コーポレートガバナンス・コードの実践

コーポレートガバナンス・コードの実践
(著者:武井一浩ほか)
★★★☆☆

2015年6月1日から「コーポレートガバナンス・コード」(http://www.fsa.go.jp/news/26/sonota/20150305-1/04.pdf)と呼ばれる企業統治指針が上場会社に適応されます。これで、日本の上場株式に投資する機関投資家に向けた行動規範である「「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワード シップ・コード≫(http://www.fsa.go.jp/news/25/singi/20140227-2/04.pdf)」との車の両輪がそろった形となります。これらに共通するキーワードは、「会社の持続的成長」であり、「中長期的な企業価値の向上」です。今回は、特に会社側の「コーポレートガバナンス・コード」に関する概要と、関連分野の方々のこれに対する関心や期待についてのインタビューが掲載されている本書について、ざっと内容を追いかけてみたいと思います。概要説明、およびインタビューアーは、「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」のメンバーでもある武井一浩氏がされています。

まずは、序章において武井氏がガバナンス・コードについて説明しています。以下、ポイントを抜粋します。

ガバナンスコードとは、「実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたもの」であり、「これらが適切に実践されることは、それぞれの会社において持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられる」と原案の冒頭に説明されています。

各上場会社は、ガバナンス・コードの精神・趣旨を尊重し、証券取引所が定めるコーポレートガバナンス報告書(「ガバナンス報告書」)等を通じて、ガバナンス・コードへの対応状況について開示や説明を行っていくことになります。
(中略)
ガバナンス・コードは、「1 株主の権利・平等性の確保」「2 株主以外のステークホルダーとの適切な協働」「3 適切な情報開示と透明性の確保」「4 取締役会等の責務」「5 株主との対話」の5つの基本原則から構成され、各基本原則に原則と補充原則が示されています。(基本原則と併せて合計で73原則となります。)(P.9)

また、「ガバナンス・コードでは、いわゆる“プリンシプルベース・アプローチ(原則主義)”でかつ“comply or explain(原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を説明するか)”が採用されています(P.10)。  つまり、会社が各々の置かれた状況に応じて、実効的なコーポレートガバナンスを実現することができるようになっている(P.11)。 会社側のみならず、株主等のステークホルダーの側においても、当該手法の趣旨を理解し、会社の個別の状況を十分に尊重することが求められています。(P.12)」という原則があるようです。

ガバナンス・コード制定のベースは2014年6月閣議決定の日本再興戦略(http://www.kantei.go.jp/jp/topics/2015/seicho_senryaku/01_nihon_saiko.pdf)です。

そのなかの、

1.未来投資による生産性革命
(1)「稼ぐ力」を高める企業行動(≒前向投資)を引き出す
ⅰ) 「攻め」のコーポレートガバナンスの更なる強化
・企業と投資家の建設的対話の促進(株主への情報開示促進)
・成長志向の法人税改革
・民間投資促進に向けた官民対話

この部分に該当するところになっています。
さらに詳しくは、このPDFの4シート目をご覧いただけるとわかりやすく整理されています。

あらためて、コーポレートガバナンスとは・・・何でしょうか?それについては、このように書かれています。

ガバナンス・コードでは、コーポレートガバナンスを「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」と定義しています。ガバナンス・システムが自社にきちんと整備されているということは、「うちは社会の公器としてこういう素晴らしい会社なのだ」というプライドと付加価値を社会に示すことであるとも言われています。上場会社には、取り巻くステークホルダーにとっての価値創造に配慮した経営を行い、広く社会に付加価値を持続的に提供することを通じて、中長期的な企業価値向上を図ることが期待されています。「社会の公器」としての役割を自覚し、ステークホルダー及び社会に対して、適時適切な情報開示を含む説明責任を果たしつつ、持続的かつ中長期的に企業価値向上を図ることで広く社会から信頼される存在であることが重要です。(P.15)

こんななかでの、東芝会計問題が起こってしまったわけで、それを受けてかわかりませんが、8月7日には、金融庁のほうで「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が設置されることになりました。(http://www.fsa.go.jp/news/27/sonota/20150807-2.html

