ブロックチェーン革命


ブロックチェーン革命 分散自律型社会の出現

ブロックチェーン革命 ―分散自律型社会の出現
著者:野口 悠紀雄

内容紹介
◆仮想通貨を支える情報技術、ブロックチェーンが、いま、応用対象を拡大し、ビジネスや経済、社会の姿を劇的に変えようとしている。
◆ブロックチェーンは電子的な情報を記録する新しい仕組みで、管理者を必要とせず、記録が改竄できない。これまでは相手の組織を信頼することが必要だったが、組織を信頼せずに安心して取引ができる。そして、従来のインターネットではできなかった、経済的価値を送ることができるようになる。このため、通貨や金融の世界にパラダイムシフトをもたらす。
◆IoTやシェアリングエコノミーにも、ブロックチェーンが不可欠だ。それだけでなく、予測市場、真実性の証明など、さまざまな新しいサービスを生み出し、さらには、行政や政治・司法の分野でも応用が可能だ。ブロックチェーンが実現するDAO(経営者が存在しない企業組織)は、未来社会の主役になる。
◆従来の常識を一変させる、未来のビジネスチャンスの宝庫といえるブロックチェーンの全容を、内外の最新事例をもとに平易に説き明かし、その可能性を展望する。出版社からのコメント
(「はじめに」からの抜粋)
私は、『仮想通貨革命』の「はじめに」で、「これは反乱ではありませぬ。これは革命です」という言葉を引用した(フランス革命が勃発したその日に、リアンクール公爵がルイ16世に向かって言った言葉)。
飛行機が革命であったように、そしてインターネットが革命であったように、ブロックチェーンも革命だ。それはパラダイムの変革をもたらす。つまり、世の中をひっくり返す。
ただし、フランス革命がそうであったように、革命が始まった段階では、それが社会を良い方向に持っていくのか、悪い方向に持っていくのかは、分からない。飛行機は、地球上のどこにでも短時間で到達できることを可能にした半面で、初飛行から10年少々しかたたぬ第一次世界大戦においてすでに、強力な兵器として利用されていた。
インターネットは社会を変え、経済をリードする主役の交代をもたらした。しかし、当初予想されたように社会がフラット化することはなく、少数の大企業が世界を支配するようになった。
なぜこうなったのか? この問題は、終章で論じられる。最も本質的な理由は、インターネットの世界では、何が正しいデータかを確かめることが容易でなかったために、小組織や個人が信頼を確立することができなかったからだと、私は思う。組織が大きいことが人々の信頼の基礎になったのだ。
ところが、ブロックチェーンは、組織に頼らずに、何が正しいかを立証することを可能とした。それが実現することにより、社会が大きく変わる。
そうなれば、組織に頼らずに、個人の力を発揮できる社会が実現する。経済活動の効率が上がるだけでなく、組織のあり方が変わり、人々の働き方が変わる。そして、人々が直接に連絡し、取引する社会が実現する。
しかし、正反対の可能性もある。銀行などの大組織が、プライベート・ブロックチェーンを利用して、効率性を高める可能性だ。この場合には、信頼はブロックチェーンが確立するのでなく、組織が保証することになる。したがって、大組織が社会を支配する構造が続く。
通貨についていえば、この方向の極限は、中央銀行が仮想通貨を発行して経済をコントロールする体制だ。それは、ジョージ・オーウェルが小説『1984年』で描いたビッグ・ブラザーの世界だ。この問題は、第6章の4で論じている。
つまり、ブロックチェーンが引き起こす社会変化として、大きく異なる2つのものがあり得るわけだ。どちらが実現するかは、これから決まる。われわれは、いま大きな岐路に立っている。変化の方向に影響を与えるためには、正しい理解が必要だ。
本書は、このような問題意識から書かれている。そのため、ブロックチェーンの技術面についての説明にとどまることなく、それが具体的にどのように利用されるかを説明している。金融以外の用途についても詳しく取り上げる。そして、ブロックチェーンが社会構造に与える影響を強調している。

★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] 仮想通貨について深く知りタイというのがきっかけ。
[目的・質問] 上記にもあるように本文の「はじめに」にもかかれているような「ブロックチェーンの本質」を理解する。
[分類] 338:金融. 銀行. 信託

 

