Why Digital Matters? ~ “なぜ”デジタルなのか~

Why Digital Matters? ~ “なぜ"デジタルなのか~

著者:プレジデント社

非常に端的に書かれていて、分かりやすく気づきも得られます。(Inobe.Shion)

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内容紹介

“なぜ”デジタルなのか?
企業経営者が知るべきヒントが、ここにある!
“働き方改革”が叫ばれる現代、企業をリードする経営者が考えるべきは、
「ヒトではなく、電子を走らせろ。電子は疲れない……」ということである。
「日本企業の強みは『ヒトの力』『現場力の強さ』にある」と言われてきたが、
ヒトの代わりにデジタル、つまりソフトウェアに仕事をさせれば、
疲れない、間違えない、サボらない、
ストライキをしない、賃上げを要求しない、退職しない……と、
一日24時間365日、1年でも10年でも動き続けるのだ。
むろん、ヒトが実行するワークのすべてをデジタルが代替できるわけではない。
ヒトとデジタルにはそれぞれ得意不得意がある。
創造性や柔軟性などにおいてはヒトの優位は動かない。
しかしながら、ことデジタルが得意とするタスク、
とくに、ソフトウェアとしてルール化・定型化できる大半の業務については、
もはやヒトに勝ち目があるはずもない。
ゆえに、ヒトだけに頼らず、デジタルの力を効率的に活用すれば、
輝ける未来を切り拓く「生産性革命」を成し遂げることができる。
高度成長期から続く「ヒトが走る」経営を続けている会社が、
「電子に走らせる」ことを覚えれば、
つまり、「ヒトの力」と「デジタルの力」の組み合わせを実行できれば、
大きく飛躍できる可能性が広がっているのだ。
経営に携わるあなたが本書を読み終わるころには、
自社で取り組むべきことが何であるのか、そのイメージがはっきりと見えてくる。

■序章/日本型経営の「勝利の方程式」がなぜ通用しなくなったのか
■1章/コマツ LANDLOG
~顧客課題、社会課題を解決するオープンなデジタル・プラットフォーム
■2章/第4次産業革命の本質は「デジタル・イノベーション」
■3章/「デジタル」と「フィジカル」の本質的な違い
■4章/日本の現実は「2.5」
~インダストリー4.0の本質は「全体最適」
■5章/デジタル・プラットフォーマーの時代
~早い者勝ちの陣取り競争
■6章/デザイン思考で顧客の「真の欲求」を見極める
■7章/ケーススタディ:大企業病を克服したSAP
■8章/ 企業システム構築の新常識

内容(「BOOK」データベースより)

「ヒトではなく、電子を走らせろ。電子は疲れない」すべての企業リーダー必読書。働き方改革、生産性革命の答えがここにある!

 

冒頭から、明確な主張があり読み進めやすく構成されています。

20世紀最高のサッカー選手の一人とされるオランダ人、ヨハン・クライフ。監督としても数々の栄冠を手にした彼は、多くの名言を残しているが、その中のひとつにこれがある。

「選手ではなく、ボールを走らせろ。ボールは疲れない」

この名言をなぞって表現すれば、このデジタル時代に企業をリードするあなたが考えるべきことは、

「ヒトではなく、電子を走らせろ。電子は疲れない」

だ。そしてある意味、本書のテーマは、これがすべてと言ってもいい。(p.4)

このデジタル化は、日本的経営の「勝利の方程式」がそのままアダになったとしています。欧米では、日本人労働者の「優秀さ・勤勉さ」「長時間勤務を厭わない労働観」「在職期間の長さによるノウハウの蓄積」という前提がないがゆえに、ヒトとデジタルが業務分担して処理することで、90年代後半から徐々に全体最適を実現し、生産性を高めてきた。

