成功企業に潜む ビジネスモデルのルール

成功企業に潜む ビジネスモデルのルール――見えないところに競争力の秘密がある

著者:山田 英夫

見えないところに競争力の秘密がある・・・というサブタイルで、表面的な模倣可能な部分と、見えない模倣不可能というか、なかなか気づかない肝のところを詳しく説明してくれています。(Inobe.Shion)

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内容紹介
本当に強いビジネスモデルは、秘匿される
――すぐ真似できる表面ばかり見ていませんか?「見えないビジネスモデル」が真の強さを決める時代。その謎に挑んだ早稲田大学ビジネススクール教授が、競争優位の真の要因を、数多くのケースから解明する。
○エプソンは、なぜ成功パターンを自ら否定したのか?
○セブン銀行ATMの紙幣の補充は、なぜ月1回ですむのか?
ソニー損保、成田空港、三菱電機、リクルート、リバイバルドラッグ、ソラコム、ランドスケイプ、カーブス・・・・・・外部から見ると同じようなビジネスモデルなのに、なぜ儲かる会社と儲からない会社があるのか? 多くの成功企業のケースから、ビジネスモデルの競争力の秘密を解き明かし、その差を2つの視点から解説。

「見えにくいところに、ビジネスモデルのツボがある」――本書の冒頭に掲げられた一文に、本書のコンセプトが端的に表れています。

新しいビジネスモデルの企業が一時注目を集めても、あっという間に廃れてしまうことも珍しくありません。なぜ、そうなってしまうのか? それはそのビジネスモデルに、持続的優位性がなくなるからです。
新しいビジネスモデルが失速する最大の要因は、社内のコスト構造、レガシー企業の報復、同じビジネスモデルの乱立です。面白いビジネスモデルでも、なかなか利益が出ない理由は、ここにあります。

ビジネスモデルを見る時、我々は外部から見えやすいところばかりに目がいきますが、実は見えにくいところに、成功している企業の優位性の秘密があるのでは? そう考えた著者は、ユニークなビジネスモデルを持つ企業を数多く取材し、その謎を解明したのが本書です。思わず他人に話したくなるようなビジネスモデルの事例が満載です。

著者は早稲田大学ビジネススクール教授で「ユニークなビジネスモデル」を見つけ出す目、その語り口に大変高い評価があり、本書でも期待通りの本領が発揮されています。
内容(「BOOK」データベースより)
早大ビジネススクール教授が綿密なケース取材からビジネスモデルの謎に迫る。

これまでも筆者は「ビジネスモデル」に関する著作を書かれており、今作をもって、いわば「3部作」と銘打っています。

[amazonjs asin=”4532197473″ locale=”JP” title=”異業種に学ぶビジネスモデル (日経ビジネス人文庫)”]

[amazonjs asin=”4532319943″ locale=”JP” title=”競争しない競争戦略 ―消耗戦から脱する3つの選択”]

ビジネスモデルの構築において、外部から見えやすいマーケティングの部分については、参考にある書籍がたくさんある。しかし、外部からは見えにくい「コスト」と「競争」の構造にも焦点をあてなければ、儲けの源泉にはたどりつくことはできない。(p.ii

そして、筆者はこのビジネスの根幹を知るためできるだけ直接の担当者との接点を見出し、実際にインタビューをするのだという。そうしないと本質が分からないと。

過去ビジネスモデルの研究には、大きく3つの流れがあった。「ビジネスモデル」という言葉が使われ始めると同時に、まずはビジネスモデルの定義、ビジネスモデルの構成要素を示す研究が多く行われた。・・・本書ではアファ(2004)のシンプルな定義をベースに、ビジネスモデルを「儲ける仕組み」と定義しよう。・・・各種定義を見ると、顧客の特定、提供価値、利益を上げる仕組みの3つは、欠かせない要素と言えよう。ただし抽出された要素の抽象度は高く、構成要素がわかっても、ビジネスモデルを構築することは難しかった。(pp.15-16)

P.17-P.18にさまざまな学者による各種ビジネスモデルの定義が掲示されています。気になる方はお手に取ってみてください。

過去にもビジネスモデルを体系化された書物が出されていて、それが紹介されています。私も過去にそれぞれ読んでまして、それぞれ名著だと思います。

[amazonjs asin=”4478372667″ locale=”JP” title=”プロフィット・ゾーン経営戦略―真の利益中心型ビジネスへの革新”]

[amazonjs asin=”4484111047″ locale=”JP” title=”ホワイトスペース戦略 ビジネスモデルの<空白>をねらえ”]

[amazonjs asin=”4798146889″ locale=”JP” title=”ビジネスモデル・ナビゲーター”]

 また、ビジネスモデル構築のためのフレームワークとして下記が挙げられています。

[amazonjs asin=”B0088L95XG” locale=”JP” title=”ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書”]