ブロックチェーンとは、電子的な情報を記録する新しい仕組みである。重要なのは、つぎの2点だ。第1は、管理者が存在せず、自主的に集まったコンピュータが運営しているにも関わらず、行っている事業が信頼できることだ。第2は、そこに記された記録が改竄できないことである。(p.21)
ブロックチェーンに関する文献で、しばしば trustless system という言葉が登場する。これは、「信頼できないシステム」という意味ではなく、「個人や組織を信頼しなくても安心して取引ができるシステム」という意味だ。このようなシステムは、ブロックチェーンによってはじめて可能になった。それは、大変大きな変化だ。(pp.21-22)
これまで、経済取引は、相手を信頼しないと成り立たないと考えられていた。このため、どんな事業でも、必ず管理者がいた。その人が事業のすべてについて責任を持つ。管理者を信頼できると考えられれば、人々はその事業を信頼できると考えて、取引しようとする。単に人々が集まっているだけでは、問題が生じたとき、誰を相手に交渉したらよいか分からない。そのような組織とは、人々は取引しようといなかった。ところが、ブロックチェーンを用いた事業では、事業の進め方はプロトコルとして定めてある。コンピュータは、それに従って情報を処理する。したがって、管理者が存在しないにもかかわらず、信頼できるのである。これは、それまでの常識を完全に打ち破るものだ。多くの人々が「ビットコインは怪しげなものだ」と考えたのは、この発明があまりに革命的だったからだ。(p.22)
ブロックチェーンにいったん書き込まれたデータは、書き換えることが(事実上)不可能なのである。このため、そこに書き込まれている正しいデータだ。ブロックチェーンが登場するまで、信頼性をチェックされていない日飛び地が集まって信頼が必要とされる事業を運営するのは、不可能と考えられていた。これは、コンピュータ・サイエンスにおいて、「ビザンチン将軍問題」として知られていたものだ。その問題が、ブロックチェーンによって解決された。コンピュータ・サイエンスにおける画期的なブレークスルーだ。これは、きわめて巧みな仕組みによって実現されている。(p.23)
従来のインターネットでできなかったことが、2つある。第1は、貨幣など経済的に価値あるものを送ること。そして、第2は、信頼性を確立することだ。これがブロックチェーン技術で克服されることによって、経済活動や社会の構造が非常に大きく変わる。(pp.23-24)

現状、クレジットカードを使ってインターネットで決済しているではないか?ということですが、これをするためにある種、大掛かりなコストが掛かっているということなのです。

まず、これは送金をする相手が信頼を確立しているからこそ送金しているということです。SSL認証であったり、また通信販売協会で所属企業あるという証明書があったり、その他、公的機関の証明書やマークなどで信頼できる企業であるということをアピールしているなどということ。また、クレジットカードをを用いる送金には、これまた認証機関などを間に挟んでいたり、消費者ではなく店舗側がカード決済手数料を支払っており、下手をするとこのカード手数料で利益が吹っ飛んでしまうようなことも考えられる。

ところが、ブルックチェーンを持ちいれば、インターネットを通じて低いコストで経済的な価値を送ることができるのだ、と書かれています。(pp.24-25)

インターネットは、本質的に「安いけれども信頼はできない」通信システムなのである。だから、それを用いて経済的価値を送れないのは、当然のことなのだ。高いコストをかけて無理矢理に送っていた、というだけのことだ。これが変わるのは、非常に大きな変化だ。これまでは、取引はできても送金・決済ができなかった。ブロックチェーンの利用によって、それができるようになる。これによって、世界的な分業体制は一挙に大きく変わるだろう。(p.25)

