著者:中原 淳
人材育成・リーダーシップの研究をされている中原先生の著作。「耳に痛いことを伝えて部下と職場を立て直す」と表紙にあります。これがなかなか難しいので、その技術いただきます。勉強させていただきます。(Inobe.Shion) |
内容紹介 今注目の人材育成法「フィードバック」を 図やイラスト、会話例やフレーズで 世界一わかりやすく徹底解説!現代のマネジャーは、かつてないほど部下育成が困難な環境にある。・若手社員や年上の部下に、何を言っていいかわからない ・パワハラが怖くて、思ったことをストレートに言えない ・何より、部下を指導している時間がない……そんな職場コミュニケーションに悩む 全マネジャーを救う人材育成法、その名は「フィードバック」 =「耳の痛いことを伝えて、部下と職場を立て直す技術」 本書では、そんなフィードバックについて その他にも、実際の部下指導の際に使える「フィードバックシート」や、 これからマネジャーになる人はもちろん、 【本書の項目】 第2章 フィードバックの基本モデル 5ステップで実践するフィードバック 第3章 フレーズとセリフで学ぶフィードバックのポイント 第4章 会話例で学ぶ 部下のタイプ別フィードバック 第5章 フィードバックを続けるための事前準備&テクニック 内容(「BOOK」データベースより) |
そもそもフィードバックとは。(p.17)
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今まで部下との面談、何度もやってきました。フィードバックという名のもとに。「しっかり伝える」ということは意識していましたが、単なる「伝える」ではなく「耳の痛いことをしっかりと伝える」、ここが大きな違いで認識しなければならないところのようです。
フィードバックは「ティーチング」と「コーチング」の両方をあわせ持った、より包括的で画期的な部下育成の手法というわけなのです。(p.16) |
フィードバックが注目される理由①
👉人が勝手に育つ環境の崩壊
- 「長期雇用」「年功序列」「タイトな職場関係」で、昔は若手社員が勝手に育っていた。
- 現在はその3つの条件が崩れたので、部下育成が極端に難しい時代になってしまった。
フィードバックが注目される理由②
👉「コーチング」の限界
- 部下育成が難しくなった結果、流行したのがコーティング。
- 偏ったコーチングブームの結果、ティーチングは悪いことだという風潮ができてしまった。
フィードバックが注目される理由③
👉年上部下、年下上司の増加
- 「年上の部下」相対するマネージャーが増えてきた
- マネージャー側も昔ほど十分に管理職としての経験が詰めていない
人が育つには、『経験軸』と『ピープル軸』の両面が必要。(pp.28-30) |
経験軸ー部下の3つの心理空間
1.パニックゾーン
・強い不安やプレッシャーを感じている
・成長どころではない
2.ストレッチゾーン
・適度なチャレンジや背伸びをしている
・能力は伸びやすい
3.コンフォートゾーン
・ストレスがなく、ここちよさすらある
・能力は伸びない
ピープル軸ー3つの他者支援
1.業務支援
・いわゆるOJTの項目
・教えること、助言すること
2.内省支援
・振り返りを促してあげる
・客観的な意見を伝えて、気づかせる
3.精神支援
・励まし、ほめること
・感情のケアをする
効果的なフィードバックの前に立ちはだかる3つの壁について、少し触れておきましょう。 1.人材の多様化 2.パワハラ問題 3.マネージャーの多忙化 |
以下はその3つの壁です。
効果的なフィードバックが阻まれる理由の一つは、「職場の人材が多様になり、フィードバックの難易度が高くなった」ことが挙げられます。「年上の部下に悩まされるマネージャーが多い」ことはすでに述べましたが、フィードバックが難しいのは、「年上の部下」だけではありません。 意外と難しいのは、自分より10歳以上若い部下です。・・・一般的には10歳離れると、支店や価値観は全く違うと言われます。(p.32) |
中途入社の社員は、新卒入社の社員と違って、その会社の色に染められていないので、まったく違ったモノの考え方をする人もいます。人によっては、前職で培った仕事のやり方や仕事の信念を変えてもらわなければならない場合も出てきますが、一度体に染みついたことは、簡単には変えられません。本来ですと、過去に染みついてしまった仕事のやり方や信念のうち、今は通用しないものに関しては、「アンラーニング(Unlearning:学習棄却)」をしてもらう必要があります。しかし大人の「アンラーニング」は痛みを伴います。「痛み」を伴うことは当然避けられう傾向がありますので、簡単には過去の因習を捨て去ることができません。(p.33) |
一般社員と同じ業務量をこなしていれば、それだけで時間はあっという間に過ぎていきます。これでは、部下とじっくり向かって育成することができないのも無理はありません。フィードバックをするには、その部下の情報を集めたり、面談をしたりすることが必要になります。部下育成は「観察」に始まり、「観察」に終わるのです。しかし、そんな時間など取っていられないというわけです。(p.37) |
ここからが実践編となる第2章に入ります。
フィードバックを成功させるには5つのステップがある 【事前】情報収集 1.信頼感の確保 2.事実通知 3.問題行動の腹落とし 4.振り返り支援 5.期待通知 【事後】フォローアップ |
