情報力で勝つ企業戦略

情報力で勝つ企業戦略―The Power of Now

情報力で勝つ企業戦略―The Power of Now
著者:ヴィヴェック ・ラナディヴェ

商品説明
ワールドワイドにネットワーク化された世界において、成功する方法とは? 顧客に密着し続け、競争を勝ち抜くには? それらの答えとして、さまざまなマネジメント論が出版されている。本書が主張している「イベント・ドリブン・カンパニー」という企業像は、言葉としては目新しいものの、マネジメント論としては言い尽くされている。理想的な「イベント・ドリブン・カンパニー」の姿を論じているが、そのための“ツール”を紹介することに主眼を置いた本であるとも取れる。そのツールとは、TIBCO社が提供しているシステムである。本書の著者であるヴィヴェック・ラナディヴェは、TIBCO社のCEOである。彼は、イベント・ドリブン・カンパニーを、「リアルタイムの生きた情報を手に入れ、それを使う体制を整え、適切な使用ができる企業」であると定義している。また、「世界的なマーケットを目指して視野を拡大する」グローバル展開と同時に、「さらにきめ細かい、1対1のミクロマーケティングのテクニック」、すなわち、顧客満足を両立することが必要であるとしている。現在のビジネスの状況とは、「片目で望遠鏡をのぞきながら、もう片方の目で顕微鏡を見るよう求められている状態」であるという。マネジメント論としての本書の内容には、特に目新しいものはない。社員のあるべきスタンスについても書かれているが、それも言い尽くされていることである。ただ、TIBCOのソフトウェアについて知りたい人にとっては、わかりやすい本である。(朝倉真弓)

★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] TIBCO社のCEOというのを見て。
[目的・質問] 原題の「The power to know」を堪能したいと思います。
[分類] 336.1:経営政策、経営計画

皆さん、TIBCO Spotfireという製品をご存知でしょうか?
いわゆるBIツールと呼ばれる分類にあたる企業で使われるツールです。検索などで、データベースから必要なものを抽出することは皆さんもよくあると思いますが、このツールを使うと必要なデータに対して、グラフ化された状態で見ることができます。しかもそのグラフのなかで気になるところをクリックすると、それを深掘りしていくことができるという、リアルタイムの「現状把握」であり「問題発見」を行うことのできるツールです。

私もこれを使っていて、著者のヴィヴェック ・ラナディヴェ氏はこの抜群に優れたツールを作っているTIBCO社のCEOということを知って、興味津々で読み進めていきたいと思います。

新製品の鮮度が下がるスピードに負けず、最大限の効果をあげ、競争で優位に立つための、最高の方策は、きちんと組織化された、リアルタイムの、生きた情報配信システムを導入してビジネス効率を高めたうえで、管轄する領域全体のビジネス事情を把握し、建設的な判断をただちに下せるようにするということだ。組織全体に散らばっている、付加価値の高いリアルタイム情報を把握するのが、その第一歩である。情報とは、トーマス・スチュワートが著書『知的資本:組織の新しい財産』で述べたように、「知識の原材料」でしかない。競争を有利に進める企業は、統合的な、リアルタイムの情報配信システムのための技術インフラを整備すると同時に、情報をまず知識に、それから行動へと変換する、社員の心理的土壌をつくりあげている。(p.18)

この本、なんと2001年の本なんです。2001年にこれを言っていたということが何よりも驚きです。そしてそれがいま、TIBCO Spotfireで実現されていることが二重の驚きです。

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リアルタイムの、生きた情報を入手し、広く展開して、活用できる企業を、私は「イベント・ドリブン・カンパニー」と呼んでいる。これは、ビジネスを動かす事象(イベント)を敏感に感じ取って、陣遡行に対応する一方、新しい製品やサービスの開発を進めるために、情報のパワーを利用する企業のことである。(p.19)

まだに、今でいうところの、「データ・ドリブン」のところです。本当にこれを2001年の段階で言っていたことに鳥肌が立ってきます。

イベント・ドリブン・カンパニーは、顧客のために、あるいは顧客との間に、バーチャルで統合された、リアルタイムのサプライ・ネットワークを築いて、競争で優位な立場を確保する。(p.19)

