量子コンピュータが人工知能を加速する


量子コンピュータが人工知能を加速する

量子コンピュータが人工知能を加速する
著者:西森秀稔,大関真之

内容紹介
「これは日本人研究者によるノーベル賞級の発見だ! 」
元グーグル日本法人社長 村上憲郎実現は早くても21世紀後半と言われていた「量子コンピュータ」が
突然、商用マシンとして販売が開始された。作ったのはカナダのメーカーだが、その原理を考え出したのは日本人研究者。しかも、人工知能に応用でき、グーグルやアメリカ政府も開発競争に参戦、NASAやロッキード・マーティンも活用を開始した。

どのようにして量子力学で計算するのか。どのようにして人工知能、特に機械学習やディープラーニングに応用できるのか。そして、どうすれば日本の研究が世界をリードできるか。画期的な量子コンピュータの計算原理、「量子アニーリング」を発案した本人が語る。

★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] 量子コンピュータ、人工知能となれば、ぜひ読んでおきたくて・・・。
[目的・質問] 量子コンピュータについて理解する。
[分類] 007.1:情報理論, 数字(情報科学)

 

コンピュータは、「0」と「1」というデジタル信号によって処理が行われていることが広く知られている。「0」と「1」は、例えば、電気信号の出夏の「高い・低い」によって表現される。そして、CPU(中央処理装置)などでは、半導体によって作られる「論理ゲート」が、「0」と「1」の信号の入力に対して出力を返すことで計算が行われる。「0」と「1」のことを「ビット」という。量子コンピュータは、量子力学の特徴を生かし、「0」と「1」の両方を重ね合わせた状態を取る「量子ビット」を使って計算する装置だ。「0」と「1」の両方を重ね合わせた状態とは、「0であり、かつ1である」ということだ。これは私たちの直感に反するが、私たちの常識が通用しないのが量子力学の世界なのだ。(p.14)

言葉上では分かりやすいのですがイメージは難しいですね。1つの単位が2ビットになっていて、11,10,01,00という4つが表せるというふうに考えると分かりやすいかもしれません。

 

長年、研究が続けられていた量子コンピュータが「量子ゲート方式」と呼ばれるのに対して、ここ数年で突然商用化された量子コンピュータは「量子アニーリング方式」と呼ばれている。量子ゲート方式とは全く異なる方法で計算を行うのが、量子アニーリング方式である。(p.15)

量子コンピュータといってもいくつかの方式があり、商用化されたのは量子アニーリング方式ということのようです。

 

また、量子アニーリング方式の量子コンピュータが注目されているのは、それが「人工知能」に応用できるという期待によるところが大きい。人工知能の実現、それに向けた研究開発は、今後社会に大きなインパクトを与えることが期待されている。その人工知能の性能を高め、応用を大幅に加速させる可能性を、この新しい量子コンピュータは秘めているのだ。特に量子アニーリング方式の量子コンピュータは、人工知能の実現に欠かせない「機械学習」の深化の引き金を引くかもしれない。(p.16)

そして、D-Waveというカナダのベンチャー企業がこの量子アニーリング方式による量子コンピュータを商用化したというのです。

「D-wave」の画像検索結果

D-Waveの量子コンピュータは、従来のコンピュータと比べて常に1億倍高速な性能を示すというわけではない。ある特定の問題を解いたときに1億倍高速であるという結果が出たのだ。・・・その特定の目的とは、「組み合わせ最適化問題」を解くというものである。つまり、googleやNASAが発表したのは、ある組み合わせ最適化問題を解いたときに、D-Waveの量子コンピュータが従来のコンピュータと比べて1億倍高速だったということなのだ。(pp.17-18)

そもそも量子アニーリングとは、ということですが、次のように説明されています。

量子アニーリングとは、「自然現象を借用したアルゴリズム」の一つだ。このようなアルゴリズムは、従来型コンピュータでも組み合わせ最適阿問題を解くために使われている。巡回セールスマン問題ですべてのルートの組み合わせを総当たりで計算していくといたずらに時間がかかってしまうが、うまいアルゴリズムを使うと効率よく計算できる。そのような自然現象を借用したアルゴリズムの仲間では、「遺伝的アルゴリズム」や「シミュレーテッド・アニーリング(疑似焼きなまし法)」がよく知られている。(p.28)
量子ビットは、「0」と「1」を重ね合わせた状態を持つ。つまり、「0」であり、かつ「1」である状態だ。ニオブ製の小さな回路を絶対零度近くまで冷やすと、右回りの電流と左回りの電流が同時に存在する状態になる。これが、2つの状態の重ね合わせになっていることの意味だ。・・・このような量子ビットを利用して組み合わせ最適化問題を解くのであるが、このままでは計算できない。組み合わせ最適化問題を「イジング模型」で最もエネルギーが低い状態(基底状態)を探す問題に書き換える必要がある。(pp.33-35)

