リサーチ・マインド 経営学研究法

リサーチ・マインド 経営学研究法 (有斐閣アルマ)

リサーチ・マインド 経営学研究法 (有斐閣アルマ)
著者:藤本 隆宏,新宅 純二郎,粕谷 誠,高橋 伸夫,阿部 誠

★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] 博士論文を書くに当たり・・・エッセンスを吸収。
[目的・質問] 各先生方から得られるところ吸収します。

「良い研究」をすることは難しいが、一般に「良い研究」とは、それがなかった時に比べて現象の観察者が、より良く世の中の現象を理解でき、説明でき、場合によっては予測できるような言説・命題のことであろう。また、その現象の当事者にとって、その研究成果を知った方が、より良い行動ができる、という場合、それは「良い研究」であろう。(P.2-3)

非常に分かりやすい定義です。

一般に、アカデミックな研究成果は、ある概念(構成概念:construct)の群、およびその間の関係(因果関係など)に関する、一連の言説、つまり概念のシステムとして示される。そうしたアカデミックな研究成果=概念のシステムは、少なくとも、①論理的に整合的(無矛盾)で、②経験的妥当性があり、③既存の研究成果(理論)との関係が明確である、ということが望ましい。(今田[2000])むろん、研究によって力点の置き方が違う。しかし、現代企業の持つ多様性・多面性を、できるだけありのままに記述・分析する傾向の強い「組織論」や「経営学」においては、「経験的妥当性」はかなり重視される。(P.3)

経営学の実証研究・・・これは曲者です。それこそPEST分析ではありませんがたまたまその環境で、かつそれを取り巻く5フォースのなかでの事象であり、一般化するのが難しいでしょうから。

ある言説が持つ「経験的妥当性」とは、それが「現実」をリアルに再現している程度である。「経験的妥当性」の第一の側面は、その言説が「測定された現実」と整合的だ、ということである。・・・「測定された現実」に対しては、その信頼性や客観性を論じることができる。ここで「客観的」とは、だれが測るかによって測定結果が影響されない度合い、といった程度の意味である。つまり、「経験的妥当性の高い研究成果」とは、まずもって、「測定された現実」と整合的な命題(概念システム)である。「経験的妥当性」のもうひとつの側面は、企業で働く実務家にとってのリアリティとの整合性である。・・・実務家の主観的な世界観(持論の体系)に根拠を与え、あるいはそれをゆさぶり、実務家の世界に何がしかのインパクトを与えられるか、という基準である。(P.3-5)

「人」を研究対象とする学問ならではです。

「理論家」とか「実証派」といった言葉が、社会科学ではよく使われる。・・・強いて言えば、ある命題を作り出す際に、既存理論との論理関係を重視するのが広義の「理論派」で、経験的妥当性を優先させるのが広義の「実証」であろうか。いずれにしても、その命題そのものが論理整合的であることは、理論・実証どちらであっても必須だ。(P.7)
理論的仮説において用いられる、意識的に厳密に定義された、抽象的な概念のことを「構成概念(construct)」と言う。・・・理論的仮説は少なくても次の3つのルートから作ることができる。
①数理的演繹法:既存理論から論理的に演繹することによって、新しい研究可能な理論的仮説を導き出す。
②統計的帰納法:ある体系的なルールに従ってある変数群に関して測定されたデータを分析し、変数間の関係の規則性を発見する。それから、その理論的な意味や、現実において対応する因果関係などを推測する。
③意味解釈法:「現実」の直接観察の結果、当事者の発言、あるいは「現実」を反映すると推定される歴史的資料などを、研究者自身が「意味解釈」し、その結果としてのフィールド・ノート(エスノグラフィー、モノグラフ)などを、ある一貫した概念で「解釈」する。そこから、一般化可能な理論的仮説を抽出する。(P.11-12)
過去の理論との関係・位置づけが明確で、なおかつ実践的な有用性も期待できそうな「研究可能な理論的仮説」が見つかったとすれば、次に、それに対応する「検証可能(testable)な命題」を導出する必要がある。これを概念の「操作化」(operationalization)と言う。厳密に言えば、「半鐘可能な命題」の導出である。(P.12)
「理論的な仮説」と「反証可能な命題」の橋渡し、つまり「概念」と「指標」の橋渡しをするのは、「妥当性」(validity)である。測定された指標(measure,indeicator)が「良い指標」である度合いを示すのが、「妥当性」である。(P.14)
レフェリー付き論文を通すための「しきたり」としての「妥当性」や「信頼性」のチェックは、それはそれとして重要だが、もっと素朴なレベルで、データの信頼性・妥当性をたかめるためのあらゆる努力が必要である。・・・制度としてのアメリカ型論文のレフェリー制の限界であるかもしれないが、研究者である限り、素朴なレベルでの妥当性・信頼性アップのための自主的な取り組みは必要である。(P.17)

第8章に「世界観の作り方」と題された先生方のリレートークがあるのですが、ここは秀逸です。

3つの世界観(P.240-244)
・何が正しくて、何が間違っているのかについての目利き的「世界観」(共通)
・何が面白くて、何がつまらないかについてのテイスト的「世界観」(分野別)
・独自の「世界観」(強烈な個性)
特定の世界観や土俵を持つことには、ネガティブな側面もあることを意識しておかなければなりません。トーマス・クーンのパラダイム論(「科学革命の構造」)で議論されていることがその典型でしょう。(P.245)
若手研究者が「君には世界観があるねぇ」と言われるような学者になりたいのであれば、まず第一に、自分の考えをストレートに表現する努力を平生から心掛けること、第二に、繰り返しを恐れないで自分を表現すること、そして第三に、日頃からその言動を信頼される人間になること、が大事でしょう。特に第三の要素が鍵でしょうね、ある「繰り返し」が人から好かれるか嫌われるかは、もっぱら発言者の日頃の行い、人徳、識見、周囲の信頼の積み重ね、等々の相互作用で決まってくるのですから。要するに、日頃の修練が事後的に「世界観」を生み出す、というのが私の考え方です。(P.253)

僕も僕なりの世界観、ぶれないもの・・・まだ持ててないですね。でも日々精進し続けることで一歩一歩近づいていきたいです。

[amazonjs asin=”4641122385″ locale=”JP” title=”リサーチ・マインド 経営学研究法 (有斐閣アルマ)”]

(気に入ったら投票をお願いします!)

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください