仮想通貨革命で働き方が変わる―「働き方改革」よりも大切なこと

仮想通貨革命で働き方が変わる――「働き方改革」よりも大切なこと

著者:野口 悠紀雄…

サブタイトルの”「働き方改革」よりも大切なこと”というのが、非常に気になります。私もこの「働き方」が日本の国力を弱体化させる悪魔のワードだと思っています。言葉の表面的な意味だけのとらわれずに、本質を見ていきたいと思います。

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内容紹介
もう会社がすべてではない!経済原理を活用すれば、社外の人材のほうが
ハイパフォーマンスになる組織に縛られていたら、創造的な成果は出せない
本当の「働き方改革」は組織に依存せずに働くことだ生産性の高い働き方は、伝統的な製造業の場合とはかなり異なっている。
IT先端企業など高度サービス産業では、組織に属さないフリーランサーが活躍し、
革新的な成果をあげている。
これはいわば、産業革命前の個人事業の時代への回帰といえる。
われわれはいま、こうした意味で、経済活動の基本的な転換点に立っているのだ。

内容(「BOOK」データベースより)
フリーランサーを活用すれば人も企業もパフォーマンスが上がる。もう会社がすべてではない!

日本・アメリカのどちらにも共通しているのは、現在の働き方のトレンドに望ましくない傾向があるとし、それを政府が正そうとしていることである。日本では、「実行計画」の目標にも示されているように、正規労働者と非正規労働者の差や、長すぎる労働時間などが問題視されている。トランプ大統領は、伝統的な製造業の就業者が減少しているのは望ましくないことであるとし、製造業の海外流出を食い止め、さらには流出した企業をアメリカに呼び戻そうとしている。(p.2)

そして、この動きに対して、次のように指摘しています。

どちらのアプローチにも共通する問題点が2つある。
第一は、現実の変化を表面的に捉え、それを是正しようとしていることだ。「働き方がなぜ変化しているのか」についてのメカニズムを分析することなく、結果だけを表面的に直そうとしているのである。こうしたアプローチでは、目標が実現できない可能性がある。それだけなく、状況をかえって悪くしてしまう危険がある。必要とされるのは、働き方の変化の背後にある基本的な経済メカニズムの分析だ。
問題の第二は、新しい技術の進展によって働き方が大きく変わるのを敬敷いていることだ。そして、どちらも1980年代ごろまでの製造業における働き方を取り戻そうとしている。(pp.2-3)
さらに重要な点は、高度サービス産業では、必ずしも組織に雇われて働く必要はないことだ。実際、アメリカでは、フリーランサーが顕著に増加している。彼らは独立自営業者だ。その意味で、働き方が、産業革命以前の個人事業の時代に戻ろうとしているのだ。しかし日本でもアメリカでも、政府はこのことの重要性に気づいていない。「働き方改革事項計画」においては、「柔軟な働き方」という目標が設けられてはいるものの、テレワークや「副業・兼業の推進」などが簡単に述べられているにすぎない。生産性向上も人づくりも、結局のところ、企業環境が創造力を引き出せるようにかわれるかどうかにかかっている。そして、このような変化が、現代の先進国経済を再生し、成長させていくのだ。(p.6)

ここから本編に入ります。

「この問題の背景には、日本人の働き過ぎ文化がある」とよくいわれる。日本人は、長時間労働を苦とせず、生活や家庭を犠牲にして仕事を優先するワーカホリックだというのだ。しかし、そんなことはない。どこの国にもハードワーカーはいる。私の印象では、アメリカ人のほうがよく働くし、学生もよく勉強する。最先端のスタートアップ企業で働く人々の多くは、寝る時間も惜しんで仕事に熱中している。学者や研究者の場合も、業績を挙げるために、研究室に泊まり込みで仕事をしている人はまれではない。・・・彼らは、他人に指示されて長時間労働をしているのではなく、自ら望んでハードワークしている。その結果が自らに帰属することを期待しているのだ。(p.17)

電通や中央官庁の方々との違いは、指示されてやるか、自ら望んでやるかということ。それは大きな違いです。

ハードワークと長時間労働の違いは、成果を求めて自ら働くか、職場の雰囲気や上司の命令や指示(多くの場合、非公式の)によって、嫌々ながら長時間働かされるかの違いだ。ただし、明確にいえることは、日本の多くの企業は、残業手当なしの長時間労働に支えられているということだ。仮に残業手当を満額支給すれば、多くの企業が立ちいかなくなるだろう。利益がなくなってしまうどころか、大幅な赤字になる企業が続出するはずだ。(p.18)