著者は、サプライ・チェーンの「チェーン」が固定的な意味合いが強い鎖であり、そぐわないと言っています。このあたりの言葉のセンスも好きですね。

バーチャルで、統合的な、リアルタイムのサプライ・ネットワークを駆使して、顧客の問題を解決する企業だけが生き残ることができるのだ。それらを踏まえた上で、イベント・ドリブン・カンパニーとは、次のように定義できるだろう。(pp.19-20)

  • 何よりも、顧客中心主義の姿勢を前面に打ち出している。
  • カスタマー・バリュー(顧客を満足させるもの)をつくりだす。
  • ウェブを基盤とする顧客に対して、損をしないように、わかりやすく、製品やサービスを提供する。
  • 販売でもマーケティングでも、競争では常に上位を保っている。
  • 従業員に、最高の情報管理用ツールを持たせる。
  • 最も望ましい形で、製造と製品開発を進める。
  • 貴重な知的資本を、最大限に活用し、知識を管理するための、実用的な道具を備えている。
  • 複雑で先の読めない市場に適応して、生き抜くだけの柔軟性を保っている。
  • ビジネス上の重要な出来事があったときは、従業員、顧客、取引先、歓迎会社などに対し、常に最新の状況を提供する。
  • 「幸運な偶然」のように思われることから利益を得ている。そのような幸運が起こるのは、他社よりも情報収集能力に長けている証拠である。

「最高の情報管理ツール」「実用的な道具」・・・・これはまさにTIBCO Spotfireのことですね!

大多数の企業で使われている、「聞かれたら答えてあげよう」式の、受動的なクライアント/サーバー技術とは対照的に、このイベント・ドリブン・ストラクチャは、もっと能動的、積極的なシステムだ。パブリッシュ(発信)/サブスクライブ(受信)のメカニズムによって、情報が、それを必要としている社員のもとに届けられ、顧客の問題を解決する助けとなる。イベント・ドリブン・システムは、ハイレベルな業務を、手順の決まった作業として、人の手を煩わせず自動的に処理するため-ここが重要-人間は例外的な現象が起こったとき、迅速に対応し、その処理に専念できる。(p.23)
このような「例外による管理」を行う、イベント・ドリブン・カンパニーは、大多数の社員の注意を、小さくて地味だが、通常の状態をはずれた状況の処理に向けさせる。ビジネスの足下を危うくする危険も、この上ないチャンスも、そのような状況の中にこそ、埋もれているからだ。イベント・ドリブン・インフラストラクチャの導入によって、企業は、しなやかで柔軟性に富む、現代的なビジネスの組織へと変貌を遂げ、アリー・デ・グースの名言-競争で勝ち続けるだけの強みがほしいなら、競争相手よりも速く知識を手に入れることだ-を、現実のものにすることが可能だ。(p.23)

まったく驚きです。2001年の作品とは思えない。いまTIBCO Spotfireを使っていますが、こんな思想の人のソフトだと思うと感動です。スティーブ・ジョブズが消費者の未来を見ているとすると、このヴィヴェックさんは、ビジネス・ニーズやビジネス・パーソンの考え方の未来を提示していると言っても過言ではないでしょう。

見せかけの情報送付システム(リクエスト/リプライ方式)は、秒単位、時間単位など、決められた周期で、インターネットやあなたの会社のイントラネットなどの情報源から情報を切り取り、何か変化があったら報告するというものだ。(p.24)

見せかけの情報送付システム・・・これは時間単位でただ数字を送付しているだけ、イベント・ドリブンは、あらかじめどの数値がどう変化したら知らせるということで、ある意味内部的には非常に短いスパンでデータをチェックしていて、変化が起こったときだけ知らせる。この知らされたときはまさにデータを見るべきタイミングで、それ以外に情報を送り続けてもあまり見なくなっていくのはある意味必然だと思います。このあたりの見通しもまったく正しいものだと思います。