となると、カード会社自体必要でなくなるということでしょうか。そういうことなんでしょうね。

これまで社会を形成するのに、2つの基本的な方法があった。第1は、計画と統制によって行うこと。第2は、マーケットにおける取引を基本ととして社会を構築することだ。賢人政治は、第1の仕組みの理想形だ。知力と徳に優れた一人または複数の人が指導者となり、社会を構成する各人の仕事の分担を決め、それを割り当てる。生産されたものの配分も、指導者が決める。実際には、こうした賢人は存在しないので、計画・統制システムは、独裁権力者による強制政治になる。かつてのソビエト連邦がその例だ。中央計画当局が生産計画を決めて仕事の分担と配分を決める。しかしこのシステムは機能しなかった。ソ連をはじめとする社会主義経済国家は機能不全に陥り、1990年代の初めに崩壊した。人類は巨大な犠牲を払って、計画・統制のシステムは機能しえないことを学んだのである。したがって、社会を形成する現実的な方法としては、第二の方法、つまり、マーケットを基本とする方法によらざるをえない。(pp.26-27)
アダム・スミスが描いた経済システムは、まさにこうしたものであった。ここには、中央の管理者は存在しない。第1のシステムで中心的な役割を果たす賢人も、独裁権力者も存在しないのである。社会を構成する人々は、各々がもっとも適切だと思う方法で、自らの望むところに従って行動し、他の人と取引する。そして、必要に応じて仕事を分業する。これらの取引は、マーケットを通じて行われる。その結果、分配が決定される。政治的な指導者はいるが、彼らは選挙で選ばれる。これもある種の市場取引だ。(p.27)
ブロックチェーン技術の影響は、さらに広い応用可能性を持ち、社会の仕組みを大きく変えようとしている。まず、企業の経営を、ブロックチェーンを用いて自動的に行おうという極めて野心的な構想があるこれは、DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散化された自律組織)と呼ばれるものだ。その結果出来上がる組織は、これまである組織とは、かなり異質なものになる。DAOは、人を介在させずに自動的にビジネスを行うための仕組みである。究極的にはウェブ上のショップはすべてブロックチェーンによって運営される自動運転企業になる可能性がある。少なくとも、既存企業における組織の一部が自動化されるだろう。また、資金の出し手と受け手が直接に結び付き、これまでの形の金融機関を不要にしてしまうかもしれない。ロボットは、主として人間の肉体労働を代替するものだ。しかし、ブロックチェーンの応用によって、経営者の機能を自動化することが可能になるのだ。インターネットの世界では信頼性が確立されておらず、そのため現実の世界において大組織の優位性が高まっていた。しかし、DAOの場合には、組織を信頼する必要はなくなる。(pp.33-34)

ここまでが序章でした。序章で、すでにおなか一杯になってますが、いよいよ本題に入っていきます。

改めて、ブロックチェーンとは何ぞや?というところからです。

ブロックチェーンとは、公開された台帳で取引などの記録を行う仕組みである。その詳細は以下で説明するが、従来型の情報システムと比べると、

  1. 記録が公開されること
  2. 分散的な仕組みで運用され、管理者が存在しないこと
  3. そのため、運営コストが低く、システムがダウンしないこと
  4. 事業主体である組織を信頼する必要がないこと

という特徴がある。
これまで、送金などの経済的取引は、銀行など信頼を確立した機関が管理することで行われてきた。ブロックチェーンは、そうした管理主体の代わりに、P2Pと呼ばれるコンピュータのネットワークが、取引の正しさをチェックする。ここで、「P2P」とは、対等な関係にある複数のコンピュータが直接接続しあい、データを送受信するネットワークである。(p.40)

これまでは、取引が正当であることを確認するために、多くの組織と多数の人間が関与し、何日も何週間もかけて書類に記録し、それらを照合することによって、処理してきた。しかしそうしたプロセスを経ずに、取引が自動的に認証されるようになる。これによって、人間がほとんど(あるいはまったく)介在しなくても、取引を実行することが可能になる。ブロックチェーンは、以上の意味で、まったく革新的な技術だ。(pp.40-41)
信頼できない者同士が集まって共同作業を行うことは、不可能であると考えられていた。常識的に考えて明らかだというだけでなく、厳密な論考の結果としてもそうであると考えられていたのだ。それを解決したのが、プルーフ・オブ・ワーク(PoW:Proof of Work)という仕組みだ。この仕組みは、まさしく画期的だった。PoWのメカニズムを理解するには、「ハッシュ関数」を知る必要がある。ハッシュ関数とは、あるデータの集まりを数字に変換する関数のことだ。元のデータをハッシュ関数に通すと、「ハッシュ」という数字が出力される。特徴は2つある。第1に、元のデータを変えれば、まったく異なるハッシュが出力される。第2に「ハッシュ」が分かっても、それを作り出す元の数をアルゴリズム計算(一定の規則に基づいた計算)で見出すことはできない。(pp.48-49)
ブロックチェーンのシステムは、信頼に基づいて構築されたシステムではないが、不正行為をすると損になるのだ。性善説に基づいて人々が悪事を働かないことを期待するシステムではなく、仮に人々の性が悪であってもなおかつ機能するシステムなのである。しかも、合理的な判断に基づかず、コストを顧みずに悪事を働こうとしても、成功しない。こうして、「trustless(信頼の欠如)」に基づいたシステムが構築されることになる。(p.52)

