カルロス・ゴーンの経営論


カルロス・ゴーンの経営論 グローバル・リーダーシップ講座

カルロス・ゴーンの経営論 グローバル・リーダーシップ講座
著者:太田正孝 (編集), 池上重輔 (編集), 公益財団法人日産財団 (監修)

内容紹介
「周囲が『このままでいい』というなか、自分1人だけでも『ノー』と言えなければならない」
「リーダーであることを決めるのは、自分ではなく周囲の人である」
「リーダーはポーカーフェイスでなければならない」
「トップが後継を指名するのは間違い」
──大手・中堅企業の幹部候補生を対象にした「逆風下の変革リーダーシップ養成講座」。500分に及ぶ受講生とゴーンとの白熱のやりとりをリアルに再現。

★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯]
[目的・質問]
[分類] 335.13:経営者・企業者論.企業と社会.産業社会, 産業社会

カバーのそでのところに、おそらくこの本で一番言いたいことではないかと思われるところが書かれていました。

誰もが「従来どおりでいい」と言うなかで、自分だけが「ノー」と言える人こそリーダーである。危機という状況がリーダーをつくる。そのための準備をしておかなければならない。リーダーは誰しも「完璧ではない」が、失敗を感じさせないリーダーは完璧に見える。結果を出してこそ、人を動かすことができる。厳しい決断をするときは、「信念を持つ」「実行させる」「期待できる成果を示す」

ゴーンは幹部候補生たちを前に、熱く語り続けた。

イントロダクションで書かれていることが、うまく整理されていてわかりやすいです。

 

リーダーシップにおける理論と実践の融合とは、独自のリーダーシップ論を持つことです。松下幸之助、ジャック・ウェルチ等の例を出すまでもなく、成功したリーダーは自分なりのリーダーシップ論を持っているからです。(p.3)

自分なりのリーダーシップ論、一度整理したほうがよさそうですね。

リーダーシップとは、リーダーとフォロワーとのやり取りの中から、双方向的にダイナミックに派生する影響力と考えるとよいでしょう。リーダーとはフォロワーに影響を与える人であり、リーダーシップはリーダーとフォロワーの間の相互作用から生まれる社会現象です。それはリーダーの中に存在するとも言えますが、リーダーの言動を見てフォロワーの多くがどのように意味づけるかという家庭の中にあるとも言えます。人が指導的地位に就いていることはリーダーシップを効果的に成立させることに役立ちますが、指導的地位についている人が即座にリーダーシップを持つわけではありません。(p.7)
つまるところ、リーダーシップは “他者に仕事をさせる術” であり、自らその仕事自体に従事することではありません。ただし、そのリーダーシップのスタイルは様々なものがあり、自分が率先して仕事をすることを通じて、他者に仕事をさせるリーダーもいるでしょう。(p.7)
リーダーシップが新しい方向性を提示し、その方向への変容を促すのと対比して、その方向性に向けた体制を構築し複雑な事象を「管理・調整する活動」をマネジメントと呼ぶ場合があります。ちなみにドラッカーは企業を運営する「経営活動全般」をマネジメントとみなし、リーダーシップまでを含めた広い定義でマネジメントを論じているようです。ゴーンがいうマネジメントはドラッカーの定義に近いでしょう。このように人・組織によって経営用語の定義が異なる場合は少なくないので、皆さんは自身の定義は何か、相手が前提としている定義は何かに留意しておく必要があります。(pp.8-9)

ここにある定義は、先に挙げられている「自分なりのリーダーシップ論」に通じるところがあります。

リーダーシップと狭義のマネジメント(管理・調整)はどちらも企業活動に必要です。ではリーダーはリーダーシップだけを発揮していればよく、マネジャーはマネジメントだけをしていればよいかと言えば、必ずしもそうではないでしょう。マネジャーの主な役割は方向と手法が定まったなかでの管理・調整かもしれませんが、必要であればリーダーシップを発揮することもありますし、リーダーも必要に応じて管理・調整(狭義のマネジメント)を行うことがあるでしょう。(p.9)
GLOBE(Global Leadership and Organizational Behavior Effectiveness)が24か国、1000人のCEOを対象とした調査によれば、文化を超えて最も効果的なリーダーシップ行動のトップスリーに、①ビジョン、②業績志向、そして③管理能力が挙げられていることは興味深いです。「リーダーとマネジャーは似て非なるもの」という捉え方もありますが、少なくともグローバル・リーダーシップの観点からみると、リーダーにもマネジャーにもリーダーシップとマネジメントの双方が必要なようです。この考え方はミンツバーグのリーダーシップに関する考え方たとも相通ずるものです。結論としては、リーダーとマネジャーとでは、その配分ウェイトが違う、発揮するタイミングが違うと考えたほうが現実的でしょう。(pp.9-10)

ここからは、リーダーシップ論の歴史ですが、わかりやすく整理されています。ゴーンさんのリーダーシップを語るに際して、これまでの歴史の中でリーダーあるいはリーダーシップがどのように研究されていたかの整理となります。

