最強のデータ分析組織 なぜ大阪ガスは成功したのか


最強のデータ分析組織 なぜ大阪ガスは成功したのか

著者:河本 薫 … 

大阪ガスの河本さんの「データ分析組織」に関する本。私も河本さんと何度かお話させていただいたことがあるのですが、これっていろんな会社が質問することなんですよね。私も前職の時は河本さんと同じような役割だったのでよく尋ねられました。泥臭く地道な積み重ねなんですよね。そんなかっこいい職業ではありません。Data Science Teamのリーダーは。(Inobe.Shion)

File:Data scientist Venn diagram.png

内容紹介

日本一有名なデータサイエンティストが分析組織の全貌を初公開!
社内の「便利屋」が最強のチームになるまでの挫折と成功の軌跡

日経情報ストラテジーが選ぶ「データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー」の初代受賞者である、 大阪ガスの河本薫氏による待望の2冊目となる本。
同氏が所長を務めるデータ分析組織「ビジネスアナリシスセンター」の生い立ちから数々の失敗、乗り越えてきた壁、そして分析組織のリーダーに求められる信念と行動を初告白します。

社内外の誰からも注目されていなかった無名のチームが、いかにして日本一有名なデータ分析組織に生まれ変われたのか。
チームを率いる著者がこれまで語ることがなかった苦悩や挫折、そして、ある日突然有名になってからの状況の変化などを、余すところなく赤裸々につづった一冊です。

データサイエンティストを目指す人はもちろんのこと、社内でデータ分析組織に携わる人や、これから同じような組織を作りたい人、イノベーションや業務改革を成功させたい人には必読書といえます。

本書はデータ分析の手法の紹介にはフォーカスしていません。
なぜなら著者は「データ分析は業務改革やイノベーションを実現するための手段の1つに過ぎない」と考えているからです。
むしろ、チームのメンバーとデータ分析でイノベーションを起こすという「ミッション」を共有し、問題を解くことではなく会社に役立つことに価値を置く「カルチャー」を育み、社内の事業部門から「信頼(レピュテーション)」を勝ち取ってイノベーションを達成することがデータ分析組織の役割であり、責任範囲であるという持論を展開します。
そのために必要なノウハウや社内での話の進め方、人の巻き込み方などの経験談をふんだんに盛り込みました。

内容(「BOOK」データベースより)

日本一有名な「データサイエンティスト」が知られざる分析組織の全貌を大公開。

冒頭にも書きましたが、河本さんとは何度かお会いさせていただき会話させていただいているのですが、本当によくわかってらっしゃるし、泥臭く組織の基盤を作ってこられた方。一朝一夕にデータ分析組織なんて作れるもんではないのですが、いろいろなエッセンスをこの本では出されてますので、学ぶべきところは多いですし、何よりも分かっててもなかなか実践できないことの多さに愕然としてしまう感じです。

私たちにとってデータ分析は、問題を解く「手段」に過ぎません。問題を解くだけでは知見は得られても、「価値」は生まれません。データ分析で得られた知見をビジネスの現場で役立てられて初めて、価値が生まれるのです。(p.23)
データ分析者は問題を「解く力」だけでなく、データ分析を活用できる機会を「見つける力」が最初に求められます。そのうえで、データ分析から得られた結果を現場に「使わせる力」も身に付けなければ、ビジネスに貢献できないのです。(p.23)

分かってますが、なかなかできない、その1です。知見~価値へ導いていかないといけません。

もう少し正確に表現すれば、データ分析で得られる「予測」や「最適」といった知見を使い、ビジネスの意思決定プロセスをより良くして、それまでの意思決定プロセスよりも望ましい帰結を生み出すことで会社に貢献するのが、私たちのゴールです。(p.25)
強調したいのは、私たちのミッションは「業務改革」であり、業務改善ではないということです。私は自分なりの定義に従い、業務改革と業務改善という言葉を使い分けています。両社の違いはこうです。業務改善は現状の意思決定プロセスは肯定したうえで、既存のプロセスのなかで工夫を積み重ねることを指すものとしているのに対し、業務改革は現状の意思決定プロセスの一部を否定し、新たなプロセスに改めることと定義しています。(p.26)

この定義は分かりやすいです。現状の意思決定プロセスを是として進めるか、否定して進めるか、この違いは非常に大きいですので、ゴール自体大きく異なることを認識しておかないといけませんね。

データ分析が会社にどれだけ貢献したかは「分析結果の意思決定への寄与 X 意思決定の重要性」で決まります。経営的意思決定は業務的意思決定に比べて、会社として圧倒的に重要性の高いものばかりです。(p.31)

