社長、ウチにもCTOが必要です

社長、ウチにもCTOが必要です

社長、ウチにもCTOが必要です
著者:日経BP総研クリーンテック研究所

内容紹介
世界で戦う技術系企業経営の心得がストーリーで分かるコマツ、富士フイルム、東レ、コニカミノルタ、パナソニック、オムロン、味の素、ホンダ。
いずれも日本を代表する企業であり、技術を生み出し、磨いて、顧客に新たな価値を提供することで
成長してきました。そうした企業の活動を技術面からけん引するのがCTO(最高技術責任者)です。企業が、新しい価値を作り出し、継続して成長するためには、技術を研究・開発するだけでは足りません。
顧客でさえ気がついていないニーズを見つけるといったことも必要になります。
その他にも、解決しなければならない課題が山積みです。本書では、それぞれの企業で新たな価値の創出に携わってきた経営者たちの
“心に刺さる”言葉を紡ぎ合わせて一つのストーリーにしました。巻末には、コマツ野路会長、富士フイルム戸田副社長を含めた8名のインタビューを掲載しています。

★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯]
[目的・質問]
[分類] 336.1:経営政策.経営計画

 

テレビのHDRの容量の巨大化
→1週間すべての見逃しを個人でカバーできるようになるくらいの大容量化が可能に。
→ネット配信で、1週間分はいつでも見られるようになった。

競争条件が変わることを予測することはできるか?

世界中で新しいアイデアは常に生まれている。そうした情報を集め続け、世の中がどの方向に向かっているかを見極めること。特に技術の進化の方向が重要だ。そのうえであらゆる可能性を考えておくことだ。(pp.17-18)

競争条件が変わるなら、その前に開発の方向性を変えておかなければいけない。商品そのものがなくなるのであれば、その次の柱になる別の事業を考えておかなければならない。(p.18)
しかし、開発している本人にそれを考えさせることには無理がある。自分のしていることを否定することになるし、そもそも日々の仕事に追われてそんな時間はない。開発に力を注ぎ、競争力のある商品を作り出すことが、その人の仕事だから、何よりそれをやるべきだ。それが本人の実力アップにもつながるし、会社の競争力に直結するものだ。競争力が変わっても、開発者の実力が高かれば挽回できるかもしれないし、他の部署へ行っても十分戦力になるだろう。(pp.18-19)
消費者が選ぶポイントは変わっても、その商品に必要な機能であれば、開発を続ける必要があるし、その商品がなくなっても、他の商品に応用できることもある。商品はあきらめても、技術の価値は残る。(p.19)
下からの提案に対して、「それでいくら儲かる」と聞き返す経営者がいるが、あれはダメな典型。(pp.22-23)
最近は、まったく別の分野から参入してきた企業が、それまでとは違うルールを作って事業を奪ってします。競争条件が変わるので、常に次の競争条件が何になるかを考えていないといけない。しかもその変化が速すぎて、想定したよりも早く次の競争条件に移ってしまうことが多い。最悪の状況を想定するべきであり、そのためには危機感が必要である。危機感を持っていれば、いやでも最悪の場合を想定することになる。(p.23)
商品開発より事業開発のほうが、もう少し長いスパンで考える必要があるだろう。言ってみれば、将来の夢を描くようなものだ。夢は、世の中がどうなったらいいかを考える。・・・データをいくら分析しても新しい事業は生まれない。それよりも夢を起点にして、世の中が欲しているものを探すことが重要。(pp.40-42)
ある会社の副会長は、「ほらを吹け、嘘はつくな」と言っている。ほらは将来の夢を語ることだ。多少のほらでもいいから夢を語ることで、仲間を増やすんだよ。夢が無かったら賛同してくれる人も増えないだろ。・・・でもほらだけではいつまでも賛同してはくれない。そのためには、小さくてもいいから実績を作ることが必要だ。・・・ただし、その実績は小さくてもいいが、妥協してはいけないところはトコトンこだわることが大事になる。(pp.43-44)

また、ほらを吹くことで、ほらを吹いた本人もハードルが上がることになる。ほらまで吹いて「できませんでした」では、二度と聞いてもらえなくなるだろうから、覚悟を決めてということになる。