見えない残業・・・いっぱいあると思います。

社会の「進歩」は、多くの場合、寝食を忘れて働く人たちの努力によって実現される。そうした人たちが働ける環境を整備することは、大変重要な課題だ。それらの人々が、自らの意思によって、自らの責任で、そのような働き方ができ、そして正しく報われるような環境が必要である。・・・「働き方改革」の基本は、規制の強化ではない。多様な働き方ができる社会をつくることだ。(p.19)
テレワークやフレックスタイムがうまくいかない基本的な理由は、組織で仕事を進める方式を前提にして、その一部だけを切り離そうとするからである。協同して仕事をするには情報交換が必要であり、そのためにはコストがかかる。ところが、企業内で仕事を行えば、こうしたコストを節減することができる。だから、企業という組織が必要になる。つまり、個人で仕事をせずに組織をつくるのは、協業のコストがかかるからだ。ノーベル経済学賞の受賞者であるロナルド・コースが、「企業の性質」において指摘したのはこのことだ。(p.27)

なるほど。これは確かに理解できます。

日本の組織の仕事の進め方は、テレワークやフレックスタイムにはなじまないのだ。とりわけ、公務員のように、仕事の分担をはっきりした形で切り離せない場合に適用できないのは、当然である。情報通信が進歩しコストが安くなったから、直ちに仕事の進め方が変わるというのは、実態を無視した空論にすぎない。テレワークやフレックスタイムの導入のためには、組織における仕事の進め方を全面的に改革することが必要だ。(p.29)
人間の身体、精神状態においてこのような変化が生じているのだから、社会がそれに対応する必要がある。高齢者の呼び方を変えるだけでは、十分でない。それに応じて制度が変わり、それによって人々の行動が変わり、そして、社会が変わることが必要だ。仮に現在の制度にある年齢条件をすべて10歳引き上げれば、日本社会は大きく変わるだろう。現代の日本が抱えている問題の基本は、人口の年齢構造が大きく変化したにもかかわらず、制度がそれに対応していないことがある。このため、高齢者が社会に貢献せず、若年労働者に支えられる形になってしまっている。このような社会を将来に向けて維持することはできないだろう。(pp.31-32)

「働き方」を語る上で、働く人の規模についても考えていく必要があるでしょう。ここにあるようにすべての年齢条件が10歳ひきあげられると、労働市場も全然違ってきます。経産省、厚労省も「現状」に縛られない大胆なシミュレーションから新しい答えを見出してほしいところです。

将来の労働力不足に対する対策として、少子化対策が言われる。少子化の是正は、それ自体として重要なことだ。しかし、いま出生率が上昇したとしても、労働力不足問題の解決策にはならない。生まれた子供が労働力になるまでには、数十年という時間を必要とするからである。(p.33)

とはいうものの、すぐにでも手を打たないと行けないはずなのですが、いまいち功を奏していないように思います。こちらも大胆な政策を取っていってほしいです。未来のための投資をしっかりしてくれないと。また国民もそれを理解して、そういった政党を押していけるように視野を広げてほしいものです。

『平成29年度 年次経済財政報告』(経済財政白書)は、「おわりに」において、「人手不足への対応は、日本経済が持続的な成長を実現する上で、乗り越えなければならない大きな制約の一つであるとともに、(中略)生産性向上やデフレ脱却に向けた大きなチャンスとなり得る」とした。この指摘には、つぎの2つの点で、大きな問題がある。第一に、現実の日本経済では、労働力不足が賃金を引き上げることにはなっていない。・・・第二の問題は、仮に名目賃金が上昇することになっても、それは製品価格に転嫁され、結局のところ、実質賃金は増加せず、したがって労働者の厚生が改善しないことの評価である。(pp.52-53)

次に第2章に入ります。タイトルは「新しい技術が可能にするフリーランサーという働き方」です。

日本では工場を閉鎖すれば労働者が失業するという理由で、ファブレスが望ましいと分かっていても、それを実行することができなかった。日本が遅れたのは、企業のシステムが水辺分業に対応していなかったからだ。(p.60)

