戦略にこそ「戦略」が必要だ

戦略にこそ「戦略」が必要だ ―正しいアプローチを選び、実行する

戦略にこそ「戦略」が必要だ ―正しいアプローチを選び、実行する
著者:マーティン・リーブス,クヌート・ハーネス,ジャンメジャヤ・シンハ

★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] 気になってたのですが、図書館で見かけまして。
[目的・質問] 文字通りで、「戦略」を立てるために「戦略」を作らなければならないということ?個人的によく言うのですが、「決め方」を「決める」ということでしょうか?学ばせていただきます。
[分類] 336.1: 経営政策.経営計画

ビジネススクールで教えられてきた「戦略」や、経営企画部によって策定される「戦略」は、新しい環境で事業を営む企業の指針としては、その妥当性に疑問も投げかけられている。ながらく、事業計画の策定が―― 企業の経営会議でもビジネススクールの教室でも――事業戦略の主たるアプローチであった。ところが昨今、ビジネス評論家からは、世界があまりに複雑化し、ダイナミックに変化して、予測困難であるため、持続性のある有益な事業計画を策定するのは不可能だという意見さえ聞かれる。(p.7)

中長期計画なんて死後と化しつつありますよねぇ。ありえない速さで環境はめまぐるしく変化していってますからね。

ワンサイズでは、すべての人にはフィットしない。事業環境の不確実性とダイナミズムが増大する中で、競争優位性ばかりか戦略さえも、今日の環境にはそぐわないと主張する学者やビジネスリーダーもいる。しかし本当は、戦略の重要性はかつてないほど高まっている。(p.18)

そういえば、私の敬愛するミュージシャンの1975年の作品に「One Size Fits All」というのがありましたが、それは1975年の話で、もう今やそれは非常に難しくなっています。とこで、そもそも筆者が言う「戦略」とはどういうものなんでしょうね。ファイブフォース分析、ブルーオーシャン戦略などを戦略として冒頭に書かれてますから、そのようなレベル感のことを「戦略」として進めているようです。こんなタイトルをつけているんだから、そこはきっちりと定義して論を進めるべきなんでしょうけどね。そこは大事なところですので、そもそものこの「戦略」の定義についても気にしながら読んでいきます。

有力な戦略アプローチは存在するものの、状況に適したアプローチを選ぶしっかりした方法論が欠けているのだ。ファイブフォース分析が有効な場合も、ブルーオーシャン戦略やオープン・イノベーションが有効な場合もあるだろう。しかし、たった一つの戦略アプローチが何にでも通用する万能薬のように紹介されたり認識されたりする傾向がある。経営幹部やビジネスリーダーはジレンマにと工面している。事業環境が多様化し、必要な投資やリスクが増大する中で、最適な戦略アプローチをどうやって特定したらよいのか。どうすれば適切なフレームワークやツールを活用して、そのアプローチに適した考え方と行動で戦略を策定し実行できるのか。(p.20)
事業環境のダイナミズムや多様性の高まりと、戦略す方の増殖が組み合わさってもたらされる課題に取り組むため、本書では「戦略パレット」という、選択肢を統合した枠組みを提案する。この枠組みは、次のような三つの局面でリーダーを助けるために考えられた。

  1. 自社の戦略アプローチを現実の状況に適合させて、それを効果的に実行すること。
  2. 異なるアプローチを組み合わせて複数の環境、あるいは変化する環境に対応する。
  3. こうしたアプローチからなる「コラージュ」に生命を吹き込むことである。

戦略パレットは5つの原型となるアプローチ―基本色―から成る。地域、業界、機能、企業のライフサイクルのステージなど、事業の個々の領域を取り巻く環境に応じて、それぞれに合致したアプローチを適用することができる。(p.21)

