「バカな」と「なるほど」


「バカな」と「なるほど」

「バカな」と「なるほど」
著者吉原 英樹

★読書前のaffirmation!
[きっかけ・経緯] 楠木建さん大絶賛につき・・・
[目的・質問] 楠木さんいうところの「バカなる」を学ぶ

楠木建さんが座右の書としているということで、各所で書かれていたこともあって再販売されたとのことです。非常に分かりやすく、かつ気づきも多い本でした。

クリステンセンの破壊的技術の概念が日本でも大きなインパクトを与えたが、そのエッセンスは、じつは「バカな」と「なるほど」である。(P.15)

こう説明されると理解しやすいですね。

「経営で成功するためには、何が一番重要か」ここ数年、私はずっとこの問いに関心を持ち、経営の成功のキーファクターを探す努力を続けてきた。・・・「バカな」と「なるほど」、これが経営の成功のキーファクターなのではないか。私の一応の結論である。成功している企業について研究してみると、戦略、組織、人事、工場マネジメント、マーケティングなど経営の仕方が、一見したところ非常識と思えることが少なくない。「そんなバカな」と思わず言いたくなる。ところが、経営者や実務担当者から説明を受けると、理屈が通っており、「なるほど」と納得せざるを得ない。このようにして、私は、「バカな」と「なるほど」の二つの特徴を同時に持つことが、経営で成功するための秘訣ではないかと考えるようになっている。(P.29)

もうここですべてを言いきってくれています。あとは、上記の補足という感じになります。具体的な事例を紹介しながら理解を深めていくという流れになります。

成功している企業は、「バカな」といわれるくらいユニークでイノベーティブな経営を考えだし、実行している。その成功企業の経営は外部の者には「バカな」と見えても、じつはよく考え抜かれており、「なるほど」と納得できる合成性を有している。一見したところ、非常識に思えるが、実はよく考えられており、合理的である、こういう経営の手を考え出して実行しているのが、成功企業なのである。(P.30)

「バカな」を「バカな」でないように咀嚼して、理解させる「伝える力」は別で身に付けなければならないのでしょう。そのあたりの経営者のあり方も後半に書かれていますので、後ほどご紹介します。

戦略の二大条件の差別性と合理性のうち、強いて言えば、差別性のほうが重要である。合理性のほうを重視すると、平凡な、常識的な戦略になりやすいからである。常識的な戦略では競争に勝てない。競争に勝つためには、競争会社の戦略とは違う独自な戦略がなければならない。戦略の差別性が重要なのはこのためである。(P.48)

「バカな」と思われている時点では合理性とは対極ですから、そりゃ差別性ですよね。かつそのなかでも他社から尊敬され、高く評価される差別性は模倣されるので、軽蔑されバカにされる差別性・・・・その時点では模倣しようなどと思わない戦略で気づかれるまでに創業者利潤を得るというのが勝ちパターンであると書かれています。

落差利用の戦略発想法の一つは、外国、とくに欧米と日本の間の差に注目して経営戦略を発想することである。・・・もう一つは業種間の落差を利用するというかたちを取る。進んだ他の業界の答えを見ながら、自分の業界のための戦略の答案を書くのである。(P.54-56)

SCAMPERでいうところのAdapt 当てはめるになるでしょうか。しっかりと情報をキャッチしておくという前提があってのものですから、アンテナを張って情報キャッチは常にしていかなければなりません。

答えを見ながら戦略の答案を書くという創造的戦略の発想法を実践するためには、まずなによりも外への関心を持ち続けることが大切である。自分の会社の中に閉じこもらない。自分の業界に注意を限定しない。他の業界に常に注目を怠らない。アメリカ、ヨーロッパ、あるいはそれ以外の多くの国々につねに注意を向ける。こういう外への関心をつねに抱き続けることが、創造的戦略の発想法のためには不可欠である。(P.59)

そうです、あらゆる方面へのアンテナです。

べき論の立場からする議論をよく検討してみると、そこに一つの特徴を見出すことができる。自分都合主義という特徴である。べき論の立場から世の中の変化、時代の流れに反対する人は、じつはその変化、その流れがマイナスに作用する人であることがほとんどである。時代の流れから利益を得る人は、反対しない。賛成する。利害のない人はとくに発言しない。・・・べき論のもう一つの特徴は、保守主義である。安定、秩序、既存のパワーバランス、既得権を守りたいのである。このために、新しいこと、変化に反対するのである。・・・べき論の本質が、自分都合主義と保守主義であるならば、べき論では世の中の動きは見えないのも当然である。べき論の立場から議論していては時代の流れに乗れず、時代の流れの中で敗れ去る運命にあるといってもよい。(P.63-65)

そして、経営者にとって重要な役割とは・・・・

経営者の一番重要な役割は、企業を長期にわたって維持し発展させることである。この役割を演じるためには、時代の流れを見通し、流れの変化を早く察知し、時代の流れに合わせて経営を変えていかなければならない。経営者には、時代の流れを見通す先見力が要求される。特に今日のように経営の環境が国内に留まらず、グローバルな広がりを見せ、さまざまな局面で激しく変化しているときには、先見力を強めることは経営者にとって一つの重要な課題である。(P.67)