情報時代に勝つチームは、仕事を実際に行うのと同時に、スコアを記録する企業であると、ピーター・ドラッカーが述べている。イベント・ドリブン・カンパニーn核となる戦略は、競争を勝ち抜くための柔軟性を保ち続けることだ。そのためには、自らの業界で起こるイベントに、すぐ反応できる体制を作り、顧客の今現在の要求に、できる限り応えられるよう、リアルタイムで組織と運営方法を変えていく必要がある。そのような企業において、計画とは、長期的な目的に従った、双方向かつリアルタイムに行われる、活発なプロセスであり、顧客の目に見える形で、リアルタイムに実行される。競争を勝ち抜く柔軟性を保つ戦略は、他の企業との関係にも及ぶ。(p.27)

「組織と運営方法」を変えていく必要がある・・・これは本当にそうで、実際に私も経験しています。どちらかと言えば、「理想的な運営方法が実現できるような組織にしていかなければならない」という言い回しが適切だと考えます。

レジス・マッケンナは、著書『リアルタイム未来への予言』で、自分が書いた成功の処方箋は、目的にかなったITインフラストラクチャの導入によって、実行できると述べている。「21世紀に向かって、準備を整えているの企業は、リアルタイム・システムの中で行う投資を、競争力を保って、顧客をつなぎとめるための基本と見做している。そのような企業は、インフォメーション・テクノロジーを、変化を続ける環境についていくために使う。さらに重要なのは、可能な限りすばやく、顧客の期待に応えるために使うということだ。」(pp.28-29)

「ITの使い方」をどう考えているか、それついて社の方向性が定まっていないとなかなか決めていくことは難しそうです。

あらゆる機械に埋め込まれた、信じられないほど安価なセンサーが、自然界とデジタル世界を近づけつつある。いずれ、私たちが自然界を動き回ると、家、車、家電製品、そして私たちの体が、デジタル情報によるイベントを発生させるようになるだろう。そこから利益を得られるのは、その情報を探知し、分析し、きめ細かい製品とサービスという形で、価値あるものを生み出せる技術を備えた企業だけだ。(p.32)

これも驚きで、2001年にまさに今の状況を予言しています。こういったイメージ、未来予想をもとに、Spotfireも作られていたのかと思うと納得です。

次に「私の信条」として書かれているのですが、震えてきます。すっかり、著者に心酔しています。

自分のビジネスを確立し、世界中の何百という企業で、イベント・ドリブン・カンパニーへの転換を手助けする間、私は4つの原則に従ってきた。そのどれもが、現在のような時代にあっては、古風で当たり前のように思えるだろう。しかしその根底を流れる考え方には、ネットワーク化された現代社会においても、成功するための重要な私心が含まれている。(p.34)

以下、4つの原則を解釈していきます。

  1. まず、基本的な原則は、企業が情報の使い方を、全面的に見直さなければならない、ということだ。情報とは、データベースの中に死蔵された資源でも、所有者がもったいぶって出し惜しみする宝物でもない。ビジネスの情報は、価値を生み出すための生きた材料として、組織の中で、それを最大限利用できる人々のもとへ、リアルタイムで届けられるべきものなのだ。リアルタイムの配信システムによって、その情報を入手する社員の数が増えるほど、組織の成功に貢献するための力を備えた労働者も増える。
  2. イベント・ドリブン・カンパニーは、組織を安定させ、先の見えないグローバルエコノミー世界で成功するため、競争に耐える柔軟性を保たなければならない。これについて異論を唱える人は少ないと思うが、それを実行するのは、頭で考えるよりも難しい。新しいチャンスを素早くものにするには、努力を続けることが必要なのだ。
  3. イベント・ドリブン型の情報によって、市場細分化を、さらに細かく進めることができる。現在のビジネスにおいて、市場細分化とは、大まかな市場区分ではなく、個々の顧客のニーズに合わせた、製品やサービスの開発を目指すということになるだろう。「個々の顧客」が個人であれ企業であれ、それは変わらない。情報配信システムの進化によって、イベント・ドリブン・カンパニーは、新たに生まれた、個人あるいは個人未満(一人の消費者の中に数多くの市場がある)の市場を明らかにして、サービスを提供することができる。例えるならば、真のマス・カスタマイゼーションという夢の実現である。サービスの送り手と受け手が、リアルタイムの情報交換で可能となった対話を通し、一対一で向き合える。これは商売のプロセスが、一対一という基本に立ち返ったとも言える。しかも全世界的な規模に拡大されて。
  4. イベント・ドリブン・カンパニーは、その核をなす競争力を、自社の経営に関わる、顧客、パートナー、関連会社などにも植え付ける。顧客の業務について、その会社の社員よりも詳しいことも多い。そこから良好なパートナーシップが生まれ、「相手の会社の要望によって」、自分の会社の強みを移植することが可能になるのだ。卑劣な手段で無理強いするのではなく、双方が多大な利益を得られるので、顧客や取引先が、進んで関係を深めようとする。