イジング模型とは、量子ビットのように「0」と「1」という2つの状態を持つものが格子状に並んでいる様子をモデル化したものだ。イジング模型では、近くにある孔子点上の量子ビットの間の影響の及ぼし合い(相互作用)を導入する。つまり、ある量子ビットが「0」になるか「1」になるかは、近くの量子ビット「0」か「1」かによって影響を受ける。その量子ビットがどの量子ビットから「どの程度影響を受けるか」という重みづけを調整することで、イジング模型を様々な組み合わせ最適化問題にうまく対応させるのである。つまり、D-Waveマシンで組み合わせ最適化問題を解くには、まず使用する量子ビットの数を選び、それぞれが互いにどの程度の影響を与え合うかを、と期待最適化問題に応じて設定する。近くの量子ビットが「0」のときに自分がどの程度「0」になりたがるのか、もしくは逆に「1」になりたがるのかを、問題に応じたパラメータとして決めていくのだ。(p.35)
横磁場をかけて「0」と「1」が同時に存在する状態を作るのが量子アニーリングの特徴であり、そのおかげで効率よく解が手に入るのである。(p.37)

細かなところはともかく、上記の点だけは覚えてほしいと書かれています。

 

量子コンピュータを実現するのは困難を極めている。「量子ゲート方式」の量子コンピュータは、従来型コンピュータのプロセッサで使っている「ビット」を量子ビットで作り、それを組み合わせることで計算を行う。ところが、量子ビットは「0」と「1」を重ね合わせた状態を作らなければならないのだが、この重ね合わせはごくわずかなノイズなどで簡単に壊れてしまうのだ。この厄介な問題のために、量子ゲート方式では数個以上のビットを組み合わせたシステムは作れなかった。こうしてローズ(D-Waveシステムズの創業者、ジョーディー・ローズ)の「量子コンピュータを製造して販売する」という野望を達成するためには、安定して動作する量子ビットを作成するという難題をクリアしなければならなくなったのである。(p.47)
量子ビットが「0」と「1」の重ね合わせを保っていられる時間のことを「コヒーレンス時間」という。計算を実行するためには、なるべくこのコヒーレンス時間を長くする必要がある。だが、重ね合わせ状態はとても不安定で、熱や電磁波などの影響を受けてすぐに壊れてしまう。まずは安定していて扱いやすい量子ビットを開発する必要があった。(p.48)
グーグル・グラスではウィンクがパソコン操作における「クリック」の役割を担うのだが、ユーザーが自然に瞬きをしたのか意識的にウィンクしたのかを識別するために精度のよい認識システムが必要だったのだ。これは機械学習によって開発が進められてきた技術である。量子アニーリングの応用例として格好の対象と言えよう。(p.53)
北米ではこの数年で量子アニーリング方式による量子コンピュータの研究開発が急速に盛り上がっている。優秀な研究者が他分野からも次々と参入し、研究学会への参加者もどんどん増えている。それまで量子ゲート方式を研究していた人たちだけでなく、伝統的な計算機科学や素粒子理論などの異分野で研究をしていた人たちが、量子アニーリングに移ってきて顕著な成果を挙げている例が多い。これは、日本ではあまり見られない現象だ。アメリカでは、有望な研究テーマが現れると、研究者が分野の壁を越えてなだれ込んでくる。それは、「研究資金が豊富に使えそうだから」という理由だけではなく、異分野でも研究者同士の交流による強いネットワークがあり、また変化をいとわない風土によるところも大きいだろう。(p.59)

このあたりは、ベンチャー投資とも大きく絡んでくるところですね。将来のマネーになりそうなところにどんどんと投資が入ってきますからね。

 

量子アニーリングという名前の意味について、いまさらながら紹介しよう。量子アニーリングの「量子」は、量子力学の性質を利用しているところからきていることは想像できるだろう。一方、「アニーリング」という言葉にはなじみがないかもしれない。これは「焼きなまし」という意味だ。焼きなましとは、金属の温度をあげたのちにゆっくりと冷やすことで、内部のひずみを取り除き、均質化させるための処理である。これを数学的なモデルに適用して活用しようというわけだ。(p.70)
量子アニーリングで組み合わせ最適化問題を解くためには、量子ビット間の相互作用から全体の「エネルギー」を計算し、そのエネルギーが最も低い状態(基底状態)になるところを探す。量子ビットを20個使うとすると、それぞれが「0」と「1」という2つの状態を取るので、組み合わせの合計は2の20乗(104万8576)になる。この膨大な数の中からエネルギーが最低となるものを見つけるのが究極的な目標だ。最低エネルギーとなる組み合わせが厳密解というわけだ。(p.74)

その他、「4色問題」、「商品のレコメンデーション」、「アルファ碁」にも軽く触れています。

また、「機械学習」、「ディープラーニング」について、シンプルに説明してくれていますので、理解を深めましょう。

人工知能の3度目のブームは、コンピュータのハードの進展と大量のデータの出現に裏付けられた「機械学習」、特に「ディープラーニング(深層学習)」によって花開いた。機械学習とは、入力された情報、すなわちデータからプログラム自身が自分で学習することで識別や予測をする能力を身につける機能である。ディープラーニングとは、何段階もの層が積み重なった構造の「ニューラルネットワーク」を利用した機械学習である。この多層構造の複雑さを利用して、巧みにさまざまな状況を学び取り、複雑なタスクを達成することができる。(pp.85-86)

さてさて、ここまでは技術的な話でしたが、ここからが、第4章の「量子コンピュータがつくる未来」という章になりますが・・・驚くべき事実が書かれていました。

 

2013年の『タイム』誌の記事によると、世界中でITが消費する電力は世界の発電量の10%に相当するという。これは日本とドイツの総発電量の合計に匹敵し、全世界の航空機が消費するエネルギーの総量の1.5倍に当たるそうだ。今はもっと増えているだろう。また、2011年の『ニューヨークタイムズ』誌の記事によると、グーグルの使用電力量は約20万軒分の家庭の電力に相当するという。これは原子力発電所の発電量の4分の1に相当する。そして、検索1回あたりの消費電力量は、60Wの電球を17秒間光らせる量になるそうだ。1回ではたいしたことはなくても、膨大な検索の総量を考えると、ITはとてつもなくエネルギーを使って環境に負担をかける産業になっていることがわかる。(pp.103-104)

少し古い記事ですが、こんなのもありました。
Google検索1回で7gのCO2排出 – 検索の環境へのインパクトが論争に

情報化社会を牽引し、世界中で新しい産業を起こしてきたIT企業も、「消費電力」という大きな問題に直面している。地球環境への影響を考えると、航空機が消費するエネルギーよりもITが消費するエネルギーのほうが大きいということは、対策を講じなければ批判から逃れられないだろう。(p.104)

量子コンピュータは、これらの消費電力をかなり削減できる要素を持っているようです。

D-Waveマシンは、量子ビットに超電導技術を使っている。そのため、超伝導体の冷却用に電力を使うが、その消費量はスーパーコンピュータ京と比べて500分の1程度だ。超低温にしなければならないのは約1平方センチのチップの部分だけなので、電力使用量は多くない。また、今後さらに量子ビット数が増えても、消費電力量はあまり変わらない。グーグルは量子ゲート方式のマシンも開発しているが、これも超伝導体を使っている。(pp.105-106)

改めて、「量子力学」とは?という話が登場します。

それでは、「量子力学」とはどう説明したらよいだろうか。これは難しい問題だ。・・・ファインマンは、「量子力学が分かったと思っているうちは、量子力学が分かっていない」という有名なセリフを吐いた。量子力学とはそのような学問であり、量子の世界には人間の直観的な理科を超えた部分がたくさんある。(p.126)

筆者もあとがきで、「どれだけ分かりやすく書けたかは、読者の判定を待つしかないが」と書かれていますが、確かに難しいですね。先のファインマンさんのセリフではありませんが・・・。

ただ、これからこの分野のことについては、知らないでは済まされないでしょうし、追っかけて行かないとどんどん置いて行かれるので、そうならないようにアンテナを張りながらついていきたいと思っています。

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