アマゾンと物流大戦争


アマゾンと物流大戦争 (NHK出版新書 495)

アマゾンと物流大戦争 (NHK出版新書 495)
著者:角井 亮一

内容(「BOOK」データベースより)
アマゾンが仕掛ける物流革命から、今、経済の地殻変動が起こり始めている。ウォルマート、楽天、ヨドバシカメラ―アマゾンに立ち向かうための戦略はあるのか?あらゆるビジネスを飲み込む巨人アマゾンの正体とは?流通先進国アメリカで取材を重ねる気鋭の物流コンサルタントが、日米ビジネスの最前線からレポートする!

★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] アマゾンに勝つ方法なんてあるのか?
[目的・質問] 何かしら、そのヒントを掴むぞ!
[分類] 024:図書の販売

「024 :図書の販売」という分類はよく分かりませんが、上記の内容にありますように「巨人アマゾンの正体」について、チェックしていきたいと思います。

世界一を標榜して1995年にスタートしたアマゾンは、2000年代に入り次々と新しい商品ジャンルを切り拓き、メーカーと消費者とをインターネットでつなぎ、世界に向けてあらゆる商品を販売する「エブリシング・ストア」へと成長を遂げました。(p.20)

特に驚きとして挙げられているのが、話題にもなった「お坊さん便」です。

アマゾンは徹底して「顧客中心主義」を貫き通すため、商品を供給する側ではなく買う側を優先してきました。彼らは真正面から声をあげるわけではありませんが、顧客のために透明性の高い価格で、しかも従来よりも低価格でサービスを提供するのが顧客のためだ、というスタンスを絶対に崩すことはないのです。(p.22)

ここは勝てません。消費者のお財布も固く、厳しい状態です。日本の企業は全般的に短期的な視点が強く、どうしても「利益」となってしまいがちで、そうなると、無意識に「顧客中心主義」から少しずつ距離をとってしまうかたちになっていきます。そうなるとさらに悪循環となり、顧客が離れていってしまうわけです。

こうした「顧客中心主義」はアマゾンの利用者としては歓迎すべきことでしょう。さまざまな商品を安く買うことができ、確実に、速く手元に届きます。顧客を相手にする小売・流通業にとって、他店より安いことほど、消費者を喜ばせるものはありません。(p.22)
アマゾンが脅威だと感じてしまう第二の理由をもう一度述べましょう。アマゾンは高度なロジスティックを用いて低コスト化を実現し、その利益のほとんどを自社の物流ネットワークを築くための投資に回し、また顧客の代弁者としてさらなる低価格での商品の提供を始め、扱う商品の種類を増やし、また来客数が増え・・・。その繰り返しこそが、彼らにとっての良循環であり、最大に武器です。この良循環がアマゾンの売上高を飛躍的に伸ばし、扱われる商品が次々と増えることこそが、隣接する業界でビジネスを行うすべての企業にとって脅威なのです。(p.23)
アマゾンが考えるエブリシング・ストアというのはお題目ではありません。小売・流通だけではなく、物流、さらには宅配までを視野に入れ、形あるもの、顧客へ物として届ける必要のあるもののすべてを、取り扱おうと、アマゾンは虎視眈々と機会をうかがっています。(p.29)

アマゾンはインターネットの通販を始めるに当たり、なぜ最初に本を扱うことにしたのでしょうか?その理由をジェフ・ベゾスの発言から読み取ると、次の二つにまとめることができます。

第一に、本は差別化とは縁のない商品です。本はどの書店に行っても、まったく同じものを買うことができます。他の商品と比べて不良品が混ざることも少なく、在庫が残ったとしても賞味期限があるわけでもありません。顧客は商品の質を心配することなく、買い物ができます。

第二に、書籍は300万点以上(当時)も存在しており、店舗とは異なり書棚に制限のないネット通販であれば、大型店舗に勝る品揃えを実現できます。本のように多品種の商品を販売しなければならない分野であれば、顧客に喜ばれる豊富な品揃えを実現し、オンラインでしかできないネット書店を作れる、とジェフ・ベゾスは考えたのです。(p.36)

