ブロックチェーン 相互不信が実現する新しいセキュリティ

ブロックチェーン 相互不信が実現する新しいセキュリティ (ブルーバックス)

著者:岡嶋 裕史 … 

ハッシュ値と暗号について、細かく説明されています。ブロックチェーンを知るにはそれなしにはありえないということでしょう。(Inobe.Shion)

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内容紹介

参加者が誰もお互いを信用し合っていないからこそ、正確な計算結果が未来永劫保存される──。暗号通貨(仮想通貨)ビットコインを支える仕組みとして登場したブロックチェーンは、かつてのインターネットのように新たなインフラへと育ちつつある。本書はその本質と構造をわかりやすく解説し、新たな応用先まで展望。技術解説書のトップ著者が挑んだ、「これ1冊で網羅できる」ブロックチェーンの決定版入門書!

なぜ不正できないのか?
暗号資産(仮想通貨)との関係は?
どこまで応用できるのか?

参加者が誰もお互いを信用し合っていないからこそ、正確な計算結果が世界中で未来永劫保存される──。

暗号通貨(仮想通貨)ビットコインを支える仕組みとして登場したブロックチェーンは、かつてのインターネットのように新たなインフラへと育ちつつある。その本質は、構造はどうなっているのか?

社会を一変させる可能性を秘めた新技術の根幹と限界を見きわめるべく技術解説書のトップ著者が挑んだ、「これ1冊で網羅できる」ブロックチェーンの決定版入門書!

【目次】
第1章 なぜ社会現象になったのか
第2章 特定の値を導く「ハッシュ」
第3章 さまざまな事象への「ハッシュ」の応用
第4章 不正できない構造が連鎖していくしくみ
第5章 ブロックチェーンが抱える課題と他分野への転用
終章 最初の理念が骨抜きにされると、普及が始まる

〈「あとがき」より抜粋〉
ブロックチェーンが社会に浸透するにつれて、「初期の理想」とは違う方向へ技術が書き換えられ、運用の方法に変更が加えられていくだろう。
技術を理解し、使いこなそうとするとき、最初の印象を引きずり続けないこと、変化に柔軟に対応していくことはとても重要である。
本書は、思想に左右されない技術の核心部分を捉えられるように構成した。読者の学びの一助になれば幸いである。

内容(「BOOK」データベースより)

新しいタイプの「信用」を創造するしくみ―かつて政府や大企業が担保していた「信用」は、ハッシュ関数を応用することで、インターネット上に公開されたブロックチェーンの力で実現された。だが―。ビットコインなど暗号資産との関係を改めて整理し、基盤となる構造をゼロから解説。なぜ「万能の技術」ではないのか、その限界まで分かってしまう、ブロックチェーン入門書の決定版!

ブロックチェーン技術を積極的に導入・活用するとしたら、既存システムの提供元が信用できない場合に効果がある。ブロックチェーンの凄みは、参加者全員の間に何の信頼もないネットワークでも、信頼できる取引や決済ができる仕組みを生成できる点にある。参加者全員が互いに憎み合っていたとしても、弾かれる計算結果や、記録される取引情報は信頼できるものになる。(p.122)
通常の銀行取引であれば、承認するの銀行だ。でも、ブロックチェーンのネットワークには「この人が承認する」といった絶対的な権力がない。では誰がトランザクションを承認するのだろうか。それが、「トランザクションをまとめて、ブロックを作る」という行為に他ならない。ブロックチェーンでは、マイナーと呼ばれる参加者があたらしいブロックを作る。複数のマイナーがブロックを作ってそれぞれ別個のブロックが提出された場合は、基本的には早く提出されたブロックが正統なものと認識される。つまり早い者勝ちである。(p.150)

ビットコインにおいては、新しいブロックを作ることに成功した者に報酬が支払われる。だから、マイニング競争が激烈なものとなるのだ。(p.150)

ブロックを作るときは、トランザクションプールから10分間で集まったトランザクションを拾い上げる。それがブロックに含まれるトランザクションであり、その数をカウントしたのがトランザクションカウンタである。ただ、このトランザクションの拾い上げは、かなりゆれのある作業である。(p.152)
ナンスの計算自体は、無味乾燥な、ほぼ意味のない作業である。マイナーはこの何とも言えない作業を永遠とも思える回数ほど実行しなければならない。しかし、条件を満たしブロックを追加できるナンスを見つけたときの報酬を求めて、この作業に取り組むのである。いつ果てるともしれない「正解」を求めるこの行為を、採鉱に見立てて「マイニング」と呼ぶのだ。(p.167)
ブロックチェーンでは、ブロックの追加が合意の証であり、ブロックの追加が繰り返され、チェーンが伸びるほどに、過去のブロックに対する合意が覆される可能性は限りなくゼロに近いく。すなわち将軍の数が増えるほど、攻撃の合意が形成されるほどに、過去のブロックに対する合意が仏替えされる可能性は限りなくゼロに近づく。すなわち将軍の数が増えるほどど攻撃の合意が形成されやすくなるのだ。(p.174)
ブロックチェーンは信用ならない者同士でも成立する相互監視が大本になている仕組みである。・・・誰の目にも明らかな場所に置かれたお宝は、一見脆弱そうに見えて、盗みに行くときには相当の胆力とテクニックが必要になる。衆目に晒されたお宝は、全員によって監視されていると考えるべきだからである。この方法は、「二人の将軍問題」や「ビザンチン将軍問題」を、よく解決していると言える。(pp.173–174)

