9プリンシプルズ:加速する未来で勝ち残るために

9プリンシプルズ:加速する未来で勝ち残るために

著者:伊藤 穰一,ジェフ・ ハウ…

principle、そう「原理」「原則」です。「9つの原理」ということですね。何のことを言っているのでしょうか。伊藤穣一さんといえば、日本でもNHKで放送されているTED(スーパープレゼンテーション)のナビゲーターもされているマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ所長です。さあ、何が出てくるのか、楽しみです。

File:The Knife Grinder Principle of Glittering by Kazimir Malevich.jpeg

内容紹介
◎坂本龍一氏推薦
「ぼくもジョーイの『地図よりコンパス』を指針にしているよ」

◎本書への賛辞
J・J・エイブラムス(『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』監督)
「世界の急激な、現在進行形の進化とは何か。
その批判的な絵解きを、目の覚めるような、痛快で、
なにより素晴らしいのは楽観的なタッチで見せてくれる。
要するに、すごくヤバい本です」

セス・ゴーディン(『セス・ゴーディンの出し抜く力』)
「一読だけでなく再読、再再読に値する、真に重要な著作。
ジョイとジェフがあなたの目からウロコを落とし、喝を入れ、
自分の知り合いの蒙を啓くやりかたを教えてくれる。
あなたは3ページごとに、世界について知っているつもりだった事柄を
リセットする必要に迫られるはずだ。必読! 」

リード・ホフマン(リンクトイン共同創設者)
「テクノロジーが加速度的に進化するわれらが未来の、
必要不可欠にして実用的なガイドブックだ」

私たちはいま、激変する世界に生きている。
この変化は例えて言えば、世界を動かすOSが一新されたような大変化だ。
しかもこれは、少々バージョンアップがされているだけではない――
新しいメジャー・リリースなのだ。だから、慣れるまでに時間がかかる。
本書はこの、世界というシステムの新しい論理についての、シンプルだが強力なガイドラインである。
ビジネスの「ゲームのルール」の激変ぶりに、イノベーションの恐るべきペースの速さに、
むち打ち症(whiplash)にならずついていくために不可欠な、
「9の原理(ナイン・プリンシプルズ)」。
内容(「BOOK」データベースより)
めまぐるしく変化する現代を生き抜くための、「9つの原理(ナイン・プリンシプルズ)」とは?MITメディアラボ所長が贈る、21世紀のユーザーズマニュアル。

オーギュスト&ルイ・リュミエール兄弟がその発明品、シネマトグラフの中に詰め込めるフィルムは、その50秒分だけ、というものでした。しかしその可能性を見出すことはできませんでした。

自分自身の発明の重要性を理解し損ねたという点で、リュミエール兄弟は実に立派な人々の仲間入りを果たした。史上最も高名な発明家、技師、技術家たちの多くは、自分自身の成果が持つポテンシャルを理解し損ねた。実は、もし歴史が指針となるなら、ある技術にいちばん近いところにいる人々こそが、その最終的な用途を一番予測できないらしい。(pp.16-17)

このあたりは全体を捉えるためにも大切な概念だと思われますので、しっかりと引用させていただきます

フランスの哲学者ミシェル・フーコーは、この信念、偏見、規範、慣習のマトリックスが、人々の思考を導くルール群を作り上げ、それが最終的に人々の意思決定を左右すると考えた。彼はそれを「エピステーメー」呼び、こうした思考体系によっていくつかの歴史的時代を同定できると考えた。ちょうど考古学者たちが、歴史的な地層を区別するのに、その時代に使われていた焼き物の種類を使うのと同じだ。古典『科学革命の構造』で、アメリカの科学哲学者トマス・クーンはこうしたすべてを包含する信念体系を「パラダイム」と呼んだ。(p.20)
過去数世紀にわたり、科学思想や実践の発展を慎重に研究することで、クーンは化学や物理といった科学分野が新しい発想を取り込むパターンを同定した。最も慎重な科学者たちでさえ、そのとき主流のパラダイムの「一貫性」を維持するために、しょっちゅうデータを無視したり間違って解釈したりするし、科学理論で断層の最初の徴(しるし)となるような異常(アノマリー)を、勝手な説明でごまかしたりしていることが分かった。たとえば、ニュートン物理学者たちは、天文学上の観測の異常値にこじつけの説明をつけるため、驚くような知的アクロバットをやってのけていた。そうしたアノマリーがいずれ、アインシュタインの相対性理論につながったのだった。こうした転覆―科学革命、またはクーンがパラダイムシフトと呼んだもの―に続いて一時的に混乱が訪れ、それがやがて、新しいパラダイムを中心に新し化学的コンセンサスが形成されるにつれて、安定性へと向かう。(pp.20-21)
われわれの技術は、社会としてそえを理解する人間の能力を追い越してしまったということだ。だからいまやわれわれが追い付かなくてはならない。(p.21)
われわれ原理は、インターネット事業の始め方のレシピではないし、管理職の能力向上を目指すものでもない―とはいえ、どちらの活動もこれらの原理から得るものはあるかもしれないけれど。これらの原理は、世界の新しいオペレーティングシステム(OS)を使うにあたっての有益なヒントだと思ってほしい。この新しいOSは、過去数世紀に使ってきたものを少しバージョンアップしたようなものじゃない。新しいメジャーリリースだ。そして全く新しいOSはすべてそうだけれど、みんなが慣れるまでに時間がかかる。違う論理に従って動くし、説明マニュアルもない。というのも、開発者たちがマニュアルを作ったとしても、添えを手に入れるころにはもう古くなってしまっているはずだから。(p.23)
技術が存在しなかったせいじゃない。結局のところ、技術は単なる道具でしかないからだ。-人間のアイデアによって活力を得るまでは、役立たずの動かない物体でしかない。(pp.27-28)
実は複雑な生命というのは、この惑星ではかなり最近の現象だ。もし地球史を1年にまとめたら、陸棲動物が登場するのは12月1日で、恐竜が絶滅するのはクリスマスの翌日になる。類人猿が二本足歩行を開始するのは大晦日の夜11時50分あたりで、記録された歴史が始まるのは深夜の数ナノ秒前だ。(p。28)