戦略とは本質的に問題解決であり、最良のアプローチは直面する具体的な問題により異なってくる。いかなる環境にあるかが、求められる戦略アプローチを決定づけるのだ。したがって、環境を評価したうえで適切なアプローチを適用する必要がある。しかし、事業環境の特性はどのように低美すべきなのだろうか。また、勝利への道筋を策定するのにどの戦略アプローチが最適かを、どうやって判断するのか。(pp.23-24)
事業環境は、識別しやすい3つの特質によりタイプ分けすることができる。3つの特質とは、「予測可能性」(将来の変化を予測できるか?)、「改変可能性」(自社単独で、あるいは他社と協業して、つくり変えることができるか?)、「苛酷さ」(生き残れるか?)である。この3つを軸としてマトリクスを作成すると、環境は5つの型に分類できる。そして、それぞれの象限で異なる戦略・実行アプローチが求められる。(pp.24-25)

  • クラシカル(伝統)型:予測できるが、つくり変えることはできない
  • アダプティブ(適応)型:予測できず、つくり変えることもできない
  • ビジョナリー(ビジョン牽引)型:予測でき、つくり変えることができる
  • シェーピング(協創)型:予測できないが、つくり変えることができる
  • リニューアル(再生)型:リソースの制約が厳しい

それぞれの環境には、それに対応する特有の戦略アプローチの型(戦略パレットの色)がある。

タイプ アプローチ
クラシカル 規模や差別化、組織能力による優位性に基づくポジショニングの戦略が役に立つ。これは、徹底的な分析や計画立案により構築できる。 規模を拡大する
アダプティブ 急速に変化し、予測しがたい状況では計画が機能しないため、継続的な実験が求められる。 素早く動く
ビジョナリー 新市場を創り出すか既存市場を破壊する最初の企業になることにより勝利がもたらされる。 創造(破壊)する最初の企業になる
シェーピング さまざまなステークホルダーの活動をオーケストラのようにうまく編成して彼らと協業することで、自社に有利な方向に業界を形成できる。 オーケストレーター(編成者)になる
リニューアル 厳しい環境という状況において、企業はまず、経営資源を確保して存続可能性を高める必要がある。そのうえで、成長軌道に戻して長期的に成功を持続するため、他の4つのアプローチのいずれかを選ぶ。 存続可能性を高める

何よりも、適切なアプローチを選択することが肝心だ。私達の研究では、戦略をうまく環境に適合させている企業は、そうでない企業に比べて、非常に高いリターン―TSR(株主総利回り)4~8%――を実現している。しかし、調査した企業の約半分は何らかの観点で環境に合わない戦略アプローチを採用している。(p.26)

これらについて、こちらの図も見ながら読んでいただくと理解が深まると思います。それぞれの戦略パレットに関しての詳しいお話については、こちらに書かれています。

さて、戦略パレットは次の3つの局面で適用できると書かれております。(p.37)

  1. 事業の特定の領域に対して、適切な戦略アプローチを選択し、適切に実行する。
  2. 事業の異なる領域に対して、あるいは時期によって複数の戦略アプローチを効果的に組み合わせる。
  3. リーダーが、これらの戦略アプローチから成るコラージュに生命を吹き込むことでリーダーシップを発揮する。
戦略パレットは、事業の個々の領域における適切な戦略アプローチを説明したり選択したりするための新たな言語をリーダーに提供する。加えて、それぞれのアプローチの戦略策定と実行をつなぐるじっくを提供する。ほとんどの企業で戦略策定と実行は、組織、時間軸の両面において人為的に分離されてきた。各アプローチについては、戦略策定の方法が著しく異なるだけではなく、実行もそれぞれに特有のやり方があり、情報管理、イノベーション、組織、リーダーシップ、企業文化についての要件にも大きな違いが生じる。そのため、戦略パレットは、戦略的方向性のみならず、企業のオペレーションの手順についても指針を与える。(pp.37-39)
戦略パレットの適用において、リーダーは、戦略のコンテクストを設定したり調整したりする重要な役割を担う。リーダーは環境を読み取って、どの戦略アプローチをどこに適用するかを判断するとともに、それを実行するのに適した人材を配置する。さらにリーダーには、統合された戦略ストーリーを社内外に打ち出し浸透させるという非常事態に大切な役割もある。リーダーは、複数の戦略アプローチの組み合わせである戦略コラージュに継続的に生命を吹き込む。適切な質問を発し、広く信じられているロジックがものの見方を曇らせるのを防ぐために前提に疑問を投げかけ、さらには、重要な変革への取り組みを後押しすることで、コラージュをダイナミックで最新の状態に保つのである。(pp.40-41)