あとから聞くと、そりゃそうだ!って感じですが、これにあの時代に気付くことができたか・・・そこなんですよね。

モール型ネット通販のデメリットは3つ考えられます。
1つ目は、物流品質のバラつきです。物流がそれぞれの店舗に委ねられているため、いざ保管状態が悪い、梱包が雑になる、配送が遅れるなど物流品質に問題が出た場合、改善に時間がかかり効率も悪い点が挙げられるでしょう。物流品質が安定しないと、顧客からの信頼を失いかねません。
2つ目は、規模のメリットが生じない点です。それぞれの店舗が個別にメーカーから商品を仕入れるため、大量に買うから割引してもらうこと(ボリュームディスカウント)ができません。これは宅配業者との配送料の交渉でも同じことです。メーカーにしても宅配業者にしても、1か所との取引でこそ量の割に手間(出荷・集荷コスト)も少なくなり、値引きすることができるのです。
3つ目は、お客にとって利便性が悪い点です。お客にとっては1回の注文だったとしても、商品をモール内の違う店舗で買った場合は、それぞれの店舗から配送されてくるので、それぞれに配送料がかかってしまいます。(p.50)

このあたりは、ビジネスモデルを学ぶ上で、良い材料になりますね。

こうしたデメリットは、アマゾンのような総合ネット通販のロジスティックスが洗練されてくればくるほど、不利に働いてくるものです。総合ネット通販の場合、物流品質は年々向上されますし、売上高が大きくなることで価格競争力も出てきます。物さえ揃えばもちろん配送は1回でまとめて行うことが可能です。(pp.50-51)
ロジスティックスを楽天は短期で買えるもの、つまりコストだと考え、アマゾンは長期で構築する投資だと考えたところに決定的な違いが現れました。(p.55)

これは「人」にも言えますよね。コンサルタントを雇って済む話と、自社内でそういった人材を育てていくのと。コストと見るか、投資と見るか。このワードは深いです。

1998年から99年にかけては、B2Bをビジネスの中心としていた佐川急便が宅配便を正式に開始したことで、1年間で5億個以上も取扱個数が増えました。そして2013年には36億個を超え、1日あたり1000万個、国民一人当たりで単純換算すると、年間30回は宅配便を利用していることになります。(p.72)

これはすごい!そんなことになっていたんですね。

ジェフ・ウィルケは、顧客からの注文をピッキングし、梱包する作業を次のように言い表しています。「顧客の注文通りに組み立てていると言った方がいいでしょう。作業内容は小売業より製造・組立の現場にずっと似ているのです。」この言葉はネット通販の物流センターにおけるピッキングと梱包の作業が、いかに従来のものとは違っているかを言い表しています。このように商品の管理やピッキング、梱包や配送などを一括でフルフィルメント(遂行)するところから、アマゾンは自社の物流センターを「フルフィルメントセンター」と呼ぶようにしました。その後も、アマゾンは物流拠点を次々と開設し、物流システムを磨き上げていきます。新しいシステムでは、顧客が4,5種類など複数の商品を注文すると、顧客の住所、注文の商品を在庫している物流センターの位置、発送時刻などをソフトウェアが確認して、すべての変数を考慮した上で「最も速く」「最も安い」方法を算出できるようにしました。(p.115)

細かいようですが、10点くらいで拠点が全部分かれていたとすると、計算量が莫大で、さすがに「最適」でなく、「最適に近い」なんでしょうけどね。

アマゾンは、こうした優れたロジスティックスを構築することにより削減された物流コストを、マーケティングにではなく物流へのさらなる投資と、商品の価格削減のための施策につぎ込みました。ウォルマートに学んだEDLPの実践です。(p.115)

ここも「本やCD」という商材だからこそできるマーケティングなんでしょうね。

カル・ラーマンが手を付けたのが「自動値付けボット」です。このプログラムはインターネット上で存在するライバル企業の商品価格を調べて、アマゾンの価格を自動的に調整するものです。ユーザーにとっては魅力的な仕組みであり、ネット通販が生み出したEDLPの進化系いえるかもしれません。自動的にライバルより安い価格をつけていくという仕組みがある時点で、アマゾンがいかに「最も安い」ことに重きを置いているかがわかります。(p.116)

先日、内蔵SSDを探していたのですが、ここのところ需要が供給を上回っているのか値上げされています。欲しかった商品がヨドバシが踏ん張っていたので、ヨドバシで注文しました。どちらも入荷待ちのステータスでしたけど・・・。

価格を引き下げることで来客数が増え、売上が増える。すると固定費である物流システムの稼働率も上がり有効活用することができ、さらに低価格にできる。増えた利益で物流センターを作り、さらに品揃えを充実させることで来客数を伸ばし、売上をアップさせる。この繰り返しでアマゾンは規模を拡大していくことになるのです。(pp.116-117)

さらに補足しますと、通販は会員ビジネス、リピーターの買回り頻度をどう高めていくか・・・顧客をどう繋ぎとめるか、システムだけでなく顧客の稼働率も上げないといけない。利益を確保するために商品単価を上げたりすると、利益が確保できても売上が下がり、稼働率が下がると・・・ヤバいです。

