アメリカの大学生が学んでいる「伝え方」の教科書

アメリカの大学生が学んでいる「伝え方」の教科書

アメリカの大学生が学んでいる「伝え方」の教科書
著者スティーブンE・ルーカス

内容紹介

【大学生協週間ランキング・ビジネス書部門、2週連続1位! 】
ハーバードでも採用される伝え方の教科書

●ハーバード大学をはじめとする1000校以上のアメリカの大学で
20年以上使い続けられているアメリカでもっとも定評のある教科書を初翻訳

なぜ日本人は話すのが下手なのか、なぜテクニックを学んでもうまくいかないのか。それは、もう、子供のころから教えられていることが違うので、根本のところから違うのです。
「説得したいならこういう型」「アイデアに共感してほしいならこういう型」など、様々な型を自分のものにしていたり、また、そもそも「相手ありき」で伝えることを考えているので、話の内容も豊かになっていきます。

本書では、「伝え方」の基本エッセンスがしっかりつまった教科書として、自分の伝え方を根本的なところから劇的に変える「教科書」としてノウハウを紹介します。

内容(「BOOK」データベースより)
「きちんと考えを伝えること」は人生最大の武器になる―プレゼン、自分の意見に自信が持てる!ハーバード大学、カリフォルニア大学など1300校以上の大学で20年以上使われている名著!

★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] 「伝え方」・・・まだまだ学ぶことがあると思いまして。
[目的・質問] 「伝え方」・・・学びます。
[分類] 809.4:演説法:朗読,式辞,あいさつ,スピーチ,司会

 

何とこの本、アメリカでは1983年の初版で、現在12版とのこと。そんな本が、これまで訳されてなかったんですね。

まえがきのところで、監訳者の狩野さんがおっしゃています。

日本語の文化は「聞き手責任」、一方、英語に代表される文化は「話し手責任」であり逆である。

これって肝な気がします。読み進める前に、これを意識して読むのとそうでないのとでは、理解度にかなりの差が出てくるような気がします。良い導入だと感じました。さぁ、読んでいきます。

 

パブリック・スピーキング―皆さんよりなじみのある呼び方は「プレゼン」でしょうか―は古来、重要なコミュニケーション手段として使われてきました。「何かについて判断を下しても」それを「きちんと説明できない人は、何も考えたことがないも同然だ」と言ったのは古代ギリシャの政治家ペリクレスですが、これ今なお真理と言えます。(p.13)

そこまで言うんですね・・・・でも、それが「話し手責任」なんでしょう。

 

大勢の人の前で話すときは、特に次の3点に気をつけなければなりません。

  1. 構成を緻密にする:制限時間内に聞き手が理解できるようとにかく「わかりやすい」内容にする
  2. 効果的な言葉を使う:俗語、業界用語、文法的な間違いはNG
  3. 伝え方を工夫する:「とか」「えー」などの言葉は避け、背筋を伸ばして大きな声で話す

研究と練習を重ねれば、あなたもこの3つをマスターできます。そして、普段の会話で使っているスキルをプレゼン用にパワーアップすることもできるのです。(p.18)

準備は何よりも大切ですね。「研究と練習を重ねる」・・そうです。急にうまくなるわけではないんです。ただ、よく論文発表なので、下書きしてそれを読んで・・・おそらく時間内に読む練習をしてきているんでしょうけど、すごく違和感を感じてますが、「伝える」という本質が抜けてしまっている気がしますね。

 

プレゼンのテーマが決まったら、まず、「大まかな目的」を決めなければなりません。大まかな目的はたいてい、「情報を伝える」か「説得する」のどちらかですが、両方が目的になることもあります。大まかな目的が「情報を伝える」の場合、目指すべきは情報をわかりやすく、正確に、そしておもしろく伝えることです。一方、「説得する」が大まかな目的の場合は、聞き手の態度や行動パターンを変えたり、アクションを起こしてもらうことが目的になります。(p.30)

この目的違いで、トークはもちろん、プレゼン資料のほうも変わってきますから、意識して設計し始めないと目的から外れた仕上がりになってしまいます。そのために、絶対に行きたい「ゴール」を決めなさいと言っています。(pp.31-41)

 

▼ゴールの書き方のコツ

  1. 「・・・する」という表現で書く。キーワード、タイトル的なものはNG
  2. 「誰に」話すのかが明確になっているか
  3. 質問形にしない
  4. 言葉遣いは具体的に
  5. ゴールは一つに絞る
  6. あいまいにならないように

▼ゴールがOKかどうか、チェックするための質問

  1. ゴールはプレゼンの要旨に合っているか
  2. 時間内にゴールを達成できるか
  3. ゴールは聴衆に合っているか
  4. 聴衆にとって瑣末すぎないか
  5. 聴衆にとって専門的すぎないか
ゴールは「話し手がプレゼンで達成したいこと」ですが、サマリー・センテンスは、プレゼンの内容を一文でまとめたものです。プレゼン準備中に、「プレゼンでは絶対にこれを話さなければならない」ということを思い出させてくれる、要でもあります。

