知的機動力の本質 – アメリカ海兵隊の組織論的研究


知的機動力の本質 - アメリカ海兵隊の組織論的研究

著者:野中 郁次郎…

アメリカ海兵隊・・・組織論を語るときに本当によくできてますね。でもリーダーシップも含めて考えるとそれを育成仕組みもあって、統率の仕組みもあるのでしょうね。でも企業とは大きく前提が違い、理念や、ミッションなどが何よりも明確というあたりです。そう考えると、やはり、まずは「そこ」なんだということなんでしょうけどね。

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内容紹介
最強の軍事組織アメリカ海兵隊に学ぶ、進化しつづける組織の秘訣とは。旧日本軍の敗因を分析したベストセラー『失敗の本質』(中公文庫)の姉妹篇。
著者からのメッセージ――「アメリカ海兵隊が体現している『知的機動力』こそが21世紀の『知識社会』でイノベーションによって知識と価値を創造し続ける組織に必須の能力だ、と私は信じている。
日本企業は、日本的組織の強みと弱みを自覚しながら、最強の軍事組織であるアメリカ海兵隊に学んで、21世紀の日本的経営を創り出してほしい」。内容(「BOOK」データベースより)
アメリカ的合理主義と日本的人間主義の融合。「最強の軍事組織」に学ぶ、進化しつづける組織の秘訣。21世紀の日本的経営を創り出す、旧日本軍の敗因を分析した『失敗の本質』(中公文庫)の姉妹篇。

改めて知ったのですが、アメリカ海兵隊(アメリカかいへいたい、英語: United States Marine Corps、略称:USMC)は、アメリカ合衆国の海兵隊とのことで、「陸海空軍の全機能を備え、アメリカ軍が参加する主な戦いには最初に、上陸・空挺作戦などの任務で前線に投入され、その自己完結性と高い機動性から脚光を浴びている緊急展開部隊」。ですので、陸軍、海軍、空軍とは一線を画する存在の部隊とのことです。

アメリカ海兵隊の自己革新能力の要素を、組織論の「コンティンジェンシー理論」の枠組みを使って分析する。組織がいかに環境の生み出す情報不確実性に対応するかについて、最も理論的に大きな貢献をしてきたのは、組織論における環境適応理論、すなわちコンティンジェンシー理論のモデルは、環境、組織志向、組織構造、成員属性、組織過程の相互作用によって組織有効性(成果)が生まれ、環境と組織志向、組織特性へのフィードバックのサイクルを通じて、各要素をバランスよく適合させる情報処理能力を構築して環境に適応していく、という考えである。(pp.43-44)
起動戦(Maneuver Warfare)は、敵軍を不安に追い込んで動揺や混乱を招き、自軍を有意な立場に確保する戦い方である。意思決定と兵力の移動、そして兵力の集中というプロセスを迅速に行うことで、敵よりも物理的・心理的な優位に立ち、戦闘の主導権を握るのである。そのためには、相手に勝る戦況観察や情勢判断、意思決定、素早い行動が必要となる。起動戦を行う組織は、自律分散的・協働的なネットワーク型でなければならない。指揮統制は、現場の適応性や自発性を尊重する。理想的な兵士は、相互に信頼しあい、作戦行動に関するプロフェッショナルで自律分散型のリーダーシップをもつ人材だ。敵が予想もしなかった戦略・戦術を採ることによって、相手に「これでは勝てない」という認識を抱かせるのである。(pp.50-51)
起動戦の対義語が「消耗戦」(Attrition Warfare)である。兵器の力を最大限に活かし、敵を物理的な壊滅状態に追い込もうとする決戦主義の考えである。それには圧倒的な軍事力や兵站力が必須である。それを支えるのが中央集権的な官僚組織であり、トップダウンの指揮統制が行われる。また、高い技術力や工業力を背景に、大量の兵器や兵站を準備し、その大量の戦力で敵を破壊して戦闘継続を不可能にする。起動戦のアート的思考に対して、サイエンス的思考が重視される。(p.51)
ジェイソン・A・サンタマリア他(2004)は、『ウォーファイティング』から起動戦を七原則に凝縮している。①最脆弱性標的(敵も最も弱いアキレス腱を打つ)、②大胆不敵(漸進より突破)、③奇襲(敵が予想していないときと所を打つ)、④焦点(敵を一点集中して打つ)、⑤分権的意思決定(最前線に権限委譲する)、⑥テンポ(スピードで優位に立つ)、⑦陸・海・空の兵種連合体(兵器や能力を組み合わせる)、である。それぞれの原則は単発ではなく、総合的に展開した場合に最も決定的な成果がもたらされる。また、各原則を総合するには偵察の貢献が大きいが、分権型のリーダーシップが全体のバックボーンになるとしている。(p.54)
起動戦は、本来分権的、リスクテイキング、スピーディ、そして協力的でなければ、機能しない。その成功には、組織のすべてのレベルにおける最高度の信頼(トラスト)、誠実(インテグリティ)、自発性(イニシアティブ)、利他性(アンセルフィッシュネス)が要請される。しかし、その実現は難しい。起動戦は、大きな自信、健全なる道徳を持つ性格、計算されたリスクをとる強い欲求、そしてリーダーの高いコミットメントを要請する。さらに、多くの組織が好まない組織文化の変革や、それを支えるための上司と部下の日常の強い信頼関係を要請するからである。起動戦において最も問われるのは、全員がフル・コミットメントする覚悟と忍耐力があるかどうかなのである。(p.54)
海兵隊の昇任制度の特色は、能力・行k製・職務経験の昇進基準を厳守し、特進を認めないことである。陸軍には、平時は年功、戦時は能力の一時昇進という制度があり、アイゼンハワーやパットンはこれによって目覚ましい出世を遂げた。しかし海兵隊は、日本型組織に似て各職位に必要な経験を一段階ずつ積み上げて査定される等級昇進である。昇進への道は全隊員に開かれているが、一階級昇進するために、最低限必要な知識・技能を段階的に学ぶという職人道の基準を厳守しているのである。このシステムの利点は、中長期にわたって獲得すべき能力の組織的かつ体系的知識の蓄積ができることだ。(pp.66-67)
海兵隊の個人の意思決定の型は、「起動戦」概念の提唱者ジョン・R・ボイド空軍大佐が開発した「OODA」ループに基づいている。(p.92)