そして、この4つを踏まえて、次のようにまとめています。

私がパブリッシュ/サブスクライブ方式のアーキテクチャを開発した目的は、従来型の企業をイベント・ドリブン・カンパニーへと転換させるための情報インフラストラクチャ(神経システムと言ってもいい)を提供し、先に挙げた4つの基本的な強みをその企業に浸透させて、業績を大幅に向上させることだった。イベント・ドリブン・という考え方が有効であると、最初に証明されたのは金融業界で、その後、各種の企業で、そして今ではインターネットの世界でも認められている。パブリッシュ/サブスクライブ方式は、時流に乗った一過性の流行ではない。決してすべてを解決するという、万能薬ではないが、混迷を極める現在のビジネス界で、利益を得るための、強力な武器となる技術だ。流動的な環境で、どのような変化が必要とされているかを見定め、それを実行するための鍵である。それは情報についての新しい考え方であり、ビジネスに関する、新しい考え方と進め方を生み出すものである。(pp.36)

最後の「新しい考え方と進め方」・・・この著作が書かれた2001年当時ではテクノロジーも追いついていなくて、そこまでのことは夢物語だったと思いますが、いまでは、「あるべき姿」として手の届くところに来ています。一部の企業では実際になされていると思います。

イベント・ドリブン・カンパニーを目指すという思想は、新たなマネジメント理論ではない。また、この20年で人気を博したビジネス理論の批判や、おいしいところだけをつまみ食いしたものでもない。能力を増幅させ、目的を明確にし、実行を可能にするための考え方である。あなたの会社にとって意義のある変化を、現実のものとするのを、手助けするためのツールなのだ。イベント・ドリブン・カンパニーになると、「BPR」、「TQM」、「1to1マーケティング」、「顧客の声に耳を傾ける」、「歩き回り管理」といった、他の戦略からも、より多くの成果を得られる。どんな戦略を選ぶにせよ、このシステムの底にある考え方が、その効果を高め、あなたの会社の競争力を、最大限まで伸ばしてくれる。(pp.37-38)

イベント・ドリブン・カンパニーの「思想」が大事なのでしょう。それをCEOが推進すれば一番いいのでしょうが、CIOでもCMOでもこれに気づき、リーダーシップを発揮することができれば、競争力を伸ばせることでしょう。強力なリーダーシップは必要不可欠だと思います。

 

イベント・ドリブン・カンパニーにとって、混乱と混沌の時代は、またとないチャンスでもある。リアルタイムで、目的がはっきりした、双方向的な情報を入手することで、イベント・ドリブン・カンパニーは、状況に適応して柔軟に形を変え、完全な混乱に陥る寸前で踏みとどまることができる。現在でも、多くの企業は、業務効率を格段に向上させるツールとしての、インフォメーション・テクノロジーを、過小評価しているように思える。(p.43)

インフォメーション・テクノロジーによって、イベント・ドリブン・カンパニー化し、リスクを回避して踏みとどまるということですね。

 