2016年5月に、ゴールドマン・サックスがブロックチェーン導入の影響を発表し、その概要として次のことが挙げられています。

ブロックチェーン技術の導入によって、証券・資本市場の精算・決済コストが、全世界で年間110~120億ドル削減される。住宅の保険では、アメリカだけで、年間20億ドル~40億ドルの費用削減が可能だ。マネーロンダリング対策費用が、全世界で年間30~50億ドル節減できる。金融以外の分野では、つぎのとおり。空いている部屋などを貸す民泊の分野では、ブロックチェーンを用いる認証サービスによって、20年までの期間で、アメリカだけで予約が30~90億ドルほど増える。スマートグリッドの分野では、ブロックチェーンによって分散的電力市場が可能になるので、アメリカだけで25~70億ドルのマーケットが創出される。なお、このレポートは分野ごとに、これから成長するスタートアップ企業と、被害を受ける在来企業の名を挙げている。(p.59)
コストが下がると、単に利用者の負担が下がるだけでなく、新しい経済活動が可能になる。特に、国際送金とマイクロペイメント(少額送金)の面での効果が大きい。インターネットは、地球規模で情報送信のコストをゼロ近くまで下げ、世界を大きく変えた。それと同じようなことが起きるだろう。(p.59)

新しい経済活動もそうでしょうが、新しくその市場に参加するプレーヤーもどんどん増えてくることで、市場自体が拡大していくこともあるでしょう。

経済産業省は、「ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査」を2016年4月に発表した。その中で、ブロックチェーンは、「IoTを含む非常に幅広い分野への応用が期待されている。」「あらゆる産業分野における次世代プラットフォームとなる可能性をもつ」としている。具体的には次のような応用があるとしている。(pp.62-63)

  1. 価値の流通・ポイント化プラットフォームのインフラ化
  2. 権利証明行為の非中央集権化の実現
  3. 遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現
  4. オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現
  5. プロセス・取引の全自動化・効率化の実現

これらの応用によって新しいビジネスが出てくることになるのでしょう。

ビットコインに対するアメリカ金融業界の認識は、その後、大きく変わった。その潜在力に対する正当な認識が急速に広まり、さまざまな試みが行われるようになったのだ。ゴールドマン・サックスは14年3月の報告書では、ビットコインに対してきわめて強い否定的評価を下していた。しかし、15年3月の同行の報告書「金融の未来―今後10年間の決済方法を見直す」において評価を一転し、「ビットコインの非中央集権的な仕組みは革命的である」と認めた。すなわち、「ビットコインと仮想通貨の技術は技術的メガトレンドの一部であり、取引の基本的なメカニズムを変える:「ネットワーク技術と暗号におけるイノベーションは、マネーを移動させるスピードとメカニズムを変えるだろう」とした。そして、仮想通貨を支える分散型ネットワークは、オープンソースであるために安全で信頼性があり、問題点は一つもないと指摘している。(pp.70-71)
さまざまな仮想通貨は、さまざまなメカニズムで運営されている。ビットコインのクローンにすぎないものもあるが、かなり違う方法で運営されているものもある。注目すべき新しい仮想通貨としては、エセリウム(Ethereum)やリップル(Ripple)がある。どちらも明確な発行主体を持ち、ビットコインとはやや異なる原理で動き、異なる目的を持つ。ビットコインのブロックチェーンをそのまま利用するのではなく、弱点を克服し、機能を拡張している。エセリウムやリップルなどは、ビットコインの単なるクローンではなく、新しい機構と機能をもっという意味で、「ビットコイン2.0」と呼ばれることもある。(pp.73-74)
ビットコインは荒削りの技術であり、エンジンがむき出しのような状態だ。普通の人が扱うにはハードルが高い。したがって、普通の利用者とビットコインのインターフェースを整備する必要がある。Hellobit における両替者は、このインターフェースの役割を果たしている。(p.80)
日本の銀行が、独自の仮想通貨を発行したり、勘定系にブロックチェーンを応用する実験を行っている。これによって、銀行の業務体系や金融・通貨の仕組みが大きく変わる可能性がある。また、中央銀行が仮想通貨を発行する可能性もある。ただし、これらは、「プライベート・ブロックチェーン」を用いている。この点で、ビットコイン型の仮想通貨とは大きく異なる。(p.89)
仮想通貨技術は、これまでのリバタリアン(完全自由主義者)の世界の出来事ではなくなった。そして、エスタブリッシュメント世界の中核を揺るがそうとしているのである。(p.90)
銀行の勘定系は、情報システムの中で要求が最も厳しい分野だ。現在はメインフレームコンピュータを使っているので、信じられないほど多額のコストがかかっている。これがブロックチェーンによて代替されれば、銀行にとっては数百億円規模の節約になるだろう。この分野にブロックチェーン技術を導入することの意味は大きい。銀行の基幹システムがこれまでとは大きく異なるものになる可能性がある。(p.94)