「二人の将軍問題」:要塞を攻撃する2つの軍が、同時攻撃を行えば、勝利、攻撃タイミングがずれれば敗北という状況で、同攻撃開始時間を合意するかという問題である。
→ Wikipedia 

「ビザンチン将軍問題」:上記の将軍問題を二者間ではなく多数の参加者間の問題に拡張したもので、コンピュータに限らず分散システムで合意形成を行うときに必ず考慮しなければならない問題である。
→ Wikipedia

ブロックチェーンでは、ブロックの追加が合意の証であり、ブロックの追加が繰り返され、チェーンが伸びるほどに、過去のブロックに対する合意が覆される可能性は限りなくゼロに近いく。すなわち将軍の数が増えるほど、攻撃の合意が形成されるほどに、過去のブロックに対する合意が仏替えされる可能性は限りなくゼロに近づく。すなわち将軍の数が増えるほどど攻撃の合意が形成されやすくなるのだ。(p.174)
IT業界にはファイブナインやシックスナインという言葉がある。9がいくつあるのか、という話で、ファイブナインは稼働率99.999%のこと。シックスナインは99.9999%のことである。いわゆるミッションクリティカル、たとえば社会インフラを構成するシステムや人の命を預かるシステムで求められる稼働率の水準だ。(pp.192-193)
近年多数出現している、オルトコインと呼ばれる新興の暗号資産は決済速度を重視したものも多いが、この点はブロックチェーンシステムの本質的な問題として、将来も残存し続けるだろう。(pp.212-213)
ブロックチェーンの開発者たちも、この状況を座視しているわけではない。ブロックチェーンを運用する上での要点は、ブロックの追加が正当に、滞りなく行われることであるから、その合意形成の手段をプルーフオブワーク(PoW:ナンスをマイナーたちが総当たりで計算していく仕組み)に限定する必要はない。たとえば、ビットコインに追従する形で現れてきた多くの暗号資産は、プルーフオブステーク(PoS)と呼ばれる新しい方法を実践している。(p.198)
プルーフオブステークは、ブロックの追加権を獲得するためにナンスの計算競争をしない。代わりにコインエイジという概念が織り込まれている。コインエイジとは、コインの保有量にコインの保有期間を掛けた値である。つまりたくさんのコインを長く保有し続けた者(そのシステムに貢献している者と読み替えられる)が有利になる仕組みだ。・・・いずれにしろ、プルーフオブワークのように熾烈な計算競争が起こらないので、電力やCPUといったリソースの無駄遣いを抑制することができる。計算競争をさせる必要がないか、薄いため、取引の承認も早くなる。・・・ただし、コインを使うモチベーションまでも減らしてしまうため、プルーフオブワーク型のコインよりも流動性が低下する可能性はある。(pp.198-200)
いずれにしろ、プルーフオブワークのように熾烈な計算競争が起こらないので、電力やCPUといったリソースの無駄遣いを抑制することができる。計算競争をさせる必要がないか、薄いため、取引の承認も早くなる。・・・ただし、コインを使うモチベーションまでも減らしてしまうため、プルーフオブワーク型のコインよりも流動性が低下する可能性はある。
フォークと呼ばれる処理(もしくは現象)がある。これは、ブロックチェーンが分岐してしまうことである。マイニングのタイミングが偶然、もしくは故意によって合致してしまい、2種類かそれ以上、チェーンが同時に存在してしまうことである。この一般的に生じるフォークについては、しばらく様子を見て、長く育ったチェーンを正統とすることで対応する手段が確立されていた。(p.202)

「お店でビットコインで買い物」が現実的でない理由として、
①ブロック追加速度が10分間隔
②お客は10分も待てない
③店舗はトランザクションが承認されていないこと承知でモノを売る
④後からトランザクションが不正だったということが分かり、代金をとっぱぐれる

この本質から企業は、「プライベートチェーン」を導入するのはごく自然なことなのだが、それは本当にブロックチェーンである必要があるのだろうか?・・・と問題提起をされています。

ブロックチェーンの最大の特徴は、管理者不要ということに矛盾するからということです。

そして、プライベートチェーンの管理者が独裁的に振る舞うリスクを低減しつつ、運用性を向上させるために、コンソーシアム型ブロックチェーンも提案されているということです。

ブロックチェーンは、「特定の管理者がいない状況、もっと言えば参加者がすべて敵同士であるような油断のならない状況で、事前の取り決めに抵触するようなデータ処理を認めず、処理の透明性を確保し、かつデータの変更や改ざんが不可能であるようなデータ蓄積システム」だ。変わったシステムである。それは地層のようなもので、上っ面の部分を自分の都合のいいように変更すれば、不整合が嫌でも目立ってしまう。かといって、堆積した地層の下から順を追って辻褄があうように変更しようとすれば、信じられないほどの労力が必要になる。本来はそれだけの仕組みなのだ。(p.243)
ブロックチェーンが社会に浸透するにつれて、このように「初期の理想」とは違う方向へ技術が書き換えられ、運用の方法に変更が加えられていくだろう。技術を理解し、使いこなそうとするとき、最初の印象を引きずり続けないこと、変化に柔軟に対応していくことはとても重要である。(p.244)

単なるブロックチェーン信奉ではなく、冷静にネガティブな面も洗い出してくれていて気づきの多い書でした。インターネットもそうですが、最初の理念通りに進まず、それが歪められていっていないかと。これだけ早い変化の時代だからこそ、その中で徐々に変わっていっている事象については気づかないことが多いような気がします。

この技術だけではなく、あらゆる技術は権力者に益をもたらすところでルールが作られ、理念は歪められていっている気がしてなりません。

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