日経の特集(『逆境の資本主義』)


新年1月1日のトップ記事から、『逆境の資本主義』と題された特集が始まった。そこでの気づきや備忘録をピックアップしてみました。

特集『逆境の資本主義』

1 さびつき成長の公式(1月1日)

米アップルなど世界の大手10社のデジタル事業の市場の評価額は約6兆ドルと、すべての日本企業の有形固定資産(5兆ドル、金融除く)を2割上回る。

IT産業は高い知能スキルを持つ一握りの人材を求めるだけ。

こうした富の偏りが成長を鈍らせ、極端な金利低下を引き起こす。

2 働き方縛る ものづくりの残像(1月3日)

「知」が価値を持つ今は、年齢や肉体の衰えとは関係なく優れたアイデアを出す人が果実を得る。新しい地平の働き手を支えるデジタル化が、資本主義を成り立たせてきた資本家と労働者の強化を消し始めた。
技術が誕生するたびに一部の労働者は職を奪われたが、それを上回る需要が雇用を生んだ。時間や肉体ではなく知で勝負する時代には、働き手の「賞味期限」はさらに延びる。新しい時代に合った制度や人材教育にどう舵を切るか。新しい競争が始まった。
労働者が学びを続ける必要性は増している。重要なのは市場への対応力と柔軟性だ。要素技術がものすごいスピードで変遷する中で、個人も企業も市場が求める人材の変化を見極め、新しい学びを実践していかなければならない。

3 失われる市場機能(1月4日)

デジタル化や低金利を背景に、株式市場は企業がお金を集めて成長を目指す場から、投資家への還元を競う場へ変わった。世界の上場企業は18年度まで8年連続で自社株買いの金額が増資額を上回った。
有望な未上場企業にファンドなどが巨額を投じ、上場は彼らの利益確定の場となっている。「旬」を過ぎた上場後には値上がりが限られ、個人投資家は利益を得にくい構造になった。
個人は労働者としてもかつてのような分け前を得られない。世界経済が生む付加価値のうち労働者の取り分を示す労働分配率は過去60年で9ポイント下がった。富の偏りをどう正すべきか。

4 自由より国家、走る中国(1月5日)

 

米中の21世紀の覇権争いは激しさを増すばかりだ。中国がもしこの争いを制すれば、民主主義すら揺らぎかねない。自由競争を前提とする資本主義の真価が問われている。
格差が表面化する一方、多くの市民は市場経済や資本主義をよく理解していない。『資本主義が最良の経済体制だ』と信じているが、その長所や短所に関する教育や議論は十分でなかった。

5 デジタル化が生む「新独占」(1月6日)

新たな独占はGAFAに限らない。さまざまな産業で寡占化が進み、競争が弱まっている。市場の河川度合いを示し、当局が企業合併の審査に使う「ハーフィンダール・ハーシュマン指数」が世界ベースで上昇中だ。1990年代ほぼ一貫して低下してきたが、2008年を底に反転した。
背景には何があるのか。自由主義経済圏の広がりとITの進化がグローバルな事業展開を後押しした。富を生む源泉はデータや知財にシフト。モノづくりでもハードよりソフトウェアが性能の決め手となり、一握りの「持てる者」がより強くなる世界が訪れた。
データや知財が特定企業に集中しすぎると、多様なイノベーションが挑戦者の登場を阻む。世界122苛酷・地域の一人あたり国内(域内)総生産性(GDP、18年)伸び率は、寡占度合いが高いほど、低い傾向が鮮明だ。デジタル時代の資本主義をどう再構築するか。成長の原動力となる競争を促すことが、その第一歩となる。

6 揺れぐ企業のROE神話(1月7日)

 

ROEを高めるには研究開発や設備投資によって利益を増やしていくのが王道。だが、経営者はROEが下がれば株主からの退任圧力にさらされかねない。資金を自社株買いに回し、資本を減らしてROEを力ずくで押し上げるという危うい選択に走りがちだ。そうなれば、将来の成長や安全、環境保護への投資は後回しになり、従業員への還元もおろそかになる。
利益を稼ぐのが企業の使命だ。そこが揺らげば環境保護への投資や従業員への還元といった社会的責任も果たせなくなる。問われるのは利益がそうした「大義」にかなっているかどうか。ROEを超え、新たな公式を探す時がきている。

7 よみがえる保護主義の亡霊(1月8日)

世界全体でみれば輸出入は相殺しあい、GDPの計算には影響しない。それでも貿易の伸びと成長に強い関係があるのは、「それぞれの国が得意な産業に特化し、足りないものは輸入すれば経済は効率的になる」からだ。約200年前、英経済学者リカードが説いた「比較優位』論。その重みはいまも変わらない。

8 縮む消費ミニマリスト台頭(1月9日)

消費者の様々な欲望を探し出し、満たすことで発展してきた資本主義経済。欲望がモノから感情へと移りゆくいま、需要のかたちは捉えにくくなった。需要不足による長期停滞を抜け出すためにも、企業は進化を急がなければならない。
現在の成熟した知識資本主義では知識や知恵、人と人との関係、信頼、評判、文化の5つの資産が重要になる。いずれもお金で換算できないため『目に見えない資本』と言える。人工知能(AI)時代には文献で学べる知識よりも、経験でつかむ知恵の方が重要になる。知恵の共有には共感が必要だ。一方で弱肉強食の競争原理が社会に浸透するほど共感は失われ、知恵の共有が進まなくなる。

9 民主主義 共振するきしみ(1月10日)

資本主義と民主主義は時に緊張をはらむ歴史を歩んできた。資本主義がいきすぎれば格差を招いて平等が危うくなり、民主主義が揺らげばポピュリズムを招いて市場原理に反した保護主義を生む。私達が目にしているのは、両者のきしみが共振する世界だ。

いろいろと学びの多い特集でした。まさに今の世相をいろいろな観点で斬ったという感のあるものでした。

 

【資本主義】

モノやサービスの生産手段(資本)を持つ資本家が労働者を雇って商品をつくり、稼いだ利益を投資に回して成長につなげる経済システム。「資本制」とも呼ばれる。資本主義を支える土台には、自由に競争できる市場がある。土地などの私的所有や資本の蓄積、利潤追求、労働市場、株式会社制度なども資本に欠かせない要素だ。資本主義に対抗する概念として、社会主義・共産主義がある。政府が経済活動を計画し、所得を平等に配分する。

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