるようなものです。そして研究者は、具体的な実験や分析をすることによって仮説を支持し、究極的には証明しようとするのです。逆に言えば、仮説を立てて立証するような研究は大抵、すでに起こっている現象があり、それを説明するための研究ということになります。 一方、まだ起こっていない現象を起こすために、ある技術や手法を確立しようという研究においては、仮説を立てることより「研究の目的」を明確にすることがスタート地点になると思います。 「仮説」と「結果の予想」を区別する癖をつけよう。研究の方向付けに効いてくる。 |
ここは勘違いしやすいですね。確かに概念としての「仮説」を立証するための「プロセス~結果」であり、「結果の予想」は仮説ではなく、この背景があることを意識しておかないといけないでしょう。
12. モデルになる研究論文を見つけられたか?
モデル論文を選ぶポイントはいくつかありますが、あえて挙げれば以下の通りです。 モデル論文は、研究や論文執筆における最高の教科書。2~3本を常に手元に置いておこう。ただし、すぐに自力で同レベルの研究ができるわけではない。勘違いしないように。 |
確かに、ベンチマーク、マイルストーンとして、先人のお手本を利用するということもできるんですね。これを意識していれば、論文の質も否応なく上がってくるでしょう。
15. パイロットスタディはデザインできているか?
パイロットスタディはどのようにデザインすればよいのか?もちろん消すバイケースであり、一般化するのは非常に難しいのですが、ポイントは以下の通りです。 ①実施可能な範囲で多くの条件に振ってみる パイロットスタディ(予備実験)は影の主役。研究では時間と労力の多くがここに費やされ、どこまで詰められるかで、最終的な研究の質が決まる。しかし、予備実験の苦労は論文には出てこない。 |
後でも出てきますが、パイロット・スタディ→論文の骨格作りについては、早く作っておくにこしたことはないですね。勉強になりますね。
17. コントロールの重要性に気が付いているか?
研究におけるコントロールの重要性は、強調してもしすぎることはない。適切なコントロールがないために、多くの無駄や悲劇、誤った解釈が生まれる。まさに研究の生命線である。 |
これは、論文だけでなくビジネスの世界でも重要なところです。
19. 研究で困難に直面し,辛い思いをするのは無駄ではないと知っているか?
研究で直面する困難と精神的な辛さは、決して無駄ではない。この経験を「修行」とし、「糧」として大きく成長することを考えよう。 |
修羅場・・・ですね。
21. 直感を磨いているか?
どのように直感を磨けばいいのか ― まず自分としっかり向き合う時間を作ること。瞑想で心を空っぽにしてもいいですし、自然の中でたとえば森林浴をしながら深呼吸をして心を鎮める、少しぬるめの風呂にゆっくり入る(明かりを暗くするのがいいでしょう)、あるいは軽い運動でもいいでしょう。一生懸命やっている研究(やその他の仕事)と自分をいったん切り離し、オフィスにいれば怒涛のように流れ込んでくる情報をシャットアウトして、脳をいったん空っぽな状態にする。これは自分と向き合うためにとても有効な行為ですし、精神衛生の管理や、肉体的な健康を保つ意味でも非常によいことだと思います。そして中でも、「しっかり睡眠をとる」ことは、直感を最大限に発揮させるうえできわめて重要だと感じています。 研究に携わるあなたは、これからの人生をどのように設計していくかについても、日々考え悩んでいるでしょう。私のこれまでの経験上、研究に限らず、人生のターニングポイントでも直感はきわめて重要な役割を果たします。理屈なんかは後付けでいいので、ぜひ自分がそう感じる、そう生きていきたいと心の底から思える選択をしてください。 研究は理屈だけではない! |
22. よく眠っているか?
直感が最も鋭く働くのは、頭と体をしっかり休ませた後だと実感しています。私も、重要かつ創造的な力が必要な物事について、いい閃きをほとんど眠ったあとに湧いてきます。それはあたかも、眠っている間に、もう一人の自分がやってくれている、想像力の泉や井戸を掘り起こしてくれているような不思議な感覚で、本当にアイディアがどこからともなく「湧いてくる」感じです。 「寝ている間に想像力を湧き立たせる」ためには、コツがあると感じています。それは、寝る前に自分が直面している困難、解決したい問題を考えることです。それで眠れなくなってしまうといけませんが、体が疲れていればおそらく自然と眠ってしまうはずです。そして朝、目覚めたときには問題解決の糸口が頭に浮かんできます。何もせずに自然に浮かんでくることもあります。これは完全に、寝ている間にもう一人の自分が問題解決してくれたパターンです。また閃いてもすぐに作業に取り掛かれない場合は、メモに残しておくことが重要です。そうしないと、せっかく思いついたアイディアもすぐに忘れてしまうかもしれません。 睡眠の重要性を認識し、睡眠によって活動する大脳辺縁系から生じる朝の閃きを大切にしよう。睡眠時間を削らなければならないと思うなら、その原因から見直そう。 |
23. 身体をいたわっているか?
