競争優位としての経営理念

競争優位としての経営理念

競争優位としての経営理念
著者:グロービス

★読書前のaffirmation!
[目的] 経営理念の意義・位置づけ・・・再確認すること。
[質問] 経営理念がもたらす効果・影響を理論的に押さえたい。

「なぜいま経営理念なのでしょう?」という問から始まります。
①従業員の日々の行動習慣、組織文化への影響
②従業員をはじめ、多くの良きステークホルダーを引き寄せる
③戦略を大きく左右する
というようなのが重要なポイントであるが、良き経営理念のもつパワーには非常に大きなものがあるとしています。(はじめに参照)

さて、それでは本文のほうへ・・・まずは言葉の定義から。(P.19-20)

ビジョン(vision)・・・企業が目指す具体的な目標、像。

使命・ミッション(mission)・・・企業が責任を持って成し遂げたいと考える任務。

経営理念(philosophy)・・・企業が拠って立つ信念や哲学、経営姿勢を表明したもの。

行動指針(principle)・・・従業員に、こういった行動を取ってほしいと考える基本的な方向性。

ウェイ(way)・・・経営理念と行動指針を包含したもの、あるいはこの両者のエッセンスを含みながら両者を接着剤のように結びつけるもの。

組織文化(culture)・・・構成員の間で共有された価値や意識、あるいは習慣化した行動の集合体。これまでの用語と異なり、現状の組織文化は明文化されないのが一般的。

もう一つ重要な視点として、経営理念と経営戦略の関連があります。ポイントは、経理理念が経営戦略の上位に位置するということです。これにはさまざまな意味があります。まず重要なのは、経営戦略は競争環境を反映して適宜変更する必要があるのに対して、経営理念はそんなに簡単には変わることはないという点です。(P.22)
もう一つ重要な点として、時に経営理念は戦略の足かせになるということを指摘しておきましょう。戦略の上位目的である経営理念が戦略の自由度を奪う可能性があることは、意識しておきたいものです。(P.23-25)

経営理念は、「企業の存在意義そのもの」であり、その意義の上での事業戦略ですから当然そうなりますよね。そうなると、あまり明確に定義すると動けなくなるし、少し緩いくらいがいいのか・・・・情緒的な表現にするとか、そんなふうにしておくべきなんでしょうか。でもそれもなんですし、それこそ企業のというか、経営者の意思を見せるところなんでしょうね。

 

良き経営理念の条件として、
・会社の大方針を示し、従業員の心の拠り所、求心力となる
・この会社なら働いてみたい、あるいは何かしらのお手伝いをしたいと思う
・経営者が迷った時の指針となり、良い意思決定や行動につながる
・いたずらに戦略を狭く規定せず、むしろ創造性や可能性を生み出す
といった要素が挙げられるでしょう。昨今ではこうした点も意識しながら社会的貢献を前面に打ち出し、CSR(企業の社会的責任)やCSV(Created Shared Value = 共通価値の創出)を重視する企業が増えています。(P.29-30)

なるほど、上手にまとめてくれています。次に、組織文化との関連を述べているのですが、これがまた確かにそうなんですよね。

 

組織文化は、意図的にではなく変化していくことも多いので、通常は、経営理念に盛り込むにはあまり適切ではありません。・・・経営理念やミッション、行動指針、ビジョン、そしてウェイがあくまでも意図であり、結果ではないのに対して、組織文化は行動の原因でもあり、一方で結果でもあるという点も重要です。それゆえに、行動の結果によって、良い方向にも割方向にも比較的短時間で変化していくのです。・・・ビジョン、ミッション、経営理念との整合性がぶれてしまうことが多い点も指摘できるでしょう。この三者は、比較的整合性をもってつくられることが多く、また明文化されていることが多いので、不整合は比較的発見しやすいものです。それに対して、現状の組織文化は文章として可視化することが難しいため、往々にして先の三者とギャップが起きるのです。だからこそ、経営者や自らの行動や、人事考課などの評価、採用や昇進昇格(解雇や降格)、起業にまつわる逸話や社史の作成といった、さまざまな手段を講じて、良き組織文化を維持しようとするのです。(P.30-31)

そしてこの組織文化というようもを、意図的に変化せることは至難の業なんですよね。続いて、さらに踏み込んで言及しています。

 