また、「ガバナンス・システムの必要性」として、次のようにも書かれています。

ガバナンス・システムの必要性は、株式会社という仕組みが元々抱えている構造的欠陥を是正するという観点から説明されることもあります。株式会社は、法人格としても株主としても有限責任で、また経営者の方もエクイティを拠出することが求められておらず、また個人で終える責任には限界があります。他方で、株式会社は大規模化して多大な社会的外部性をもたらす行為を行います。こうした株式会社の内在的な無責任性に伴う構造的危険性を踏まえ、誰かが責任を持って、あるいは皆で役割分担をして、ハンドリングしていく仕組みが株式会社には必要であって、かかる機能を担っている仕組みがガバナンス・システムであるという説明です。(P.16)

なるほど、元々抱えている問題といえば、「エージェンシー問題」などもそうで、しっかりしたシステムの整備は必須・・・とはいえ、会社ごとのステージや規模によって、一律に決めてしまうことは逆に成長を阻害することにもなりかねない・・・というようなことにも配慮された形でこのコードはできているようです。(「できないなら、できない理由を説明しなさい」ということ。)そういう意味では、こういうのもリーガルマインドだと考えられそうな気がします。

さらに、「攻めのガバナンス(Growth-oriented Governance)」についても重要なキーワードとして掲げられています。

今回の日本のコードは、再興戦略の一環として成長戦略の中で位置づけられており、健全なリスクをとる体制をいかに整備するのか、説明責任を果たすことで経営手腕を自由に発揮するという攻めのガバナンスの側面が前面に出ている点が大きな特徴となっています。(P.19)・・・そうした中、「攻めのガバナンス」を支えるスーパーバイザリー・ボード及びモニタリング・ボードとしての取締役会の役割も重要です。(P.20)・・・中長期目線の株主等と行う建設的対話も、攻めのガバナンスに資することになります。・・・攻めのガバナンスが健全に行われるためには、債権者だけから声を聴くのではなく、中長期目線のエクイティの視点からも意見を踏まえて行われることが重要になります。(P.21)

経営陣がリスクをとって行った経営判断が事後的に会社に損害を与える事態になっても、前提となる事実についての調査を尽くす等の適正な判断過程を経ていれば、(利益相反がなく、またあまりにも非常識な判断でない限り)法的に善管注意義務違反を構成するものではないという考え方(いわゆる経営判断の原則)が、日本の会社法でも採用されています。こうした経営判断の原則の考え方は攻めのガバナンスには欠かせない前提です。ガバナンス・コードに対応して説明責任を高めた意思決定であれば正当性が高いものであり、仮にそれが失敗に帰してリスクが顕在化しても簡単に善管注意義務違反に問われるわけではないと考えられます。(P.22-23)

このようになると、まずますコンサル業界など・・・相談事の需要は増えるんじゃないでしょうか。それと、社内経営企画部的なところ、いわゆる社長補佐となる部門の強化がないと、無理でしょうし、それこそ社内データ分析部門の重要性は言わずもがなです。そういった人材のニーズはますます高まるでしょうし、MBAホルダー、中小企業診断士等の経営について網羅的に学習を積んだ人は重宝されるようになっていく気がします。

ほかにも、コーポレートガバナンス・コードおよびそれに関わることに関しては下記のことが記載されています。

・企業の持続的成長を支えるための、中長期目線の投資(ペイシェント・キャピタル)を促すこと
・企業価値創造のシナリオ、日本の中長期計画を取り巻く問題
・監督機関としての取締役会等(the board)のあり方
・監査等委員会設置会社
・独立社外取締役
・取締役会における審議事項の範囲
・企業統治委員会など任意の諮問委員会
・役員報酬
・会社保証と会社役員賠償責任保険(D&O保険)

この後、関連分野の方々に対してコーポレートガバナンス・コードへの関心や期待についてのインタビューが掲載されているが、今回は割愛したいと思います。

 


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