そして・・・その先見力を強めるには・・・・

 

先見力を強める一つの方法は、べき論にたたずに予測論にたって世の中の変化、時代の流れを読む努力をすることである。自分都合主義の立場から世の中の流れを読むのではなく、第三者的な冷静な目で、常識的に時代の流れを読もうと努力するならば、世の中の変化、時代の流れは案外容易に読めるものである。政治家や教育者は、べき論の立場になって大いに議論してもらってよいが、経営者は、べき論でなく予測論の立場から時代の流れを読み、経営にあたるべきだと思われる。(P.67)

この部分のこの言い回しは非常に分かりやすく、しかもグッとくる内容です。そして次からは経営計画の伝える方法について述べられています。

 

経営計画を作成し、それを従業員に伝達することは、経営戦略を従業員に理解させるための方法として重要である。しかし、作成された経営計画が空文化し、経営計画が作文扱いされている企業は結構多い。このことを考えてみても、経営計画を作成し、その経営計画を明らかにするだけでは経営戦略を社内に浸透させることにはならないことがわかる。他の方法によって適切に補強しなければならない。(P.69)
戦略を伝達する方法として、
①口頭
②文書
③人事
④予算
⑤組織
⑥日常の言動
の6つである。
戦略を社員に理解させ、浸透させるためには、これあrの6つの戦略メッセージが一貫性をもっていることが必要である。言うことと書いていることが違えば、社員は混乱する。また、社長の経営方針と違う人事や予算が行われるときにも、戦略は的確に伝わらない。さらに、トップ・マネジメントの日常の言動が他の戦略メッセージと違っていると、社員を混乱させたり、がっかりさせてしまう。戦略を正確に、迫力をもって社員に伝達し、理解させ、そして浸透させるためには、6つの戦略メッセージが一貫して同じ戦略をあらわすようになっていなければならないのである。(P.76)

私の経験上、伝わるのはこれでいいかもしれませんが、これだけでは回りません。③、④、⑤の連動性があり、かつ一部門ごとにKPIと損益科目が結びついて責任が明確になるような状態まで組織を組み上げないといけません。これは非常に難しいですが、経験的にこの部分の成否が全体の成否を決定づけると言っても過言ではないように思います。個人的にもこのあたりは非常に興味のある部分でありまして、研究対象としても気になるところです。

 

組織慣性を生む一つの要因は、忠誠心ないし一体感である。人間はあることにある期間従事すると、そのうちにそのものに一体感を抱くようになり、そして、そのものを変えられることに抵抗するようになる。一体感にもとづく変化への抵抗はしばしば強力で、その抵抗を取り除くためには、多大のエネルギーと資金の投入が要求されることが珍しくない。(P.89)

これもトレードオフですね。忠誠心の高いことは悪いことではないので。

 

組織慣性を生む理由として、「計画のグレシャムの法則」をあげることができる。“悪貨は良質を駆逐する”という貨幣論のグレシャムの法則を組織論い応用するとK、日常業務(悪貨)は革新のための計画業務(良貨)を駆逐するということになる。起業返信に関して言うと、既存事業の継続につながる日常行うが優先され、その結果として多角化など企業返信の行動が遅れるということができる。(p.91)

「グレシャムの法則」についてもページが割かれており、それを意識してツールを使ってバージョンアップをしてもらないといけません。

 

危機感には2種類の危機感がある。一つは「このままではつぶれるかもしれない」という絶対的危機感である。いま一つの危機感は、相対的危機感である。(P.94)

危機感の醸成・・・これまた難易度が高いです。

ノーベル経済学賞を受賞したハーバート・A・サイモンは、このグレシャムの法則を組織論に応用して、日常業務(悪貨)は、イノベーションのための計画業務(良貨)を駆逐する傾向にあることを見出した。企業では往々にして日常業務が優先され、イノベーションのための計画業務は犠牲にされるという。(P.139)

さらに「グレシャムの法則」の補足が続きます。

計画のグレシャムの法則によると、企業において革新のための計画業務が日常業務のために駆逐されてしまうのは、つぎの3つの理由のためである。日常業務のほうが革新のための計画業務に比べて、納期がはっきりしており、評価との結びつき方が直接的で明確であり、注意の焦点が明確なためあれこれ迷わずにすぐに仕事に着手できる。したがって、計画のグレシャムの法則に打ち勝つためには、革新のための計画業務を納期・評価・注意の3つの点で工夫をこらさなければならない。いつまでにしなければならないという締切期限ないし納期を明確にする。(P.141)

楠木先生が絶賛するのも分かります。非常に分かる安い語り口調ですが、内容は非常に濃い経営学で、それに吉原先生のエッセンスを含めることで、吉原ワールドとなっています。改めて気づかされることの多い一冊でした。

僕も以前、社の組織編成のメンバーとして関わったことがありますが、僕の思っている組織のあり方がここで説明されているように感じました。

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