コマツでコムトラックスを推進した方がこんなことを言っている。「顧客を深く理解し、顧客でさえ気がついていない価値を創造しろ」と。そのためには、現場に行くことが大切だ。例えば、ホンダには三現主義というのがある。「現場」、「現物」、「現実」の3つを直視するということだ。・・・顧客でさえ気が付いていないニーズを知るためには、顧客の現場に行くことだ。仮説を立てたら、それを確かめに現場に足を運ぶ。あまりに当たり前だが、百聞は一見にしかずは、やパリ正しい。(pp.59-60)
アメリカは電力を自由化し、さらにスマートメーターを普及させたことで、ITを使ったサービスがどんどん出てきている。第一段階は、電力の小売りを自由化し、dんりょく網のすべてを監視するスマートグリッドの導入。第二段階に入った現在は、その普及した再生可能エネルギーや蓄電池を地域で統合して制御する技術が発展してきた。・・・日本も2016年4月に一般家庭向けに電力小売りが全面自由化された。アメリカのように新し企業が生まれるのはこれからだ。そして、2017年にはガスの小売りも自由化された。(pp.65-66)
新規事業を始める条件として、富士フィルムの場合は、「やれそう、やるべき、やりたい」の3つを確認している。・・・ホンダで事業のやるかやらないかの判断は担当者に質問し、その質問への答えでトコトン考えているか、本気でやる気があるかを目を見て判断して、本気であることが分かれば、一言「やってみろ」と言って会議は終わるそうだ。担当者の本気度が何より重要だということだろう。・・・東レでも新研究テーマの設定指針はある。その研究テーマは将来の事業性を見越して決められる。時代の要請に合致しているか。長期的に競争力は維持できるか。ビジネスモデルは描けるか。そうした研究テーマの設定指針はあるが、中でも重要なのが、適社性の見極めだ。適社性とは、開発体制や営業チャネルなど社内インフラとの整合性を確認することだ。例えば、東レはいろいろな材料を開発しているが、あるとき他社より性能のいい材料が開発できたとしよう。しかし、その材料を売るための販路があるか、そのユーザーとこれまでいい関係を築けているか。開発リソースはあるのか。これらの問いは継続して優良な材料を開発し続けられるのかということだ。得意分野でないところでたまたまいい材料が開発できても、継続できなければ事業としては成り立たないだろう。得意分野でなければ顧客開拓だけでも一苦労だから、材料を一つ開発できたくらいでは事業を始めてはいけないんだ。社内リソースを考えて、新しい分野で事業を始めても勝算があるのかを判断する必要がある。(pp.83-84)
東レが何より重視しているのは、研究担当者がワクワクしているかだ。活性化されているかということだ。富士フィルムも「やりたい」を重視し、東レも担当者が活性化されているかを見ているのは、やりたいことをしている人は成果が大きいことが分かっているからだろう。そうしたやる気を重んじて社員の自主性に任せる活動を取り入れている企業は多い。社員のやる気を条件として最も重要視しているのか。確かにやりたいことをしているときは時間が過ぎるのも忘れて没頭できるものだ。そうなれば成果も期待できる。(p.84)
大きな変化の中で、企業が生き残るために必要なことは「虎の子技術」である。コア技術といってもいい。新しい価値を生み出すシステムの中で、どこを自社の強みとするのか。そのキーとなるのがコア技術、最後まで守り通さなければいけない虎の子だ。これを取られたら負けを意味する。その虎の子の技術を守りつつ、描いた将来像を実現するために必要なその他の技術を考えるのだ。(p.97)
新規事業を見つける上で重要な視点は、単なる思いつきではなく、技術の類似性があり、これは逆T字型である。深く掘り下げて一つのことを極めたら、それを横展開する。これが逆T字型である。新しい事業を始める場合、この逆T字型が望ましい。(p.110)
人の知識はよくT字型が望ましいといわれる。広い知識を持っていて、1つの専門分野を持てという意味でT字型を目指せと。しかし事業を生み出すには逆T字型が望ましい。まずは一つのことを掘り下げる。そのことを極めてから、他の分野に展開する。1つのことを極めているから、他の分野でも勝負できるというわけだ。(pp.110-111)
東レの研究所で導入している「アングラ研究」というのは、研究者がやりたいと思うテーマを自由裁量で研究していい制度である。アングラっていうのはアンダーグラウンドのことで、会社がこれを強く推奨している。あくまで自主性を重んじているから、強制はしていないが、実際にアングラ研究から始まり、高収益な事業につながってものは数多い。このアングラ研究には、業務時間の2割までなら時間を割いていい。同じような例でアメリカの3Mの15%カルチャーというのがある。会社の成長に貢献すると自らが信じる活動なら、自分に与えられたテーマ以外のことに、業務時間の15%を当てていい暗黙のルールである。好きなことを好きなだけ掘り下げられる制度が、逆T字の最初の深い知識を育む。(p.113)
でも、こういった制度の肝は、社員が自由にやって生まれた成果を、事業化を想定した取り組みに引き上げる仕組みが社内にあることだ。そのためには、事業になると判断できる上司の見る目が重要で、多くの会社は、本来それを助けるべき上司が芽をつぶしてしまう。結局、問題は経営者である。(p.114)
社会的課題を決めれば、それを解決することが新しい価値となる。その解決の手段の一つがIoTということだ。だから企業はIoTを選定にした商品を開発する必要がある。あくまでも先に来るのは課題。それから手段としてのIoTである。(pp.122-123)
アジャイルなビジネスの進め方(p.148)
・失敗を重ねて早めに失敗の芽を摘む
・価値の分かる顧客を見つける
・自社が先を進めばおのずと先進的な顧客と連携することになる
・研究者に顧客の現場を見せる。
3Mには、イノベーションを起こすための様々な風土や仕組みがある。中でも重要だと思うのは、3つの風土が根付いていることだ。(p.159)
①失敗を許容する
②チャレンジすることが評価される
③人を助けると評価される
東レが炭素繊維を開発できたのも、大きな時代観を持っていたからだという。東レは、50年以上前に航空機に使われる炭素繊維の研究に着手した。そのころから航空機の需要が急増することと、軽くて強い素材が求められることを見通していた。もちろん、高度経済成長期だった当時、日本人に聞けば誰もがそう答えたかもしれない。だが、果たしてどれだけの企業が、それを切迫したものだと理解していたか。その中で東レは核心を見通し、それから50年にわたって粘り強く研究と技術開発を続けてきた。それを支えるだけの体力があったことはもちろんだが、炭素繊維は必ず必要になるという大きな時代観を維持してきたことが大きい。(pp.194-195)