先日、私も30分で口頭試問へ対応した修士論文をポスター発表で3分にまとめ直したのですが、大変でした。サマリー・センテンスは常に意識しながら作りましたが苦労しました。

 

▼チェックリスト【サマリー・センテンス】(p.48)

  1. 一文になっているか
  2. 質問になっていないか
  3. あいまいな言葉を使っていないか
  4. 論点をわかりやすく要約しているか
  5. 制限時間内にカバーし切れる内容になっているか
  6. 聴衆に合っているか
  7. 専門家ではない聴衆にふさわしいものか
プレゼンをするときは、どんな場合も聞き手目線で考えるようにしてください。準備を始める前に、聞き手はどんな人でどんなことに関心があるのか、プレゼンのテーマについてどれだけ知識を持っているのか、自分(話し手)の見解についてどう思っているのか、などを考えます。(p.51)

駄目ですね・・・自分が話すときも聞いている人は聞いてくれているという前提で考えてしまっていますね。そうではないんですよね。実際自分が聞き手の時は自分の必要なことしか聞いていないのに、話し手として考えるときは都合の良いように考えていますね。ちょうどそのことが述べられています。

 

注意して聞いているときでさえ、人は、話し手の意図とは違う受け止め方をします。話し手が話した内容は、聞き手のフィルター(聞き手の知識や価値観などの総合的な枠組み)を通ります。つまり、人は、話し手が話した通りの内容ではなく、自分が「聞きたい」と思ったことしか聞かないし、「聞きたい」「分かる」と思った内容にしか反応しないのです。(p.52)

なぜそうなるかと言うと・・・

 

自分にとって意味のあることを聞きたい。これが人間の心理です。人は利己的で、自分の価値観、信念、幸福に関わりそうな内容に何よりも反応します。プレゼンを聞くとき、人の頭になるのは、「この話が私にどう関係あるわけ?」という問いです。つまり、話し手として押さえておかなければならないポイントは2つです。

  1. 聞き手は、自分の知識や信念にもとづいて話を聞き、判断するということ
  2. 話の内容は聞き手に関連付けなければいけないということ

聞き手に、「これは自分に関係のある話だ、ちゃんと聞かなければ」と思わせるのです。(p.52)

話し手は、聞き手にどんな知識、信条、関心があるのか、ということをある程度把握しておく必要があります。社会運動家のソール・アリンスキーは「人は、自分の経験という枠を通して物事を理解する」と言っていますが、人間がそういう生き物である以上、人とコミュニケーションするためには「彼らの経験に入り込まなくてはならない」のです。(p.53)

聞き手の背景を考えるポイントとして3点挙げられています。

 

プレゼンの内容に関して、聞き手にはどんな傾向があるのでしょうか。(pp.60-61)

  1. 関心
    聞き手の関心は前もって調べ、それに応じてプレゼンの内容を調整します。聞き手の関心が薄そうなテーマについて話す場合は、相手を引き込むためのテクニックが必要になります。
  2. 知識
    聞き手がプレゼンのテーマについてどれだけ知っているか、という問題は、プレゼンで何をどこまで話すか、ということに大きくかかわってきます。聞き手にあまり知識がないようなら、基礎的な話をしなければなりませんし、逆にそこそこ知識があるのなら、より専門的で細かい話となります。
  3. 立場
    プレゼンのテーマに対して聞き手はどう思っているのか、という点は、話す内容を決める際に非常に重要なポイントになります。

この3点はチェックしやすいポイントです。しっかりチェックしたいです。

プレゼンの主要な論点のことを「メインポイント」と呼びますが、これはプレゼン全体の核となる部分です。メインポイントは注意深く選び、的確な言葉で表現した上で、戦略的な「型」に落とし込んでいきます。(p.72)

例としてこんなふうに書かれています。

・ゴール
聴衆に、催眠術の主な用途を伝える
・サマリー・センテンス
今日の催眠術の主な3つの用途は、手術中の痛みの抑制、
禁煙のサポート、そして、成績向上のサポートである
・メインポイント
Ⅰ 催眠術は手術の際に、麻酔の補助役として使われている
Ⅱ 催眠術は禁煙のサポートとして使われている
Ⅲ 催眠術は学生の成績向上のサポートとして使われている

上のような構成で、「ゴール」「サマリー・センテンス」「メインポイント」を設計していきます。

メインポイントの組み立て方として、5つの型が挙げられています。

▼メインポイントの組み立て方(pp.76-83)

  1. 時系列型:時系列に示す
  2. 一定方向型:上から下、内側から外側、東から西など
  3. 因果関係型:「原因」と「結果」
  4. 問題解決型「問題の存在とその深刻さ」と「実行可能な解決策」
  5. サブテーマ型:伝えたい要素一つひとつ
▼チェックリスト【メインポイント】(p.89)