われわれから見るこの多額コストは、裏返すと銀行の収入になっているわけですから、このコストがなくなるということが銀行もいらなくなってくる可能性があります。そもそもビットコインのように管理者不要のブロックチェーンだと必要ないのでしょうが・・・。

これまで仮想通貨を送金手段として用いる場合に、つぎの3つの問題があった。第1は、価格変動が激しいこと第2は、銀行預金との交換が容易でないこと。第3は、決済の確認に10分程度の時間が必要であることだ。三菱東京UFJの仮想通貨は、これら3点の問題を解決すると考えられる。(p.95)
経済産業省の「ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査」報告書概要資料(2016年4月)は、ブロックチェーンは従来の集中管理型のシステムに比べて、次の特性があるとしている。
(1)改竄がきわめて困難
(2)実質ゼロ・ダウンタイムなシステム(「ゼロ・ダウンタイム」とは停止しないこと)
(3)安価に構築可能
ここには、「オープンで管理者がいない」という特徴が掲げられていない。これは、プライベート・ブロックチェーンを想定しているからだろう。(p.101)
パブリック・ブロックチェーンの持つ公開性・透明性という性質は、もともと銀行にとって受け入れがたいものだ。銀行の優位性は、相手に対して情報の非対称性を持っていることによるものが多いからだ。ブロックチェーンで取引が公開されることなど、銀行には耐えがたいことだろう。他方で、ブロックチェーンを用いることによるコスト低下の効果は、疑いもなく大きい。プライベート・ブロックチェーンは、この矛盾を解決するための妥協と考えることができる。(p.106)
プライベート・ブロックチェーンにおいても、ある程度の数のコンピュータがデータ記録作業にかかわれば、「分散性」という特質は維持できないわけではない。したがって、攻撃に対して強靭であるという李厳は確保されるといえるだろう。この特性を生かして、中央集権システムの中に組み込んで、特定の業務目的に特化したデータベースとして活用するという方向が考えられる。問題はつぎの諸点だ。第1は、すべてのノードが結託してデータを書き換えることがあり得る。「信頼できるコンピュータだけがノードになっているから、悪事を働くことはない」と考えられてるのだろうが、こうしたことが絶対にないとは言えない。第2に、管理者がモニターしている。これは、良い方向にも悪い方向にも働きうる。事態に応じて柔軟に対処することができるが、半面において、管理者の都合がよいようにブロックチェーンのルールが変えられるかもしれない。第3に、カウンターパーティ・リスクがある。プライベート・ブロックチェーンでは、相手を信頼する必要がある。しかし、銀行といえども、金融危機のさなかには突然破綻してしまうかもしれない。以上を要するに、プライベート・ブロックチェーンとは、単なる分散型のデータベースに近い存在だということだ。分散しているために攻撃には強いし、コストも安い。しかし、ただそれだけのことであって、「管理者が不要で改竄がほぼ不可能」という最も重要な特性は、捨て去られてしまっている。したがって、いくらプライベート・ブロックチェーンを活用したところで、trustlessな(信頼を必要としない)社会が実現できるわけではない。(p.107)
一般に、開放的なシステムでは、さまざまな人や組織が関与するので、技術革新が起こりやすい。それに対して閉鎖的なシステムは、いったん採用したシステムがそのまま続きやすい。銀行の場合、現行の諸規制に適合したようなシステムがいったん採用されると、規制が変わらない限り技術も不変にとどまる結果になることが十分起こりうる。この問題があるため、長期的にみると、パブリック・ブロックチェーンが優越する可能背が強い。(p.108)
2016年11月17日には、「中央銀行発行デジタル通貨について―海外における議論と実証実験―」というレポートが公開された。ここでは、中央銀行がデジタル通貨を発行することのメリットとして、つぎの3つのものを挙げている。