ここから、大阪ガスでの18年間の歴史が語られていきます。

そして、話は、分析組織の組織への貢献のところに及びます。

会社としてサービスを提供する以上、新しいサービスを創るだけでは不十分です。マネタイズできなければなりません。しかし、新事業のマネタイズに詳しい野村総合研究所の鈴木良介氏は「価値あるサービスを創ることと、マネタイズできるサービスを創ることには、雲泥の差がある」と言います。価値あるサービスを発想するだけではダメで、マネタイズできるだけのサービスを思いつかなければならないのです。そのためには、利用者はどんなサービスにはお金を払ってくれるのか、どのようなビジネススキームを組めばマネタイズできるのか、自社のアセット(資産)だけで完結できないなら、どんな企業と組めばよいのか、といったことまで考える力が求められます。まさに「ビジネスセンス」そのものです。(p,164)
どんなサービスを創出していけばよいのか。そのサービスの顧客受容性とマネタイズの可能性に加えて、競合他社の動きや時代の先読み、既存ビジネスとのシナジー効果、他社との連携など、考えなければならないことは山ほどあります。利用者の受容性やビジネスとしての成功だけでも乗り越えるのは大変なのに、経営的な角度からもあれこれ考えなければならないですし、大きな先行投資を伴う場合は既存事業と異なる価値基準で経営判断しなければなりません。新サービスの開発は業務改革とは比べものにならないくらい、高い次元の意思決定が求められるのです。(pp.166-167)
データ分析専門組織の成果を説明することは容易ではありません。データ分析そのものは成果ではなく、手段に過ぎないからです。分析結果を事業部門が活用して初めて、成果につながるわけですから、どこまでいっても分析組織の会社への貢献は間接的なのです。(p.167)
私はメンバーに「データ分析の仕事だけ」をアサインしないように意識しています。「解く」だけではなく、「見つける→解く→使わせる」の3つを一気通貫でアサインすることを原則としました。それはデータ分析の仕事だけ(解くだけ)では責任も成果も不明確だからです。なぜならデータ分析で得られた手掛かりは、果たして意思決定プロセスの改革に役立ったのか。役立ったとして、大きな成果を生むのか。それはデータ分析が完了した段階では、まだ見えないのです。すなわち、データ分析で得られた手掛かりはデータ分析を完了した段階では、”手掛かりもどき”に過ぎないのです。分析結果を意思決定プロセスに活用しようと思うと、対象やタイミングの違いでうまく使えなかったり、現場担当者が使うことを拒絶したり、使えても大した成果が生まれなかったりします。その場合、手掛かりもどきは「使えない手掛かり」だったと結論付けられます。(pp.189-190)
データ分析者の守備範囲を「見つける→解く→使わせる」まで広げると、責任も成果も非常にクリアになります。最終成果は「新しい仮説を発見すること」でも「高精度な予測をすること」でもなく、「業務改革で実現したコストダウンや売り上げアップの金額」になります。データ分析でどれだけ画期的な発見をしようが、どれだけ高精度な予測をしようが、現場の業務改革につながらなければ、成果はゼロです。業務改革につながっても成果が小さければ、期待された成果とは認められないでしょう。(p.191)
分析者が成長を感じるのは、未経験な分析や難易度が高い分析(ここでいう未経験や難易度の高さとは、解くことだけを指すのではなく、未経験なビジネス領域であるとか、分析結果を現場に導入することの難しさまでを含みます)に挑戦するときです。逆に何度が低い分析だと「この分析は自分がやらなくても現場でできるでしょ」とモチベーションが下がってしまいます。(pp.193-194)

河本さんは、18年かかけて目に見えない無形財産を築いたと書かれています。それは、「ミッション」「カルチャー」「レビュテーション」の3つだと。そしてそれらは一朝一夕では手に入らないかけがえのない財産だおtおっしゃんています。

データや分析能力も蓄積してきました。でも極端なことをいえば、これらはお金をかけたり、即戦力となる人材を採用すれば、短期間でキャッチアップできます。競合他社に追従されやすいものです。それに対し、「ミッション」「カルチャー」「レピュテーション」といった目には見えない無形財産は、私たちが強い信念を持ち、時間をかけて意識的に行動してこなければ、醸成できなかったものです。ここに他社が簡単にはまねができない差異化の源泉があると思っています。(p.213)
私たちのミッションが意味することは「業務改革は事業部門にでもできる。しかしイノベーション(業務改革)は事業分門だけでは難しい。データと分析力に強いビジネスアナリシスセンターが事業部門を手助けすることで、イノベーションを一緒に実現する」のです。私の心にはいつも次のような気持ちが宿っています。(p.216)
  1. 私たちの仕事は社内にイノベーション(業務改革)を起こすこと
  2. データと分析力は手段に過ぎない。使うけれども、手段にはこだわらない
  3. どれだけ素晴らしいイノベーションを考えても、現場が採用してくれなかったら無意味
  4. どういうイノベーションを起こすのか、どうやって現場(人)を動かすのかに知恵を絞る
  5. 成果はイノベーションの中身ではなく、イノベーションの結果のみ
ミッションは言葉で伝えるだけでは、決して人の心に根付きません。仕事を通して成功と失敗を何度も経験しながら、徐々に心に刻まれていくものです。・・・このミッションに徹底的にこだわっているからこそ、行動の要所を押さえ、また、失敗から学べるのだと思います。(p.216)
分析組織のリーダーは、メンバーよりも分析能力が劣っていても問題ありません。メンバーからデータ分析の説明を受けたとき、自分が知らない分析手法を使っていたら、「私にわかるように説明して。知らない人に分かりやすく説明することも大切だよ」と言えばいいのです。そのやり取りはメンバーとのコミュニケーションにもなります。それよりも、リーダーは誰よりも高いモチベーションを持ち、キャリアアップに貪欲で、常に会社を主語にして物事を考え、メンバーや現場とのコミュニケーションを大切にする姿勢を持つことのほうが、はるかに大切です。なぜなら、メンバーはリーダーの言葉よりも背中を見ているからです。(p.272)

 

河本さんとは直接お話もしたことがありますし、講演も何度かお聞かせいただいていますが、そこでも出てきた話が多かったですが、改めて、こうやって読んでいると、できそうでできないことをきっちりとやってらっしゃることがよくわかります。

私自身いまは、少し違った役割をしていますが、データ分析組織のような、そういった関連の組織を現職でも作っていくことにそのうちなってくると思うので、またそのときに改めて読んでみたい1冊です。

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