エフェクチュエーション


エフェクチュエーション (【碩学舎/碩学叢書】)

エフェクチュエーション (【碩学舎/碩学叢書】)
著者:サラス・サラスバシー

★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] amazonのレコメンデーションで登場。
[目的・質問] この言葉も知らなかったので・・・・そこからです。

[embedyt] http://www.youtube.com/watch?v=t5HZW4NqZ-E[/embedyt]

サラスバシーさんのTEDでのプレゼンテーション(英語)です。
サラスバシーさんは、なんとノーベル経済学賞受賞者のハーバート・サイモン教授の最晩年の弟子とのことです。

本書は4部、13章、400頁を超える大作です。しっかり読んでいきたいと思います。

イントロダクション

PartI 経験的探訪 起業家的熟達
第1章 研究対象は何なのか、そしてなぜそれが研究対象となるのか
第2章 何を、どのようにして発見したのか
第3章 私の発見についての解釈

PartII 理論的探訪 エフェクチュエーション
第4章 エフェクチュエーションを理解する:問題空間と問題解決の原則
第5章 エフェクチュエーションを理解する:エフェクチュアル・プロセスの動学
第6章 エフェクチュエーションを成果に結びつける

PartIII 通過地点
第7章 「人工物の科学」としてのアントレプレナーシップ
第8章 競争優位と起業家的機会
第9章 エフェクチュエーションに基づく経済学の哲学と方法論
第10章 人々の希望の中に存在する市場

PartIV 進むべき方向
第11章 エフェクチュエーションを教える
第12章 進行中の研究
第13章 新たな研究のベンチャー

というような流れになっています。

まずはイントロダクションから・・・

コーゼーションの論理は、不確実な未来に直面する際に、環境選択(自然淘汰)を前提に所与の目的を達成するためには、有用な意思決定基準を提供する。エフェクチュエ―ションの論理(実効論)は、目的の曖昧性に直面する際に、外部環境を新しい未来へと作り変えるために有用なデザイン原則を提供する。(P.xvii)

イマイチ、よく分かりませんが、まえがきにも比較が書かれています。

コーゼーション(因果推測)の問題は、「意思決定」の問題である。エフェクチュエ―ションの問題は、「設計」の問題である。コーゼーションの論理は、「選択」を助け、エフェクチュエ―ションの論理は「構築」を助ける。コーゼーションに基づく戦略は、未来が予想(predictable)でき、目標が明確(clear)で、環境が我々の活動から独立(independent)している場合に有効である。エフェクチュエ―ションに基づく戦略は、未来が予測不能(unpredictable)で、目標が不明瞭(unclear)で、環境が人間の活動によって駆動(driven)される場合に有効である。コーゼーションの立場の人は、求める「結果(effect)」からスタートし、「これを達成するためには、何をすればよいか」を問う。一方、エフェクチュエ―ションの立場の人は、「手段(means)」からスタートし、「これらの手段を使って、何ができるだろうか?」と問い掛け、再度、「これらの手段を使って、他に何ができるだろうか?」と問うのである。(まえがき p.x-xi)
エフェクチュエ―ションの核心にあたるアイデアは、エフェクチュエ―ションに成功した起業家(the effectual entrepreneur)は、世界の中の既存の機会を「発見し、利用する(discover and exploit)」のではなく、彼らの生活と価値体系に基づく平凡な現実の中から、そうした機会を「つむぎ出す(fabricate)」人物である。(序文 p.xii)

エフェクチュエ―ション、なんとなくイメージできてきました。

というところで、本文入っていきましょう。

PartI 経験的探訪 起業家的熟達
第1章 研究対象は何なのか、そしてなぜそれが研究対象となるのか

エフェクチュエ―ションの論理は、

  1. 起業家自身(who)、起業家の知識(what)、起業家の人脈(whom)を、新しいベンチャー企業や市場に変換することを助けるミクロなメカニズム
  2. 起業家が、関与者の自発的参画を促すことを通じて、新たなネットワークを創っていくミクロなプロセス

その両方に焦点を合わせる。(P.10)

経済学には、アントレプレナーシップを、競争力学のより大きなドラマにおけるバランス作用として捉えるという長い伝統がある。例えば、Schumpeter(1976)は、起業家を「不均衡(disequilibrium)の源」と捉え、Kirzner(1979)は「起業家的警戒心(entrepreneurial alertness)」が契機となり、不均衡を均衡に戻す市場プロセスをもたらすことを示した。また、(概念としての)均衡と不均衡の間には、多様な構成概念のグラデーションが存在し、その中には、Baumol (1993)による、生産的/非生産的/破壊的アントレプレナーシップの3つからなる構成概念の連続体も含まれている。(P.10)