心身の健康を保つことができなければ、研究はままなりません。当り前じゃないか、と言われそうですが、研究生活中に体調を崩すリスクは高いのです。 【研究で体調を崩しやすい理由】
研究、そして人生における体調管理の重要性を認識しよう。 |
24.一歩前に進んでいるか?
研究で行き詰ったときに不安になるのは、自分が全然前に進めていないという感覚ではないでしょうか。散歩や部屋の片づけでは、その時の気分は落ち着いても本質的な解決になりません。そこで次にお勧めするのが、行動を伴い、かつ研究も前に進むような行為をすることです。 【行動も伴い研究も前に進む行為の例】
この「一歩前に進もうとする意志」は、研究に限らず人生のいろいろな局面で非常に重要です。やらなければならないこと全体を見ていると、自分のできることが相対的にとても小さく思えて、気が遠くなります。そうではなく、まず目の前にあって集中できることを探し、そこに時間と労力を注ぎ込む。そして短時間であってもいいから、とにかく今の立ち位置より前に進む、これが大事です。これを繰り返していると、最初は途方もない道のりに思えていた研究や論文がかなりできてきていることに、ある日気が付くのです。 人は一度に2つのことを考えることはできない。今すぐ行動せよ。できれば研究を少しでも前に進める行動を。 |
25. 今できることで悩んでいるか?
今、自力で解決できない問題は、悩んでも仕方がない。とりあえず、頭の片隅にふわふわさせておこう。そして自分の力で解決できる問題、自分の足で踏みだせる一歩に集中しよう。 |
28. 今やっている研究の意義と仮説を1分で説明できるか?
研究で手詰まりを感じても、あなたの研究の根本、つまり意義と仮説に立ち返り、そこで研究の big picture を見ることができれば、あなたが抱えている問題の現在地を正しく理解することができ、次に進む重要な手がかりを与えてくれることでしょう。 研究でつまずいたら、そもそもその研究をなぜやっているのか、やってどうするのか。仮説は何だったのかと自問しよう。研究の軸と全体像が見えれば、抱えている問題の相対的位置関係がわかるはず。 |
いつもこれは意識していないと、びしっと一本の筋の通った論文としては難しくなるかもしれませんので、このあたりはしっかり事前に抑えておかないといけませんね。
30. 「常識」にとらわれすぎていないか?
「常識」にとらわれてチャンスを逃すな。「常識」は日々変化し続けている。結果が予想と違うときこそ、「常識」を覆すチャンス到来だ。よく見て、よく考えて、新たな―本当の闘いに挑もう。あなたにもいろいろなチャンスがあるはずだ。 |
33. 論文の形を作ってみたか?
メインのデータが出たら、あるいはパイロットスタディレベルでもメインのデータの目途がついたら、論文にした時のストーリーがどうなるか、Power Point で「Figureの紙芝居」を作って考えてみよう。紙芝居の穴を埋めることが、そのまま研究プランとなる。 |
34.実験や解析の部分さえ終われば、すぐに論文になると思っていないか?
論文を書くのは大変な作業で時間もかかる。実験・解析を終えたらすぐに書き上げられるなどというのは幻想。最後に泣きをみないように、実験・解析をしながら一刻も早く論文作成作業に入って、見通しを立てながら進めよう。 |
35.To do リストに優先順位をつけているか?
やるべきことを整理し優先順位をつけよう。心身を充実させて、「今やるべきこと」「今日1日」に集中しよう。この繰り返しで道は開ける! |
書き出すと、「今日のコミットメント」ということですから、より意識でですね。
36. 主任研究者(PI)として big picture を描けているか?
【研究の指導者が最初に考えなければならないこと】
指導的立場に立ったからには大きな絵を描き、その中で後進に対する責任を全うしよう |
40. 人一倍勉強しているか?
指導的立場になったからこそ、もっと勉強しよう。現状に甘んじているようではいけない。飽くなき探求心と継続的なインプットこそ、研究を続けていくための原動力になる。 |
自分が無知であることは十分に認識しているので、これは大丈夫なのですが、どう効率的に知らないことを吸収していき、自分の血や肉としていくか、そこはしっかりと意識して進めていかないといけません。要注意ポイントです。