INNOVATION PATH イノベーションパス

INNOVATION PATH イノベーションパス

INNOVATION PATH イノベーションパス
著者:横田幸信

内容紹介
プロジェクトをいかに着地させるか。
イノベーションを生む秘けつは、
発想術よりプロジェクト手法にあった!創造性の研究・実践で知られる東大i.schoolとコンサルティング企業i.labの
ノウハウを徹底解説。アイデア創出法だけでなく、イノベーションのマネジメント
手法を、三菱重工グループやLIXILなどの具体的な事例で学ぶ。

「目指すべきゴールを『ゼロから1』ではなく『ゼロから1.1』にするには」
「なぜ今、イノベーションなのか」「イノベーション・プロジェクトの設計法とは」
などの疑問にも答える。クリエイティブを目指すビジネスパーソン必読の書。

新市場を生み出すような新製品・サービス・ビジネスのアイデアを創出し実現するための「イノベーション・プロジェクト」の進め方について解説。アイデア創出方法の紹介だけに終わらず、「破壊的イノベーション」から「ブルー・オーシャン戦略」、「デザインシンキング」などのこれまでのイノベーション・マネジメント手法の全体観と要点を踏まえた上で、創出から実現に向けた実践論を解説していくところに本書の特徴がある。

はじめに
第1章 イノベーションの新潮流をつかめ
第2章 イノベーションを起こす人材に育つ・育てるために
――東京大学i.schoolの事例より
第3章 既存事業とはコンセプトの異なるアイデアを生み出すには
第4章 アイデアを収束させ、品質を高めていくには
第5章 イノベーション・プロジェクトの設計とマネジメント事例
第6章 イノベーション・プロジェクトで成果を出すために
おわりに・参考資料一覧

内容(「BOOK」データベースより)
アイデア創出法だけでなく、イノベーションのマネジメント手法を三菱重工グループやLIXILなどの具体的な事例で解説。プロジェクトをいかに着地させるか。イノベーションを生む秘けつは発想術よりプロジェクト手法にあった!創造性の研究・実践で知られる東大i.schoolとコンサルティング企業i.labのノウハウを徹底解説。クリエイティブを目指すビジネスパーソン必読の書!

★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯]
[目的・質問]
[分類] 336.17:研究開発.企業情報管理.企業調査.産業スパイ, 経営情報管理.

2030年に、あなたが今と同じようにビジネスパーソンとして、基本的には人間として、より価値の高い仕事をしているためには、今のうちからあなたの得意な能力の要点を正確に把握し、それを強みにできるように積極的に備えておくことが大切です。(p.11)
人間の得意な能力として残るものは2つあります。まず1つ目は、目的意識を持った創造性の発揮こそが大事になるということです。ただルーチン的にアイデアを出すだけではなく、「そこに社会的な問題があるからどうにかしたい」、自分の価値観がそうしたいと言っているから、自分はこういう製品のサービスのアイデアを考えたい」というような主体的な創造力です。・・・2つ目が、自分にはない能力や体験を持つ他者と協調して価値を高めるような作業です。いわゆる「コラボレーション」と言われるものですが、単なる分担作業ではなく、1つの目的に向かって皆で価値を高めるような協調作業です。・・・そして、これら2つの人間の得意な能力を活かせる仕事というと、産業界においては新製品・サービスのアイデア創出や事業開発など、イノベーションに関わる仕事になるのです。(pp.12-13)
最近はだいぶ少なくなりましたが、新聞や書籍などにおいて「イノベーション(=技術革新)」と記述されることがあります。インベーションを技術革新の意味だけで解釈してしまうと、それを生み出す可能性を最初から狭めてしまうことになります。・・・イノベーション=技術革新という誤解は、製品・サービス開発プロセスの立脚点を技術開発だけに頼ってしまうことにつながります。また、その言葉の誤解は、現在の市場において必須なことともいえるビジネスモデル自体の刷新やユーザープラットフォームの構築などについても、日本企業から考察を深める機会を奪ってきたように思います。日本においても、イノベーションの意味合いを技術革新のみならず、他の要素に立脚してアイデアを生み出したり、新しい普及モデルとともに社会に提案することにシフトするタイミングに来ているように思います。・・・技術中心だけで考えてきた新製品・サービス創出の取り組みに対して、イノベーションの本当の意味合いに立ち返り、人・社会の洞察にも注力する考え方と方法論が必要になってきているというのが大切な点です。(p.17–20)

お勧めのイノベーションの書籍が2冊紹介されています。

[amazonjs asin=”4798100234″ locale=”JP” title=”イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)”]

 

「イノベーションのジレンマ」の画像検索結果

かつては、国際電話市場を切り開いたイノベーターともいえる通信会社が、愚直にユーザーの声に耳を傾け性能向上という持続的イノベーションを真面目に追及していたにも関わらず、それが故に新興企業であるSkypeに市場のルールを塗り替えられ、ユーザーを奪われてしまう隙を作り、「破壊的イノベーション」に直面する。そういうジレンマを「The Innovator’s Dilemma」と呼んでいます。(p.28)