  1. ユーザー利便性の向上
    現金や小切手などの紙ベースの決済手段の利用に伴うコストはGDPの0.52%に達する(シンガポールの場合)。北欧を中心に社会のキャッシュレス化が進んでおり、銀行券や効果の発行・管理に伴うコストを削減しようとする動きが活発化している。
  2. 金融政策の有効性確保
    ビットコイン型仮想通貨の利用が拡大すれば金融政策の有効性が低下するので、これを避ける。また、「名目金利のゼロ制約」を克服する。
  3. 通貨発行益(シニョレッジ)
    ビットコイン型仮想通貨の利用が拡大すれば中央銀行が得られる通貨発行益が減少するので、それを避ける。

なお、中央銀行によるブロックチェーン活用をめぐる議論は、現在流通の銀行券を中央銀行発行電子マネーでものに置き換えること(中央銀行発行デジタル通貨)だけではないとしている。(p.111)

先にも述べましたが、銀行等の金融系企業もブロックチェーンは大きな大きなインパクトがあり、どこも準備を始めていることでしょう。

ブロックチェーンは、リスクの低減にも役立つ。決済までの時間が短縮されるので、カウンターパーティー・リスク(不払いに終わる危険)が少なくなるのだ。また、現在のように多段階のステップがあると、エラーが起きるか確率が高くなる。しかも、管理するのに多大な負担がかかる。ブロックチェーンを用いれば、このようなリスクを低減し、時間を節約できる。そし取引が決済されるまで銀行やその他の期間が担保として保有する巨額の資金がいらなくなる。また、詐欺の防止にも役立つ。中央集権的なデータベースは、データが一か所に集中しているので、ハッカーの攻撃に対して脆弱だ。それに対して、ブロックチェーンはデータgあ分散されて保有されているので、こうした攻撃に強い。(p.115)
フィンテックには、3つの主要分野がある。第1は、送金・決済。第2は、銀行を介さずに融資を行う「ソーシャルレンディング」。そして第3が、ビッグデータを用いる投資アドバイスや保険だ。(p.126)
日本のソーシャルレンディングに関して、次の2点を指摘したい。
第1は、リスクへの対処だ。銀行の場合、貸し倒れのリスクは銀行が負い、保証された金利が預金者に支払われる。安全ではあるが、利益の大半は、リスクを負う銀行が得る。それに対して、ソーシャルレンディングでは、投資家が貸し倒れのリスクを負う。借り手となる個人や企業は、銀行から融資を受けられないところがほとんどだから、リスクは高い。
第2の問題は、融資対象だ。日本では、個人向けの融資やベンチャービジネスに対するスタートアップ資金の供給などは成長せず、不動産関係の貸し付けが増えている。(pp.138-139)
銀行業の規制はよく、そのため新規参入が難しい。これは、疑いない事実である。だから、銀行の地位が揺るがないというのも、大いにあり得ることだ。しかし、次の諸点に注意する必要がある。(pp.150-151)

