著者:西口 一希 …
いわゆるP&Gマフィアと呼ばれるマーケティング集団の中のおひとり。そのマフィアの方々の本も何冊か読みましたが、やはり共通するところがあり、それぞれの見方で少し違った角度で語られることでより理解することができることもいくつかありました。学びの多い一冊です。(Inobe.Shion) |
内容紹介
●人を動かす強い企画や施策は、一般的な調査からは生まれません。 たった一人の“N1”を分析する「顧客起点マーケティング」から P&G出身、ロート製薬にて化粧水「肌ラボ」を本数ベースで日本No.1へ 自社ブランドについての数問の調査で作成できる ●本書で解説すること ・有効な「アイデア」の定義と見つけ方 ●著者略歴 西口 一希(にしぐち かずき) |
フレームワークは同時に、組織に非属人的なリーダシップをもたらします。特定の役職者や部門が決定権や影響力を持つ、属人的なリーダーシップが働いていると、顧客の重要性が徐々に薄れていきます。「お客様が最も大事」と言いながら、実際にはマーケティングやビジネス自体が顧客基点ではない企業も多いと思います。(p.4) |
筆者がマーケティングにおいて最も大切にしているのは、一人の名前を持つ具体的な顧客”N=1”を徹底的に理解することです。名前の見えない複数の誰かではなく、実在する一人のお客様に会って、ブランドとの初めての出会いからこれまでの経験に丁寧に耳を傾ければ、購買行動とその行動を左右する深層心理の関係が有機的に繋がります。その深い理解と共感を通じて、ビジネスに成長させる「アイデア」が必ず見つかるのです。(p.5) |
マーケティングが投資対象とする顧客対象とする顧客全体の人数や構成比(%)を正しく把握するために、ビジネスの対象とする顧客を5つに分解する「顧客ピラミッド」のフレームワークがあります。この、顧客を複数のセグメントに分類した図を本書では「セグマップ」と称します。顧客ピラミッドは別名「5セグマップ」になります。さらに、ブランド選好度の軸を加えて顧客全体を9つに分解する「9セグマップ」のフレームワークがあります。これらのフレームワークを活用して、特定の顧客セグメントから一人を抽出して「N1分析」を行い、購買行動を左右する言語化されていない深層心理のニーズをつかんで「アイデア」を開発して、定量的な検証を行って打ち手を検討します。(p.18) |
2つのフレームワークのうち、顧客ピラミッドについて一連の流れを紹介すると、次の5ステップになります。(p.19)
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※顧客ピラミッド(5セグマップ)と9セグマップの図はこちらから確認できます。
【序章のまとめ】
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「アイデア」を端的に定義すると、「独自性」と「便益」の4象限で表すことができます。結論を先に言うと、独自性と便益を兼ね備えた「アイデア」があるかどうかがマーケティング上で最も重要な要素です。(p.30) |
便益 | |||
ない | ある | 独自性 | |
ギミック | アイデア | ある | |
資源破壊 | コモディティ | ない |
独自性は、あくまで唯一無二な、Only-one Uniquenessを意味します。独自性が弱いと、コモディティ競争に陥ってしまうのです。もちろん、コモティティ競争もマーケティングの対象ですが、圧倒的な成長を達成するには、商品やサービスの誕生時から、常に「アイデア」を生み出し、提供し続けなければなりません。(p.32) |
【第1章のまとめ】
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●行動データと心理データ
行動データ | 心理データ | |
・売上POS情報 ・カード会員情報 ・自社顧客の購買情報
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1)ブランドの認知 2)ブランド選好度 3)属性イメージ 4)メディア接触 5)広告の認知経路 |
「カスタマージャーニー」は、現在マーケティングの現場では標準的な分析手法になっています。しかし筆者が見聞きするカスタマージャーニーの多くは、”想像”で”平均的”に作られています。これでは役に立つどころか、マーケティングや経営戦略を惑わすリスクすらあります。複数人で会議室にこもったり、合宿をしたりして、「当社のお客様にはこんな方・・・」と作ったものの、実態としてそれは多種多様な方々の組合せであり、実際には存在しないカスタマージャーニーです。そんな時間を使うくらいなら、実在のロイヤル顧客さんの話を徹底的に聞いて、ご本人が自身の理解している以上にこちら側が理解するくらいのN1分析をしたいです。(p.83) |
顧客ピラミッドで考える、戦略の選択肢は次の5つになります。(p.90) 1.ロイヤル顧客のスーパーロイヤル化 2.一般顧客のロイヤル化 3.離反顧客の復帰 4.認知・未購買顧客の顧客化 5.未認知顧客の顧客化 |
●様々なマーケティング手法(p.93)
オフライン | オンライン |
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【第2章のまとめ】
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●「9セグマップ」の顧客分析
認知なし | 認知あり | |||||
購買経験なし | 購買経験あり | |||||
9 未認知顧客 |
7 積極認知・未購買顧客 |
5 積極離反顧客 |
3 積極一般顧客 |
1 積極ロイヤル顧客 |
高 | 次回購買意向(ブランド選好) |
8 消極認知・未購買顧客 |
6 消極離反顧客 |
4 消極一般顧客 |
2 消極ロイヤル顧客 |
低 | ||
なし(過去購買) | 低 | 高 | ||||
現在購買頻度 |
【第3章のまとめ】
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特にコモディティの日用品などのセグメント移動は非常に激しいだろうと想像されます。
【第4章のまとめ】
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我々マーケターが向き合っているのは、「デジタルか?マスか?」という問いではありません。「新リアルワールド」が急速に拡大し、「ゼロフリクションワールド」へ向かう過程として旧リアルと新リアルに分断されていく顧客そのものです。効果のあるマーケティング戦略および事業戦略を構築するには、手段や手法ではなく、急速に変化し続ける今の顧客の事実を把握し、次の変化を早期に洞察するしかないのです。(p.210) |
【第5章のまとめ】
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巻末に各種図表などがダウンロードできる特典のURLなども記載されています。