戦略パレットの3つの軸の意味と、現在の環境への対応について、うまくまとめて書かれています。

急速に進化する今日の世界において、こうした前提には次の3つの側面で異議が唱えられている。第一に、今日の事業環境では「予測可能性」が低くなっているため、多くの場合、もはや長期計画は有効ではない。第二に、技術の進化やグローバリゼーションといった要因により、既存の業界構造の破壊が繰り返される。その結果、業界構造や競争の基盤は次第に「改変可能」になっており、個々の企業が市場の発展の方向性を形作るより生じる戦略と環境の不整合が、これまでより頻繁にみられるようになり、その深刻さも増してきている。こうした環境では、企業は合理化と短期的生き残りに専念することを迫られる。そのため、私達は環境の「苛酷さ」を考慮する必要がある。(p.42)

戦略を見誤る落とし穴として次のことが書かれています。そこには3つのタイプが落とし穴として挙げられています。それは、「環境認識」、「適切なアプローチの選択」、「戦略アプローチの適用」です。それぞれ、非常に大切なので、確認しておきましょう。(pp.43-45)

 

  • 環境認識:自社の事業環境について改変可能性と予測可能性の程度を正確に評価しているリーダーもいるものの、多くの経営幹部がこれらを実際の水準よりも大幅に高く認識している。・・・多くの場合、環境を予測したりコントロールしたりすることはできず、そのことが戦略アプローチに対して予期しない深刻な影響をもたらす。
  • 適切なアプローチの選択:企業の戦略アプローチの選択にもミスマッチが見られた。・・・自社の環境認識と論理的に整合しないスタイルを選択しているケースも散見された。
  • 戦略アプローチの適用:多くのリーダーが自社の事業環境に応じた戦略アプローチを適切に選択している一方で、組織がその適用につまずく場合も多きことを指摘しておきたい。
異なる地域、ビジネスユニット、ライフサイクルのステージなどにわたって、どのように複数の戦略アプローチを、同時に、あるいは連続的に活用していけばよいかを考える。このような多次元のアプローチを使いこなす能力を、私たちは「両利き」と呼んでいる。両利きになるために有効な手法には以下に挙げる4つがあり、状況によりどれが最適かは異なる。(pp.47-48)

  • 分離:企業がそれぞれのサブユニット(部門、地域、機能)にどの戦略アプローチを用いるかを注意深くマネジメントし、それらのアプローチをそれぞれ独立したかたちで運営する
  • 切り替え:企業が前者のリソースを1つのプールとして管理し、時期により戦略アプローチを変えたり、一定の時期には複数アプローチを組み合わせて用いたりする
  • 自己最適化:トップダウンで最適な戦略アプローチの選択・マネジメントを行うのが複雑すぎる場合に、各ユニットが自律的に最適なアプローチを選択する
  • 外部エコシステム:自ら適切な戦略アプローチを選択するプレーヤーから成る外部エコシステムに依存する
戦略アプローチのコラージュを創り上げ、生命を吹き込む上でのリーダーの役割について、私たちは、この側面においてリーダーが果たす重要な役割が8つあると考えている。