アマゾンが成長するためのドライバー(駆動力)となっているのが「品揃え」と「低価格(EDLP)」です。アマゾンは、この2つの実現するためには何でもやる会社です。その印象を決定づけたのが、2000年に導入された「マーケットプレイス」と呼ばれる仕組みです。別名「サード・パーティ・セラー(第三の販売者)」といいます。(p.118)

しかし、いわゆる一般の小売の場合、次のことが怖いんですよね。

たとえ今はサード・パーティがアマゾンよりも低価格で商品を販売できていたとしても、いつアマゾンがより低価格をつけて販売してくるかわかりません。ロジスティックスを駆使して規模の経済を働かせ、アマゾンはより低価格で商品を提供してきます。サード・パーティがアマゾンにない商品を販売していたとしても同じです。アマゾンが取り扱っていない商品がサード・パーティの売れ筋の商品になれば、アマゾンのバイヤーがその商品を買い付けて販売を始めるでしょう。「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」を理念に掲げるアマゾンです。大切なお客様のために、きっとさらなる低価格を提供するでしょう。(p.124)

何が売れているか、アマゾンには解放状態ですからねぇ。そりゃ売れ筋が分かれば、アマゾンが自分たちで仕入れて、低価格で売りますよね。となると、自社商品ででもない限り、アマゾンのマーケットプレイスは非常にリスキーなんですよね。それこそ、ロングテールの商品で、マーケットプレイス側は物流機能のアウトソース、アマゾンとしては品揃えの充実というこのWin-Winだといいですが、下手にヒット商品が出たりすると、これはアマゾンにすぐに取られてしまうということでしっかりと考えて品揃えの提供をしていかないと大変な目に合ってしまうかもしれません。

アマゾンとロハコの違いはどこにあるのでしょうか。アマゾンが検索データを基に商品開発しているのに対して、ロハコのアプローチはサイト内検索データだけではありません。各メーカーが保有するユーザーのデータや先行販売から得られたデータに基づいて、アスクルとメーカーが綿密に連携しながら商品開発を進めています。あくまでロハコは「データを活用したマーケティングの研究・実践ができる場(プラットフォーム)」という位置づけで、多くの大手メーカーを巻き込み、友好的な関係の構築に成功しているのです。(p.177)
ヨドバシカメラ、セブン&アイ、アスクルの3社は総合ネット通販で、正面からアマゾンと競う企業です。必然的に、ロジスティックスへの投資金額がかさみます。ヨドバシカメラは100億円もの巨額を投資しており、アスクルのロハコもまだ規模の拡大を優先する先行投資段階として、年間30億円もの赤字が続いています。アマゾンは創業から長い間ずっと赤字が続いていたことで知られていますが、物流センターへの投資負担は大きく、体力勝負となるのがネット通販の分野です。今後も激しい競争が繰り広げられるでしょう。(pp.179-180)
一方で、有望な3社のそれぞれの取り組みから、物流大戦争を生き抜くためのヒントがいくつか見えてきました。(pp.180-181)

  1. ラストワンマイルをめぐっての好きな時に好きな場所で受け取れるための取り組み
  2. オリジナル商品の充実による差別化
  3. 「ネット×店舗」のような顧客との接点
ザッポス創業者であるトニー・シェイは、「何かを獲得しようとするのではなく、友情を築くために、あなたが知り合った人に対して、どうすれば心から関心を寄せられるかを見出すことができれば、おかしなもので、いつか将来、ビジネスかプライベートでほぼ確実に何か恩恵を受けるものです」と言っています。日本でいえば、百貨店で長い歴史を持つ「大丸」の理念「先義後利(義を先にして利を後にする)」です。分かりやすく言い換えれば「まず相手のことを考えて行動しよう。そうすれば利益は後からついてきます」ということです。ザッポスでは企業の価値観をとても重要視しており、10のコアバリュー(ブランドが持つ中心的な価値)を定めています。(pp.192-193)

最後に海外の気になる企業が挙げられていましたので、列挙しておきます。

 

【用語集】

  • ストックポイント:配送のために在庫を置いておく場所のこと。
  • ラストマイル(ラストワンマイル):ストックポイントとなる物流センターからお客の家まで商品を運ぶ「配送」の最後の区間のこと。
  • リンク:つながり、つまりトラックなどでの配送のこと。
  • ノード:結び目、つまり物流拠点のこと。
  • ブルウィップ効果(Bullwhip Effect:鞭効果):流通業において最終顧客の需要が変動することにより、その上流に位置する工場や物流センターほど大きな影響を受けること。

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