日本だけが世界の経済成長から取り残されているのはなぜか?いくつかの要因はあろうが、かつて「ヒトを走らせる経営」があまりにうまくいったがゆえに、「デジタル化」つまり「電子を走らせる」ことのインパクトの大きさを過小評価することになり、結果としてデジタル・イノベーションに乗り遅れた影響があるのは間違いない。欧米勢や新興国勢がこぞって「電子を走らせ」、ヒトの仕事を助けて生産性を伸ばしているのに対し、ヒトが奔走することで対抗するやり方を続けていては、苦しくなるのも当然と言えよう。(p.9)
IoTやAI、ビッグデータ、センサー、ロボット、ドローン、VR(バーチャルリアリティ)・・・「デジタル」と総称されるテクノロジーは続々と開発され、凄まじい勢いで発達している。第4次産業革命とは、「そうしたデジタル技術を利用して、企業の生産性をさらに向上させること」というのが、一般的な受け止め方ではないだろうか。だが、第4次産業革命、すなわちデジタル活用によるイノベーションは、単に生産性を「伸ばす」だけではない。デジタル・イノベーションは、ビジネスモデルや産業構造を根本的に変革し、人類の経済活動や社会のあり方まで変える可能性をも秘めている。企業がこのデジタル・イノベーションの波を乗り越え、さらなる成長を遂げるには、デジタルの本質を正しく理解し、的確に使いこなす経営戦略を持たなければならない。第4次産業革命とは、別の表現を使えば、既存事業にデジタル技術を組み合わせることによって「顧客の欲求をより高次に満たす商品やサービスを提供できるようにすること」とも言える。(pp.58-59)
第4次産業革命は製造業だけの革命ではない。むしろ、製造業と非製造業の境目がなくなっていくところに最大のポイントがある。(p.60)

SAPはデジタル活用の本質を整理し理解するために、「十字フレームワーク」という分析法を提唱している。(p.82)

従来の競争軸(3.0)  
既存事業

 










×

顧客の真の欲求 デジタル化による新たな競争軸(4.0)
――――△―――――― ――――▲――――――>
既存事業を裏付けているCapability

 

IoP(デジタルを介して組み合わせるCapability)

IoPとはInternet of Processesのことで、「デジタルを介して組み合わせるケイパビリティ」を指す。

もしデジタルの対語は何ですか?と聞かれたら、「アナログ」と答える方が多いだろう。しかし、現在の企業経営を考える上では、デジタルの対語は「フィジカル」である、と理解する必要がある。ここでいう「フィジカル」とは、物理的な「モノ」を指す。すべての自然物をはじめ、われわれが日ごろ目にしているほとんどの物体はフィジカルだ。もちろん、我々人間自体もフィジカルである。それに対して、電子化された情報、すなわち実体がなく、目に見えない情報のことを「デジタル」と呼ぶ。コンピュータは一般に「電子の動き」を利用して情報を処理するが、コンピュータが処理を行う際に情報を「0」と「1」の電気信号に変換し、0と1の組み合わせで認識する技術がデジタルだ。(p.109)
フィジカルに対比して、デジタルの特長は2つある。ひとつめは、電子は質量が非常に小さいため、非常に「速く」動かすことができることだ。・・・ふたつめの特長は、デジタルなデータは複製あるいは伝送しても劣化しない、ということだ。・・・以上の2点は誰でも知っている一般論であり、今さら言われるまでもないと思われるかもしれない。しかしこの2点こそが、「デジタル」と「フィジカル」の根源的な違いであり、現在の「デジタル・イノベーション」のすべての源になっていると意識している人は多くない。(pp.110-111)
「デジタルの本質」は、フィジカルと対比させることで、より分かりやすくなる。これをSAPでは「デジタルの5大特長」(Five forces of Digital)と呼んでいる。(p.111)
1 差分コストゼロ デジタルの最大の特長は、初期費用はかかるが、初期投資が終わった後のランニングコストは非常に低い、ということだ。
2 無限性 デジタル情報を処理するコンピューティングの能力が限りなく上がってきているので、「コンピューターの能力が足りなくて実現できないものはほぼない」と言ことを指す。
3 時差ゼロ(リアルタイム) デジタル世界では時差ゼロを前提にしてサービスを組み立てることができる。
4 記録・分析・予測 何を処理しても、その履歴を詳細に記録することができるので、それに基づいてさまざまな事象を細かく分析することができるし、分析に基づいて将来の予測も立てられる。
5 明細×組合せによるパーソナライズ 追加コストほとんどなしで、顧客一人一人を識別し、それぞれに対してサービスをパーソナライズできるのが、デジタルの大きな利点だ。
これら5大特長こそがデジタルの本質である。見てきたようにこの5点は、従来のフィジカルな世界では想像もできなかった、あるいはまったく不可能であったようなインパクトを発揮する。だからこそ第4次産業「革命」とまで呼ばれるような事象が次々に起きているのだ。企業のすべてのデジタル戦略はこの5大特長を生かすように設計しなくてはならない。逆にいうと、もしあなたの会社のデジタル関連の施策が、この5大特長をきちんと生かせていないとしたら、その施策にはまだ改善の余地があるということだ。(pp.116-117)
「フィジカルとデジタルの違い」がもっとも大きいのは「コスト構造」だ。この違いを理解しているか否かが、すべてのデジタル戦略の成否を握っていると言っても過言ではない。(p.117)
デジタルの「つなぐ」力を利用して、自社のみならず、他者をも巻き込んだ「エコシステム」を作り上げる、つまり「デジタル・プラットフォームをいかにしていち早く構築するか」という大競争のさなかにある。なぜなら、この競争に後れを取れば、企業は他社によって最適化されたエコシステムに取り込まれ、市場における主導権を失ってしまうからだ。早い者勝ちの「陣取り合戦」が、まさに起こっている。そして、さらにIoTによってフィジカルな「モノ」とデジタルが融合するようになったことで、地球上に存在するあらゆるものがデジタル・プラットフォームを介してつながる、という状況が現実味を帯びてきた。(p.166)