このあと各社のCTOにインタビューが控えているのですが、その前にポイントをまとめた内容が書かれていましたので、そちらを書いておきたいと思います。

1.新規事業開発部の活動に関わること
<短期>
◆新規事業を考える
・大きな時代観を持つ
・最初に解決すべき社会的課題を決める
・社会の課題を解決する将来像を描く
・顧客の気づいていない価値を創造する
◆社内に浸透させる
・将来像を作成し社内に浸透させる
◆社外にパートナーを探す
・知っている人は知っている<長期>
◆新規事業を始める条件
・やれそう、やるべき、やりたい
◆社内の信頼を得る
・小さな実績
◆パートナー戦略
・オープン&クローズ戦略
・価値観を共有できていることが鍵
◆最初の顧客
・失敗を重ねて早めに失敗の芽を摘む
・価値の分かる顧客を見つける
・感度を高めて先進的な顧客と連携する<体制>
◆部の組織について
・リーダーは変わり者、サポーターはバカ1、バカ2

2.上長に向けて
◆トップの条件
・経営者は危機感を持て
・経営者は大きな目標を持て
◆社内への働きかけ
・ほらを吹け
・(ジャンルトップ戦略で)社員のモチベーションを上げる
・管理職がイノベーションを妨げてはいけない

3.社内の他部署に向けて
◆人事部
・社員に自由を与える
・チャレンジしたことを評価
・成功に近づいたら、それを失敗とは言わない
◆研究所
・研究者に現場を見せる
・イノベーションはゼロから1を生み出すこと
・イノベーションは辺境から生まれる

4.自分の心構え
・上司は自分
・越境行為をするくらいがいい

新規事業開発部は、最初に新規事業の決定に向けて活動を開始する。その決定までの手順を書き出した。

・社会的課題、顧客ニーズの調査

・技術の進化の方向の調査

・大きな時代観をつかむ

・将来像を描く

・現在からのシナリオを考える

・新規事業の決定

新規事業が決まったら、社内に賛同者を増やしつつ、社外に向けて新規事業の構想を発信して技術パートナーの選択、事業パートナーの選択を実施する。そのタイミングまでには、技術パートナーと事業パートナーの候補企画のリストアップもしなければならない。

将来像を描いて、社内に浸透させる上でぶれてはいけないポイントが3つある。1番目は、将来像を作成するときに、経営トップであるCEOと技術トップであるCTOのベクトルの整合性が取れていること。つまり会社の向かう将来と技術の発展の方向があっていることだ。2番目は、ある程度先の話を捉えている将来像に、足元で行っている短期的な事業活動が向かっているかどうか。その方向性が正しいかを見極めなければならない。現在の事業活動の先に目指すべき将来像があるかどうか。逆に言えば、将来像を目指して、現在の事業の方向性を決めることだ。その時に足元の事業に惑わされずに、将来の姿にまっすぐに向かっていることが大切だ。最後に、経営陣の考え方が、現場に正しく伝わっているか。方向性を決めるのは経営陣かもしれないが、それを実行するのは現場の社員なんだから、ちゃんと現場に伝わっていないと、せっかくのビジョンも台無しになる。(pp.215-216)
これら3つのポイントのどれか一つでも整合性が損なわれると、会社の進む方向が間違ったものになってしまう。この3つの軸がしっかりとぶれないように普段からコミュニケーションを取って、連携するようにしなければならない。(p.216)

小説仕立てで書かれていましたが、アドバイザーとして出てくる森田さんが(多少無理はあるものの)主人公の杉下君を指導しているさまが、そのまま教科書的なポイントを挙げていっているようなところです。そして、杉下君が最後にそのポイントをまとめてくれているのがよかったです。

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