[amazonjs asin=”4761268956″ locale=”JP” title=”儲ける仕組みをつくるフレームワークの教科書”]

詳細はそれぞれご確認いただければと思います。

ビジネスモデルの外から見えるところは模倣されやすい。こうした同質化競争の行く末は価格競争である。製品の価格競争に疲弊した日本企業が求めたのがビジネスモデルによる差別化だったにもかかわらず、またそこで価格競争が行われてしまっては、皆が疲弊してしまう。(p.24)

実際に、これに陥った例がいくつか挙げられています。
「俺のイタリアン」←「いきなりステーキ」
「カーブス」←「フィットミー」
「QBハウス」←千円理髪店

戦略を立てるにあたっては、3つのC、すなわち顧客(Customer)、競合(Competition)、自社(Company)を分析することは必須である。ビジネスモデルの構築にあたても、この3C を分析することは欠かせない。・・・資源に関しては、「ビジネスモデルキャンパス」では「リソース」「主要活動」「チャネル」「コスト構造」などが該当するが、コスト構造は外部から最も見えにくい。コスト構造に関しては、固定コスト、変動費、規模の経済、多角化の経済性の4つに分類されているが、新しいビジネスモデルとしてどのようなコスト構造にしたらよいかはこの4つだけでは網羅性に欠ける。またコスト構造は瞬間的に安いだけでなく、持続的に低コスト構造を持たないと、ビジネスモデルとして成功しない。(p.25)
競合については、「ビジネスモデルキャンパス」には、直接該当する簿ブロックはないが、競合企業が同質化政策を採った瞬間に崩されてしまうビジネスモデルでは意味がない。競合企業が同質化できない仕組みが組み込まれているかどうかが重要であり、これも外部から簡単には見えない。競合企業の戦略や経営資源などを分析して、初めて見えてくるものである。多くの企業では、自社でビジネスモデルを構築する際に、他社の事例を研究している。その際には、どうしても見える部分に目が行きがちである。また、見えない部分をどうするかに関して解説された書籍も、ほとんどない。(p.26)

ということから、本著では公開資料~取材を通して見えない部分を浮き彫りにしていったとのことです。

事例研究はそれぞれ本書をご覧いただくとして、そこから見出されるコスト優位創出について解説しています。

低コスト構造を構築する方法として、
・やらない
・顧客にやってもらう
・仕組みを変える
・固定費の変動費化
・サンクコストの“回収”
ということが挙げられています。これらを組み合わせられながら持続的なコスト削減を果たしており、簡単には真似のできない重要な競争優位の観点だと気づかされます。

またその他に持続的な競争構造を生み出す観点として、

・レガシー企業との競争

  1. レガシー企業の「資産」を「負債」にしてしまう戦略
  2. レガシー企業のバリューチェーンの中に入り込んでしまう戦略

・同じビジネスモデルとの競争
これについては、先発者は、追随者が出現することを前提として、模倣されないビジネスモデルの強みを磨いておく必要がある。

ビジネスモデルを構築することは、コンピュータのOSを構築することと似ている。両社ともビジネスやソフトウェアの基本を決めるものであり、その構築には緻密な論理と、要素間の整合性が必須である。・・・革新的なビジネスモデルは、多人数でワイワイガヤガヤやりながら構築するものではなく、一人かせいぜい数人で構築するものであることを、マイクロソフトのケースは教えてくれる。(pp.212-213)
自社の経営資源から発想してくと、どうしても改善型モデルになってしまうため、既存の資源に引っ張られないためには、①社外の人間を登用したり、②オープンイノベーションを活用する方法が挙げられる。(p.219)

オープンイノベーションの3つの側面として次のことが挙げられています。

①他社にできないことを自社でやる
I can, but you can’t.
②自社ができないことをたしゃにやってもらう
You can, but I can’t.
③自社でやらないほうがいいことを、他者にやってもらう
You can, but I shouldn’t.
誰かと組むということは、自社ができないことを他者にやってもらうことだけでなく、自社でもできるが、他者にやってもらった方が効率が良いものを他者に委ねることもある。オープンイノベーションには、上記の3つの側面があることを忘れてはならない。そして、任せた部分を任せきりにせず、そこもしっかりマネジメントしていく体制がオープンイノベーションには必要である。(p.222)
本当に強いビジネスモデルは、見える部分(オープン)は公開し、顧客や協調してもらえる企業を誘引し、見えない部分(クローズ)に本当のノウハウが隠されていると言える。すなわちビジネスモデルの見えている部分は、ユーザーにもメリットがあり、競合企業もそれは乗った方が得だと思わなくては、参加者数が増えない。一方で、見えないところに自社がもうかる仕組みを埋め込むことが重要である。(pp.131-132)

アカデミックな内容にしても良さそうなところですが、ビジネス書として読めるように幅広く、網羅的に事例を多く集められています。

私自身、何らかのビジネスモデルを生み出したいと思っているので、勉強になりました。

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