  1. 規制が強ければ、新しい技術の導入が阻害され、社会の進歩が遅れる。
  2. 規制が強いといっても、変わらないわけではない。
  3. 「そもそも規制が必要か?」という問題がある。ビットコインがその典型であり、運営主体が存在しないため、監督機関が規制しようとしても、技術的に不可能だ。
  4. 国内で規制しても、海外からの圧力が加わる。国内でどのような規制をしても、インターネットには国境がないので、外国のサービスが日本に入ってくることを食い止めるのは不可能に近い。
  5. 銀行がフィンテックに対応することは不可能ではない。事実、新しい動きに積極的に対応しようとしている金融機関も多数ある。
ブロックチェーンを用いれば、劇的なコスト削減が可能となる。もし経済的な価値をゼロのコストで地球上の似んにの相手に送ることができれば、世界は大きく変わるだろう。そのことがいま、ブロックチェーン技術によって実現されようとしている。タプスコットは、著書『ブロックチェーン・レボリューション』の中で、「従来のインターネットが情報のインターネットであるのに対して、ブロックチェーンは価値のインターネットだ」と言っている。(pp.158-159)
送金コストがゼロ近くまで下がることは、今までの経済活動を根底から覆す。あまりに変化が大きいために、人々はまだその重大性をよく認識できないでいるのだ。これまで、原理的には可能でありながら、送金コストがネックとなって実現できなかった経済活動は多い。送金コストの低下は、新しい経済活動を生み出すだろう。特に、次の二つの分野での発展が期待される。
第1は、マイクロペイメントだ。とりわけウェブを通じるコンテンツの有料配布である。
第2は国際送金である。それによって、銀行システムが整備されていない新興国に、簡単に送金できるような状況が実現されるだろう。(p.160)
日本では銀行システムが整備されているので、送金システムをもっと効率化しべきだという要求は弱い。しかし、銀行システムが未発達な地域もある。アフリカ、東南アジア、南米などがそれだ。これらの地域では、銀行の支店網は大都市を離れればほとんど存在せず、そのため、銀行預金を持つ人の比率は非常に低い。こうした地域では、ITが金融に与える影響は、日本とは全く違う形になる。・・・今後、新興国や発展途上国など、銀行の支店システムが整備されていない地域で、仮想通貨が送金手段としてどのように広がっていくかが注目される。本当に革新的な変化とは、銀行システムを超えるようなシステムが現れることである。そうした変化が、発展途上国において生ずる可能性がある。(pp.163-164)
金融機関の取引では、取引が完結するまでに多数の仲介機関が介在する。これらの機関は、それぞれ独自のデータベースを用いて、取引の整合性や勘定の照合を行っている。このため、多大のコストがかかる。それに対して、ブロックチェーンを使った送金では、ブロックチェーンに記録を残すことで決済が完了する。集中管理のための特別の機関やバックアップ施設が不要なので、それらの運営、管理のためのコストが必要ない。このため、コストが低下し、所要時間も短縮する。(pp.164-165)
これまでのスタートアップ企業の資金調達では、証券会社、投資銀行、株式市場などの伝統的な仕組みが重要な役割を果たしてきた。そして、IPOは、投資銀行に莫大な収入をもたらしてきた。また、その後の株式の取引は、証券会社に手数料収入をもたらす。しかし、クラウドファンディングやクラウドセールになると、伝統的な記入の世界の外で資金調達が行われることになる。そこでは、証券会社、投資銀行、株式市場などの仲介はない。資金の需要者と提供者が直接に結び付くのだ。したがって、既存の金融機関にとっての収入が消滅してしまう可能性がある。(p.168)
ブロックチェーンによって実現する世界は、「アダム・スミスの世界」だといってもよい。より正確に言うと、経済学者のレオン・ワルラスが「一般均衡モデル」として定式化した世界である。(p.168)
従来のITを使うのであれば、ルーチンワークを行なう人手はどうしても必要だ。しかしブロックチェーン技術は、基本的には人手なしで運営できる仕組みだ。したがって人員の大幅な削減が可能になる。究極的には、銀行や証券会社そのものが必要なくなるかもしれない。金融業は規制産業であるため、効率化が進まず、その結果、現実の経済構造の変化に対応することなく、過剰な人員を抱えている可能性は否定できない。そう考えれば、以上で述べたことは、新しい技術の導入によって金融業が適切なサイズに縮小していく過程だ。(p.171)
企業の側からみると、古い知識を持った専門家を抱えているのは、コストになるだけだ。人工知能やブロックチェーンが企業の基幹システムを運営し、必要に応じてフリーランサーを利用するようになれば、企業は永続的な組織ではなくなるかもしれない。ある仕事のために資金と人材を集め、終わったら解散するのだ。(p.175)
ブロックチェーンを用いた決済手段が提供する主体が誰になるのかについて、つぎの3つの可能性がありうる。

