経営学者の読み方 あなたの会社が理不尽な理由
著者:清水 勝彦
内容(「BOOK」データベースより) なぜ、わが社は「何億円もの失敗」より「タクシー代」にうるさいのか?16本の「論文」と12冊の「本」をビジネススクール教授と読んで「気づく力」を鍛える。 |
★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] 最近自分の会社も理不尽だと思ってまして・・・笑
[目的・質問] 理不尽な理由・・・なんとなく分かっているそれを言葉で把握したい・・というのを目的として読み進めます。
[分類] 336:経営管理
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 清水/勝彦 慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授。東京大学法学部卒業。ダートマス大学エイモス・タックスクール経営学修士(MBA)、テキサスA&M大学経営学博士(Ph.D.)。戦略系コンサルティング会社のコーポレイトディレクションで10年間の戦略コンサルティング経験のあと、研究者に。専門分野は、経営戦略立案・実行とそれに伴う意思決定、M&A、戦略評価と組織学習。テキサス大学サンアントニオ校准教授(2000~2010年、テニュア取得)を経て、2010年4月から現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) |
実に興味深い問題提起から始まります。惹きつけられました。
経験や知識はあるはずなのに、本当の課題や目的が分かっていないことが多いのではないかと思うのです。「どのように今後成長するか」「次の新規事業をどうして育てればいいのか」なんて口では言って「分かったつもり」になっているわけですが、たとえば今の本業は本当に成長の余地が全くないのかとか、本業の顧客は本当に満足しているのかとか、顧客はいったい何に対してお金を払っているのかなんて真剣に考えたことがなかったりします。・・・クリステンセン教授も指摘する通り、「現状の観察と理解」こそが最も大切な出発点であるにもかかわらず、それがあいまいなまま「何しろ良さそうな答え」を求めるとすれば、会社が良くなるわけはありません。ただし、漠然と「目的は何か」「課題は何か」と考えていても分かりません。そもそも課題やチャンスがあっても気づかないかもしれませんし、「できるわけない」「自分とは関係ない」と思ってしまうからです。「目的や課題をとらえる視点」が必要なのです。・・・「経営の視点」がなければ、会社の出来事、数字、あるいはニュースを見聞きしても本当の理解、そして対策につながらないと思うのです。(pp.4-5) |
そんな会社が多くなっているように思います。そのあたりの視点にあらためて、気づかせてくれるとすると、この本、いい感じの予感です。読み進めて行きましょう。
本当はお金だ「失敗から学べない」、つまり「ちょっとした損には厳しく、大きな損には寛容」であるのは、「何奥野孫」といっても、ピンとこないからです。その意味で、「当社の業績は赤字なのに、社員は全然危機感がない」のは当然かもしれません。どうすればよいか?それはまさにこの法則「凡俗の法則(the Law of Triviality)」が示すように、ビジョンにしても戦略にしても、あるいは危機感にしても「凡俗にも実感できるようにする」ことだと思います。・・・ただ、本当はお金の問題ではないのだろうと思います。自分がこの会社をどうしたいか、自分がやりがいを持って充実した仕事をしている姿をイメージできるか、経営者が社員と将来像を共有できているか、問題の本質はそんなところにあるように思います。「星の王子様」で有名なサン・テクジュペリの言葉を思い出します。「船をつくるなら、材木の切り方やカンナのかけ方を教える前に、海への情熱を伝えよ」(p.23) |
「海への情熱」・・・そうですよね。それがやりがいとなり、またやりがいを維持・向上ののエネルギーとなりますものね。
Yコンビネーター(YC)では原則「創業者が一人だけのスタートアップには出資しない」というルールがあります。一人だけでは、そもそも主に出ることはもちろんですが、もう一つの理由として「共同創業者がいないという事実そのものが、友人たちの信頼を得られなかった証拠である」からです。(pp.37-38) |
mo問題は、他社にどうやって勝つか、何が自社(創業者)にはできて、他社にはできないかということです。その意味で、YCでは、市場の成長性だけでなく「創業者にしかできないことは何か」「創業者がその市場にフィットしているかどうか」をよく考えるとアドバイスしています。(p.42) |
