パワートゥザエッジ

パワートゥザエッジ―ネットワークコミュニケーション技術による戦略的組織論

パワートゥザエッジ
― ネットワークコミュニケーション技術による戦略的組織論
著者デヴィッド・Sパワートゥザエッジ. アルバーツ,リチャード・E. ヘイズ

★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] NCWとは何ぞやから行きつきました。
[目的・質問] NCWとは何ぞや?真髄を理解するとともに他のフレームワークとの違いについても把握する。

「パワートゥザエッジ(PTE)」は、今後10年のうちに帯域幅の制約を除去して、我々を「大量の情報を共有するためには多くのことをしっていなければならない」という制約から解放し、時間的かつ空間的に相手に同期する要請からも解放し、さらに情報共有と協働において残された最後の障壁をも取り除くことだろう。(はじめに i )

何かしら、そういうパワーのことを言っているのだろうか。まだよくわかりません。

実際、PTEは我々が政策方針、組織、そしてプロセスを再考する上で自らを導くために選択した基本原理なのである。(はじめに v)

しかも、筆者は本書によって答えが得られるかどうかは明言しない、なんて書いてたりします。どういうことでしょう・・・。Wikipediaによると・・・

ネットワーク中心の戦い(Network-Centric Warfare, NCW)は、アーサー・セブロウスキーおよびジョン・ガルストカ (John J. Garstka) によって創案された革新的軍事コンセプト。高次の情報ネットワークによって情報を伝達・共有することで、意思決定を迅速化するとともに戦力運用を効率的に行うことを目的としており、つまるところ、ネットワーク中心コンピューティング(NCC)のコンセプトを軍事に応用したものである。イギリス軍においてもネットワークを駆使できる能力(NEC)の名称で同等のものが検討されている。(Wikipedia)

もともとNCWという言葉に出くわしたのは、OODAループを調べているときに出てきたんですよねぇ。

OODAループ理論は、機略戦コンセプトの中核的な理論としてアメリカ全軍に広く受け入れられているほか、ビジネスにおいても導入されている。ただし低強度紛争(LIC)など、迅速な意思決定が要求される流動的な作戦環境においては、従来のように全階梯を通じた大規模なOODAループを形成していては機を逸する恐れがあるとして、ネットワーク中心の戦い (NCW) コンセプトにおいては、作戦指揮手順において、全階梯を通じたOODAループの形成からの脱却・革新が志向されている。(Wikipedia)

考えるためのワークフレームではなくて、戦術なのかなぁ。まぁ乗りかかった船だし、学べるところは学びますよ。

情報化時代の到来は、我々が直面する課題に立ち向かう新しいタイプの力の源を活用する機会を与える。それこそがまさに、国防総省の変革の意味するところである。国防総省の変革は、我々に新たな方向を与えようとしている。顕在化しつつある将来の任務に我々の注意を向け、情報化時代の概念と技術を活用した戦術を採用し、そして我々が情報化時代に対応した組織となるようにビジネスプロセスをも変えていく。変革とは、すなわち情報化時代への継続的適応を意味する。(P.3)

「情報化」ということが一つのキーワードのようです。

PTEとは、個々人、組織そして仕組みが互いに関連し作用する方法を変えることである。PTEは、(作戦環境に対して影響を及ぼしたり、結果をもたらせるようそのような環境に関わりあっている)組織のエッジ(末端)における個人への、あるいはシステムの場合は末端デバイスへの権限委譲に深く関わっている。権限委譲はエッジによる各種情報へのアクセスを拡張子、エッジへの不要な(押しつけがましい)圧力を取り除くことを意味する。例えば、権限委譲するということは、役に立つ情報や専門技術へのアクセス手段や機会を提供することであり、また、従来、優位性のある情報がない状況で部隊間の(作戦行動の)事前調整に必要とされていた手続き上の制約を排除することでもある。(P.5)
「権限をエッジへ委譲する」方向性は、組織構成要素間(pear-to-pear)の相互作用を大きく高めて、「エッジ型組織」を導入することを意味する。エッジ型組織はまた、上級隊員が自らをもエッジに配置する役割へ移行させる。言い換えれば、エッジ型組織はしばしば、制約を管理して達成目標を死守することを役割とする中間管理職の必要性を縮小する。これによって、指揮と統制を分離sることが可能となる。司令官は以下の項目の実行により、勝利を収められるような初期条件の設定と、統制の実行について責務を負うようになる。すなわち、

  • 組織横断的な調和のとれた統制の意図を生み出すこと
  • 人的・物的資源の割り振りを動的に実施すること
  • 戦闘中の軍隊が自らに対して必要な権限を与える交戦規則と別の統制機構を構築すること

PTEが戦争に関連するすべての領域で完全に達成されたとき、NCWが完全に成熟した形、すなわち「自己同期化」する能力を実現するための前提条件が整ったこととなる。効果的な自己組織化というものは、必要な条件さえ整えば、過去においても可能であった。しかしながら、交錯する情報の中で相互に協力し合わなければならないという状況は、一般に状況認識の共有や調和した指令意図の達成を非常に困難にする。(P.5-6)

NCO(Network Centric Operation)を実行し、自己同期化する軍隊の能力は、任務の効果と軍の俊敏性に密接に関連している。軍隊の俊敏性は頑健性、つまり広範かつ多様な条件や環境にわたって効果を維持する能力に関係する。すなわちPTEが完全に実現されると、組織の能力のみならず組織の性質そのものの変革が達成されることになる。(P.6)