  • 診断する:外向きの視点で事業環境を評価し、環境に適した戦略アプローチを検討する
  • セグメンテーションする:適切なレベルで組織のセグメンテーションを行い、どの部分にどの戦略アプローチを適用するかを判断する
  • 自己破壊する:継続的に診断やセグメンテーションを見直し、必要に応じ調整や変更を行う
  • コーチングする:コラージュのそれぞれの領域のマネジメントに適した人材を選び、彼らを知識・思考および経験の両面から育成する
  • 売り込む:社内外に向けて一連の戦略的選択を統合した明快なストーリーをコミュニケートし、唱道する。
  • 問いかける:深い思考を誘発する質問を投げかけることで、各戦略アプローチに適したコンテクストを設定・再設定する
  • アンテナをはる:継続的に外の環境を観察し、注視していないと見落としたり過小評価したりしてしまいそうな重要な変化のシグナルを発見し、大きく取り上げる
  • 加速させる:特に重要な変革の取り組みを後押しして、実行を加速させたり、抵抗や慣性を乗り越えるパワーを強めたりする

以下、それぞれの戦略パレットに関して、詳細の説明があるのでしっかり読んで身につけたいところです。それぞれについては各パートで理解したうえで、最後のところの「エピローグ」の章から、大切なところをピックアップしておきたいと思います。

つまるところ、戦略とは問題解決であり、仕事でも日常生活でも、私たちは日々問題を解決するための多様なアプローチのいずれかを選択する数多くの状況に遭遇している―ただし、その選択を意識的に行うかどうかは自分次第だ。選択の企画に出会うたびに適切な思考の枠組みと意図をもって取り組めば、あなたは個人としての学習の旅をより加速することができる。(pp.369-370)
戦略パレットを活用する基本的なスキルを磨くには、次の4つの実践的方法が役立つだろう。(p.370)

①まず、戦略パレットについて理解を深める
②それをビジネスとそれ以外の状況の双方に適用する訓練を積む
③経験の幅を広げる
④第三者のためにコンテクストを設定し、形成するスキルを磨く

5つの戦略アプローチのそれぞれを深く理解しているという前提で、それを使いこなすうえでは以下のような点を押さえることがカギとなる。

  1. 個別企業の置かれた状況に応じて戦略を適切に選ぶ
  2. 自社の抱える複数の事業についてそれぞれ異なった戦略アプローチを採用する
  3. 事業環境や発展段階の変化に伴い戦略アプローチを切り替える
  4. それぞれの戦略アプローチに適した実務運営を行う

ところが、これをいざ実践しようとすると、①~④のいずれも意外に難しいことに気づく。中でも、「④戦略アプローチに適した実務運営を行う」というところで大きな壁にぶつかることが多い。5つの戦略アプローチのいずれを採用するかによって、社員一人ひとりに求められる行動様式や必要となる組織能力、ITインフラ、業務プロセスなどが大きく変わり得るということは容易に想像できるだろう。(pp.389-390)

だからこそ、「症状(事業環境)」と「薬(戦略)」と「服用方法(実部運営)」を常にセットで考えることができる経営者こそが成功をおさめることができる。自社を深く知ることで、どの事業環境で勝負するのか、どの戦略アプローチを採用するのかについての考察を深めることも必要だろう。実務運営の方法があまりにも異なる場合には、会社を分けるというような発想も必要になるかもしれない。(pp.390-391)

個々の戦略アプローチの深い理解については、本書のほうでご確認いただくことになりますが、それにしても学ぶべきことがたくさんあり多く引用させていただきました。

この書の守備範囲なんて、まさにMBAのカリキュラムとして重要なトピックス、必要な要素だと思いました。

それにしても・・・深いです。この本。1年くらいかけてじっくり研究したいです。

 

さて、、、、、少し本筋とは違いいますが、興味のある内容なので、こちらも備忘録として引用しておきます。

私たちは戦略パレットの各アプローチの特長と効果を調査するため、性質の異なる事業環境でそれらがどう機能するかシミュレーションを行ってきた。不確実性の高い事業環境における意思決定の経済性を測定するために、「多腕バンディット(multi-armed bandit:MAB)問題」と呼ばれるモデルを使った。MAB問題に挑戦する数々のアルゴリズムは、パレットにおける核戦略アプローチに対応している。

多腕バンディットに関しての詳しい説明・・・なかなか難解なためなさそうですば、こちらぐらいでしょうか。ご覧いただけたらと思います。

 

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