「イノベーションのジレンマ」の早わかりのページがありました。(こちら

クリステンセン教授は破壊的イノベーションについて、「ローエンド型」と「新市場型」の2種類に分けて議論しています。「ローエンド型」では、市場を占める既存の大企業群と対抗しながら、過剰満足で過保護にされた顧客を低コストのビジネスモデルで攻略します。もう1つの「新市場型」は、競合する既存の大企業群からではなく、ユーザーが消費しない状況「無消費の機会」に対して新しい価値を提案し、ユーザーを奪うのではなく市場そのものを開発します。(pp.28-30)

[amazonjs asin=”415208426X” locale=”JP” title=”発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法”]

 

デザインシンキングについては、その言葉のキャッチ―さと方法論の自由度の高さから様々な観点から方法論を紹介していますが、やはり原点に立ち返ることができるこの本をまず読まれることをお勧めします。少々乱暴な要約かもしれませんが、「技術から発想するのではなく、まずはフィールド観察にでかけてユーザーを観察しましょう。ユーザーへの共感からアイデアを生み出しましょう」というのが私なりのこの本及びデザインシンキングに対する解釈になります。・・・トム・ケリー氏とお話しする機会があった際に、私は「なぜフィールド観察からプロセスを始めることが大切なのでしょうか?」と質問しました。それに対する答えは、「フィールド調査に行くのは、まずユーザーに共感するために。それが一番大切なこと」というものでした。・・・「ユーザーへの共感」が実はデザインシンキングの本質的な特徴であるように私は思います。(pp.31-32)
1986年にピーター・ロウ氏が書いた「Design Thinking」という本の中で、間違いなくこれがポイントだと私が考えている文言があります。それは、ピーター・ロウ氏いわく、デザイナーが扱う問題には「輪郭の明瞭な問題」と「輪郭の不明瞭な問題」とがあるというところです。輪郭が明瞭な問題は、例えるならば連立方程式みたいなものです。2次の連立方程式では、AとBがあって、その数字は共にわからないとしても、その関係性を表す式が2つあれば解くことができます。つまり問題は存在するけれども、ある定石に従えば必ず解き方が分かるようなものです。それを、ピーター・ロウ氏は「輪郭の明瞭な問題」と呼んでいます。一方で、「輪郭が不明瞭な問題」は、そもそも何が問題かよく分からない、課題そのものが分からないといったものを意味します。デザインが扱う問題の多くはそういう輪郭が不明瞭な問題であるとも、この本では言及されていいます。実は、輪郭の不明瞭な問題を無視せずにいかに取り扱うようになるかということは、社会にとって大事なことで、それに挑むためにデザイナーの思考プロセスを一般化して世の中で広く使えたらいいのではないか、といったビジョンまでもが書かれています。この本では、思考プロセスの紹介や解釈だけでなく、社会の中での活用可能性に対するビジョンも提案されている点で現代のイノベーションとデザインの関係性につながる大切な書籍だといえるでしょう。(pp.34-35)
イノベーションにつながる「有望なアイデア」の見分け方を考えていきましょう。イノベーションにつながりそうな有望なアイデアか否かは、既存の製品やサービス、ビジネスモデルとの比較で判断できる「新規性」、未来の市場や夜会に対してどのような経済的・社会的効果をもたらすと期待されるのかという「インパクト」の2つの軸で評価することが多いです。(p.39)
イノベーションを社会に生み出していくプロセスでは、ただ面白いアイデアを出せば役目が終わるのではなく、その実現に向けては様々な方とのコミュニケーションが発生し協力を募ったり、もう辞めたいと思うほどに強い困難に出くわしたりもします。そうした際に、人々が共感し一緒に頑張りたいと思えるほどに理想があり、困難があってもそれでも前進したいと思える、また絶対に前進せねばならないと思える、自分自身を鼓舞するモチベーションは必須なものとなります。・・・自分自身がどれだけそのアイデアに情熱を持てるか、信じられるか、これを実現したいと思えるのか、自分自身への厳しい問いかけが毎日起こります。その問いかけに対して、自部なりの強い答えを持てているかどうかは、イノベーションを追い求めるプロジェクトにおいても、その成否を分ける一番の要素とも言えます。(pp.64-65)
次にマインドセットの話です。私は、具体的には次のようなマインドセットを期待しています。(pp.66-67)