組織文化は本来、ビジョンを実現し、ミッションや経営理念を体現するための要素であるにも関わらず、これらとの距離感が大きいという問題もあるのです。本来はそこをつなぐのが行動指針です。しかし、行動指針はビジョンやミッション、経営理念に比べると、見逃されやすい要素でもあります。その理由としては、第一に、経営戦略がここにあまりフォーカスしてこなかったという事情が考えられます。組織論と戦略論の狭間で見逃されてしまった要素といえるでしょう。第二に、ビジョンやミッション、経営理念、あるいは戦略作りだけで疲れてしまって、多くの行動指針が、申し訳程度にとってつけられているという要素もあります。・・・そこで、狭義の行動指針に代わって、あるいは、行動指針をバックアップするものとして、広義の経営理念をしっかり定義、定着させようという運動が注目されてきたのです。近年よく聞くウェイ策定もその文脈で理解できます。(P.33-34)

そして、筆者はこの観点を踏まえたうえで、良き経営理念の条件に、もう一つ、追加を提案しています。「同時に、良き企業文化を強化し、従業員が適切な行動をとることを促進する」ということです。これを追加して、再掲しますと・・・

良き経営理念の条件として、
・会社の大方針を示し、従業員の心の拠り所、求心力となる
・この会社なら働いてみたい、あるいは何かしらのお手伝いをしたいと思う
・経営者が迷った時の指針となり、良い意思決定や行動につながる
・いたずらに戦略を狭く規定せず、むしろ創造性や可能性を生み出す
・同時に、良き企業文化を強化し、従業員が適切な行動をとることを促進する

この条件が整っていれば、立派な「経営理念」をつくることができそうです。そして、筆者は経営理念は企業にとっての必要条件であり、十分条件ではないと言います。どれだけ立派な経営理念があったところで、戦略やリーダーがまずいと、やはり戦には勝てませんと。効果的な戦略そのものや、それを適切に実行するリーダーシップやマネジメント力も同時に必須になるのですと。とはいえ、「経営理念」こそが土台になるものであると筆者は主張します。

一般にいわれる戦略的な競争優位性が長続きしないからこそ、逆説的に、長期にわたって好業績を収めるための経営理念が重要となるのです。言い換えれば、テクニカルに経営戦略を立案・実行しても、その背景となる信念がないと、結局、企業は長続きしないということです。戦略論やそのための分析ツールが充実している昨今だからこそ、良き経営理念はますますライバルに差をつける要素として重要になってきているのです。(P.35-36)

さて、良き組織文化とはどういうものなのでしょうか。ハーバード大学のJ.P.コッター教授とJ.L.ヘスケット教授は、以下のポイントを挙げています。(P.36)

良き組織文化
・ステークホルダーに対して強い関心を示す
・変革を促すリーダーシップの発揮を重視する
・外部環境に合致した戦略の立案とその実践に積極的に取り組む
・重要な価値観を共有している人々を採用してその能力開発を行う
・過去から学びながらも、過去を否定し、新たに創造する
・個人としての独自の意見を持つ
・主体的、能動的に行動する
・個人としてだけではなく、常にチームを意識し、チームで学習する
・自らの目標、貢献、行動に強い責任感を持つ
・全員が責任ある意思決定者としての行動をとる

これらのポイントのキーワードは、外部への関心、変化の肯定、価値観の共有でしょう。これに加えて、個人とチームの行動を重視する観点からは、個の確立、組織への貢献、責任などがキーワードになってきます。

つぎに「経営理念の作り方」という章が展開されています。盛り込むべき内容として、3つの観点が書かれています。

盛り込むべき内容(P.38-41)
・経営者の夢や理想
 → こうありたいと考える経営のあり方
・現実的な社内の制約条件(多くの場合は経営者の能力やモチベーション)
 → これならできると考える経営のあり方
・社会の要請
 → こうあってほしい経営のあり方

どれか一つに過大に偏るのではなく、また最大公約数的な妥協案を出すのではなく、粘り強く、これら3つの要素を高い次元で融合させることです。

その他、誰が作るか?については、創業者の場合もあるし、集合知で創り上げる場合もあるし、それぞれメリットデメリットがあるようです。そして一番の高いハードルは組織に徹底することだと書かれています。そしてそのための方法として次のようなポイントが挙げられています。

経営理念を組織に徹底する
①トップや経営陣が何度も語る
②冊子やビジュアルイメージを利用する
③人事考課と紐づける
④ITツールを活用する

そして、企業事例が以下、列挙されるという流れで19CASEが紹介されています。
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