行動経済学の逆襲


行動経済学の逆襲

行動経済学の逆襲
著者:リチャード・セイラー

★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] 行動経済学のパイオニア、リチャード・セイラーさんによる行動経済学史??
[目的・質問] 紆余曲折の行動経済学を進化過程を追っかけます。
[分類] 331:経済学.経済思想

冒頭に、ヴィルフレド・パレートの言葉が書かれていて、衝撃を受けました。

「政治経済の基礎、そして社会科学全般の基礎は、まぎれもなく心理学にある。社会科学の法則を心理学の原理から演繹できるようになる日が、いつかきっと来るだろう」 ヴィルフレド・パレート(1906年)

お察しの通り、このパレートさんは、20:80のパレートの法則のパレートさんです。ある意味、パレートさんがこの法則を発見された背景にもそういった心理学的な問題意識があったのかもしれません。また今度、勉強したいと思います。

さてさて、行動経済学といえば、ダニエル・カーネマン先生がノーベル賞を受賞されて、一気に注目が集まりました。故・エイモス・トベルスキー先生と共に考案したプロスペクト理論が評価されたわけですが、リチャード・セイラーさんは、彼らとともに研究していた研究の同志のようです。たくさん書籍も書かれていますが、ある意味、純血のエッセンスを持って書かれているので含蓄深いものがあります。

セイラー,リチャード (セイラー,リチャード)   Thaler,Richard H.
シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネス教授。全米経済研究所(NBER)の研究員。行動科学と経済学を専門とし、行動経済学のパイオニアの一人に数えられる。正しい行動を促す概念として提唱した“ナッジ”は一世を風靡し、各国政府の政策に取り入れられている。2015年にはアメリカ経済学会会長に選出

ということで、読み進めて行きましょう。目次をみると、まるで「私の履歴書」をイメージさせる時系列に研究の進化を追っているような感じです。

[目次]
第1部 エコンの経済学に疑問を抱く 1970~78年
第2部 メンタル・アカウンティングで行動を読み解く 1979~85年
第3部 セルフコントロール問題に取り組む 1975~88年
第4部 カーネマンの研究室に入り浸る 1984~85年
第5部 経済学者と闘う 1986~94年
第6部 効率的市場仮説に抗う 1983~2003年
第7部 シカゴ大学に赴任する 1995年~現在
第8部 意思決定をナッジする 2004年~現在
経済モデルは人間の行動に関する誤った認識に基づいて作られているが、皮肉にもそうしたモデルがあるおかげで、経済学には最強の社会科学とされている。経済学最強と言われる理由は2つある。一つ目の理由に議論の余地はない。公共政策への提言においては、経済学者はどの社会学者よりも強い影響力を持っているからだ。・・・・もう一つの理由は、経済学は知性の面でも最強の社会科学だと考えられているからである。経済学には核となる統一理論があり、それ以外のほとんどすべてのことがその理論から導かれる。それが最強とされるゆえんだ。・・・経済学の核となる前提とは、人は自分にとって最適な行動を選択する、というものだ。・・・つまり、私たちは経済学者の言う「合理的期待(rational expectations)」に基づいて選択をしているというのである。・・・この制約付き最適化(constrained optimization = 限られた予算の下で最良のものを選ぶこと)の前提は、経済理論のもう一つの柱である均衡(equilibrium)と結びついている。価格が自由に変動する競争市場では、供給と需要が一致するように価格が調整される。これを少し単純化すると、「最適化+均衡=経済学」という式で表すことができる。この組み合わせは強力で、他の社会科学はとうてい太刀打ちできない。(pp.22-23)

「最適化+均衡=経済学」・・・これはまさに目から鱗ですね。

ところがいくつか問題がある。経済理論が拠って立つ前提には欠陥があるのだ。・・・言い訳をするのは、もうやめるべきだ。私たちに必要なのは、経済を研究するための豊かなアプローチである。それはヒューマンの存在を認めて、モデルに組み込むアプローチだ。(pp.23-26)

とはいうものの、著者は、エコンについて、全否定しているわけではなく、次のように書いています。(「ホモエコノミカス」という架空の人間のことを著者は略して、エコンと呼んでいる)

人間はすべてエコンだと考える理論を放棄してはいけない。これにより現実に近いモデルを構築する出発点として使うことができる。それに、解決しなければならない問題が単純であるとか、問題を解決するのに必要な高い専門能力を当事者が備えているとか言ったような場合には、エコンのモデルは現実世界のよい近似になるだろう。(p.26)
エコンという架空の存在を想定して、その行動を記述する抽象的なモデルを開発するのをやめる必要はない。しかし、そうしたモデルが実際の人間行動を正確に記述しているという前提に立つのはやめなければなrない。そんな間違った分析にもとづて政策を決めることもだ。そして、エコンのモデルでは意思決定とは無関係とされている要因(supposedly irrelevant factors)に目を向ける必要がある。(p.28)

さて、その後は筆者の行動経済学との関わりや、行動経済学的発想の事例を交えながらのストーリー展開が続きます。

「ナッジ」という言葉ができます。ナッジとは英語で「人をひじで軽く押したりつついたりすること」を意味します。行動経済学分野から出てきた用語で、選択肢をうまく設計したり、初期設定(デフォルト・ポイント)を変えたりすることで、人々に特定の(望ましい)選択を促すという意味合いがあります。例えば、スーパーやコンビニで「今週のおすすめ」「人気・売れ筋NO.1」と書く事で、消費者の選択を自然と誘導することも「ナッジ」に含まれるようです。

こちらを参考にされると良いでしょう。

そして、「今後の経済学に期待すること」という終章に繋がっています。

「科学的根拠に基づく経済学」以外の経済学がありえるのかと不思議に思うのも無理はないが、経済理論の大半は、実証的観察から導かれたものではない。合理的選択という公理を前提として演繹手続きによって導かれている。一連の公理が私たちの日常生活で観察されるものと関係があるかどうかは問題ではない。エコンの行動に関する理論を事実の観察に基づいて構築することはできない。なぜなら、エコンはこのように存在しないからだ。(p.478)
現実に即した行動学的アプローチを一番取り入れてほしい経済学の分野を一つ選ぶとしたら、マクロ経済学だろう。残念ながら行動学的アプローチが一番影響を与えていないのが、マクロ経済学である。・・・マクロ経済学を研究する行動経済学者が少ないのは、行動ファイナンスの成功に寄与した2つの重要な要素が欠けているからだろう。マクロ経済学の理論が生み出す予測は容易に反証できないし、データもかなり少ない。つまり、ファイナンスにあるような、“動かぬ”実証的証拠はこれからも得られないということだ。(p.479)
私は行動経済学の創始に加わる中で、さまざまな基本原則を学んだ。(pp,486-488)
①観察する、②データを集める、③主張する・・・しかし、リスクをとることで解雇されてしまうようなら、だれもリスクをとろうとはしない。優れたリーダーは、化学的根拠に基づいて科学的根拠に基づいて意思決定すれば、必ず向かわれると社員が考えられる環境をつくらなければならない。そんな理想的な環境が整えば、誰もが観察し、データを集め、主張するようになる。(p.489)

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