「お客様の立場に立って」「カスタマー・バリューを生み出す」マントラのように繰り返されるこれらの言葉には、すっかり手垢がついてしまった感がある。しかしこれらは、ライバル社に差をつけて、競争で優位に立つための、数少ない方策なのだ。マイケル・ポーターはじめ、さまざまな研究者が挙げた差別化要因-コスト、リーダーシップ、品質、スピード-が、いまでは当然と見なされている。これらはゲームに参加するための入会金のようなもの、市場へ参入するとき支払わねばならない代価なのだ。カスタマー・バリューは、商品の陳腐化を、瀬戸際で食い止めるための、唯一の武器である。最も古い商売の基本-顧客をよく知ること-が、いまではビジネスにおける、最新の防衛戦略だ。それを回復するために、最先端の技術が利用されるというのは、興味深い現象である。(pp.45-46)

原点回帰というか、常に基本に軸足を置いてそこは外せない、ということでしょうか。

 

多くのビジネス・リーダーたちが、「価値」と「利益」を混同しているのに、私は驚きを禁じ得ない。この二つは決して同じではない。イベント・ドリブン・カンパニーにおいて、利益は、価値を生み出した結果である。顧客の問題を解決することに励むうちに、積み上げられていくものだ。イベント・ドリブン情報配信システムの価値は、あなたと、あなたの顧客、そして関係者すべてを、物理距離や、テクノロジーの非互換性といった障害を超えて、リアルタイムに結び付け、お互いの問題の解決に向けて、協力できるようにすることだ。その最高の副産物が利益なのだ。(pp.47-48)

「利益は、価値を生み出した結果である。」これに尽きますね。顧客に価値を与えられないのに、近視眼的に利益利益と言っていると、歯車が崩れ、破滅の道を歩んでいくこと必至でしょう。

 

イベント・ドリブン・カンパニーの特徴が下記の表にまとめられています。(p.57)

  コンテンポラリー・
カンパニー
イベント・ドリブン・
カンパニー
ビジネス戦略 長期戦略に従って行動 目的は中~長期的だが、計画は短期的
競争に対する姿勢 ライバル会社を研究、理解 顧客を研究、理解
マネジメント 話し合い中心 強力なリーダーシップ、スター・システム
重視すること 品質保持を常にチェック 品質保持は当たり前。例外的なイベント処理に専念
企業文化 平等主義 実力主義
求める人材 チームプレーヤー チームプレーヤーもいいが、一匹狼タイプが一番価値がある
社員に対して 終身雇用を保証 どこに行っても通用する能力をつけさせる
社員の仕事 会社が社員の仕事を決める 社員が自分で仕事を決める
IT データベース中心
受動的、要求に対して反応
情報中心
能動的、イベント・ドリブン型
パートナーシップ 公式、非公式の《系列》 協力関係は変わる/競合的協力
社歌 スザの行進曲 ジャズの即興

この表、分かりやすいですね。違いがよく分かります。特に、このビジネス戦略においても、今なら当たり前になりつつありますが、これが書かれた2001年に「目的は中~長期的だが、計画は短期的」と言ってしまっているのはすごいです。

イベント・ドリブン・カンパニーへの転換が、あなたの会社に適切な変化かどうかを見極めるのに、今日の収益を重視する企業と、明日の収益を重視する企業における、実務的、戦略的な違いを考えることが、役に立つだろう。クリストファー・メイヤーが、その違いについて、著書の中で解説している。シリコンバレーで大きな成功を収めている企業一般について、調査分析を行ったものだ。それぞれの項目をよく読み、どんな会社にしたいのかを考えてみよう。(pp.58-59)
今日の収益重視の会社 明日の収益重視の会社
仕事の手順は事前に決まってる 決められていない
機能重視 相互機能するチーム
ひとつの適切な方法と一つの結果 いくつかの方法といくつかの結果
現実とは明確なものだ 現実とは曖昧である
評価が容易 評価が難しい
予測は役に立つ 予測は難しい
短期的なサイクル 長期的なサイクル(長期的な目的がある)
共通の目標が多い 特別な目標が多い
従来型プレーヤー/従来型役割分担 新しいプレーヤー/新しい役割を与える
本当にイベント・ドリブンになることが有利かどうかは、競争の結果によって決まる。まず第一段階は、新たに出現したグローバル化、ネットワーク化の進んだ市場では、顧客の問題を解決するために、リアルタイムの、統合された情報が必要であること。第二段階は、競争がイベント・ドリブンへと向かいつつあるのに、あなたの会社がそうでなかったら、非常に大きなリスクを負うということ。・・・イベント・ドリブン・カンパニーへの転換は、あなたの会社をコスト削減とは逆の方向に進ませる。私からすると、コスト削減という戦略は、往々にしてあまり効果がない。コストがかからないほうがいいというなら、廃業するのが、一番いいということになる。(pp.67-68)

