パーパス・マネジメント

パーパス・マネジメント――社員の幸せを大切にする経営

著者:丹羽 真理 … 

パーパス・マネジメントができることで、「社員の幸せを大切にする経営」に導く。私が転職して、いつも考えていることとも関連する内容で、これだけが正解ではないでしょうが、組織の大小に応じて柔軟に変容させながら、この「パーパス」を腹に落としその実現にむけて方向付けをしていくことが大切になってくるのでしょう。(Inobe.Shion)

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内容紹介

ミッション、ビジョンはもう古い。一番大事なのはパーパス(目的)である。

働き方改革が叫ばれて久しいが、いったい何が問題なのか?をそろそろ考え直す時期だろう。
そもそも企業理念として設定されている概念――ミッション、ビジョンは、米国では「古い」とされている。
それに代わる概念としてパーパス(目的)が問われている。
いま一番ホットなテーマであるパーパスを日本ではじめて紹介したい。
本書では根幹であるパーパスと「幸せ」について新しいコンセプトを提示し、CHO(Chief Happiness Officer)という会社を変革していく存在についても述べたい。

《目次》
はじめに Purposeを共有し、幸せに働く──その取り組みを主導するCHO
第1章 働き方よりも重要なこと。そのキーワードは「幸せ」
第2章 ポジティブな感情は仕事のパフォーマンスに影響する
第3章 個人にとっても組織にとっても「Purpose」が起点となる
第4章 Happiness at Workという考え方
第5章 Chief Happiness Officerの理論と実践──INTERVIEW
・慶應義塾大学大学院 システム・デザイン・マネジメント(SDM)研究科 前野 隆司 教授
・ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス 取締役人事総務本部長 島田 由香氏
第6章 次世代型組織の中心となるCHOの実際
おわりに 日本型CHOの確立に向けて

 

2018年に話題となっている『ティール組織』という本があります。そこでは「組織は、この世界で何を実現したいのか」という組織の存在意義(=Purpose)を問いかけることが、新しい組織の在り方を探る出発点となることが強調されています。(p.3)
一人ひとりが幸せに働ける組織をどのようにデザインしていくか、そのデザインは誰が主導していくのか?と考えていったときに、本書のテーマであるCHO=Chief Happiness Officerという経営職あるいはその機能を持つ役職が果たす役割は非常に重要となってきます。(p.9)
良い会社と悪い会社の大きな違いとは、社員が組織の存在意義を自分のものとして共有できているか、という点です。そして、組織の存在意義については、・・・そこで働く一人ひとりの存在意義と深いレベルで一致していれば、個人の幸せとも結びついていきます。(pp.33-34)
ベストセラー『日本で一番大切にしたい会社』で、「『良い会社』の経営の目的・使命は、その業績を高めることでも、シェアやランクを高めることでも、ましてやライバル企業との勝ち負けを競うこと等ではなく、『人』の幸せの追求であり、そのことを最も大切にした経営活動が一貫して行われている」と述べています。いずれもが「幸せ」を第一に打ち出していることに注目してほしいと思います。押し付けられた目的を負わされるブラック企業とは異なり、持続的な発展を続けていくホワイト企業では、目的の共有やそこから生み出される幸せを、ある意味「設計」し、指標のひとつとして高めていっています。(p.35)
社員の幸福度が上がると、イノベーションを生み出す力が大きくなります。イノベーションを生み出す力が大きくなります。イノベーションが生まれれば、他者との今日にも優位に立てますし、利潤が大きくなり、賃金などの付加価値も上がり、結果的に生産性も高まるのです。この順番に気をつけていただきたいのですが、イノベーションが生まれたから社員が幸福になれるわけではありません。社員が幸福だからこそ、イノベーションが生まれる可能性が高まるのだ、という関係は常に念頭におく必要があります。(p.39)

幸福度を測る質問項目として以下のものがあります。先週1週間を振り返って幸せに働くことができていたかを問うものです。(Woohoo社)

「幸せを測る質問項目」

  • どのくらい幸せに働くことができましたか?
  • どのくらい熱意を持って働くことができましたか?
  • 仕事を行う際にどの程度自分の強みを活かせましたか?
  • 一緒に働いている人にはどんな気持ちで向き合えましたか?
  • 直属の上司にはどんな気持ちで向き合えましたか?
  • お互いに心配りをすることができましたか?
  • 感謝されたり認められたりしましたか?
  • 心身の状態は良好でしたか?

若干ストレスチェック的なところもありますが、毎週継続してやっていくのはいいことだと思います。

既に紀元前からアリストテレスは「幸福こそが最高善・究極目標」だと説いています(彼は幸福という言葉はまだ使っておらず、ユーダイモニア=人の繁栄と訳される言葉を使っています)。しかし、では幸福とはどういう状態を指すのかについては議論が起こります。「個人の心の平穏を追求することこそが幸福なのだ」と説き、のちに快楽主義とも解釈されたエピクロス派、「理性で自分の衝動や欲求に打ち克つ」禁欲主義こそが幸福なのだと説いたストア派のように、幸福に異なる価値がすでに見出されていました。(p.51)