デジタル・プラットフォームを介した「4層構造」のビジネスモデル (pp.167-169)

第4層 顧客・社会 プラットフォームの最終受益者
第3層 データを活用するソリューション
第2層 デジタル・プラットフォーム 汎用機能を部品として持つ
第1層 データ発生源 Things や Processes
スタンフォード大学の通称「dスクール」によれば、デザイン思考とは「手法」ではなく、「マインドセット」(考え方)のだという。課題解決に臨んであらゆる物事に考えを巡らせる際、アウトプットを的確に導き出してくれる思考法全体を指して、デザイン思考と呼ぶ。(p.215)

▼デザイン思考のマインドセット

 

「デザイン」は課題解決の手段 デザインとは、それモノであれコトであれ、課題を解決するための手段のことであり、「良いデザイン」とは「課題をよりよく解決するアウトプット」を指す。
顧客の立場になって考える イノベーションに通ずる3つのレンズ
・フィージビリティ(技術的な実現性)
・バイアビリエィ(経済的な実現性)
・デザイアビリティ(ヒトのニーズ)
プロトタイプ志向 「早く、たくさん失敗せよ」(Fail early, Fail often)
ハーバードビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授が1997年に著し、たちまち世界的なベストセラーとなった『イノベーションのジレンマ』では、優れた企業が「合理的に」判断した結果、破壊的イノベーターに負けてしまう、5つの理由を挙げている。(pp.226-227)
  1. 既存顧客や短期的利益を求める株主の意向が優先される。
    「そんな、モノになるかどうかわからない新規事業に資本を投入するくらいなら、既存製品の強化とか、株主への還元に回す棈木では?」
  2. 新規事業は大企業には小さすぎる。
    「で、その新規事業とやらの目標は?3年後に10億円?ウチの規模からしたらゴミだね。もっと大きくしなきゃやる価値ないよ。」
  3. 存在しない市場は分析できない。
    「で、市場調査はしたの?」
  4. 組織が既存事業に最適化しすぎて、新規事業に対応できない。
    「研究開発部門も生産部門も営業部門も、既存事業で手いっぱいで、そんなもの相手にしてくれないよ」
  5. 既存技術をさらに高めても、それに需要があるとは限らない。
    「既存のデジタルTVでも十分にキレイ。そのうえ4Kとか8Kとか言われてもねぇ・・・。」
同著が世に出て、20年がたった今も、とくに日本の大企業においては、クリステンセン教授が指摘したジレンマの問題は、色褪せるどころか、むしろより顕在化しているのではないだろうか。あなたの会社でも、新規事業を担当する部門にいる社員などは、まさに日々痛感している問題ではないだろうか。(p.227)
業務用システムについては、自社専用ソフトを「作る」のではなく、パッケージソフトを組み合わせて「使う」というのが、世界の主流になっている。日本だけが、世界の潮流から取り残されているのだ。この世界的なトレンドには、いくつかの背景がある。(pp.276-280)

①パッケージの機能が上がった
②パッケージが存在している=非競争領域
③パッケージは早い
④将来への対応
⑤世界市場への対応

パッケージ・ソフトウェアに対するカスタマイズは徹底的に排除するよう、最善の努力をすべきだ。なぜか、理由はおもに2つある。(pp.290-291)

①将来バージョンアップできなくなる
②利益を生まないことが多い

最後に、IT人材のこととともに、日本の特異性をしっかりと認識してほしいという意図に書かれたとあり、その目的のとおり分かりやすく気づきの多い著作でした。

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