OODAループの位置づけ、さらにはPTE、NCOやNCWについても整理しないと、中度半端な理解のまま読んでいって、消化不良になりそうです。まずはそこを整理しないとですね・・・・難しい。

情報化時代の技術および情報化時代の軍隊に必要とされる特性に関連する変化の本質、特に任務が直面するあらゆる課題にわたって対応するために必要な指揮統制能力がどういうものかを述べ、詳しく議論する。特に、すべての任務あるいは任務群の枠組みを超えて必要とされる、相互に関係した軍隊の二つの特性は、情報化時代において重要である。それらは、「相互運用性」と「俊敏性」である。(P.8)
20世紀にあまねく理解されてきた指揮統制の概念は、単に戦争における「霧と摩擦」(=不確定性とそれに伴う混乱)を事前に想定し、個別に戦略を立案するもの、という概念から進化してきた。情報化時代の技術は情報の経済学を劇的に変化させる一方で、新たな組織形態の形成と指揮統制へのアプローチを引き起こしつつある。PTEの理解に必要な(パワーとエッジの)基本的概念の説明により、読者が伝統的な軍事組織と指揮系統に対するアプローチについての8議論を、情報化時代の観点から眺めることができるように工夫をしている。(P.8)

なるほど・・・少し分かってきました。現代の情報化技術を最大限に生かした組織構造、組織活動というように理解しました。NCW、NCOは、フレームワークでもプロセスモデルでもなく、組織の指揮統制の方法、運用モデルといったところでしょうか。この理解をベースに以下、読み進めてきたいと思います。

組織とその業務運営におけるパワートゥザエッジ(PTE)の原理の適用は、第一に認知領域と社会領域におけるC2(指揮統制:Command and Control)についてであり、他方、情報基盤におけるその原理の適用は、何を差し置いても物理領域・情報領域におけるC2への適用が主である。(P.17)

うーん、わからん。訳のせいでしょうか・・・。難しい。

NCWの理念の採用により、自己同期化された部隊や行動の実現が可能になる。しかしこのNCWの理念の導入を検討したアメリカとその同盟国の多くは、戦場における今来に対する懸念を抱き続けてきた。しかしながら、自己同期化のための前提条件の検討により、戦場で混乱は発生しないことが明らかになった。その条件とは以下のものである。(P.28-29)

  • 明確かつ一貫した指令意図の理解
  • 高品質の情報及び共通の状況認識
  • 部隊の全レベルでの能力
  • 情報、部下、上官、同胞および機器への信頼

このような前提条件は企業では非常に難しいですね。特に近年従業員の多様化も進む中、これらを整えるのは至難の業で、軍隊だからこそというのは否めない気がします。

自己同期化された軍隊に指揮の機能が無いわけではない。しかし、そのような軍隊は表面的な指令内容そのものではなく、指令内容の裏にある指令意図、状況認識の共有、信頼できる資源配分および適切な交戦規則、そしてそれらと同様なレベルで、部下に対して指針は与えても子細に立ち入らない一連の基準といったものの実行や達席に重きを置いている。(P.29)
さらに、NCWのが理念は情報化時代の軍が行動するための唯一の方法を自己同期化のみに限定してはいない。NCWでは、これらの作戦行動が可能であること、このような行動がより効果的かつ効率的であることを主張しているに過ぎない。上記のような自己同期化の実現に必要とされる条件群が満たされていないのに、NCWを是が非でも採用すべきだと主張しているわけではない。(P.29)

このあたりにきてやっと理解できてきました。NCWとは、レオ・レオニの「スイミー―ちいさなかしこいさかなのはなし」の世界ですね。

[embedyt] http://www.youtube.com/watch?v=ZUKJjVXT0Ko[/embedyt]

工業化時代の組織が情報化時代の競争に耐えられないのは、その情報の取り扱い方法に原因がある。より厳密に言えば、工業化時代の組織では様々な情報とそれらを処理するために利用可能な各種専門的技術を活用できないからである。広く全体で情報共有することを進めていない組織では、個人や組織の各部署にまで情報をうまく行き渡らせることができない。入手できる情報を有効活用するようなアプローチで指揮統制を進めている組織が競争優位に立てるのである。(P.67-68)

この辺は自明ですね。

今日まで何年もの間、プラットフォームの象徴としての価値ゆえに、我々は軍事組織でのパワーの意味を再検証する必要性を直視せずにいた。しかしNCW(ネットワークセントリック的戦争)がこの状況を変えるきっかけとなったのである。ネットワークを構成するノードでなくネットワーク自体のパワーを前面に出したことにより、NCWは軍事組織におけるパワーの概念を再検証し始めた。NCWの威力によって、パワーをエッジに移動させるという動きが注目された。これはNCWの成熟のために必要なことである。そういった意味でPTEは、NCWが最大限の能力を発揮するために適用すべき原理と言える。(P.185)

PTEとNCWの関係は、「PTEは、NCWが最大限の能力を発揮するために適用すべき原理」ということでもあるし、流れ的に、PTEというのはあり、それのある意味究極のカタチがNCWであるというのも一理ありますし、僕は後者の理解で考えていましたが、前者もそりゃそうですよね、、ってところです。

以上、NCWについては、ほぼほぼ理解できたかなという感じです。

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