そしてその後は、「プロテスタンティズム」~「功利主義」などの流れになっていきます。

『幸福優位の7つの法則』の著者シェーン・エイカー氏は、膨大な研究結果のに基づく、「具体的で、行動に移すことができ、効果が実証済み」の7つの法則を以下のように記しています。(pp.82-)
  • 法則1:ハピネス・アドバンテージ
    ポジティブな脳は、平常時の脳やネガティブな脳に比べて、生物学的な優位性を持つ。この法則から、脳を再訓練して積極性を高めることで、生産性や業績を改善する方法が学べる。
  • 法則2:心のレバレッジ化
    自分の置かれた状況をどのように経験するか、またその中で成功するかどうかは、マインドセット、すなわち心の持ちようによって絶えず変化する。この法則から、幸せと成功をもたらす「てこの力」が最大になるように心の持ちよう(てこの視点)を調整する方法が学べる。
  • 法則3:テトリス効果
    ストレスや悪いことや失敗にばかり注目するパターンが脳のなかに出来上がってしまうと、挫折への道に自らを追い込むことになる。この法則から、脳を再訓練して肯定的なパターン(ポジティビティ)を探せば、どんな状況からもチャンスが見出せるということが学べる。
  • 法則4:再起力
    挫折やストレスや困難のさなかでも、人の脳はそれに対処するための道を考え出す。失敗や苦難から立ち直るだけでなく、その経験があったからこそ、より幸せになり成功をつかめる道を見出せるということがこの法則から学べる。
  • 法則5:ゾロ・サークル
    大きな試練に圧倒されると、理性が環境に乗っ取られてします。まず達成可能な小さなゴールに注目してコントロール感覚を取り戻し、それから徐々に範囲を広げて大きなゴールを達成する方法を、この法則から学ぶことができる。
  • 法則6:20秒ルール
    人間の意志の力には限界がある。いい方向に変化してもそれを持続させることは難しい。意志の力が尽きれば、もとの習慣あるいは「最も抵抗の少ない道」にずるずると戻ってしまう。この法則から、エネルギーの調整によって、別の道を「最も抵抗の少ない道」にし、悪しき習慣をよい習慣に置き換える方法を学べる。
  • 法則7:ソーシャルへの投資
    試練とストレスに見舞われると、身を丸めて自分の殻の中に閉じこもってしまいがちだ。しかし最も成功している人ほど、友人、同僚、家族との人間関係を大事にして、それを推進力としていている。この法則からは、成功と卓越をもたらす大きな因子、人のネットワークにもっと投資する必要があることを学べる。
Purposeには、個人のものと、組織のものがありますが、個人のPurposeんは、以下の2つの要素が含まれている必要があります。(p.89)

① 自身が大切にする価値観に沿っている
② 社会的意義が含まれている

多くのミレニアル世代は自分の仕事に社会的な意義や自分としての意義を見いたしたいと考えています。収入や地位よりもそうした意義を大切にする人も多いのです。(p.91)
ティール組織では、「組織の存在目的」とは「Evolutionary Purpose」であるべきだ、すなわち「組織のメンバーは将来を予言し、統制しようとするのではなく、組織がどうなりたいのか、どのような目的を達成したいのかに耳を傾け、理解する場に招かれる」とされています。(p.102)
ミッションステートメントはその名の通り「理念」であり、とても重要なものなのですが、残念ながら社会的な意義が具体的に表記されていなかったり、そこで働く人一人ひとりにとっての「自分ごと」として捉えられるないようになっていないケースが多いのです。一方、Purposeは「あなたは何のために生きているのか?」「この会社は何のために存在しているのか?」といったより根源的な問いに、端的に答えるものなのです。Purpose(≒MIssion)・行動指針(≒Value)・Visionの3社の関係を図にすると以下のようになります。(p.107)

■Purpose・行動指針・Visionの関係

  <将来>
Vision→我々はどこへ向かうのか
<日々の取組>
行動指針→何を大事にして行動するのか
<現在>
Purpose→我々は何のために存在しているのか
 

 

会社のPurposeは、私個人のPurposeとも一致する部分が大きく、だからこそわたしは毎日やりがいを感じながら働くことができています。つまり、ミッションステートメントに掲げられたミッションは、会社の理念を高く掲げるものであり、社会からの共感・リスペクトを得るものにはとても有効なのですが、そこで働く人々にとっては、どこか「他人ごと」のように感じられてしまい、せっかくの理念が社員一人ひとりの行動に反映されていないことが多いのです。ミッションと同様、企業が提示する「ビジョン」についても同じことが言えます。ビジョンとは、企業の理念が実現した結果の具体的なイメージを明文化したものですが、いくら素敵なビジョンを描いても、社員にとて自分ごとになっていなければ、まさに「絵空事」になってしまいます。したがって、より根源的な「Purpose」こそが、会社と個人の幸せにとっても重要なのです。(p.109)

kこれは非常に上手に説明されていると思います。すごく当たり前のことのように思うのですが、この当たり前がきちんとインプットされている人がものすごく少ないのが実情だと思います。働いていてこういった体験をしたことがある人は、働くことの価値観として持っているものだと思うのですが、賃金のためだけに上から言われたことだけをしているホワイトワークなので、ブルーワーカー的な意識の人ってものすごく多いと思うのです。そういう人たちに発想の転換をさせることが一番の課題のように感じます。

そして、「仕事における幸せ」を形作る4つの要素を提案しています。

Purpose(パーパス=存在意義)
Authenticity(オーセンティシティ=自分らしら)
Relationship(リレーションシップ=関係性)
Wellness(ウェルネス=心身の健康)

このあと、具体的にPurposeを組み上げていく方法なども書かれています。

非常に学ぶことの多かったです。組織に関して、行き詰ったら是非再読したい書物です。

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