  1. 本論には2~5個のメインポイントが含まれているか
  2. メインポイントは、時系列型/一定方向型/因果関係型/問題解決型/サブテーマ型のいずれかにしたがって組み立てられているか
  3. 各メインポイントは、はっきりと分けられているか
  4. 全てのメインポイントに、できる限り同じ言い回しを使っているか
  5. 各メインポイントにかける時間は、大まかにバランスがとれているか
  6. 各メインポイントはしっかりとした、信頼できる根拠がサポートされているか
  7. 1つのメインポイントから別のメインポイントに移るときに「ナビゲーション・フレーズ」を使っているか

ナビゲーション・フレーズとは、効果的なつなぎ文句のこと。ナビゲーション・フレーズには、移行フレーズ、プレビュー(予告)、ラップアップ(要約)、サインポストの4つが挙げられます。

 

▼チェックリスト【プレゼンの導入部分】(p.108)

  1. 少なくとも次の一つを使って、聞き手を引きつけようとしているか
    1) トピックと聞き手を関連付ける
    2) トピックの重要性を伝える
    3) 聞き手を驚かせる
    4) 聞き手の好奇心を刺激する
    5) 聞き手に問いかける
    6) 引用から始める
    7) ストーリーを語る
  2. トピックを聞き手に関連付けているか
  3. トピックを明確に示しているか
  4. 「この人は、この内容について話す資格がある」と聞き手は分かっているか
  5. 議論を呼びそうな内容の場合、自分が善意であることを聞き手に分からせようとしているか
  6. 聞き手が話についてこられるようにキーワードの定義をちゃんとしたか
  7. 本論メインポイントを予告しているか
  8. 導入は、プレゼン全体の1~2割におさまっているか
  9. 言葉遣いをよく吟味したか
  10. スムーズに、自信を持って、アイコンタクトをしながら話せるよう、よく練習したか

このチェックポイントは秀逸ですね。今までも気にしてましたが、こうやって網羅してくれているとホントにチェックしやすいです。

▼チェックリスト【プレゼンの終え方】(p.126)

  1. そろそろプレゼンが終わるということを示しているか
  2. 一番大事な箇所を、「メインポイントを繰り返す」「引用で終える」「心に訴えかける表現を作り出す」「導入部分に触れる」などの方法で強調しているか
  3. 結びの部分は全体の5~10%におさまっているか
  4. 結びの使う言葉をよく吟味したか
  5. アイコンタクトをしながら自信を持ってスムーズに話せるよう、練習したか

さて、プレゼンの準備が終わったとして、本番です。

良い伝え方とは、人に「伝え方」を意識させない話し方のことです。話し手の考えが分かりやすく、興味深く、しかも聴衆の気をそらすことなく届く。それが良い伝え方です。・・・最初のうちは、分かりやすく話す、聞き手の注意をそらすような癖にきをつける、アイコンタクトをしっかりとる、という3つの基本に集中するのがいいと思います。(pp.161-162)

そして、「声」に着目して、それをコントロールすることでプレゼンはより良くなっていくことが書かれています。その要素としては、「①声の大きさ、②声の高さ、③話す速度、④間の取り方、⑤声の調子」の5つが挙げられています。

説得のプレゼンをするときは、聴衆と心の会話をする気持ちで臨みましょう。聴き手が(心の中で)言いそうな反対意見や疑問に答えるつもりで話します。なぜ反対するのか、なぜ疑問に思うのか、という理由の部分に丁寧に向き合わないと、相手を説得することなどできません。(p.232)
方針を説得するプレゼン、4つの型(pp.246-257)

  1. 問題解決型
  2. 問題‐原因‐解決型
  3. メリット比較型
  4. モンロー説得法
    1930年代にパデュ-大学のアラン・モンロー教授が開発したもので、聞き手に行動を促すことを目的に作られています。説得の心理をもとに【注目→必要性→解決策→視覚化→行動】という5つのステップで聞き手を説得します。
説得のうまい話し手とはどんな人でしょうか。古代ギリシャの昔からずっと、人はこの問いを解き明かそうとしてきましたが、結局のところ、人が説得される理由は次のいずれかのようです。(p.258)

  • 話し手に高い信頼性があるから
  • 話し手が示した証拠に納得したから
  • 話し手の論証に納得したから
  • 話し手の考え・言葉に心が動かされたか

これまでもたくさんのプレゼン本を読みましたが、さすがに重版となっているだけあって、分かりやすく網羅されていました。あとはこれをどう実践できるかです。その実践が一番難しいんですけどね。何か疑問等あったら、一緒に議論しましょう。コメント欄に書き込んでいただけたら分かる範囲でお答えしたいと思います。ありがとうございました。

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