(著者:ラリー・ボシディ/ラム・チャラン)
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戦略やビジョンも「実行」次第。このあたりまえのことを実現するにはどうしたらいいのか。辣腕経営者と著名コンサルタントが、これまで語られることのなかった、経営における「実行」のノウハウを、多くの事例を交えて説く。(「MARC」データベースより)
今回読んだのは2010年の最新改訂版なのですが、amazonを見ると、現在入手困難なようです。経営者には是非読んでいただきたい秀逸な内容で、★5つです! その後、米国版も改定されてはなさそうなので、増刷してほしいところです。
本書のタイトルですが、原題は「Execution」。まさに“実行”なのですが、中国語でも訳されていて、タイトルは「執行力」となっていました。本の内容はホントに素晴らしいのですが、いざこれをどう売っていくかという立場で考えてみると、どんなタイトルが良いでしょうか?原題通りで「エグゼキューション」として、サブタイトルとして“経営は「実行」”くらいが良いように思いました。
さて、本題に入ります。タイトル通りなのですが、「経営者の最終評価は、プロセスではなく最終結果。その最終結果は、実行なくして実現なし。」そんなところでしょうね。
実行の中核をなす3つのプロセスとして、次を挙げています。
・人材プロセス
・戦略プロセス
・業務プロセス
そして、経営者の勘違いを次のように述べています。
根本的な問題は、実行がビジネスの戦術だととらえられ、リーダーは実行を他人に任せ、もっと「大きな」問題に注力すべきだと考えられている点にある。この考え方は完全に間違っている。実行は単なる戦術ではない。ひとつの必修科目であり体系だ。企業の戦略や目標、文化に根付かせなければならない。そして、組織のリーダーは、深く関与しなければならない。その中身を誰かに任せることはできない。企業リーダーの多くは、最新の経営手法を学び、社内に広めることに膨大な時間を費やしている。しかし、実行を理解せず、実践しなければ、学び、主張してきたことの価値がなくなる。土台をつくらずに、家を建てているようなものだ。(P.43)
実行とは、単に何かがされることでも、されないことでもない。実行とは、具体的な一連の行動やテクニックであり、企業が競争優位を手に入れるために習得しなければならないものである。実行は、ひとつの独立した専門分野なのだ。大企業、中小企業を問わず、いまや、成功するための必修科目になっている。(P.44)
どんな企業も、あらゆる段階のリーダーが実行のプロセスを実践しない限り、目標を達成することができないし、変化に対応することもできない。実行は、企業戦略の一環であり、目標とすべきものだ。実行は、目標と結果の間の失われた環である。だからこそ実行は、真の意味でリーダーにとって大きな、ほんとうに大事な仕事になる。実行の方法を知らなければ、リーダーがさまざまな取り組みをしても、それに見合った成果は上がらない。(P.58)
実行は企業の戦術に関わるものだと考えられている。そもそもこれが大きな誤りだ。戦術は実行の柱ではあるが、実行は戦術ではない。実行は戦略に不可欠なものであり、戦略に形を与えるべきものだ。自社にどの程度の実行力があるかを考慮しなければ、意味のある戦略は立てられない。もっと小規模で具体的な点について語るのであれば、「実行」ではなく「実施」や「細部の詰め」などの言葉を使うべきだ。実行を戦術と混同してはならない。(P.61)
確かに、過去の偉大な経営者においても、「実行」に関しては、あえて表面に出てくることは少ないように思います。このタイミングでよくもこのアイデアが思いついたなぁとか、こんな決断ができたなぁなどというような逸話が多いように思います。ですが、その裏に「実行」は必ずあって、実際に「実行」されたがゆえにその成功があったことを改めて感じました。
最後に、次のようにも述べられていました。
ビジネスの仕組みの本質は、人材、戦略、業務という3つのプロセスがいかに結びついているかにある。リーダーは個々のプロセスと、それが全体としてどう関連しあっているかを学ばなければならない。それが実行という体系の基礎であり、戦略を策定、実行する上での柱になる。それらが、競争相手に差をつける手段になる。(P.329)
別で、「センスメーキング・イン・オーガニゼーション」(カール・E・ワイク著)というのも読んでいるのですが、こちらも「実行」について書かれており、いろいろと考えさせられるところが多くありました。私の携わる「データ分析」の部門においても同じで、分析からアクションに結びつかないと、ただの集計になってしまうので、いつもメンバーにもそれを意識するように言っていますが、なかなか難しいところです。