真説・企業論 ビジネススクールが教えない経営学

真説・企業論 ビジネススクールが教えない経営学 (講談社現代新書)

著者:中野 剛志 … 

これまで聞いてきた話を疑ってみるとこんなことが見えてくる。これをしっかり理解しておかないと大きな勘違いをしてしまいます。(Inobe.Shion)

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内容紹介

日本経済はなぜ長期停滞しているのか。起業の活力もイノベーションの条件も不足しているからなのか。通説を覆し本当の可能性を探る。

ベンチャー企業とイノベーションについて本書で言及する5つの論点。
・アメリカはベンチャー企業の天国ではない。アメリカの開業率はこの30年間で半減している。
・アメリカのハイテク・ベンチャー企業を育てたのは、もっぱら政府の強力な軍事産業育成政策である。
・イノベーションは、共同体的な組織や長期的に持続する人間関係から生まれる。
・アメリカは新自由主義的改革による金融化・グローバル化が進んだ結果、生産性は鈍化し、画期的なイノベーションが起きなくなっている。
・日本はアメリカを模範とした「コーポレート・ガバナンス改革」を続けた結果、長期の停滞に陥っている。
これらの実態を知ったうえで、企業が目指すべき方向とは?

内容(「BOOK」データベースより)

アメリカに学んではいけない。アメリカの開業率は30年間で半減、シリコンバレーの成功は強力な軍事産業のおかげ、ベンチャー・キャピタルはイノベーションの役に立たない、官僚主導のアメリカ型コーポレート・ガバナンス改革が日本企業を短期主義化させた、日本経済の長期停滞はアメリカ型の企業改革・金融構造改革が本当の原因。最強の論客による経営の本質論。

 

非常に面白い。巷で言われていることが、神話であり真相は異なることをズバズバと切ってくれています。

人を見るということについては、江戸時代の儒学者・荻生徂徠が、実に興味深いことを述べています。250年以上も前の言葉ですが、人財の目利きに関して、これにまさるものはないと私は思います。徂徠によれば、人をただ見ただけでその器量を見抜くなどということは、誰にもできはしません。・・・名将は一目で人材が分かる目利きだなどというのは、愚か者が信じていることだと徂徠は言いますベンチャー・キャピタルは優れた起業家の目利きであるなどという話も、徂徠だったら「愚なる人」の思い込みだといったでしょうならば、どうやれば、人材の優劣を見抜くことができるのでしょうか。徂徠の答えは、人材を評価するには、実際に使ってみることだというものです。しかも、ただ使うのではなく、あれこれ指示をせずに、好きなようにやらせてみるのがよいというのです。・・・これは、組織で働いている人ならば、思わず膝を打つような優れた洞察ではないでしょうか。徂徠の人材目利き術が卓越していると思う理由は、彼が人間の能力というものはどういうものであるかについてプラグマティックに理解していることがよくわかるからです。人間の能力というものは、「潜在能力」と言われるように、潜在していて、外からは見えない面がかなりあるという特徴があります。潜在能力は、顕在化しないと評価できません。しかし、人の潜在能力が顕在化するためには、少なくとも、その人を長い年月をかけて評価する必要があります。また、その人が置かれた状況によって、どのように行動したのかを観察する必要もあります。(pp.94-96)
要するに、ベンチャー・キャピタルには、起業家の目利きなど、できるわけがないのです。そんなことは、徂徠に言わせれば「占いか神道に非んば知れぬ事也」というわけです。だから、ロイター社の調査が明らかにした通りに、ベンチャー・キャピタルは、大手IT企業の元幹部とか、起業経験者、あるいは超一流大学の卒業生といった、外形的な基準によって起業家を判断しているのです。(p.98)
暗黙知は、個人が直接経験したり、試行錯誤したりすることで獲得され、養われます。しかも、長い時間を必要とする。そして、暗黙知を他人に伝え、あるいは他人から得るためには、経験を共有し、試行錯誤を協働する組織的な活動が必要になります。暗黙知を獲得するということは、言わば人間が他者との共同作業を通じて成長するということです。成長した人間が宿す暗黙知、それがイノベーションの源泉であるならば、イノベーションとは、人間の成長のことではないでしょうか。だから、野中氏らは、イノベーションの本質についてこう書くのです。イノベーションは、単にばらばらのデータや情報をつなぎ合わせるだけではない。それは、人間一人一人に深くかかわる個人と組織の自己変革なのである。社員の会社とその目的への一体化とコミットメントが必要不可欠である。この意味で、イノベーションとしての新たな知識の創造は、アイデアと同じくらいアイデアル(理想)を創ることなのである。こういう事実がまた、イノベーションの原動力となる。イノベーションの本質は、ある理想やビジョンに従って世界を創り変えることなのである。新しい「知」を創ることは、社員一人ひとりと会社を、絶え間ない個人的・組織的自己革新によって創り変えることなのである。それは、研究開発や戦略企画やマーケティングにかかわる少数の選べばれた専門家の責任ではなく、組織を構成する全員の責任なのである。(pp.145-146)
画期的なイノベーションというものは、10年、あるいはそれ以上という長期の時間を要します。そして、イノベーションの源泉たる暗黙知を創造し、蓄積し、そして伝達するには、クローズドで濃密な人間関係を長期にわたって保持する必要があります。それが意味するところは、「イノベーションを起こしやすい活力ある企業は、クローズドで濃密な人間関係を形成するために、従業員の長期雇用や社外との継続的な取引関係を重視するであろう」ということです。(p.148)

非常に勉強になる内容でした。結局、ビジネスはヒトに尽きるのではと改めて感じました。

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