著者:馬田 隆明 …
サブタイトルに「最速で事業を育てる環境をデザインする方法」とあり、これと”居場所”がどう絡むのか、興味のあるところ。(Inobe.Shion) |
内容紹介
東大で200以上のプロジェクトを支援してきた 近年は、起業やイノベーションに関する情報にあふれています。 そこでこの本では、スタートアップを取り巻く「環境」に注目し、 ●Place:どこでやるか? 豊富な事例とエビデンスを用いて「良い環境の作り方」を解説 スタートアップが新しいアイデアを育み、実行力を高め、 ● スティーブ・ジョブズがPixerのオフィス設計でこだわったこと 著名投資家・鎌田富久氏との対談も収録 さらに、「ビジネスと環境の因果関係」についての知見を深めるべく、 ●「イノベーションを育む環境」の選び方、作り方 も収録しています。理論と実践の両面から導き出された 内容(「BOOK」データベースより) 東大で200以上のプロジェクトを支援してきたアクセラレーターが明かす、ビジネスモデルより大切な「経営環境の4要素」。PLACE―どこでやるか?PEOPLE―誰とつながるか?PRACTICE―どう訓練するか?PROCESS―どう仕組みを作るか? |
帯に書かれているこの部分、これに尽きるのでしょうか。
この「4要素」を上手に整えれば、あなたは劇的に成長できる!
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この4要素、成長のMECEだと思います。時間の使い方は「練習法」「プロセス」に含まれているのでしょうか。
「私は、私と私の環境である」これは『大衆の反逆』などで有名なスペインの哲学者ホセ・オルテガ・イ・ガセットが、『ドン・キホーテをめぐる省察』で記した言葉です。この言葉が意味するのは、「私」は私だけで自立しているように見えるけれど、実は自分の周りや環境も含めて「私」である、ということです。(p.6) |
ここに合わせて大前研一さんの例の「時間配分、住む場所、付き合う人」というのも挙げられています。
オルテガの言葉と照らし合わせて大前研一氏の言葉を考えてみると、自分という存在は環境も含んで自分なのだから、環境を変えれば自分が変わるというのもうなずける話です。(p.6) |
この本では、・・・自分の居場所を変えるだけではなく、目的に合わせて環境を育てていくことで、自分の中に眠る創造性や実行力を刺激できるかもしれない、という可能性を示します。(p.8) |
オルテガが述べる通り、「私は、私と私の環境」なのであれば、成功を自分の能力だけに頼る必要はありません。居場所を変え、周りに助けてもらえるような環境に身を置けば、たった1人で自己啓発しなくても、あるいは自分だけが勉強しなくても、自分の能力はおのずと高まるはずです。また、自分の周りの環境を整えれば、同じ環境を共有する他の人たちにも良い影響を与えることができます。もっと言うと、周りの人たちがその環境のおかげで成功すれば、それは自分自身の成功とも言えるのではないでしょうか。そう考えると、「自分の成功」という利己的な振る舞いで環境を良くしていくことが、「周りの人の成功を助ける」というある種の利己的な行為にもつながります。(p.8) |
起業家にとって最適な環境とは何のなのか。これを深掘りするべく、環境の構成要素を「4つのP」に分けて考えています。(p.12)
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社会心理学の父と呼ばれ、集団の意思決定に関する研究や「場の理論」という概念を提唱したクルト・レヴィンは、行動を変えたいときには「解凍」「変容」「再凍結」の順番で行うことをお勧めしています。このステップは、単に行動を変えようと意識を高めるだけでなく、意思決定を助ける手立てを与え、新たな行動を定着させるための技法を伝えることにも通じます。(pp.14-15) |
セルフコントロールをするために、自分の意思や頭だけに頼らず、環境や他人との関係性を活用すること。そして自分の意思の強さ・弱さで起業後の成果が左右されないように意思の有無を問わず自然とできてしまうような環境を整えること。それが自分を向上させる一つのやり方になる。(p.17) |
行動経済学の分野では、「選択アーキテクチャ」という言葉や「ナッジする」という言葉があります。本人の意思を尊重しつつも、自然と望ましい行動を促すために使われる手法です。これは人々が社会全体にとって良い判断をするような環境を作っていくための仕組みとも言えます。・・・人間の行動に対する洞察や科学を用いながら、人々が自由に選択できる余地を残しつつ、環境に優しい行動を起こすように促す「リバタリアン・パターナリズム」が各種政策などに活用され始めています。(pp.45-46) |
マルコム・グラッドウェルの「1万時間の法則」に対しての補足的内容が以下に紹介されています。
エリクソンは、練習を長時間続けるだけで一流になれるとは論じていません。超一流と呼ばれるレベルに達するには、規律のある熟慮された練習を続けなければならないと指摘しています。それが「よく考えられた練習」であり、実践する際の条件として次の6つを挙げています。(p.103)
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良い選択をするための8つの知恵(p.125)
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上の分で分かりにくいところについて補足します。
「バーベル戦略」これは株式や債権投資の戦略で、オプション取引におけるポートフォリオの組み方を考える際に用いられます。特徴的なのは、中ぐらいのリスクを一切取らないという点です。代わりに、資産運用に充てるお金の90%程度は超安全と思われる金融商品に投資して、残り10%程度をリスクが高いけれど大きなリターンが得られるかもしれない商品に投資します。つまり、ローリスク・ローリターンな投資とハイリスク・ハイリターンな投資を組み合わせることで、全体として頑健を目指すという戦略になります。その結果、バーベルのように両端に錘があって、中間はほとんどないという投資額の分布になることから、バーベル戦略と呼ばれています。この戦略を、探索と深化を行う際の時間配分に適用してみると、結果という見返りを得やすい深化のほうに90%程度の時間をかけつつ、探索については「何も得られないというリスクもあるが大きなリターンが得られるかもしれない行為」として10%程度の時間を使う、とやるのがいいかもしれません。(pp,145-146) |
Satisficeとは「最低基準を満たす」という意味です。(p.156) |
戦略や方法論のエッセンスをまとめて取り入れる方法として、スタンフォード大学のハース兄弟が提唱する「WRAP」というプロセスがお勧めです。(pp.158-159)
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独自の学習理論を発展させたデイヴィッド・コルブという教育学者がいます。彼は経験学習モデルと呼ばれる考え方を発展させ、経験を通した学習では、
の4つの要素が重要で、このサイクルを回していく過程で習熟するのだとしています。内省的観察や抽象的概念化を経ない経験は経験主義に陥りますが、能動的実験や具体的経験のない内省的観察や抽象的概念化は抽象的な概念形成に終わってしまうので、このサイクルを回していくことが重要だという指摘です。(pp.210-211) |
アイデアを形成する「6つのS」(p.366)
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私も新しい「居場所」を見つけるべく探索していきたいと思います。