部下に納得してもらうためには、問題のある行動を「具体的な行動」にかみ砕いて伝える必要があります。そうしたときに参考になるのは「SBI情報」という考え方です。SBI情報とは、、「Situation(どのような状況で、どんなときに問題であったか)」「Behaviour(どんな行動が問題であったか)」「Impact(問題行動がどんな影響をもたらしたのか)」に関する一揃いの部下についての情報のことで、SBIとはそれぞれの頭文字をとったものです。マネージャーは、事前に部下を観察しておき、SBI情報を集めることが欠かせません。要するに、フィードバックは事前準備が最も大切であり、そこから勝負が始まっているということです。(pp.45-46) |
部下を観察し、SBI情報を集めるときに、大切なことが2つあります。1つ目は、観察する段階では、上司の主観や解釈や評価をなるべく排して、行動の観察に徹することです。2つ目はなるべく多くのSBI情報を収集することです。、一つのシチュエーションだけでなく、いくつかのシチュエーションについて、情報を集めておくということです。(pp.47-48) |
SBI情報はたくさん集めるほど、部下の問題行動について多角的に検証することができ、フィードバックをするときの説得力が増します。マネージャーによっては、自分だけではなく、部下の周囲にいる第三者にヒアリングを重ねて、さまざまな人の視点からSBI情報を仕入れる人もいます。多角的な情報収集のことを「トライアンギュレーション:Triangulation(三角測量)」と言いますが、これによって精緻な情報を集めることができます。(p.48) |
フィードバックで最も重要なことは、部下に信頼してもらうことです。フィードバックがうまくいくかどうかは、「何を言うか」もさることながら、「誰に言われるか」が非常に重要です。相手に対してリスペクトを持って接しなければ、信頼感が得られず、話に耳を傾けてもれあえません。フィードバックが成功するためには、たとえ耳の痛い話が合っても受け入れることのできる「感情の安定性」が大切なのです。仮に内心は部下に腹を立てていたとしても、相手の成長を願い、相手をリスペクトする態度で臨みましょう。(p.49) |
大切なことは、この面談の「目的」を、最初にストレートに述べてしまうことです。「問題のある行動を指摘するので、一緒に話し合って、改善策を考えよう」といった趣旨のことを最初に言うのです。相手を傷つけたくないからといって、目的をはっきり言わず、回りくどい言い方をする人がいますが、フィードバックでは「痛み」を避けることはできません。むしろ、回りくどい言い方をした方が、「何が言いたいのかわからない。はっきり言ってくれ」と部下をイラつかせます。しっかりと部下に向き合い、この面談の目的を伝えましょう。言いにくいことはストレートに言う、と同時に言いにくいときこそ言い方に気をつける。これが原則です。(pp.52-53) |
目的を伝えたら、次に、収集したSBI情報を元に、「どのような行動に問題があるのか」を伝えます。ここで最も重要なのは、なるべく具体的に把握した相手の問題行動を「鏡のように」伝えることです。言うまでもなく、「鏡のように」伝えることです。言うまでもなく、「鏡のように」とは、できるだけ主観や感情を排除し、起きている事実を起きている通りに伝えることです。部下が反発するのは、上司の指摘に主観や感情が混じっているときです。そのような場合、部下は「それはあなたの勝手な思い込みじゃないか」と思ってしまいます。そうならないためには、事実だと思われることはそのまま伝えることが必要です。鏡のように客観的に話すコツは、「〇〇のように見える」と言うように話すことです。たとえば、「私には、先日のあなたの行動は、こういうように見えるけど、どう思う?」といった具合です。(pp.53-54) |
この段階では、無理に「ほめる」ことも、無駄に「ディスる(非難する)」必要もありません。上司の中には、フォローのつもりなのか、フィードバック後に変にほめる人がいますが、これはたいがい逆効果となります。言われた部下の中には、「白々しい」と思う人もいれば、ほめた方だけを覚えていて、一番大切な「耳の痛いフィードバック」をすっかり忘れてしまう人もいます。(p.54) |
●フィードバック時のセリフ(GOOD)
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●フィードバック時のセリフ(BAD)
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その他いろいろなことが書かれています。TIPSとしてピックアップしていきましょう。
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どうしても事例の会話のフローは、絵に描いたようにOKはうまくいっているし、NGはおかしくなっているし、よくありがちな会話のシミュレーションですが、説明やまとめが分かりやすくなっているので、無理のない内容になっています。
マネージャがチームをマネジメントしていくうえで、非常に重要な機会である「フィードバック」というところに焦点を絞っているところがいいです。でもこのテーマでしっかりと1冊になる内容ですが、なかなか会社の中では、「フィードバックの仕方」というような研修も、あまりないでしょうし、あったとしても1度きりで継続的にそのスキルを磨く機会なんてないですよね。それは非常にまずいですね。何とかしていかないとね。というようなことも考えさせられる内容でした。