 

 

さらに最後の10分を1年だとすると・・・・

そしてその後ですら、変化は氷河まがいの遅々としたペースで進む。こんどは最後の10分間ー「行動的に現代の」ヒトの時代―が1年だとしよう。12月までは何一つ起きない。シュメール人たちが聖堂の鋳造を始めるのは12月の第一週で、初の記録された言語が登場するのはその月の半ば、キリスト教が広がり始めるのは12月23日だ。でもその頃のほとんどのヒトにとって、人生はいまだに厳しく、粗野で短いものだった。12月31日の夜明け直前に、その勢いがやっと早まりだす。大量生産が工業時代をもたらしたからだ。その朝、鉄道路線が陸地を横切って花開き、人類はやっと馬より速く移動し始める。その先一日は大活躍となる。午後2時頃、乳児死亡率と期待寿命ーどちらも1月のアフリカ脱出以来ほとんど変わっていないーは抗生物質導入で改善する。午後遅くには地球を飛行機が周回し、夕食頃には金持ちの企業がメーンフレーム・コンピュータを買い始める。(p.28)

長い歴史観で捉えてみると、我々の一生なんてほんの短いものであることの再認識と、今生きているこの時代はものすごい速さで進化いしているということです。そのなかで戦ってための9プリンシプルズということになってくるのでしょう。

ますます明らかになってきたように思えるのは、ネットワーク時代の根本条件は単に急激な変化ではなく、絶え間ない変化だということだ。ほの数世代のあいだに―1年間の比喩を続けるなら午後10時以来ー安定期は短くなり、新パラダイムへの破壊的な移行はますますひんぱんに起こっている。遺伝学、人工知能、製造業、輸送、医療における目前のブレークスルーは、この力学を加速する一方だ。(p.29)
変化はこちらの用意ができてるかどうかなんて気にもしない。変化は前世紀のどこかで人類を追い越した。いまは幾何級数の時代だ。そしてそれが、われわれの時代を定義づける3つの条件をもたらしている。(p.30)

 

その3つとして挙げられているのは、「非対称性」「複雑性」「不確実性」です。

これらの背景をもとに、この著書では9つの原理が挙げられています。

  1. 権威より創発
  2. プッシュよりプル
  3. 地図よりコンパス
  4. 安全よりリスク
  5. 従うより不服従
  6. 理論より実践
  7. 能力より多様性
  8. 強さより回復力
  9. モノよりシステム

以上の9つについて、それぞれの章を立てて、説明がされています。

世界は根本的な構造変化のただ中にある。われわれは、古い条件付けに当てはまらないから見逃しかねないものを、見て適応する能力をしっかり身につけられねばならない。われわれは、世界が完全に変わり、そして人工知能により在命中にまたも完全に変わるかもしれないフェーズを通過しつつあるのだ。(p.308)

さらにこの最後のたとえは秀逸ですね。面白い表現です。

人類は根本的に適応できる。われわれは、適応性よりも生産性に注目した社会を創り上げた。本書の原理は、柔軟になって、新し役割を学び、それがもう機能しなくなったら捨てられるようになるよう手伝ってくれる。もし社会が、ランニングシューズを超音速ジェットに取り替えたときの最初の鞭打ち症を生き延びられたら、われわれはそのジェットからの光景こそまさに自分たちが求めていたものだということを発見するかもしれないのだ。(p.308)

訳者あとがきもなかなかうまく書かれています。

一言でそれは、面白がる能力を持て、ということでもある。それが本書の大きな論点だと僕は思っている。・・・そして本書の9つのプリンシプルは、まさにそれを行うためのガイドラインではある。もちろんそれは、キャッチ―な表現にはなっているし、いろいろ複合的な要素は持ているけれど、敢えて平たく泥臭く書き直してみると、こんな風になるかもしれない。(p。328)

  • 自然発生的な動きを大事にしよう
  • 自主性と柔軟性に任せてみよう
  • 先のことはわからないから、おおざっぱな方向性で動こう
  • ルールは変わるものだから、過度に縛られないようにしよう
  • むしろ敢えてルールから外れてみることも重要
  • あれこれ考えるより、まずやってみよう
  • ピンポイントで総力戦をやっても外れるから、取り組みもメンバーも多様性を持たせよう
  • ガチガチに防御を固めるより回復力を重視しよう
  • 単純な製品よりはもっと広い社会的な影響を考えよう

この「おもしろがる」・・・これが何よりも大事だと思います。つねに何に対してもおもしがっていられたら、いろいろなものが引っ掛かってきます。そう、私が常日頃言っている「アンテナを張って!」というのもに通じます。非常に興味深い内容でした。

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