  1. 楽しく前向きにやる
    ・創造的な思考と行動は本質的に楽しい
    ・これまでの研究や仕事のやり方に捕らわれない
    ・先が見えないモヤモヤ感を楽しもう
  2. 真剣に本気でやる
    ・一人の大人として基本的なマナーは何か自分で考え行動する・実践的な能力を身につけるためにも一瞬一瞬を本気でやる
    ・揉めるときは破壊的ではなく建設的に揉めるように
  3. 他者を理解し尊重する
    ・驕りではなく、多様な年代と専門性、才能が集まるコミュニティの一員になる自負心
    ・自分自身やこれまでのコミュニティとの違いを楽しむためにも、他社理解が重要
    ・自分を理解し尊重してほしいなら、まずは自分が他者にそうしよう
イノベーションンにつながる道のりを考えてみたいと思います。何らかの情報があった時にそれをつなぎ合わせ、意味のある新しい結合が見出されたことを、人はアイデアが生まれたといいます。これを0から1と表現します。そのアイデアを、技術的な課題や生産面の課題、法的な課題、流通面の課題などを乗り越えたのち、世の中に製品やサービス、事業として利用できる形で発売するプロセスも重要です。その過程を仮に1から10のプロセスと呼びます。そして、新しい商品やサービスが世の中に登場し、普及していくプロセスを10から100とします。それぞれに言葉を設定するなら「創出」「実現」「拡大」のプロセスと言えるでしょう。(pp.82-83)
何かアイデアを生み出す思考作業には、インプットする情報があり、それを操作する作業があり、そしてアイデアをアウトプットするという一連の情報処理プロセスがあります。・・・どの領域の情報をまずインプットするのか、という観点で見るとアプローチの仕方が大まかに分けて4つあります。(pp.87-96)

  1. 技術起点アプローチ
    当たれば大きいが、近年は特に打率が低くなりがち
  2. 市場起点アプローチ
    有望性は皆が納得できるものの、アイデアがあるようで実はない
  3. 社会起点アプローチ
    課題は明確だけど解き方が分からない。また、アイデアが出ても実現するためには規制緩和などが必要になりがち
  4. 人間起点アプローチ
    アイデアは面白く感じるが、自社の強みを生かせている気がしない。また、製品の改善としては面白いが、事業としてのスケールは小さくみえる
「機会領域」という概念を知ることはアイデア創出のために大変有効なので紹介しましょう。機会領域とは、アイデアを創出するために抽象的に思考の方向性を指し示すものであり、アイデアのコンセプトともいえます。その領域で具体的にアイデアを考えていくと、新規性がある有望なアイデアが出る可能性の高いと考えられる領域のことです。(p.104)
機会領域の概念が抽象的過ぎて理解しにくいと思うので、具体的に事例を1つ紹介したいと思います。実際に我々が手掛けた三菱重工グループの新規事業創出のプロジェクトでは、機会領域を「成長もしくは縮退する都市部におけるフレキシビリティの高いインフラの必要性」という文言で設定しました。この機会領域を設定するのがプロジェクトの中間地点であり、後半戦はこの機会領域の中でさらアイデア創出をしたり、アイデアをさらに具体化していったりしました。その結果、インフラ敷設が追いついていない新興国都市部や水インフラが老朽化した先進国地方部における水の再生事業のアイデアなどを創出できました。この機会領域が設定されていないと、追加でのアイデア出しをする際にもメンバーで方向性がバラバラになり、プロジェクトが空中分解するリスクすらあります。また、アイデアの作り込みの段階でもこの機会領域のあるお陰で、どのような方向に着地させるべきなのかということをメンバー全員で共通認識を持ちやすくなります。(pp.105-106)
機会領域という概念を使うメリットを3つ述べたいと思います。(pp.106-108)

  1. 早めに「筋の良さの判断」ができるということ
  2. 「論理的に説明可能」ということ
  3. プロジェクトを途中で「保存」できるというメリット
次にアイデアを生み出すプロセスにおいて学びの多い4種類の個性あふれる方法論・プロセスを紹介します。(pp.108-128)

  1. 人間起点:固定観念を崩す「エクストリームユーザーインタビュー」
  2. 社会起点:未来社会を考える「シナリオプランニング」「未来洞察」「社会シフト」
  3. 市場起点:市場のバイアスを突く「ブルー・オーシャン戦略」「ブレイク・ザ・バイアス」
  4. 技術起点:先端技術の新たな価値を探索する「テクノロジー・シフト」

ブレイク・ザ・バイアスについては、こちらが参考になるとのこと。
イノベーションを生むための「ブレイク・ザ・バイアス」
TED

優れたマネジャーは、アイデアの良し悪しの評価を本質的に不確実と認識しています。そのため、我慢強く聞き、質問し、建設的にフィードバックをしています。イノベーションにつながる可能性を秘めたアイデアの評価は、本質的に不確実なものです。実践的にも活躍するビジネスデザイナーの濱口秀司氏は、イノベーションにつながるアイデアの条件として、以下の3つを挙げています。

  • 新規性があること
  • 実現可能性があること
  • 議論を生むこと

マネジャーに求められる役割としては、良し悪しを断定的に言い切るのではなく、様々な観点から質問をしてあげ、そのアイデアの良いところと弱点をリーダーやメンバー自身に気づかせてあげることではないでしょうか。自分としては、このアイデアはイマイチだなと感じたとしても、自分以外の人は逆の評価をするかもしれませんし、そういったケースは頻繁にありいます。(pp.240-241)

イノベーションへの道のり(パス)について、方法論的なところはある程度トレースできましたが、その方法論を知ってもそう簡単にイノベーション的なビジネスを創出することはやはり困難だなぁと思いました。

(気に入ったら投票をお願いします!)

にほんブログ村 経営ブログへ
にほんブログ村

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください