第四次産業革命

第四次産業革命 ダボス会議が予測する未来

第四次産業革命―ダボス会議が予測する未来
著者:クラウス・シュワブ

内容紹介
■人類の生活と常識は、根底から覆される!ダボス会議(世界経済フォーラム)の創設者として世界の経済と政治を40年間にわたって中心から観察しつづけてきた著者が、ダボス会議でグローバルエリートと行ったディスカッションを基に、来るべきメガトレンド=第四次産業革命を詳細に解説!
・AIやロボットに代替されるリスクが低い職業は?
・企業が移行を迫られる新たなビジネスモデルとは?
・ロボットによる労働者の代替は、不平等を拡大し、社会不安を生むのか?
・人間の行動が予測可能になった時、そこに個人の意思やロボットとの違いは存在するか?
・ゲノム編集や合成生物学は、人類をどう変えるか?
・自律型兵器やサイバー戦争は、戦争の定義をどう変えるか?

★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] 図書館で発見!
[目的・質問] よく言われるドイツ初のインダストリー4.0ですね。
[分類] 330:経済

今日、私たちが直面している幅広で数多の興味深い諸問題の中で、最も努力を必要とし、また最も重要となるのは、新しい技術革命をどのように理解し、実現するかだ。この技術革命は、必然的に「人類文明の大変革」を伴うものとなる。私たちは、生活や仕事の仕方、さらには他社との関わり方を根本から変える大変革の入り口にいる。これは人類がこれまで経験したことのない、規模、範囲、複雑さの大変革となり、まさに「第四次産業革命」と呼ぶにふさわしいものと考えている。(p.9)

一人ひとりの、あるいは一つひとつのモバイル機器が接続可能となった世界・・・これらのハードと、そして、人工知能(AI)、ロボット技術など、多様な領域への広がりと、そして結びつきによって新しいビジネスモデルの出現やさまざまなシステムの再編成によって、あらゆる産業にわたって根本的転換に直面している。

最近の状況を第三次産業革命の一部にすぎないと考える学者や専門家がいることも知っている。しかし、三つの理由から、第四次産業革命と呼ぶにふさわしい革命が進行中であると私は確信している。(pp.11-12)

  • 速度:
    これまでの産業革命とは逆に、第四次産業革命は、線形ではなく指数関数的ペースで進展している。私たちは多面的で相互に深く結びついた世界で暮らしており、新テクノロジーがさらに新しい高性能テクノロジーを生み出しているからだ。
  • 拡大と深化:
    第四次産業革命はデジタル革命の上に成り立っており、経済やビジネス、社会、一人ひとりの個人に空前のパラダイムシフトをもたらしているさまざまなテクノロジーを結びつけている。第四次産業革命は仕事の「対象」と「方法」を変えるだけでなく、私たちが自身が「誰」なのかをも変える。
  • システムへの影響:
    第四次産業革命は、国や企業、産業、社会全体の全部のシステムの転換を伴う。

本書の目標として、3つ掲げられています。この3つを押さえていれば、ブレない一つの芯はできるような気がします。(p.12)

  1. 技術革命の包括性とスピード、その多面的な影響に対する意識を高める
  2. 技術革命の格となる問題を明確にし、取り得る対応に重点を置いた思考の枠組みを構築する
  3. 技術革命に関する問題について官民の協力や提携を推進するプラットフォームを提供する

さて、ここからが本題に入っていきます。

産業革命の歴史的背景の確認です。(pp.17-18)
約1万年前に起きた狩猟生活から農耕生活への移行(農業革命)に続いて、18世紀後半から一連の産業革命が始まった。その特徴は人間や家畜による動力から機械動力への移行だったが、それがさらに発展した今日の第四次産業革命では、認知力の向上が人間の生産量を増加させていると。

蒸気機関の発明と鉄道建設とによりもたらされた第一次産業革命(1760年代~1840年代)は、機械による生産の到来を告げるものだった。電気と流れ作業の登場によってもたらされた第二次産業革命(19世紀後半~20世紀初頭)は、大量生産を可能にした。1960年代に始まった第三次産業革命は、はんだ応対、メインフレームコンピュータ(1960年代)、パーソナルコンピュータ(1970年代~1980年代)の開発とインターネット(1990年代)によって推進されたことから、一般的にコンピュータ革命あるいはデジタル革命と呼ばれている。(pp.17-18)

まさに横へも縦へも網の目状にテクノロジーの活用範囲が拡大するとともに深化していくイメージだと思います。

第一次から第三次までの産業革命を説明するのに用いられるさまざまな定義や学問的議論を念頭に置いた上で、今日私たちは第四次産業革命の入り口にいると私は考えている。第四次産業革命は、今世紀に入ってから始まり、デジタル革命の上に成り立っている。第四次産業革命を特徴づけるのは、これまでとは比較にならないほど偏在化しモバイル化したインターネット、小型化し強力になったセンサーの低価格化、AI、機械学習である。(p.18)
だが、第四次産業革命は、相互接続されたスマートな機械やシステムのことだけに限定される語ではない。範囲はなるかに広い。いま遺伝子配列解析からナノテクノロジー、再生可能エネルギー、量子コンピュータに至る分野で新たなブレイクスルーの波が同時に起きている。第四次産業革命がこれまでの産業革命とは根本から異なるのは、これらのテクノロジーが融合し、物理的、デジタル、生物学的各領域で相互作用が生じたことである。(p.19)

「相互作用」というのはうまい言い回しですね。

筆者はこの第四次産業革命が効果的かつ集約的に実現される可能性を制限しかねない要因として、主な懸念点を二つ挙げている。

第一に、第四次産業革命に対応するには私たちの経済、社会、政治のシステムを考え直す必要があるが、各分野においてリーダーシップ不足と変革への理解不足を感じている。一国で見てもグローバルで見ても、イノベーションの普及を管理し、混乱を防止するための制度的枠組みが不十分か、まったく存在していない状態だ。第二に、世界には第四次産業革命が創出する機会と問題の概略に関する一貫性ある建設的な共通構想もなければ、さまざまな個々人のコミュニティに力を与えつつ、根本的な変革に対する大衆の反発を避けるのに必要な説明もない。(p.20)
第四次産業革命では、大きな利益がもたらされるが、それと同じくらい大きな問題が生じることにもなる。とくに懸念されるのは、不平等の悪化だ。不平等が高まることによる問題は、私たちの大半が消費者であり生産者でもあることから定量化が難しく、イノベーションと破壊が私たちの生活水準と幸福に好影響と悪影響の両方を及ぼすことになる。(p.24)

富裕層トップ62人の資産、下位36億人の合計と同じなどと言われている中で、デジタル・デバイドや情弱などというような状況ができてしまって、ますます格差が広がっていく可能性もなきにしもあらずと考えていたのですが、ちょうどそのことについて言及されていました。

不平等の増加と不公正に対する懸念の増大はは重大な問題である。一握りの人々に利益と価値が集中する状況は、いわゆるプラットフォーム効果によりさらに悪化している。デジタル企業は、幅広い製品やサービスの買い手と売り手をマッチングさせることで、規模に関する収穫逓増を享受するネットワークを構築することができる。プラットフォーム効果の結果、少数の強力な独占的プラットフォームへの集中が起きる。その利点はとくに消費者には明らかである。価値と利便性が高く、コストは低い。社会的リスクも同様に明白だ。価値と権力がごく少数の人々に集中しないようにするには、協調的イノベーションをオープンなものにし、機械を広げることにより、(産業基盤を含む)デジタル・プラットフォームの利点とリスクのバランスを取る方法を見つけなければならない。(pp.25-26)

そして、2章の「革命の推進力とメガトレンド」へ進みます。

何気に使っているこの「メガトレンド」という言葉ですが、PwCによると次のように定義されています。(参考頁はこちら

「メガトレンドとは、世界の在り方を形作るほどの力を持った経済のマクロな動きのことをいいます。
メガトレンドは事実を基に認識され、多くの場合、実証データの裏付けもあります。社会に大きな課題を突き付ける巨大な潮流と定義されますが、そこには大きな機会も存在します。」

また5つのメガトレンドとして、下記が列挙されており、こちらの著作とは異なる分け方ですが、それそれで興味深いところです。

▼PwCの5つのメガトレンド

さて、当著作では次のように分けられています。

メガトレンドをとらえ、第四次産業革命の技術的な推進力の大まかな特徴を表すために、私は「物理的」「デジタル」「生物学的」の三つに分類した。これら三つともすべて深く相互に関連しあっており、さまざまなテクノロジーがそれぞれでの発見や進歩に基づき恩恵を受け合っている。
物理的なメガトレンド ①自動運転者
②3Dプリンタ
③先進ロボット工学
④新素材
デジタルなメガトレンド IoT
ブロックチェーン
生物学的メガトレンド 遺伝子配列解析のコストとハードルの低下
遺伝子の発現制御、遺伝子情報の編集
メガトレンドを総論で語ると抽象的に思えるが、すでに非常に実用的な用途や進歩が生み出されている。2015年9月に公表された世界経済フォーラムの報告書は、将来のデジタルでハイパーコネクティビティな世界を形成する「21のティッピング・ポイント」(特定の技術的変革が社会の主流を転換させる瞬間)を明らかにしている。(p.41)

このティッピング・ポイントについてはこちらに詳しく書かれていますので、ご覧いただけたらと思います。

2030年までに「転換点」を迎える、21のテクノロジー(前編)
2030年までに「転換点」を迎える、21のテクノロジー(後編)

これから待ち受ける大きな変化の先触れであるこれらのティッピング・ポイントは、私たちに重要な背景情報を提供してくれるとともに、最善の準備・対応方法も示してくれる。これらのティッピング・ポイントは体系的な性質を持つので、変化は増幅される傾向がある。こうした変革を突き進むためにまずしなければならないのは、現在進行中の転換と今後起こる転換を理解することに加え、グローバル社会の全レベルに対する影響を認識することである。(p.42)

そして、3章の「経済、ビジネス、国家と世界、社会、個人への影響」へ突入。

世界人口は現在の72億人から2030年までに80億人、2050年までに90億人に達すると予想されている。これは総需要の増加につながるはずだが、もう一つの劇的な人口動態の動向を生み出す。高齢化だ。(p.49)

 

一般には、高齢化の影響を受けるのは主に豊かな欧米諸国だと考えられている。だが、それは正しくない。世界の多くの地域で出生率が人口置換水準以下に低下しており、欧州だけでなく、南米およびカリブ海諸国の大半、中国やインド南部を含むアジアの大半、さらにレバノン、モロッコ、イランなどの中東及び北アフリカの一部諸国でも出生率の低下が見られる。(p.50)
構造的要因(過剰債務、高齢化社会)と体系的要因(プラットフォームおよびオンデマンド経済の導入、限界費用逓減の妥当性増加など)の組み合わせは、経済学の教科書の書き直しを迫るだろうと信じている。第四次産業革命は、経済成長を推進し、私たち全員が直面している地球規模の大きな課題のいくつかを緩和させる可能性を秘めている。だが、私たちは第四次産業革命がもたらし得る悪影響―とくに不平等、雇用、労働市場への悪影響―を認識し、対処する必要がある。(p.54)
将来的には、第四次産業革命以外に、人口圧力、地政学的シフト、新たな社会的・ブナk的規範といった非技術的要素も契機となって、新たな役割や職業が数多く生み出されるだろう。現時点ではそれらについて正確に予想することは不可能だが、私は資本以上に才能が重要な生産要素になるだろうと確信している。そのため、イノベーションや競争力、成長の大きな妨げとなるのは資本の有無ではなく、熟練労働力の不足になる可能性がある。(p.66)

これは大きな問題です。これまで以上に、労働環境における需要と供給において、層別にまったく違った様相を見せるようになると思います。物の調達はできても、人の調達・・・とくに質の高い人の調達だけはすぐにはできないし、替えがきかないですから。

 

第四次産業革命で危険なのは、国家間と国家内で「勝者総取り」の力学が展開されることだ。これは社会的緊張と対立を悪化させ、社会の団結を低下させ、より不安定な世界を生み出す。とkに現代の人々は、社会的不公正や子にによる生活環境に違いを敏感に、かつ強く認識している。官民のリーダーたちが「市民の生活改善につながる確証ある戦略を実行している」と人々に納得させられないかぎり、社会不安や大量移民、暴力的過激主義が激化し、あらゆる発展段階の国家でリスクが発生するだろう。自分や家族を養うための有意義な労働に従事できる、と人々に確信させることがきわめて重要になる。だが、労働力への需要が不十分だったり、労働者のスキルが需要と合わなかったりした場合は、どうなるだろうか。(p.68)

国家間と国家内で「勝者総取り」の力学・・・・恐ろしい話です。でも考えると十分にあり得る話ですから。

第四次産業革命は、あらゆる産業に次の4つの大きな影響をおよぼす。

  1. 顧客の期待が変化する
  2. データによって製品の質が向上し、資産の生産性が改善される
  3. 企業が新しい形の協力関係の重要性を理解し、新たなパートナ―シップを形成する
  4. 経営モデルが新たなデジタルモデルへ移行する
大雑把にいって、消費者トレンドはミレニアル世代によって決められている。私たちはいま、毎日300億件のメッセージがワッツアップのアプリで送信され、米国の若者の87%がスマートフォンを片時も離さず、同44%は毎日カメラ機能を使用し、P2Pのファイル共有やユーザー-生成コンテンツ(UGC)が増加するオンデマンド世界に生きている。これは。「いますぐ」の世界、といえる。この世界では、配達ルートが即座に配信され、食料品が玄関先まで配送されるリアルタイム世界である。こうした「いますぐ」の世界において、企業はどこでも自社や顧客、クライアントが存在する場ならリアルタイムでの対応が求められる。(p.77)

ワッツアップというのは、ショートメールの有料サービスらしいですが、欧米では通信料もバカにならないらしく、この有料サービスに入っている方が格段に安いらしいです。

デジタル化のネットワーク効果で利用可能となった重要な経営モデルが、プラットフォームである。第三次産業革命はデジタル・プラットフォームを生み出しただけだった。第四次産業革命の特徴は、現実世界と密接なつながりを持ったグローバル・プラットフォームを生み出したことだ。プラットフォーム戦略は、収益性に優れると同時に破壊的でもある。MITスローン経営大学院の研究によれば、2013年の時価総額トップ30銘柄のうち14がプラットフォーム中心の企業だった。(p.81)
顧客中心主義とデータによる製品強化の必要性も相まって、プラットフォーム戦略は製品販売からサービス提供へのシフトを多くの業界で促している。モノを買って所有するのではなく、デジタル・プラットフォーム経由でアクセスできる基盤サービスに対価を支払う消費者が増えている。たとえば、アマゾンのキンドル・ストアでは無数の書籍を電子書籍として読んだり、スポティファイでは世界中のほぼあらゆる曲を聞いたりできる。(pp.81-82)

その他にも多くの企業が参入していますよね。商品がデジタル・コンテンツとなると、これまでの物流という商流ではなくてはならない工程が不要になり、全く異なるビジネスモデルになり、受けの体制についても発想を変えていかないといけません。

企業は「人材主義」という概念へ適応しなくてはならない。これは競争力向上にとって最も重要で、新たに出現してきた要因の一つである。人材が戦略的優位を獲得するための主因となる世界では、組織構造の本質を再考する必要が出てくる。柔軟な組織階層、業績測定と報奨の新制度、特殊技能を持つ人材を獲得・維持するための新戦略は、いずれも組織の成功にとって重要となる。機動性は従業員のモチベーションやコミュニケーションのみならず、企業における優先順位付けや物的資産の管理においても重要となるだろう。成功を収める組織では、階層構造から、よりネットワーク化された協調的モデルへのシフトがさらに進んでいるように見える。従業員と経営陣が一緒に熟達や自立、目的を希求するという協調性によって、労働へのやる気は内部から湧いてくるようになるだろう。企業では分散チーム、リモートワーカー。ダイナミックな集団による組織化が進むとともに、取り組むべき仕事や課題に関するデータと洞察が常に交換されるようになる。(p.84)

最終的には、「人」に行きつく気がします。高度で複雑なテクノロジーをうまく組み合わせて、企業にマッチアップさせていくのは人間でないと無理だと思います。

とにかく企業も個人も備えろ!ということなのだと思いました。何に対して、どうそなえたらいいのか・・・・については目新しいことはなかったですが、勉強していくこと、悪用する輩がいるであろうから、それをしっかり取り締まってもらうにしても、個人で守ることができる体制にしていかなければなりません。

そういう意味では、警察であってもどんどんサイバー化して、ファイストゥ・フェイスというようなこともなくなっていくのかと思うと、非常にさびしい気がします。

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