良いリーダーとはどのようなものかについて、様々な手法で研究されてきました。1940年代までは資質アプローチ(traits approach:優れたリーダーはどのような特徴的な性質があるのか)や、行動アプローチ(behavioral approach:どういう行動をとれば優れたリーダーになるのか)のように、どのような資質や行動が偉大なリーダー、もしくはリーダーとしての成功につながるのかの研究が盛んに行なわれました。しかし、特定の資質と良いリーダーとの関係を解明することはできませんでした。逆に言えば、どのような人にもリーダーとなる可能性があると考えられるでしょう。その意味では、リーダーシップを “Nature or Nurture” のレンズで捉えるならばk天賦の才(Nature)ではなく、開発可能な能力(Nurture)との考え方が強くなっているといえます。(pp.10-11)
1960年代後半から1970年代にかけて、唯一最善のリーダーシップ・スタイルを提示するよりも、むしろどにょうなリーダーシップ行動が有効かは、リーダーの置かれた状況によって異なるとするリーダーシップのコンティンジェンシー(条件適合)理論(contingency approach of leadership)が台頭してきました。ハウス(1971)の「パスーゴール理論(Path-Goal Theory)」は、リーダーシップの具体的なあり方まで言及しました。ハウスは、メンバーが目標(ゴール)を達成するためには、リーダーはどにょうな道筋(パス)を通ればよいかを示すことがリーダーシップの本質であるという前提に立っています。リーダーを取り巻く状況を、業務の明確さ、経営責任体制やチームの組織といった「環境的な条件」と、メンバーの自律性、経験、能力といった「部下の個人的な特性」の2つの側面から分類し、リーダーの行動が部下の特性を含む環境的要因に適合しているか否かによって、リーダーシップの有効性が異なるとしました。リーダーの行動が部下に受け入られるのは、即自的あるいは将来的満足をもたらす場合としました。また、リーダーの行動が動機づけとなるのは、それが部下に効果的な職務遂行による満足を求める場合と、効果的な職務遂行に必要なコーチング、指導、支援および報酬を提供する場合の2つだというのです。ハウスは、リーダーシップ・スタイルを指示型・支援型・参加型・達成志向型の4つに分類し、1人のリーダーが状況に応じて使い分ける場合があるとしました。(pp.11-12)

「パス-ゴール理論」について、詳しくこちらに書かれています。これまでこの理論はあまり聞いたことありませんでしたが、非常に明快で分かりやすい理論です。

また、ハーシーとブランチャードは、「状況的リーダーシップ論(situational leadership=SL理論)を提唱し、リーダーと部下の関係は時間とともに変化するので、その変化にリーダーシップ・スタイルを合わせることを求めました。リーダーのスタイルは部下の成熟度によって変える必要があると考えました。(pp.12-13)

詳しい、SL理論の説明についてもこちらに関わていますので、ご参照ください。

ゴーンは何度も、「リーダーにとって継続的に結果を出すことが重要である」と言っています。本書にでは様々なリーダーシップの在り方を記述していますが、状況に応じてリーダーシップ・スタイルを使い分けるのは、”継続的に結果を出す” ためであることを忘れないでください。リーダーは時に成功の背景として「運が良かった」「偶然・たまたま」ということがあります。しかし、一方で「運が悪かった」「巡り合わせが悪くて」と敗因を語るリーダーも少なくありません。運をつかめる人と、そうでない人の違いは、常にその運・タイミングをサーチしてアンテナを張り続けているか、運以外の要素をどこまで詰め切っているかにも左右されます。一見すると運に見える要素、あるいはコントロールできなさそうな要素も、よく考察してみると検証可能だったり、コントロールできたりする部分があることが多いのです。ゴーンの大胆な意思決定の裏には、最新の事前分析や考察があり、そして実行を担保する多様なリーダーシップの手法があるのです。(pp.13-14)
日本でよく知られているリーダシップ・スタイルは、ダニエル・ゴールマンのものでしょう。彼は「心の知能指数EQ(Emotional Intelligence Quotient)」という資質とリーダーの良し悪しは状況によるという考えを融合させて、リーダーシップを①強制型、②権威型、③親和型、④民主型、⑤ペース設定型、⑥コーチング型―の6スタイルに分け、これらの使い分けが重要と主張しました。(p.14)

 

 

ダニエル・ゴールマンの上記のスタイルについては、こちらをご参照ください。より深い理解ができると思います。

しかし、スタイルを使い分ける一方で、伝えたいメッセージが一貫していることも重要です。実際ゴーンはインタビューの中でも首尾一貫性(consistency)が大事だと言っていますが、これは後段で志賀俊之(日産自動車副会長)が強調している「本質」と「大義」の重要性とほぼ一致するものです。一貫した目標を達成するために、状況に応じてリーダーシップ・スタイルを使い分けているのです。(p.15)

ここからは、いろいろな問いに対して、ゴーンさんが答え、関連するアカデミックなリーダーシップ論について解説するというスタイルで進んでいきます。

非常に興味深い内容が多く、再読したい書物です。

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