このバランス作用というのは伝統的な見方のようですね。

アントレプレナーシップの競争力学の視点は、個人の意思決定やその意思決定がなされる条件について、ある前提に基づいている。具体的に言えば、「未来は大なり小なり予測可能であり、意思決定者は自分が求めるものも分かっており、(その選好も先立って存在し、順序立っている)、環境は、個人の行為から独立した外部ものである」という前提である。この点、エフェクチュエ―ションは、これらの前提が適合しない場合に機能する概念である。言い換えれば、それは、既存の経済学が前提とする、個人・企業・市場についての世界観を、既存の研究を超えてフロンティアに推し進めるものなのだ。(P.10)

フロンティアに推し進めると言われても・・・・なかなか理解が難しいところです。

Shaneが想定する起業家は機会の「発見(discovery)」と「活用(exploitation)」に従事するものであるのに対し、エフェクチュエ―ションに基づく起業家は、起業家の人生や価値に基づいて、平凡な現実からスタートし、最終的には機会を「紡ぎ出す」存在として捉えられるのである。(P.13)

エフェクチュエ―ションにおける「平凡な現実からスタート」というところは非筒のポイントでしょうね。

 

特定領域のおける熟達研究が興味深い理由は、熟達の要素は、その領域特有のいくつかのヒューリスティックな原則から構成され、それがエキスパートシステム(expert system)や、検証・伝達可能な意思決定と問題解決のテクニックに具体化される点にある。そして、アントレプレナーシップを熟達の1つのかたちとして研究することは、アントレプレナーシップに関するテクニックを開発するのみならず、この分野に重要な新しい視点を持ち込むことで、とりわけ、起業家の成果に関する現在の分析視角に対して、影響を及ぼすことになると考えている。(P.17)
起業家の成果を、企業の成果だけに限定することは、熟達した起業家が成功をもたらす方法の1つである「失敗のマネジメント」を見逃してしまうことに繋がる。長期にわたって持続的に成功するには、熟達した起業家が成功をもたらす方法の1つである「失敗のマネジメント」を見逃してしまうことに繋がる。長期にわたって持続的に成功するには、熟達した起業家が失敗の後も生き残り、成功を積み重ねて失敗と成功の両方から学ぶことが必要である。ゆえに、アントレプレナーシップの研究では、起業家の成果と企業の成果は分けて考えるべきである。起業家と企業を区別して考えることは、同様に(アントレプレナーシップのような)複雑な領域での熟達を研究する際には、成功/失敗を超えた基準を用いて、熟達者について定義する必要があることを意味している。(P.18)

これは実におもしろいです。確かにこれは考えようによっては、企業が成功していれば、起業家も成功でしょうけど、起業家の成功という意味では、企業は成功していることは必ずしもそうではないということですもんね。

 

以下に起業家的熟達の原則として、興味深い名称を与えながら説明してくれています。また、こちらには、この原則別の事例が掲載されています。

手中の鳥」の原則
この原則は、「目的主導(goal-driven)」ではなく、「手段主導(means-driven)」の行為の原則である。ここで強調されるのは、所与の目的を達成するために、新しい方法を発見することではなく、既存の手段で、何か新しいものを作ることである。「許容可能な損失」の原則
この原則は、プロジェクトから期待利益を計算して投資するのではなく、どこまで損失を許容する気があるか、あらかじめコミットすることである。

クレイジーキルト」の原則
この原則は、機会コストを気にかけたり、精緻な競合分析を行ったりすることなしに、(コミットする意思を持つ)全ての関与者と交渉をしていくことにかかわる。さらに、経営に参画するメンバーが、企業の目的を決めるのであり、その逆ではない。

「レモネード」の原則
この原則は、不確実な状況を避け、克服し、適応するのではなく、むしろ予期せぬ事態を梃子として活用することで、不確実な状況を認め、適切に対応していくことを示している。

「飛行機の中のパイロット」の原則
この原則は、技術トラジェクトリーや社会経済学的なトレンドのような外的要因を活用することに起業家の努力を限定するのではなく、エージェンシーとしての人間に働きかけることを、事業機会創造の主たる原動力とすることを示している。

上記5つの原則は、「非予測的コントロール(non-predictive control)」のテクニックを具体化したものである。つまり、不確実な状況をコントロールするにあたり、「予測をもとにした戦略(predictive strategy)」の使用を減らすことを志向する。これらの原則は、総体として、「エフェクチュエ―ション」と呼ばれる行為の論理を示している。(P.19-20)