突き詰めていけば、ビジネスの原点とは、自分(たち)の夢に対して社員や顧客、あるいは投資家をどう巻き込むかという一点に尽きます。いつの間にか、その夢を達成するための一要素であるはずの「常識」があなたと夢の間にたちはだかっていたりしないでしょうか?スタートアップ企業を見ていて、「青いな」「できるわけないのに」といった冷ややかな思いの裏に、ちょっとしたうらやましい気持ちがある理由はそんなところにあるのかもしれません。「常識」とか「分別」とかいう言葉に隠れて見ないふりをしていた「夢への情熱」を見せつけられる悔しさです。(p.51) |
大きなリスクを冒す必要は必ずしもないのですが、ときに「ばかなやつ」「なぜあんあことを」という挑戦をしてみることこそ、自分の、あるいは組織の能力を最大限に発揮させ、わくわくを取り戻すために必要なことではないでしょうか。自分が必ずできることを繰り返しても、心が躍ることはないですし、その意味で「不安」はわくわくに大切な要素なのです。起業家であろうと、上場企業の役員であろうと「stay hungry, stay foolish」がグッとくるのは、「攻撃は最大の防御」であることを思い出させてくれるからだと思うのです。(pp.51-52) |
たとえば、AとBに相関関係が見られる場合、AがBの原因ではない可能性として、サンプリングの問題以外に次のようなポイントが挙げられます。(p.64)
|
これらは前半の分ですが、書籍から12冊、論文を16本、選ばれて解説をつけてくださっています。
◆第1部 書籍篇 【第1章】 なぜわが社は「何億円もの失敗」より「タクシー代」にうるさいのか? ?『パーキンソンの法則』C.N.パーキンソン著 【第2章】 攻撃は最大の防御 ?『Yコンビネーター』ランダル・ストロス著 【第3章】 「満足度調査で5点満点中4・5点」ではイマイチな理由 ?『データはウソをつく』谷岡一郎著 【第4章】 人材教育における「教」と「育」の本質的違い ?『ものづくり道』『石橋を叩けば渡れない』西堀榮三郎著 【第5章】 部下を「指導」してつぶしていないか? ?『心理療法序説』『カウンセリングを語る』河合隼雄著 【第6章】 40年前に語られた日本のグローバル化の課題 ?『適応の条件』中根千枝著 【第7章】 リーダーシップは自分の中にしかない ?『リーダーは自然体』増田弥生/金井壽宏共著 【第8章】 「自分で気づく」から自分を変えられる ?『負けかたの極意』『そなえ』野村克也著◆第2部 論文篇 【第1章】 あなたの会社が理不尽な理由 ?組織の不合理さを説明する「制度派理論」 論文① 論文② 【第2章】 「正しい」からではなく「interesting」だから心に残る ?大学教授必読の論文「That’s Interesting!」 論文③ 【第3章】 「戦略バカ」で日本に負けた欧米企業 ?MBAの古典的論文「ストラテジック・インテント」 論文④ 【第4章】 「ワクワクするビジョン」のパラドックス ?経営とはジレンマへの挑戦 論文⑤ 論文⑥ 【第5章】 意思決定のスピードを決める意外な要因 ?シリコンバレー企業の勝因と敗因 論文⑦ 【第6章】 「分析」で人間組織は動かない ?ポーター理論への痛烈なアンチテーゼ 論文⑧ 【第7章】 「知識」がないから失敗するのではない ?失敗から学ぶための質問は「Why」ではなく「How」 論文⑨ ※参考 論文⑩ 【第8章】 50年前のアメリカ企業の失敗の轍をより深く踏む日本企業 ?「グローバル・マインドセット」とは何か 論文⑪(※有料) 【第9章】 いまどき5年計画をつくっているのは旧ソ連くらい? ?不確実性に対する「リーン・スタートアップ」という考え方 論文⑫ 論文⑬(※有料) 【第10章】 そもそも「取締役」ってなんだろう? ?コーポレートガバナンスの本質を考える 論文⑭ 【第11章】 なぜ愛は急に失われるのか? ?本来ポジティブなのにネガティブにひかれる人間の性 論文⑮ 【第12章】 インドで考えた組織的コミュニケーション ?国際化、IT化が迫る原点の再考 論文⑯(※有料)まとめにかえて この本を読んで「行進したい気持ち」になりましたか? 『風の果て』藤沢周平著 |
元々はこちらの「日経ビジネスオンライン」で連載されていたものだそうです。
こちらをご確認いただき、気になる書物、チェックされてはいかがでしょうか。ここで選ばれている書物・・・間違いなく「気づき」の得られるものたちだと思います。