人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学

人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学

著者:松本 健太郎

話題のデータサイエンティストが解き明かした、大ヒット&大ブームの「悪魔の法則」…人間の50%はクズである!「キレイごと」より「本音トーク」がウケる理由、「メガ盛り」が食べたいのに「サラダ」が欲しいと嘘をつく心理、人々を新型コロナ論争に駆り立てるバイアス…。「つい、買わされてしまう…」禁断のテクニックを解説!

めちゃくちゃ腹落ちしますね。これこそがデータサイエンティストの醍醐味だと思います。私も長年BtoCでのデータマイニング~データサイエンスをやっていますが、よく面接でもデータサイエンティストとして応募があるのですが、ここが分かってないとBtoCのデータサイエンティストとしては難しいという観点で厳しく見てしまっています。

 

実例について、行動経済学の要素をうまく絡めながら説明してくれています。BtoCマーケティングをしていくうえで、そしてそれを下支えするデータアナリシス、データサイエンスとして忘れてはならない大事なポイントが列挙されています。Kaggleなどのデータコンペで設定された課題の精度を上げるということも大切ですが、この洞察力がないと実務では役に立たないと思っています。

人間は少しでも自分をよく見せたいという願望が働いて、騙すつもりのない「キレイな嘘」をつく場合がある
・マクドナルド
「サラダマック」売れなかった
「クォーターパウンダーやギガビッグマック」のヒット

ときどきガッツリしたおいしさが味わいたくなって、背徳感を感じながらも食べてしまうのがマクドナルドらしい

【気分一致効果】(p.35)
おいしい料理をたらふく食べて食欲が充たされている

 

【損失回避】(p.38)
利益の獲得より損失の回避を好む傾向。投資で損きりできないなどはこの典型的な事例。

【サンクコストの誤謬】(p.39)
今まで投資したコスト(お金・時間・労力)のうち、撤退・中止しても戻ってこない分をサンクコストと呼ぶ。サンクコストの誤謬とは、今まで投資したコストが無駄になる恐怖から、これまで行ってきた行為を正当化するために、非合理的な判断を行う状態を指します。読み始めた本や見始めた映画を面白くもないのに最後まで見てしまうことなどはこの事例。

【アンカリング】(pp.51-54)
アンカーと呼ばれる「先に与える情報」から判断ゆがめてしまう現象。「どこに基準を置くか」で人間の意思決定や感情が大きく変わってしまう。ヒット商品におけるニーズの発見の秘訣は、人間の「悪」の1つ、「不満」の見つけ方にあります。「不満」の大半は、「アンカー」との比較によって発生した「不満」なのです。消費者の口から「もう充分」「不満は特にない」と言う言葉が出るのは、消費者が現状に100%満足しているからではなく、不満を生み出すはずの「アンカー」の設定が原因かもしれません。

ほとんどの商品・サービスには「機能価値」「情緒価値」の両方が備わっています。企業の商品開発は、どうしても「機能価値」に目が向きがちです。アンカーLとしても「機能」が使われるケースが多かったと思います。しかし、どのメーカーの「機能価値」にも大きな差がなくなってしまい、消費者はどの商品を購入すれば良いか分からない状況が生まれてしまいました。「機能価値」の限界が訪れたkらこそ、企業の商品開発部門は頭を抱えていたのです。(pp.58-60)

【内集団バイアス】(p.68-69)
自分が属している集団には好意的な態度をとり、そうでない集団には反対の態度を取る傾向。「内集団びいき」とも呼びます。実際に存在する集団だけでなく、見えないないレッテルのようなものも集団と感じれば内集団バイアスが発生する可能性はあります。内集団と自分自身が一体化すると、内集団=自分、外集団 =他人とになってしまい、自分じゃないと集団を遠ざける傾向になります。逆に、遠ざけられたする外集団が、内集団を敬遠する傾向もあります。

【偽の合意効果】(p.70)
自分と他人との間に共有されている「合理性(コンセンサス)」を過度に見積もり、同じ状況になれば、他人も自分と同じ選択や行動するだろうと考える傾向。もし、自分と同じ選択や行動をしない他人に出会うと、その人が特別なのか変わった存在だとみなしてしまう。つまり、自分は「常識人」で、自分の常識に合致しない人は全て「非常識」と「レッテル」を貼ってしまう。

【ダニング・クルーガー効果】(p.73)
能力の低い人物は自身の能力を過大評価する傾向にあり、逆に能力の高い人物は自分の能力を過小評価する傾向にあります。なぜなら能力が低い故に「不足」を認識できておらず、他者の能力もまた正確に推定できないからです。しかし訓練を積み実力がつき始めると、能力の欠落を認識できるようになります。

【正常性バイアス】(pp.90-91)
何らかの被害が予想される状況に陥っても、正常な日常生活の枠組みの中で解釈してしまい、事実を認めず、都合の悪い情報を無視する傾向。人間は自分の知識にしがみついて「まだ大丈夫」だとリスクを過小評価してしまいがち。

私たちが何かを「本当だ」と信じるためには、次の3つの要素が必要だと言われています。1つ目は「専門家」が詳しく解説する。2つ目は「具体的なデータ」を証拠として提示する。3つ目はメディア等で「報道されて広く真実である」と認知される。逆にこれらを逆手にとって、悪意を持った専門家がデータを偽造してメディアに登場する、といった方法で嘘を真実として広められるのです。

【ナイーブ・シニズム】(pp.93-94)
自分より相手の方が自己中心的だと考えてしまう傾向。「人間とは自己中心的な生き物である」と言う見方自体は「シニカル(皮肉、冷笑的)」なので、「(冷笑主義)「と呼ばれています。

「自分は相手の意見を理解するように努力している」のに「相手は自分の意見を理解する努力を怠り、(たとえ正論であろうとも)好き勝手な意見を言っている」ように見えるので正論を言われるほど「勝手を言うな」と思うのです。

【心理的リアクタンス】(pp.96-97)
選択する自由を奪われて、他人から強制されると、たとえそれが良い提案であっても反発・反抗してしまう傾向。

このあとも行動経済学を使いながら具体的な事例とともに分かりやすく解説してくれており、納得感があります。

【結果バイアス】
【確証バイアス】
【無意識バイアス】
【現状維持バイアス】

第3章
【バランス理論】
【生存者バイアス】
【バラ色の回顧】
【「よく知っている道」の効果】
【類似性】
【専門偏向】

第4章
【身元のわかる犠牲者効果】
【感情移入ギャップ】
【誇張された予想バイアス】
【共有情報バイアス】
【イノベーション推進バイアス】
【投影バイアス】

第5章
【ギャンブラーの誤謬】
【確率の無視】
【サンプルサイズに対する鈍感さ】
【錯誤相関】
【観察者期待効果】
【バックファイア効果】

第6章【ナイーブ・リアリズム】
【自己充足的予言】
【バーナム効果】
【単純接触効果】
【同調バイアス】
【敵対的メディア認知】
【ゼロサムヒューリスティック】
【ゼロリスクバイアス】

ちにみに、第2章のM1の分析は順位をキーにして、上沼さんや志らく師匠が極端だというのを示したほうが分かりやすかったようにも思いました。

いずれにしてもBtoCのデータアナリシス・データサイエンスに関わる方には大変学びの多い著作だと思いました。是非、購入して読んでみてください。

そうえいば、一時期、表紙がイラストっぽいときもありましたが、現在は冒頭にあるような黒を基調にしたものに変わっているようです。

 

 

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