日本のキャリア研究 専門技能とキャリア・デザイン


日本のキャリア研究 専門技能とキャリア・デザイン

日本のキャリア研究-専門技能とキャリア・デザイン
著者:金井 壽宏,鈴木 竜太

内容(「BOOK」データベースより)
看護師、船舶職員等の専門職、企業内研究者やホテル・観光産業従事者など、専門技能を軸にした職業人のキャリアの現状を分析。組織の中で、フリーランスで、その独特のキャリア形成を、気鋭の研究者たちが論じた注目の1冊。

★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] 転職に向け、自分の見つめ直す。
[目的・質問] キャリア・チェンジの際に考えべきことを知る。
[分類] 366.29:職業.職種.職業紹介.職業訓練.就職

 

自分のアイデンティティに思いをめぐらすときによく用いられる方法に、20答法(Twenty Statements Test:TST)というものがある。簡単に言えば、「わたしは、・・・・」で始まる文章を、20個したためてもらって、そこから自分の正体、自分のコアを改めて探るのである。・・・その文章がどの程度、大切な記述となっているかを、5件法で評定してもらう。・・・このスコアの高い項目が共通に自分に訴える何かを問うことから、アイデンティティの探索を深めることができる。(Preface  i)
Kats(1955)によれば、優秀な管理者は次の3つのスキルを発揮している。1つは「テクニカル・スキル(technical skill)」、次に「インターパーソナル・スキル(human skill)」、最後に「コンセプチュアル・スキル(conceptual skill)」である。(p.5)
企業における昇進システム、すなわちキャリア・ラダーには、専門職を全うする昇進システムとしてのテクニカル・ラダーと、管理職の昇進システムとしてのマネジリアル・ラダーの2つのラダー(梯子)がある。この2つのラダーを敷いた人事制度であるデュアル・ラダーの制度は、日本と欧米では差がある。・・・アメリカでは、学歴によってどちらのラダーを昇るかがほぼ規定されており、デュアル・ラダーの制度が整っているとみることができる。それに対して日本では、学歴によって若者のうちにどちらを昇るのか規定されることは少ない。(p.79)
欧米でデュアル・ラダーが制度上導入された理由は、優秀な技術系人材を研究に専念させながら、マネジメントの職位につく人材と経済的に同等に遇するためであった。(Moore & Davies, 1977)(p.80)
アメリカの人事制度の特徴は、学歴によってどちらのラダーを昇るかが決まることである。博士号を取得していない者は研究開発の現場ではテクニシャンとして扱われ、テクニカル・ラダーを昇ることはできない(Allen & Kats, 1992)。したがって、マネジリアル・ラダーを志向することが多く、学部を卒業するとすぐに課長の卵として要請されることも少なくない。(p.81)
日本のキャリア・ラダーの特徴は、ミドル・エイジ(30代半ば)になるまでマネジリアル・ラダーを昇るかどうかがあいまいにされていることである。学歴によって昇るラダーが規定されるアメリカとは相違が見られた。もうひとつの特徴は、昇進基準に技術成果が重視されていることだった。・・・そのように技術成果が重視される環境のものとで、課長職は、年齢限界をかんじつつも、それを否定するかのように、研究開発とマネジメントの両方の仕事をこなしている。また、部長職は、研究開発の前線から離れていく状況に寂しさを感じつつも、他律的・自律的にその状況を受容している。(p.101)
日本の人事制度の功罪を掲げる。まず、個人に焦点をあて、日本のデュアル・ラダーにおいてマネジリアル・ラダーを昇っていく人材の優れている点を挙げると次の通りである。(p.102)

  • 研究開発の現場から離れる年齢が遅いので、先端技術や将来の技術の潮流を理解する能力を磨きやすい。
  • テクニカル・ラダーの者と接する時間が長いので信頼を構築しやすい。
  • 研究開発の現場で直接に部下の仕事ぶりをみられるので、部下の技術力やマネジメント能力を正しく加味した人材配置を行える。

逆にこのような人材の問題点を挙げると次の通りである。

  • 研究開発の現場に長くいたためNIH症候群にかかりやすく、内部資源を過大評価し、外部資源を過小評価する危険性が高まる。
  • 顧客等対外折衝の経験が不足し、ニーズ主導よりも技術主導で、新規プロジェクトを採択する危険性が高まる。

NIH症候群 (Not invented here syndrome):ある組織において、何か良いアイデアや発明、製品、サービスを知ったにもかかわらず、それが別の組織で先に考案されたものだ(あるいは、別の組織ですでに実行されている)ということだけを理由に、採用したがらないこと。

フレデリック.W.テイラーは、仕事のやり方を標準化した。彼の創設した科学的管理法(scientific management)は、テイラーの名にちなんで「大文字のテイラリズム」、つまりTaylorismと呼ばれるようになった。その創設は100年前のことである。大文字のテイラリズムの特徴の1つが、課業管理(task management)であり、職務特性論につながる後の研究者たちは、その特徴を3つのS、標準化(standardization)、専門家(specialization)、単純化(simplification)と要約した。

