破壊的イノベーションが「起きない理由」


非常に興味深く、分かりやすい記事を読みました。
クリステンセン教授の去年行われた講演のレビュー記事です。

実に分かりやすいです。

ネタのもとはこちらです。「破壊的イノベーション〜新たな成長事業をどのように生み出すのか〜」講演レポートになりますが、こちらをさらに私なりにまとめながら、理解を深めていきたいと思います。

まずイノベーションいは3つのタイプがあると、クリステンセン教授は言います。

破壊的(disruptive)イノベーション」:ある企業の製品やサービスに対抗して競合他社がとる行動によって、従来の製品やサービスが分断(disrupt)されてしまう現象を指す。

持続的(sustaining)イノベーション」:製品は、改善を重ねられ、性能が向上していくとともに企業の利益率も上がっていく。

効率化(efficiency)イノベーション」:企業は、より少ないリソースでより多くの製品を作ることを目的として進めていく。

そして、この3つのあるべきサイクルとして、下記について説明します。

効率化イノベーションはその特性として、雇用を減少させ、フリーキャッシュフローを増やす。このキャッシュフローが次の市場創造型・破壊的イノベーションの開発に投資されれば、それぞれ異なる役割を担う3つのイノベーションが繰り返し起こる事業サイクルが生まれる。

効率化によりフリーキャッシュローが生まれ、それが破壊的イノベーションに投資され、そこで効率化イノベーションによって減らされた雇用が再び増やせれば、このシステムは永久に回り続ける。これが成長を生み出す仕組みなのです。

そして、有名な次の言葉が登場します。

高い利益率で売るために製品の改善に引き続き投資するべきか。あるいは、買ってもらえず、利益を悪化させるかもしれない製品を新たに作るべきなのか。これが、イノベータのジレンマ(innovator’s dilemma)です。

そして、クリステンセン教授は、「近年、先進国では、成長を生み出すイノベーションサイクルが機能しなくなっている。・・・その原因は70年代から90年代に登場したファイナンス理論にある」とみており、その理由として、下記を挙げています。

大学院生の時代には財務の計算は整数でするよう教えられていたが、その後、比率が盛んに用いられるようになった。整数では扱う数字が大きく、また企業どうしの比較が難しいが、分子が利益を表し、分母が何か別のものを表す分数(=比率)を用いれば、企業の評価をしやすくなるからだ。

そして、これによる影響として、

RONA(Return On Net Asset:純資産利益率)を引き上げたければ、選択肢は2つあります。よりイノベーティブになって利益を創出して分子を大きくする。または、すべてを外注して資産を取り除いて分母を減らす。どちらにしてもRONAは上がりますが、分子を増やすより分母を減らすほうがずっと楽だということがわかってしまったんですね。

なるほど。論理的に考えるとそうなりますし、近視眼的には「分母を減らす」ことはありなんでしょうけど、長期的にはよろしくないですよね。つまり、分母を減らすということは利益率は上がっても値が分子以上に大きくなることはありませんから上限が決まります。それに対して、分子を増やすことについては大いなる拡大・拡張の可能性ってあるはずです。となると、長期的な観点では分子の増加を目指すべきなのだと私は思います。分母を減らさないといけない市場は、収束に向かっていると言っても過言ではない気がします。そう考えると、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの位置づけに応じて、分子を増やすべきなのか、分母を減らすべきなのかという市場を見極めるということも関連していますね。

IRR(Internal Rate of Return:内部利益率)も同様である。財務的には、市場が確立している製品の効率化イノベーションへの投資が奨励される。3ヶ月から2年で投資を回収でき、資本を使わずに資本を増やせるからだ。実質的な成長を生むイノベーションは、一時的に資本が減り、投資回収にも長年かかるので避けられる。こうして効率化イノベーションへの投資が増えた結果、現在では世界中に資本があふれている。

また次のように言っています。

かつて、インプットとしての資本はコスト高で貴重であり、効率よく使ってできるだけ早く回収するべきものとされていたが、「ルールが完全に変わった」とクリステンセン氏は言う。「この現象は一時的なものではありません。それに気づいた企業には絶好の機会となるかもしれません。」

そしてクリステンセン教授は、「破壊的・市場創出型のイノベーションに役立つ、片づけるべき用事(ジョブ)の理論(Theory of jobs to be done)」を紹介してくれています。

それは、「ある製品やサービスを買わせる理由」を考えるときに、「片づけるべき用事」に注目せよ、ということです。

顧客に購買行動を起こさせる要因を理解したければ、顧客そのものは分析の単位としては、間違っています。顧客がやろうとしている用事は何かを理解すべきなのです。

そして、クリステンセン教授は、片づけるべき用事があるとき、その用事を済ませるために使える製品やサービスを顧客にすぐに想起してもらえる因果関係のメカニズムを作ることが重要だと説き、「用事の構造」を整理しました。

「用事の構造(job architecture)」を段階的に整理すると以下のようになる。

  • 状況に応じて片づけるべき用事(機能的、情緒的、社会的側面に考慮)
  • 用事を片づけるために、購入と利用によってどんな経験を提供すべきか
  • 統合すべきものと方法(何をどう組み合わせて1つのシステムにするか)
  • ブランドの目的(用事から想記させる)
イケアは、『家具を備えつけるという用事はイケアがやってくれる』というシステムをデザインしたのです。イケアには独自技術があるわけでもないし、製品の質にしても中の下くらいでしょう。しかし、製品とサービスのシステムと、それにみんなの頭に浮かぶブランドが整備されています。人々は、用事を済ませてくれるものごとには、プレミアムを支払うのです。

これはまさに「ブランド」であり、「ブランドプロミス」ですね。これを確立し、顧客の頭に植え付け、そして継続してそのプロミスを守り、発展させていく・・・これこそが企業が継続していくための本筋だと私も考えます。

 顧客の片づけたい用事は、購入するモノや利用するサービスをどう組み合わせ、どんな経験を顧客に提供すればよいかを教えてくれる。まず、用事が何であるかを理解し、できるだけうまく用事を片づける方法を考えればよい。また、用事と用事を片づけてくれる製品・サービスを紐づけるブランドも必要である。

以上となりますが、非常に分かりやすいですね。また、この「片づけるべき用事(ジョブ)の理論(Theory of jobs to be done)」とコトラー先生のマーケティング4.0での「自己実現ニーズ」は、限られた時間のなかから自分の時間をどれだけ質的に充実させるかという本質にたどり着くような気がします。

結局は、現代人の慢性的な病「時間不足」をどれだけ解消するか、かつ同じ時間であったとしたら質を高められるか・・・それが大切なのかもしれません。

と考えると、かつては店舗マーケティングにおいても滞在時間は多ければ多いほどよいというものでしたが、そうではなく少ない方が顧客満足度は上がるとなると戦略としての店舗のゾーニングなども変わってくるかもしれません。

これまでの常識に捉われないで、ゼロベースで考えないと、破壊的イノベーションは難しいですが、この「片付けるべき用事の理論」はそれのヒントになることは確かですね。

新しい学びを得ることができました。ありがとうございました。

せっかくなので、その「片付けるべき用事の理論」について、別のページで少し深掘りしてみます。ご関心のある方は、こちらへ。

 

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