 

OODAループの基本的段階は、観察(Observation)、情勢判断(Orientation)、意思決定(Decision)、行動(Action)の4つの意思決定プロセスで構成されている。最初の段階である観察では、五感を駆使して状況の展開を見る。自己の視点のみならず、相手の身にもなって全体図を直観する。第二の段階である情勢判断では、新しい情報と自身が蓄積してきた資質・経験や伝統を分析・総合して、代替案をつくる。自己の置かれた世界を見るだけではなく、どのような世界を見ることができるかの能力が問われる。ボイドも、状況が刻々と変化する戦況において、敵よりいかに素早く情勢判断と意思決定を行うかが勝敗を決するとして、情勢判断の段階を「Big O」と呼び、重視している。戦況を瞬時に掌握した後は、具体的な仮説を決定し、行動するのである。この一貫したプロセスは、新たな情報として再び観察され、新しいOODAループが始まっていく。混乱する戦場において、この “see-decide-do decisions” と簡潔に言われるOODAループを、敵より素早く回せるよう身体化されるまで叩き込まれる。海兵隊のライフルの撃ち方も、まさにOODAのスキル化である。俊敏性が多様性を生み出すのでOODAループの要諦は、先手を取り、敵が対応せざるをえないようにすることである。(pp.93-94)

 

 

OODAループの中でも一番重要な「Big O」(Orientation)は、遺伝的資質、伝統・文化、分析・総合、先行経験、新しい情報の相互作用によって形成される世界についてのイメージ、眺望、印象である。ボイドは、この同義語として、環境とのダイナミックな相互作用におけるメンタル・モデル、スキーマ、ミーム、暗黙知を当てている。ボイドはマイケル・ポランニーの暗黙知の概念にも影響を受けている。情勢判断のプロセスは分析と総合である。分析は、物事を要素に分解するプロセスであるため、総合のインプットに留まる。これも踏まえて、情勢判断では、個別具体の状況のなかで減少を一貫したイメージに統合しなければ何らない。一般的に真理に近づく方法論は、演繹と帰納の双方が必要であるとされるが、普遍からの個別へのトップダウン思考は、演繹・分析であり、個別から普遍へのボトムアップ思考は帰納・総合である。したがって、創造性は基本的に帰納に関係するが、創造的な帰納にするためには、以前に普遍を構成していた命題を否定する破壊的な演繹が必要だとしている。ボイドは、明確に認識していなかったが、この方法論は演繹、帰納に対してのアブダクション(発想)である。(pp.94-95)
ただし、帰納法は演繹法に比べてリスクをともなう。論理的に与えられた「最大化」基準に基づきすべての代案を比較してベストを選ぶ分析的アプローチに比べると、経験と判断に基づくパターン認識の直観的アプローチは、「満足化」基準に基づく試行錯誤の「よりよい(ベター)」の追求である。戦争は、サイエンスというよりはアートなのであり、唯一最善の解はない。しかし、実行可能な第一のソリューションを直観的に生み出す意思決定は、多数の代替案を比較しないので、分析的意思決定よりははるかに速い、と主張されるのである。(p.95)

冒頭の紹介では、『失敗の本質』(中公文庫)の姉妹篇というようなことも書かれていましたが、少し形は違って、「アメリカ海兵隊の本質の理論化」というところのようですので、その商会は野中先生も本意ではないかもしれませんね。

いずれにしもてOODAループは、おそらく野中先生の過去の著作からだと思いますが、非常に関心を持っており、着目していました。

こちらにも書いていました。(PDCA,A3,DMAIC,8P/PSP)

ここには、OODAループは書いてませんでしたが、OODAループ、さらには、リクルートのリボンモデルとかも統合して、物事の進め方、考え方、さらそれがサイクルでありループとなるような統合されたものを考え出したいなぁと思います。

もっと研究したいですね。

またこの本、第二部には、『War Fighting』・・・海兵隊のマニュアルの邦訳があります。この濃い内容にしかも第二部の海兵隊マニュアルがあって、1800円なのでお得感はありました。

 

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