科学の健全な発展のために 誠実な科学者の心得

科学の健全な発展のために 誠実な科学者の心得

科学の健全な発展のために 誠実な科学者の心得
著者:日本学術振興会「科学の健全な発展のために」編集委員会

★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] 必須授業のテキスト!
[目的・質問] 研究公正を学ぶ

科学者自らがあらためて誠実な研究活動のあるべき姿について積極的に学び、こうした理念に基づき、後進を育て、これにより、科学を健全に発展させ、科学に対する社会の信頼の確立につなげていきましょう。(P.3-4)
社会における科学者の責務とは何でしょうか。科学者には、その英知をもって新たな発見をしたり、社会が抱えるさまざまな課題を解決してほしいという社会からの期待があります。こうした期待に応えることが一つの責務と言えるでしょう。(P.4-5)
科学者は、他の科学者の研究成果や業績を正当に評価し尊重することが必要です。他の科学者の成果を適切に評価あるいは批判する一方で、自分の研究に対する批判には謙虚に耳を傾け、誠実に建設的な意見を交えることが求められます。(P.6)
科学者は公共の福祉に資することを目的として研究活動を行い、客観的で科学的な根拠に基づく公正な助言を行う役割を担っているのです。(P.7)
日本だけでなく、世界各国で共通に研究不正にあたる行為として定義されているのは、捏造、改ざんおよび盗用であり、しばしば、fabrication(捏造)、falsication(改ざん)、plagiarism(盗用)のそれぞれの頭文字をとって、FFPと呼ばれます。(P.46)
公正で責任ある研究活動を推進する上で、どの研究領域であってもきょうゆうされるべき「価値」があります。「研究公正に関するシンガポール宣言」(2010年制定)では、そのような「価値」を次の4つの原則にまとめました。

  • 研究のすべての側面における誠実性
  • 研究実施における説明責任
  • 他者との協働における専門家としての礼儀及び公平性
  • 他者の代表としての研究の適切な管理

捏造、改ざん、盗用という不正行為はこれらの対極にあるものです。(P.51)

アメリカ科学アカデミーは、「好ましくない研究行為(QRP)」について、次のように指摘しています。
「好ましくない研究行為とは、研究活動の伝統的な価値を侵害する行為で、研究プロセスに有害な影響を与えるうるものです。それらの行為は研究プロセスの誠実さへの信頼を損ない、科学のさまざまな伝統的慣習を脅かし、研究成果に影響を与え、時間・資源を浪費し、若い科学者たちの教育を弱体化させる可能性があります」。
好ましくない研究行為の具体的なものとして挙げられているのは次のようなものです。(P.51-52)

  • 重要な研究データを一定期間、保管しないこと
  • 研究記録の不適切な管理
  • 論文著者の記載における問題
  • 研究試料・研究データの提供拒絶
  • 不十分な研究指導、学生の搾取
  • 研究成果の不誠実な発表(特にメディアに対して)
責任ある研究は、正直さ(honesty)、正確さ(accuracy)、効率性(efficiency)、客観性(objectivity)を保持して行われなければならず、成果の発表においてもこれが満たされている必要があります。(P.64-65)

現在、私は大学院の後期課程に進んで勉強しておりますが、特に経営学分野ということもあり、研究者としての意識はありましたが、科学者という視点はありませんでした。改めてこれらの文章を見ると、いままでの意識の低さについて大変反省をしております。

以下、研究公正に関わる言葉を整理しておきたいと思います。

利益相反:依頼者からの業務依頼があった場合、中立の立場で仕事を行わなければならない者が、自己や第三者の利益を図り、依頼者の利益を損なう行為のことである。

デュアルユース(両義性):両用の。二通りの。特に、民生用と軍事用のどちらにも利用できることをいう。

インフォームド・コンセント:特に、医療行為(投薬・手術・検査など)や治験などの対象者(患者や被験者)が、治療や臨床試験・治験の内容についてよく説明を受け十分理解した上で(英: informed)、対象者が自らの自由意思に基づいて医療従事者と方針において合意する(英: consent)ことである(単なる「同意」だけでなく、説明を受けた上で治療を拒否することもインフォームド・コンセントに含まれる)。

ラボノート:実験を行う者が、「どのような実験を行ったときどのような結果が得られた」といった実験の一次的データの記録や、場合によっては「研究の過程での議論」、「データの一次的な解析(計算等)」「実験及び解析中などに思いついた事柄」等実験に関わる様々な事柄を記録、処理するためのノートブックあるいは、それに類する記録媒体である。

オーサーシップ:学術研究倫理においては、論文の著者や共著者、実験やデータ分析などにかかわった人を記載することをさす。オーサーシップには著者としての資格をもつ者はすべて記載されるべきとされている。その記載方法に関しては、研究者などが研究成果を適切に世間へ発表するため、大学や研究機関などの規定として厳格な基準が設けられており、これをオーサーシップの基準、オーサーシップのガイドラインなどとよんでいる。規定では、記載される人やその順番に一定のルールが定められており、なかでも重要な記述は、(1)筆頭著者(ファーストオーサーfirst author、第1筆者)、(2)責任著者(コレスポンディングオーサーcorresponding author、連絡著者)、(3)最終著者(ラストオーサーlast author、シニアオーサーsenior author)の3か所である。

サラミ出版:1本の研究論文を複数の論文に「切り分ける」ことを、「サラミ出版」または「サラミ法」と呼びます。まったく同じデータを複数の出版論文で報告する二重出版と異なり、サラミ法では大規模な研究を複数の出版論文に分割します。分割した各部分は研究の「スライス」と呼ばれます。一般には、各「スライス」の仮説、母集団、方法が同じである限り、許容されない行為です。2つ以上の「スライス」は決して出版してはなりません。

ピア・レビュー:査読とは、その学問分野の専門家による、研究の評価を意味します。いわば、専門家による助言システムで、ある論文がジャーナルに掲載される価値があるかどうか、編集者が決定するのに役立っています。

最後に科学・科学者の役割について引用します。

「科学と科学的知識の利用に関する世界宣言(the Declaration on Science and the Use of Scientific Knowledge for process)」において、次の4つの「科学の意義」がまとめられました。(P.115)

  1. 知識のための科学:進歩のための知識(Science for knowledge:knowledge for progress)
  2. 平和のための科学(Science for peace)
  3. 発展のための科学(Science for development)
  4. 社会における科学と社会のための科学(Science in society and science for society)

また、Wikipediaに「科学における不正」というページもありましたので、こちらも共有しておきます。

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