「エフェクチュエ―ション」は「コーゼーション」の反意語である。コーゼーションに基づくモデルは、「作りだされる効果(effect to be created)」からスタートする。そして、あれかじめ選択した目的を所与とし、その効果を実現するために、既存の手段の中から選択するか、新しい手段を作り出すか、を決定する。他方、エフェクチュエ―ションに基づくモデルは、逆に、「所与の手段」からスタートする。予測をもとにしない戦略を用いて、新しい目的を創り出そうとする。エフェクチュエ―ションは、通常の「手段と目的」、「予測とコントロール」の関係を逆転させるだけではなく、「組織と環境」、「部分と全体」、「主観と客観」、「個人と社会」等、他の伝統的な関係性をも再編する。特に、こうした関係性を、決定の問題から、設計の問題へと変化させるのである。(P.20-21)
論理(ロジック)とは、「世界で行為するための明確な基盤となる内的に一貫した考え」を意味するが、コーゼーションの論理(causal logic)の前提は、「未来を予測できる範囲において、われわれは未来をコントロール(制御)することができる」というものである。一方、エフェクチュエ―ションの論理の前提は、「未来をコントロール(制御)できる範囲において、われわれはそれを予測する必要がない」というものである。(P.22)
エフェクチュエ―ションの枠組みは、問題空間を変容させ、既存の現実から新しい機会を再構築しようとするのである。(P.23)

エフェクチュエ―ションについて、詳しく説明をしてくれました。具体的な事例として、下記の図2.1(P.50)がありました。

 

上部が「マーケティングの教科書による古典的なコーゼーションに基づくモデル」であり、下が「熟達した起業家が用いるエフェクチュエ―ションのプロセス」となります。(英文ですみません)

こちらの図は、「エフェクチュエ―ションの動学モデル」(図5.1, P134)として書かれているものの英語バージョンです。

量も多く、消化し切れてませんが、巻末の監訳者である加護野先生の解説で理解し切りたいと思います。

本書の学術的貢献は、次の4点である。(P.447-451)

1 企業家のリスク・テーキングのための具体的行動原則の解明

  1. 目的に導かれるのではなく、手元にある手段の有効利用を考える手段主義の原則
  2. 将来の利益予想によって導かれるのではなく、どの程度の損失まで耐えられるのかを計算し、投資をその範囲内に抑えようとする許容可能な損失の原則
  3. あらかじめ決められたコンセプトをもとに必要な資源を探すのではなく、協力者が提供してくれる資源を柔軟に組み合わせて価値のあるものを作り出すというクレージー・キルトの原則
  4. レモン(粗悪品)をつかまされたらレモネードをつくれというレモネードの原則
  5. 外界の力を利用して失敗を回避し成功を収めるのではなく、自らの力と才覚を利用して生き残るという飛行機のパイロットの原則

これらの原則からなる意思決定の原理を著者は「エフェクチュエ―ション」と呼んでいる。

2 研究の方法論

「シンク・アラウド」法をもとにしたプロトコル分析の方法

3 基礎学問領域への理論的貢献

企業家の行動は手元にある手段(資源)を有効に利用しようとする手段主導の原則によって支えられるというエフェクチュエ―ションの原理はレヴィ=ストロースの「ブリコラージュ(bricolage:器用仕事)」の概念と相通じるものがある。ブリコラージュとは、そのとき利用できるありあわせの道具と材料を使って、多様なものを作り出していくという未開の人々の仕事の進め方である。

4 企業家の熟達への注目と企業家育成の可能性

経営学者の間には、企業家は発掘されるもので育成されるものではないという常識がある。企業家精神は生まれつきの性格や能力に依存するところが多いと考えられてきたからであろう。本書はこの常識に挑戦している。企業家の行動原則は、「熟達」によって獲得されるものだという本書の結論は、企業家育成のための教育にも示唆を与える。

最後のまとめは非常にコンパクトにまとめてくださっており、全体理解の確認には最適です。

私も、企業家は「発掘されるものではなく育成されるもの」と思っており、この「熟達」を基点とした本書の考えには非常に共感できるところがありました。

「熟達」に向けて頑張っている人は多いと思います。そういう方たちをサポートしていくビジネス・・・これについては、まだまだ市場としてはあるように思います。とはいえ、市場参入の際には、きらりと光るセンスや切り口がないと相手にされないとは思いますので、そのあたりを個人的にも温めていきたいと思っています。

 

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