この大文字のテイラリズムに対して、カーネギー・メロン大学のルソーは、「小文字のテイラリズム(tailorrism)」と提唱する。意味は、標準化の逆で、課業や職務をテイラー・メイドにするという考えである。彼女は、仕事のやり方を一人ひとりの個人の貢献できる点と、その要望に合わせた方が、いくつかの条件さえ満たせば(とくに同僚に不公正感を抱かせることがないように配慮する必要はあるが)個人にも有意義、組織にも有効なものになり得ることを提唱した。(p.109)

 

ルソー自身は、2005年の著書で、i-dealsについて、「特異な雇用条件(idiosyncranic deals)は、標準とは違う性質の自発的で個人の事情に合わせた合意であり、個々の被雇用者が雇用者と、双方にとって便益となるような事項について交渉した結果生まれた合意のことである。」と定義している。そして、この言葉は、洒落たことに、三重の意味を持つ。

1つは、このわたし(I)が組織との交渉(deal)の上で実現する。個人と組織の間の心理的契約であるという意味で、i-dealsである。ルソー教授は、「この方法が有益であるが同時に困難でもある」と承知している。とくに同僚にフェア(公正)でないと思われたら、ただの「わがまま」になってしまう。しかし、分配的にも手続き的にも構成とみられるなら、1人ひとりに配慮した仕事のやり方を実現する第一歩となる。

職場における働き方のイノベーションは、個人の事情に配慮した仕事のやり方を、同僚が構成だと思った時に実現されてきた。そうでなければ、最近のワーク・ライフ・バランスも、古くはカフェテリア方式の福祉プランも日の目を見なかったであろう。その意味では、i-dealsは、人材マネジメントの理想(ideal)や将来像を照射している。これが第二の意味である。i-dealsは、ある一定の条件を満たせば、個人の組織の関わり合いや心理的契約の理想(ideal)であるとルソー教授は考えている。

また、特別な雇用のあり方を認める必要のある人材がいる場合、雇用する側は、そのひととは特異なディール(idiosyncranic deals)を結ぶ必要がある。この「特異な」という形容詞のイニシャルをとってi-dealsと呼んでいるというのが、第三の意味合いである。(p.110)

双方向的な職務設計モデルを主張する研究者たちは、これまで組織に対する便益を強調してきた。とりわけ個人が創造的な仕事をおこなったり、仕事の質を高めたりするためには従業員の主体的行動に注目する必要があることを指摘してきた。これは伝統的な職務設計研究の主張とは異なる観点に基づくものである。ただしこのような主体的行動は、従業員自身にとっても便益をもたらすものであるはずである。従業員自身にとって何かしらの魅力がなければ、そのような主体的な行動をとる必要がないからである。従業員が主体的に仕事の境界に変化を加える行動が、従業員自身に対してどのような変化をもたらすかについての理論的枠組みを提示したのがジョブ・クラフティング・モデル(Wrzesniewski & Dutton, 2001)である。この考え方の提唱者である Wrzesniewski & Duttonは、ジョブ・クラフティングも、これまで触れてきたいくつかの先行研究と同様に、従業員が主体的に職務の境界や範囲に働きかけることに注目する概念であるといえる。(p.123)

従業員の個別的アレンジメントのタイプ(p.133)

  双方向の妥協もしくは黙認 一方の妥協
従業員発 ①古典的 i-deals ②妥協
(例:ジョブ・クラフティング)
雇用者発 ③潜在的 i-deals ④権威づけられた妥協
1990年代以降、雇用の流動化や個人の価値観の変化双方を反映して、既存のキャリアに対する前提に捉われない新たなキャリア観が研究者によって模索されるようになった。その主要なものの1つとしてこれまで大きく展開されているのが、境界のないキャリア(バウンダリーレス・キャリア:boundaryless career)という考え方(Arthur & rousseau, 1996)である。典型的には、一つの組織で勤め上げるという境界内のキャリアと対比され、組織間・職種間・産業間などに存在する境界をすすんで超えていく人たちのキャリアを描写する概念である。欧米のキャリア研究において境界のないキャリア論は確実に1つの潮流となり、また世界レベルでも各国の文化に根付いてきているか、あるいは根付き得るかという議論も活発であり続けている(Power et al., 2007)(p.144)
キャリア・アンカーとは、仕事が変わっても、会社ごと移っても、どこでどのような仕事をしていても、具体的には、次のようなカテゴリーがある(Schein, 1990)。①専門性を究めること、②人々を動かすこと、③自立・独立して仕事ができること、④安定してしなぴなく仕事ができること、⑤絶えず、企業家として(あるいは、企業家のように)なにか新しいものを創造すること、⑥誰かの役に立ち、社会に貢献できること、⑦自分にしかできないことに挑戦し続けること、⑧仕事と家族やプライベートのバランスがとれるライフ・スタイルを実現すること、これらの8つである。(p.200)
キャリア・アンカーは、節目を貫いて大切にしているものととらえてもよいが、より正確な理解は「キャリアを歩む上でけっして断念したくないほど大切なもの」である。(p.200)

ほとんど、コメントは残せなかったのですが、この考え方の定義はこうである、といったところを多く書き抜きました。ここにでてくる言葉を押さえておけば、キャリア研究関係の論文についてはある程度理解できるように思います。それにしても、データを取るのは非常に難しいと思いますので、この分野を論文にするのはなかなか困難なように感じました。

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