 

イベント・ドリブン・カンパニーを目指してコンサルタントや売り手を選ぶときは、次の4つの性質を持った相手を選ぶようお勧めする。(pp.69-70)

  1. 技術を売るのではなく、問題解決をする。
  2. 理想的なシステムへの移行は、一朝一夕にできるものではないことを認識する
  3. 真のソリューションは、一流の技術の組み合わせと理解している
  4. 《販売→設計→製造》の流れを実践する。
もう一つ、私がこの仕事を始めた時から、最重要と考えていたことがある。複雑な技術上の、変化は、顧客の社内に、戦略的に位置付けられ、戦う覚悟ができた、専任の担当者がいなければ、まず成功しないということだ。(p.70)

ここが肝だということができるでしょう。これはホントにそうです。覚悟を持った人が必要です。

 

分散型システムが複雑化し、広く普及するほど、ソフトウェア・バスのような、すべてに共通のコネクタが、ますます有効になる。のちに私たちは、このコンセプトで特許を所得し、TIB(The Information Bus)という名称を付けた。会社名のTIBCOソフトウェアは、ここから来ている。・・・10年以上前になるが、TIBを開発したばかりのころは、企業の情報責任者といえども、そのようなタイプの技術に馴染のある者は、ほとんどいなかった。(pp.116-117)

TIBCOという名称、そういうことだったんですね。納得です。

データと情報と知識の間には、もちろん大きな違いがある。データと情報は原石で、知識は磨き上げられた製品だ。磨き上げるプロセスは、人と機械の能力の組み合わせである。人が提供できるのは、創造力、直感、熱意、経験、気力、運などである。一般的に機械が担当するのは、分析、膨大な記憶、世界的に情報を発信する能力、スピードである。イベント・ドリブンのテクノロジーは、それらはももちろんのこと、もっと多くのものを提供できる。イベント・ドリブン・カンパニーは、人と技術のインフラストラクチャを活用して、データや情報を精錬して、知識に変える。知識こそ、会社がさびつくのを-時流に乗り遅れる-防ぎ、競争に耐える力をつける要素なのである。イベント・ドリブン組織においては、業界の中にある、情報空間全体が、リアルタイムで、(十分な報酬を受け、熱意に満ち、高い能力を持った)「スター」のもとへ届けられ、知識と、優れたカスタマー・バリューへと、そこで精錬される。情報ソースが、どれほど多岐に渡っていても、その情報が、どんな言語で書かれていても、情報ソースや、それを欲しがっている人が、どこにいようとも、イベント・ドリブン・インストラクチャなら、すべての情報を標準化し、価値を高めて、最終的に知識へと磨き上げるため、しかるべき人物のところへと、送り届ける。情報を受け取る側の社員も、当然、知識労働者である。(pp.247-248)

「人が提供できるのは、創造力、直感、熱意、経験、気力、運などである。」というのは、まさに人工知能(AI)が人間に勝てないところでしょう。

それにしても、ヴィヴェック ・ラナディヴェ氏の先見の明、これが2001年頃に書かれたということに、驚きを隠せません。彼の書物で日本語に訳されているのが、もう一冊あるようですので、さっそく読んでみます。

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