  1. ビットコインのような仮想通貨。オープンなコンピュータ・ネットワークで運営され、中央集権的な管理主体は存在しない。その結果、銀行外に新技術を用いる金融システムが誕生することになる。
  2. 銀行が運営する仮想通貨。銀行が新技術を取り入れ、中央銀行から独立した決済システムを作る。クローズドなコンピュータのネットワークで運営される。
    以上、1,2のシナリオの究極的な姿は、中央銀行が死滅する世界だ。
  3. 中央銀行が運営する仮想通貨。中央銀行が新しい技術を取り入れ、仮想通貨を運営する。これによって、紙幣と銀行の預金通貨を代替する。

実際の世の中がこれらのうちのどの方向に向かうのか、現時点では予測しがたい。また、これらが併存することもありうる。ただし、どの方向が実現するにせよ、ブロックチェーン技術の導入によって、通貨システムの基礎が大きく変化することは間違いない。コストが下がり利便性が向上すれば、どこが運営しようが構わないと考えられるかもしれない。しかし、ブロックチェーン技術を利用する通貨システムの主導権をどこが握るかで、社会の姿は、大きく違うものになるだろう。(pp.189-190)

ビットコインが現行の通貨に代替するようになれば、国の在り方は根本的な影響を受けざるを得ない。場合によっては、国家システムに対する深刻な脅威になる。

第1の問題は、税の徴収に関係する。仮想通貨による取引は匿名性を有しているため、仮想通貨による取引が拡大すると捕捉できない取引が増大する危険がある。そうなれば、徴税に支障が生じる。

第二の問題は、違法な取引やマネーロンダリングのための資金の流れをコントロールできなくなることだ。仮想通貨は組織犯罪に対して脆弱であるわけではないが、将来取引量が増大したときには、問題は無視できなくなるだろう。

第3に、貨幣供給量のコントロールによって経済活動をコントロールすることができなくなる。

第4の問題は、キャピタルフライト(資本逃避)だ。国民が自国通貨の将来に信頼を持てなくなると、仮想通貨を購入して、ドルなどの価値が安定した通貨に乗り換えるなどの動きが発生しうる。

このような事態は、国の存立にとって重大な脅威だ。しかし、ビットコインの取引そのものを規制しようとしても、管理主体が存在しないため、インターネットの使用を禁止いないかぎり不可能である。(p.192)

さまざまな資産の取引は、これまでも市場で行われていた。では、なぜ分散市場が求められるのか?従来の取引所には、次のような問題があったからだ。(pp.259-260)
(1)セキュリティ
(2)コストが高い
(3)決済まで時間がかかるこれに対して、分散市場は、次のような利点を持っている。(pp.260-261)
①相手を信頼する必要がない
②取引コストが安くなる
③決済までの時間を短縮できる
④流動性が増える

この上の対比が、この書籍のある意味まとめとしても言えるのではないでしょうか。このブロックチェーン技術のメリットにより、社会が大きく変わってくることでしょう。

今後、多くの企業が、事業の一部で自律的な運営に適している部分を切り離して、DAO(Decentralized Autonomous Organization )にするだろう。革新的な新技術が開発された場合には、それをDAOとして運営するだろう。そして、ICO(Initial Coin Offering)によって開発資金を調達するだろう。これまで、スタートアップ企業は、一定規模まで成長すると、IPO(Initial Public Offering:新規株式公開)によって資金調達してきた。未公開で時価総額が10億ドルを超える企業は「ユニコーン」企業と呼ばれるが、こうした企業もいずれIPOをするのだろう。しかし、IPOの手数料がきわめて高い。今後は、IPOではなく、ICOを行う場合が増えるのではないだろうか。(pp.272-273)

それにしても学ぶことがいっぱいありました。こういうものが社会に浸透しはじめると、指数関数的に浸透していきます。まだまだコイン売買時のの手数料や消費税など、整えていかなければならないポイントはたくさんあるようです。

とはいえ、ウォッチしているだけでは取り残されるでしょうから、スタートダッシュはできないまでも、取り残されているという状態は避けたいと思いますので、引き続き、情報収集しながら、勉強していきたいと考えています。

詳しい方は、ぜひ、情報連携をしていただけるとありがたいです。どうぞよろしくお願いいたします。

 

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