日本とアメリカでの「労働」「働き方」に対する様々な違いが分かります。

アメリカにおけるフリーランサーの状況は、Freelancing in America: 2016で見ることができる。このレポートは、フリーランサーとして、つぎの5つのタイプを区別している。
1.独立契約者(独立労働者の35%、1910万人)
2.分散労働者(同28%、1520万人)
3.ムーンライター(同25%、1350万人)
4.フリーランスのビジネスオーナー(同7%、360万人)
5.臨時雇用労働者(同7%、360万人)
15年においてフリーランサーが稼得した所得は、1兆ドル以上に上った。15年におけるアメリカの賃金所得は7.9兆ドルなので、その12.7%になる。雇用者数との比率より値が小さくなるのは、フリーランサーとしての収入が副次的なものにとどまっていることを示している。それでも、これはかなり高い比率だ。(pp.79-80)
組織に勤めながら休日にはフリーランサーとして働くことが可能になれば、そこで得た経験や知見を本業に活かすことも可能になるだろう。会社の枠を超えて培った技能や人脈は、新規事業参入のきっかけになりうる。また、社員の多様性が高まれば、ビジネスの多角化や新技術応用の可能性が広がる、といわれる。(p.82)

これは「働く」ことだけではないと思うんですよね。それ以外でもいい、とにかく平日にできて、休日にしにくい「場」・・・働くこともそうだし、利用することにおいてもその「場」を開放することは社会的価値は大いになると思うんですよね。

企業の側でも、正式に副業を認めるところが増えている。副業として行っていることが、本業に対してプラスの影響を与えるという効果が認識されつつあるためだ。転業するのではなく、現在の組織での勤務を続けながら、フリーランサーを副業として行うスタイルは、今後の働き方として重要性を増していくだろう。(p.88)

第3章「仮想通貨はフリーランサーを支える」ですが、ここは割愛します。続いて第4章「新しい技術はどこに向かうのか?」です。

仮に売上高利益率や将来の期待成長率に大きな差がないとすれば、売上高のランキングと時価総額のランキングは一致するはずである。そうならないのは、利益率の差にもよるが、基本的には、将来の成長可能性の違いによる。つまり、第1グループは「現在の大企業」であって成長率が低く、第2グループは「未来的な企業」であて成長率が高いのだ。第2グループの企業は、従来の産業が担当していた分野を塗り替えている。新しい情報技術をもとにした新しいビジネスモデルを開発したことによって、従来の企業を乗り越えたのだ。第3グループは、「ユニコーン企業」である。これは、未公開で時価総額が10億ドル以上の企業を指す。(pp.124-127)
「世界をリードしている3つのグループがある」と述べたが、これらは、すでに現実世界を動かしている企業群だ。ところで、第四グループが地平線上に姿を現しつつある。それは、ブロックチェーン技術をベースに置く分散型自律的企業(DAO:Decentralized Autonomous Organization)だ。(p.149)
企業の側から見ると、古い知識を持った専門家を抱えているのは、コストになるだけだ。人工知能やブロックチェーンが企業の基幹システムを運営し、必要に応じてフリーランサーを利用するようになれば、企業は永続的な組織ではなくなるかもしれない。ある仕事のために資金と人材を集め、終わったら解散するのだ。(p.151)
世界経済フォーラム(WEF)は、2016年8月、向こう数年間に世界に大きな影響を及ぼす可能性が高い10大新興技術を発表した(Top 10 Emerging Technologies of 2016)。そこで取り上げられたのは、バイオ・医療関係が2つ(光遺伝学、生体機能チップ)、材料関係が4つ(次世代電池、二次原材料:原子1~3層の厚みを敷かないごく薄い材料、プロブスカイト太陽電池、システム代謝工学)。残り4つは、つぎのように情報関連の技術だ。(p.155)

  • ナノセンサーとインターネット・オブ・ナノシングス(人体内で循環できたり建築資材に埋め込めたりするナノセンサー)
  • ブロックチェーン(仮想通過の基礎技術である分散公開台帳)
  • 自働車の自動運転
  • オープンAIエコシステム(自然言語処理と社会意識アルゴリズムが進歩した。またビッグデータの利用が可能になった。スマートデジタルアシスタントは、近い将来、幅広い仕事で役立つようになる)

著者は、今回の「働き方改革」が「働かされ改革」であると言います。そして、本質を突いた指摘がどんどん出てきます。それについては、是非本書をお読みください。

私も同意で、ワークタイムだけを語る「働き方改革」では、全くの不十分で、ライフタイムの充実が求めるべき価値であるのに、それに対してのフォローが欠けていると思います。本来はライフタイムが何よりも重要なのに・・・。

逆にそこに新しいビジネスチャンスが眠っていると思います。

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